修学旅行から帰ってきたら、転校生がやってきた。
「オレ、こんな細かく乱発するタイプの機械とはやったことないなぁ」
「普通そんな機会ないからね!?」
「機械と機会かけたんだ、うまいね」
「偶然だよ!!」
なんて渚君と漫才しながら、BB弾の嵐が終わるのを見守る。まぁ終わる時は授業時間も終わってるんだけどね。現在2時間目。もうみんな諦めたのか、口元を隠しながら喋ってる。まぁオレがそうやり始めたからなんだけど。
「ねぇねぇ、こういうのじゃないなら、どんな感じなのー?」
「最近だと……2メートルぐらいの人型ロボットが、肩と指と胴体の真ん中に発射口があって、そっから10センチぐらいの太さのあるビームをいっぱい撃ってきたね」
「ビーム!?」
「正確には違うんだけどね。それをさ、2歳ぐらいの赤ん坊が操縦してんだよ。やりにくいっての」
絶対ウソだ!というツッコミの念が届いたよ。ウソじゃないよ、ヴェルデがモスカに乗ってたんだもん。赤ん坊だったから当たりどころが悪かったらすぐ死んじゃうから大変だった。
「こっちが気を遣ってることをいいことに、そこにまだ5人の赤ん坊が突撃してきてさ。普段協調性ない癖に、息あってんの。ほんと酷かった」
ぶほっと殺せんせーが噴いたよ。ああ、アルコバレーノの存在は知ってて、繋がっちゃったんだね。殺せんせーが現役の時にも普通に居ただろうし。慌ててこっそり廊下に一体分身を作ってむせてるよ。誰も気付いてなさそうだけどね。だから、クラスのみんなはもう子どもと遊んで酷い目にあったぐらいにしか思ってない。
「うん、あれは2度と経験したくないね」
まだ言ってるという念が届いたよ。いやだから、ほんとなんだって。
その日、殺せんせーはイタリアでジェラートを奢ってくれた。
次の日、自律思考固定砲台はクラスのみんなの総意の元、寺坂君によってガムテープでぐるぐる巻きにされていた。だよねとオレも思った。1日ならまだ我慢できるけど毎日はないよ。
さらに次の日には二次元の女の子になっていた。……意味わかんねー。や、殺せんせーが改造したのはわかるけどね。そういえば、オレの周りにこういうタイプ居なかったね。ロボット好きばっかりだ。
さらに次の日には元に戻ってた。と思ってたら、自律思考固定砲台の律さんの意思により、開発者に逆らって協調能力が残した状態で居て、クラス全員に受け入れられていた。……あれ?もうオレより馴染んでない?
●●●●●●●●●●
それはイリーナ先生の授業を受けてる時に起こった。オレは思わずガバッと立ち上がったよ。
「やばいやばいやばい、すげー嫌な予感する」
イリーナ先生がなんか言ってるけど無視して、オレは職員室に行く。
「殺せんせーは!?」
「買い物に行くと言っていたが……」
「どこに!?」
「……言ってなかったな」
ああああ……とオレは崩れ落ちた。どうした!?と慌てて烏間先生が駆け寄ってきてくれたよ。いい先生だね、あれからも普通に接してくれるし。
「殺せんせーが絶対何か仕出かしてる。オレ、嫌な予感しかしないもん。行った場所がわかんないと追いかけられないのに!イリーナ先生の授業なんか受けてる場合じゃなかった!」
「あんた失礼ね!!」
「あれ?……心配して見にきてくれたの!?イリーナ先生、優しいね」
「……あんた、いい性格してるわね」
んーそうかなー?なんて思いながらも、オレは殺せんせーが何を仕出かしてるのか気になってた。
「巻き込まれたくないし、帰るべきかな。……帰った方が嫌な予感がするね。せめて生徒達は帰すべきかな」
「お前の……その、嫌な予感というだけでは無理だ」
「だよねー。あ、イリーナ先生は授業再開してきなよ。オレ、ここで殺せんせーを待ち伏せするから。絶対説教案件だよ!」
「あのタコが帰ってくるまで、あんたも受けなさい!!」
なんかすげーヤル気だね。仕方なく戻ったオレはすげーイリーナ先生に当てられたよ。もちろん全部解答したし、ディープキスは防いだよ。
休憩時間になってオレはもう諦めた。
「そんな嫌な予感するの?」
「すげーするよ。こう具体的なことがわかんないのが困るよね。殺せんせーに説教しなくちゃいけない系なのはわかったけどさ」
「充分すごいと思うよ……」
いやまぁそうなんだけどね。なんて話してると、殺せんせーが授業のために帰ってきた。
「どこ行ってたの!?」
「にゅわッ」
キッとオレが睨むと、殺せんせーは知らんぷりの顔をした。
「ここに行ったみたいだぞ」
「か、烏間先生!?」
オレが説教案件と言ったしね。烏間先生は協力してくれると思ってた。で、目に入ったケーキの箱を見てオレはフラッと倒れかけた。
「……オレ、言わなかったっけ。あの街には近づくなって。どうしても欲しいものがあるなら、オレが買ってきてあげるって」
「先生は並んで買いたかったんです!先生のポリシーですから!」
「捨てちまえ、そんなポリシー」
「ソラさん、キャラが変わってますよ!?」
「あーもう絶対来るよ、あの人。オレへの依頼だからって必死に止めてたのにさ。殺せんせーがここに来れる理由を作っちゃったじゃん」
終わったとガクっとなってると、烏間先生に肩を掴まれた。
「沢田ソラ、説明しろ。コイツの存在を知っている人物がいるように聞こえたが?」
「そりゃね。オレにここの依頼がきた時に、一緒に聞いてたもん」
頭が痛いというような反応をしてるよ。というか、この前そんな話したじゃん。や、どれだけ知ってんだって感じで頭が痛いのかもね。
「心配しなくても大丈夫だよ。口の堅い人だから。というか、話を聞いてなくてもあの人には説明しなくちゃいけなかったから一緒だよ。一応、オレの生活の面倒を見てくれてる人だしさぁ」
「ソラさんのご家族ですか!?」
「違うってば。野宿生活なのを知って、家を用意してくれた人だよ。あとオレの情報とか全部抜き取られないようしてくれる人。烏間先生、なーんも出てこないでしょ」
「……ああ」
「いろんなところが手を回してくれてるけど、その内の1人なんだよ。オレとわたしが一番素直に頼める人でもあるの。転校手続きとか、この人がやってくれた」
「あんた、それ話して良かったの」
「大丈夫でしょ。あの人、自分のことはそんなに隠してないし。あの街を牛耳ってる人だから超有名人だよ。殺せんせーもあの街に行って、風紀委員に連絡しろとか聞いたでしょ。オレも意味わかんないんだけど、あの人警察よりも立場上だからね。あの街は110番じゃないの。事件が起きたら並盛中学の風紀委員に通報するの。あの人、その学校の風紀委員長だから」
みんな、意味わかんないみたいな顔してるよ。烏間先生はもっと意味がわからないって顔してるけど。
「って、中学生なの!?」
「1個上のはず。ただあの人いわく『僕はいつでも自分の好きな学年だよ』らしい。並高も行ってるはずだけど、並中に居る方が多いんじゃないかな。意味わかんないって流した方が楽だよ。オレはあの人にもうツッコミするのをやめた。ツッコミすれば、文句あるのってトンファー出すしさ。まぁ街の風紀を良くしようと頑張ってる人だから、悪い人ではないんだよ。良い人かと聞かれたら微妙だけど。でも実際になんか事件が起きれば、この人が居るからすぐ解決するね!って空気になるし。そして本当に解決する。最近だとオレを狙う殺し屋をボコボコにしていた。ほんと、どこ目指してるんだろうね?」
そんな奴いてたまるか!みたいな顔された。や、今から来るって。
「だから聞き込み調査とか行くなら覚悟していきなよ。あの街じゃオレも有名だけど、この学校に転校するにあたって箝口令出したみたいだからさ。通報されて逆に情報を搾り取られるね。街の住人全員が敵だよ。あの人の機嫌を損ねると超怖いのもあるけど、街のみんなが頼りにしてる人だからあの人の味方になる。それに下手につつかない方がいいよ。オレのせいであそこは監視カメラの街になってるから、殺せんせーの姿が確実に映ってる。脅すネタゲットしてるよ、絶対」
「ま、待て。そいつは知っていたんだろ!?」
「それはそれ、これはこれだよ。わかってたからオレはちゃんと言ったよ、殺せんせーにあの街には行くなって。だから説教案件なんだよ」
可哀想にとオレは烏間先生に視線を向けると、キッと殺せんせーを睨んだよ。
「でもまぁあの人のことだから脅す内容は、多分殺せんせーとの一戦だよ。街の方は自力でするだろうし」
「金銭ではないのか?」
「うん。殺せんせーを咬み殺して、百億もらおうって考えてるはずだから」
「殺せるといいですねぇ」
さっきまで烏間先生の雰囲気にあたふたしてたのに、ナメてる顔になったよ。
「見届け人だからあんまり口出したくないけど、はっきり言って殺せんせーの苦手なタイプだと思うよ」
「そいつならこいつを殺せるのか?」
「や、そのままだったら流石にあの人でも厳しいよ。けど、殺せんせーはちゃんと相手してあげるでしょ。脅迫ネタ取られちゃったし、この教室でとかルールをつけられたら付き合わなくちゃいけなくなった」
「そうですねぇ」
「あの人、すげーしつこいの。まずあの人にとって一戦は丸3日とかある。もちろん不眠不休。とにかく自分が納得するまで戦い続ける戦闘狂なんだよ。オレも見届け人として付き合わなくちゃいけない……最悪だ……。だから行くなって言ったのに……!」
しつこいってレベルじゃねぇー!みたいな空気になってるよ。
「それは困ります!今日の夜はラグビーの試合を見に行く予定なんです!」
「や、目当てはそこのチアリーダーでしょ。いつも揺れる胸をニヤニヤ見てんじゃん。言っとくけど、離れて見てるのは見届け人だからじゃないからね、オレドン引きしてんの」
「そ、そうだったのですか!?」
はっ、しまった。って顔を殺せんせーはしていたよ。思わず肯定しちゃったからさ。ないわーって顔をみんなしてたよ。あと烏間先生のイラッと度があがった。また説教が決まったね。
「授業のこともあるし、あの人が飽きる方法を教えてもいい?」
「……そうだな」
「とにかく手は出さない。手入れとか絶対やっちゃダメ。ムカつけばムカつくほど、あの人は許さない。やり返せばやり返すほど、あの人は強敵に出会えた喜びでテンションが上がる。君たちも律さんの時みたいに止めようとしちゃダメだよ、喜んでボコるから。一番厄介なのはお気に入り認定されれば、急に君たちにの家に相手してって押しかけるからね。だから特に烏間先生はほんと気をつけて。強い人、大好きだから。言っとくけどね、あの人がオレの家を用意したのは、オレがそこに来る可能性があるからだからね!罠だったの!!おかしいと思ったよ、親切すぎたもん!!絶対にオレがあの家を捨てられない状況を作ってから牙を向いたんだよ!フラッと帰ったら居るんだよ、家に!!待ち伏せはズルいとオレは思います!!」
「そういう問題じゃないよ!?」
渚君のツッコミにオレは遠い目をした。ツッコミするところが違うってオレもわかってるよ。でもわかってても言えないんだよ。あの人、理不尽の塊だから。
「……話を戻すけど、そういう意味では殺せんせーは飽きやすい対象なんだ。手を出したら終わるけど。とにかくちゃんと相手をして、躱し続ければいいよ。つまらなさすぎてムスっとして、最後はオレに相手しろって言ってくるでしょ。もうオレは目をつけられてるし、ある程度付き合ってあげればいける。オレらの間でルール作ってて時間もそんな長くないんだよ」
「しかしそれでは先生として示しがつきません」
「え、じゃあ3日もするの?本人は一切認めてないけど、あの人は雲だよ?」
「……ソラさん、その案でいきましょう!!!!」
変わり身、はっや。相当の実力者なのはわかったから、3日も相手するのは嫌だったんだろうなぁ。
「くも?」
「オレが空なら、あの人は雲なんだよ。つっても、オレは夜空かな。そしてあの人はその呼ばれ方されると超機嫌悪くなる」
隠語かな?とコソコソと話し合ってる姿に笑って誤魔化しつつ、イリーナ先生をチラ見する。やっぱ、よくわかってなさそうだね。当然烏間先生もわかってない。
「それとオレ以上にあの笑い方が嫌いだから、気をつけたほうがいいよ。オレと違って、クフフと笑う人が嫌いなの。カルマ君、間違ってもからかったりしないようにね。命の保証はしない。わたしもキレると思うから」
「ふーん」
気の無い返事したけど、ちゃんとわかってるっぽいね。カルマ君はオレとの距離感はわかってるけど、わたしとの距離感を掴むのは苦手っぽいからね。まぁそれは普段から表に出ないからなんだけど。
キリがいいところで、ヘリの音が聞こえてきた。やっぱ来ちゃったよとオレが呟いたのもあって、みんなもヘリの音に気付いたみたいで、窓に向かったよ。
「あぶないっ」
ええええ!?という声が揃ったよ。オレ見なくてもわかるよ。あの人、ヘリから飛び降りて普通に着地したんでしょ。オレと違って生身でやってんだよ、凄いよね。
「というか、危ないのは君達だからね。窓から離れた方がいいよ。邪魔って言ってトンファーで殴って吹っ飛ばされるから。あの人にとって、窓は出入り口だし」
オレがそう言ったら、そそくさと離れたよ。空いたからオレは窓に近づく。
「やあ。君が出迎えてくれるなんて、嬉しいよ」
「あー……まぁいつも逃げてますからね」
ポリポリと頬をかきながら答えてると、当たり前のように窓から入ってきた。チラッと確認したけど、やっぱつけてないね。
「一応聞きますけど、何しにここへ?」
「僕の街でタコが現れて風紀を乱したんだ。咬み殺しにきたよ」
「ですよねー」
「まぁでも君にも会いにかな。ちゃんとその制服も着てるみたいで良かったよ」
「いやだって、違う制服を着たらこの学校に殴り込みに来たでしょ」
「当たり前だよ」
ほらね、やっぱりめんどくさいことになったじゃん。
「えーっと、なんとなく予想してたので、殺せんせーにはお願いしておきましたよ。この教室で相手するでいいでしょ?」
「気がきくね。どうしたの?」
「……ここは並盛じゃないんで、フォローしました。急に来て暴れられても困るんで」
コテンと首を傾げられたよ。……そうですね、ヒバリさんからすれば風紀を乱したから咬み殺すは当然の流れですもんね。
「まぁいい。それでこの群れはなに?」
「や、ここ教室ですからね。それにあの子達にとってもいい経験でしょうし、オレに免じて見学させてあげてくださいよ。邪魔しないように廊下とか外の窓から見るようにしますから」
「1回でいいよ。今日の分も入れれば2回だね」
「やっぱこれも見つかったことにカウントされます?」
とっても機嫌が良さそうに頷かれた。最近、食事に行く回数減ってましたもんね。
「……えーと、机を端に寄せて、廊下か外、好きな方へ移動してね。教室の中にいると巻き添えくうから。あと壊されたら嫌なものは必ず持って出ること。この人の機嫌が良いうちにやろうね」
ほら、こんな言い方してるのに怒らないよ。そんなオレとの食事が嬉しいんですね。……あれ、そう思うと恥ずかしい。や、顔には出さないけど。ポーカーフェイスしているうちに移動が終わり、オレは声をかける。律さんもちゃんと廊下に移動させたよ。
「お待たせしました。じゃ、2人とも頑張ってくださいね」
「君、僕の応援しないの」
「……オレ、見届け人ですよ?」
ムスっと機嫌が悪くなったから、あははと笑って誤魔化す。すると、ニヤニヤしてる殺せんせーが視界に入った。ヒバリさんも視界に入ったみたいでトンファーで指した。あ、やっぱ改造してたよ。
「なにあれ」
「んーっと、そういえば浮いた話とか好きだった気が……」
「へぇ。……君を咬み殺して、彼女を返してもらうよ。あれは僕のものだから」
きゃー!!という女子の声と殺せんせーの声が聞こえた。オレは顔を覆いたくなったけど我慢した。だってね、油断した殺せんせーの触手を一本破壊したから。それでもテンパりつつも、なんとか躱してる。
「せ、先生を殺すためなのはわかりますが、そういうやり方は感心しませんよ」
「僕はウソをついた覚えはないけど?」
……残像を出してまで、オレに本当ですか?って聞くのやめようよ。言っとくけど、オレは顔には出さないよ。今仕事中だからね。
「いい加減、真面目にした方が良いよ。殺せんせー……死ぬよ」
オレの言葉と共に2本目の触手が壊される。ここまであっさり行くとは思わなかったなぁというのがオレの正直な感想。一本落ちるごとにスピード落ちてるなんて知らなかったよ。それもヒバリさんはずっとオレと追いかけっこしてたのもあって、反射速度があがってる。もちろん、この条件をのませたのが本当に大きい。ただ気になるのは……。
「……つまらないな」
「こ、これからですよ!?」
「この条件は僕に有利すぎだよ。これじゃ面白くない」
「あはは、すみません。見届け人として失格でしたね、やり過ぎました。グラウンドとかにすればよかったですね」
「代わりに相手してくれるならいいよ。そのあと僕と食事ね」
もちろんとオレは頷く。我慢してくれたみたいだからね。オレをまた並中に通わせたいと思ってるのにさ。
「ま、待て。こいつを殺せるチャンスだぞ」
「彼女の相手をしてる方が楽しい。次に僕の街の風紀を乱した時は、本当に咬み殺すから。行くよ」
そのまま大人しくついていったオレは、ヒバリさんと山をくだりながら会話する。
「結構あの教室面白いでしょ。殺気が渦巻いてるからか、わたしもすげー過ごしやすいんですよ」
「あの小動物より、わかってなさそうだけどね」
「リボーンのスパルタがなければ、似たようなものだったと思いますよ。こんな短期間じゃ、悔しさも芽生えたところでしょうし。どれだけあの教室で過ごせるのが有利なのか、気付けただけ良かったんじゃないですか」
ヒバリさんが証明してくれたんですよとオレがお礼を込めて笑うと、満更でもないような顔をした。こう見えて人を育てる才能もあるんだよね、ヒバリさんって。オレも何度か導いてもらったし、未来でわたしとXANXUSの子どもの修行にも付き合ってくれてたみたいだしさ。……あの子を気に入ったのもあるけど、君と会えるからというのもあったと思うよとわたしに言われて、なんとも言えない気持ちになった。うん、それは忘れよう。別世界の話だしね。
次の日、学校に行けば烏間先生に捕まって職員室に行くことに。ヒバリさんが良いところまで行ったのは事実だからね。ヤル気はないのかって。
「今のところないでしょうね。命令なんてされたら、意地でもやらないタイプ。だからなのかあの人の師匠はいつも大変な目にあってます。誘導させるのが大変で。前なんて失敗して最悪でしたね。あの人のかわりにペコペコと頭下げてました」
「……どうしても無理なのか?」
「言ったでしょ、あの人は雲なんですよ。誰かに縛られるタイプじゃないです。あっちこっち自由気ままに動くから空でも大変なんですよ」
「お前ならいけるってことか?」
「オレは紛い物ですよ。まぁ対価があれば聞いてあげなくもないって感じですけど、対価を払うのはオレなんで嫌です。ガッツリ取ろうとするし」
グイグイ迫ってくるからね。絶対やだ。オレの身体のピンチだよ。まだ諦めきれなさそうにオレを見るから、ため息を吐きならがら教える。
「普段オレを隠してくれてるのはお詫びでもあるんですよ。これは別件なんです」
「お詫び?」
「オレというか、わたしが赤ちゃんのころ誘拐された場所はあの街だったから。戸籍関係のゴタゴタは全部対価なしでやってくれます。あの人の家が代々牛耳ってたら嫌でしたけど、あの人が個人で築き上げたものだから、素直に頼めるんです。誘拐された時、あの人も赤ちゃんでしたから。血筋関係のところが一番悪いのはわかってますけど、日本も嫌いなんですよ。オレも、わたしも」
だから命令しないでくれます?と微笑むと何も言わなくなったよ。オレが散々、権利はないって言った意味を理解してくれたよ、やっと。
「調べたって何も出てこないはずですよ。だって死産にされたから、記録なんてあるわけない。上に報告するかは烏間先生の好きにしてください。あの人が守ってくれますから、大丈夫です」
やっぱヒバリさんって絶妙なポジションに居るよね。わたしが気にいるわけだよと思いながらオレは職員室から出ていった。
教室につくと女の子に囲まれた。……恋愛話、本当に好きだよね。というか、なんで殺せんせーこっちに居るの。さっき職員室の話も盗み聞きしてたじゃん。烏間先生のフォローはいいの?え、イリーナ先生に任せたの?
「どんな関係って言われてもねぇ。オレを口説いてる?」
キャッキャッと楽しそうだね。オレからすれば、どうしてこうなった……としか思えないんだけどね。
「付き合わないのー?」
「うーん、ゼロではないとしか言えないかな」
オレが完全否定しなかったのもあって、付き合っちゃえばいいのにみたいな空気になったから口を開く。
「大事なこと忘れてるからね。オレ一人の問題じゃないの」
あ。という顔をされたよ。普段出てこないから忘れるんだろうね。
「互いに納得した人を選ぶって話で、それは向こうもわかってるよ。あいつもあの人もさ。ゆっくり進んでいくしかないんだよ」
理解した?と視線を向ければ、納得してくれたっぽい。まぁ難しい問題だなぁと思われてそうだけど。
「あれ?でもさ、昨日来た人にすごく世話になってるんじゃないの。えっと、その家とか……」
「……情報はどっちも誤魔化してくれてるよ。家賃とか光熱費とかはあの人で、生活費はあいつが払ってる」
報酬を貰ってお金に困らなくなったのに、止める気ないんだよね、2人とも……とオレが遠い目をしていると、ビッチ先生より素質ありそうって言われた。ちょ、それどういうこと!?後、殺せんせーそのメモ何書いてんの!?絶対、燃やすからね!!嫌な予感しかしない!
そしてオレの知らないところで、前原君をキープ扱いした人がいて揉めたらしい。だからなのか、うまくやってるよねというように見られた。え、なんかそれ失礼じゃない?
だから烏間先生にガッツリ説教されてるのを、やれやれという表情でみてたよ。というか、女性には優しくしなよ。男の方はどうでもいいけどさ。
ちなみにヒバリさんからは何も言われてないから、烏間先生は報告しなかったっぽい。クソ親父が介入しようとした時は教えてくれたからね。やっぱ良い人だね。
●●●●●●●●●●
上海から帰ったら、イリーナ先生がワイヤートラップに引っかかってた。ちゃんと防御してるけど、メスを投げて下ろしてあげたよ。すると、知らない人に褒められた。向こうに合わせて同じ言語で返したよ。オレは見届け人ですよって。教室にやってきた烏間先生に驚かれたよ。
「お前は何カ国語話せるんだ……」
「んーオレもわかんないや。この教室に来てから思い出したのもあるし。使ってないとやっぱ忘れるよね」
相変わらず烏間先生は苦労人でいい人だよ。また頭を抱えてたよ。育った環境とか気にしてるんだろうなぁ。まぁオレは気にせず、杏仁豆腐食べてるけど。殺せんせーが選ぶ店ってハズレが少ないんだよね。美味しかったものは絶対教えてくれるし。
それでこの人……ロヴロさんがイリーナ先生を育てた人らしい。でも見たところもう引退しているっぽいし、情報が入ってきてなさそうだね。まぁイリーナ先生が詳しくなかったしね。
「ところで……『殺せんせー』は今どこに?」
「もう帰ってくるんじゃない?オレは先に帰ってきたけどさ」
「そうか。……は?」
いやだから言ったじゃん、見届け人って。というか、やっぱイリーナ先生の先生だね。そっくりだよ、その反応。まーた烏間先生が頭抱えてたけど。
「オレ、ちゃんと見届け人って言ってるのになぁ」
「あのタコと同じようなことが出来る奴が何人もいてたまるか」
「まぁそうだけどさ。居ないからわざわざオレに依頼がきたぐらいだし?」
「……失礼を承知で聞く、君に依頼した人物を教えてもらえないか」
「オレあそこ嫌いだから名前も言いたくないんだけどなぁ。んー、アサリ貝」
バッと顔色を変えて、ロヴロさんはイリーナ先生にこの仕事を降りろって言ったよ。見届け人だよ?ともう一回オレは言ったけど、イリーナ先生には荷が重すぎるという話らしい。
結局、殺せんせーが来て、明日殺せんせー用のナイフで烏間先生を殺した方が勝ちという話になったよ。巻き込まれた烏間先生かわいそう。
結果はイリーナ先生が勝ったよ。まぁ烏間先生の優しさだね。なんて傍観してたら、ロヴロさんに声をかけられた。
「ボン……失礼。アサリ貝は見届け人として君を送り込んだということは、あいつ……殺せんせーを殺すことには反対してないのだね?」
「そうですね。ここの生徒達が心配なぐらいでしょうね。けど、オレに依頼した時点であそこの意向とかは知らない。オレはオレで自由にするつもり。リスクを承知で頼んだんだから、責任はあそこが持つらしいけど」
「……そうか。気をつけよう」
プロだから一度受けた斡旋の仕事は下りるつもりはないけど、ボンゴレの意向にこの人は逆らう気はないってことかな。好きにすればとオレは視線を送った。
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今日の放課後はハワイへ映画を見に行くらしい。相変わらず人生楽しんでるね。特に問題なさそうだし行かなくていいかなって思ってたんだけど、渚君とカルマ君に誘われた。どうやらこの2人は殺せんせーに連れてってと頼み込むらしい。オレと約束してるからと言えば、尚更断りにくくなると思うからだってさ。少し悩んだけど、オレは付き合うことにした。
ってことで、律さんを含めた4人を見送ったオレは着替えてハワイへ飛んだ。
「……わかってたつもりだったけど、本当にソラさんが居たね」
「え?今更?」
「良い席あいてるっかな」
ほら、動じない人はここに居るよとオレはカルマ君を指す。渚君は苦笑いしてたよ。まぁカルマ君が珍しいのはわかってるけどね。
席に座って上映を待ってる時に、オレはふと気付いた。
「映画、人生初かも」
「え!?本当!?」
「うん。わたしは人が嫌いだから、こういうところもダメなんだよ。貸し切りで見るのはなんか違う気がするしさぁ。……ああ、気にしなくていいよ。この子も君達となら行きたかったみたいだし。流石に出てくるのは無理だけど」
つい並盛に居るオレにするように渚君の頭を撫でちゃった。こ、子ども扱い……みたいな顔されたよ。
「あー悪い、弟に似てるんだよ。特に渚君のツッコミとか、そっくり」
「弟いるの!?」
「んーオレは弟かな。わたしは兄と思ってそうだけど」
どういうこと!?って顔されたよ。
「精神年齢の話かな。だからあの子はオレに甘えてくるし、わたしだとお兄ちゃんしてるよ。わたしはよく抱きついて撫でてもらってるよ。オレは慰める時にしてあげる感じ」
「仲良いんだね」
「反動じゃないかな。オレとわたしは知ってたけど、あの子はオレらの存在はつい最近まで知らなかったから。知ってしまった日なんて引っ付いて離れなかったよ」
オレがその時のことを思い出して笑えば、いろいろ気になることはあるだろうに渚君は嬉しそうな顔したよ。カルマ君は殺せんせーの泣き具合にちょっと引いてたけど。や、オレも渚君も気付いた時に引いたけどね。
「っと、そうだ。先にオレのケイタイに侵入出来てから調べなよ。君がすると見越してオレのはウイルスとか仕込んでないから」
そういうと、律さんがテヘッという表情をしてたよ。やっぱ何度か試してたんだね。正一君に頼んでてよかったよ。そりゃ元々正一君が改造してくれたものだけど、このケイタイは白蘭がくれたからね。絶対凶悪な設定にしてた。オレ、嫌だよ。ランランうるさい律さんなんてさぁ。まぁその代わり外部からは夜の炎がないと侵入できない鬼畜仕様になったけど。……だから律さんは不可能なんだけど、極悪トラップにひっかるよりマシだよ、絶対。オレが律さんのことを報告したせいで軒並みセキュリティレベルがおかしいことになったからさ。
そのあとは大人しく映画鑑賞した。
でも、なんかごめん。映画のオチにまさか生き別れの兄と妹という設定が使われるとは思わなかった。ネタバレした感じになってしまったよ。というか、殺せんせー泣き過ぎじゃない?涙もろすぎだよ。
●●●●●●●●●●
今日、また新しい転校生という名の暗殺者が来るらしい。といっても、オレはロヴロさんにちょっと聞いていて知っていたんだけどね。ただなんか嫌な予感がする。
席はオレと律さんの間っぽい。まぁオレは律さんの列と違って、もう少し後ろだけどね。椅子を下げるんじゃなくて、机を引き寄せてるから。
しばらくするとシロと名乗る人が来た。うーん、確かに白蘭に負けないぐらい白いね。面倒くささは白蘭の勝利だけど。酷いなぁなんて言ってる顔が浮かんでしまった。
「君が見届け人かい?彼が死ぬところをしっかりと見ててほしい」
チラッと見るだけで、オレは左手でメスをクルクル回す。本当は出したくなかったけど、これをしなきゃわたしが落ち着かない。
「警戒されてしまったかな」
「オレもわたしも、あんたみたいな奴はつい殺したくなるんだ。その粘っこい視線をやめろ」
「おっと、失礼」
視線がなくなると共に、降参というようにシロは手をあげた。
「しかし君はなぜ見届け人という仕事を受けたんだい?君なら彼を殺せるだろうに」
「……殺せんせー。オレ、帰るね」
「おっと、それは困るよ。君は見届け人だろう?」
「同じ空間に居るのも嫌なんだよ。視線を送るのをやめても、隠す気ないくせに。この身体に興味あるって」
ほら、否定しないじゃん。あー鬱陶しいとオレは席を立つ。
「まぁ仕事だから見届けはしてあげるよ。やっぱ持つべきは友人だよね。どこでも覗き見出来るなんて、オレでも無理だもん。だからさ、バレてないつもりだったんだろうけど、殺せんせーがアジトを持ってるのも知ってるからね」
「にゅわッ!?み、見たのですか!?」
「や、オレは見てないし行ってないよ。そいつは仕事柄公平なんだよ。そりゃ交渉すれば融通ぐらいはしてくれるよ。オレ、結構可愛がられてるし。ただ公平であるべきそいつが、聞いてもないのにオレに行くのは止めとけって、先に助言するぐらいだからさ。エロ方向かなって」
うん、絶対当たりだね。殺せんせーはリアクションでわかりやすぎ。みんなもそういう風に見てるよ。
「あーすっきりした」
「先生でストレス発散するのをやめてください!!」
「……あ、声に出しちゃってた?」
失敗失敗と言いながらオレは教室から出て行った。殺せんせーのおかげで少しわたしも落ちついたし助かったよ。そのまま人気のないところでバミューダのところへと飛んだ。ついたらすぐにイェーガーに頭撫でられちゃったよ。ガキの頃から知ってるし、もうオレらの父親、イェーガーでよくない?クソ親父より何百倍も良いと思うんだけど。
バミューダ達と一緒に見届けた後、先に買っていたケーキを持ち、オレは学校へと戻ってきた。殺せんせーは木にもたれかかって、みんなの訓練を見てたよ。
「はい、お土産」
「そ、その箱は……!?」
「あれから行ってないでしょ。わたしと常連の子達のオススメだから間違いないよ」
ちゃんと京子ちゃんとハルに聞いたからね。珍しくオレから連絡したから、すげー嬉しそうだったよ。普段から返事かえさないしね。まぁ京子ちゃんに連絡した時に、オレが近くに居たみたいですげー心配されたけど。ラ・ナミモリーヌのオススメを聞きたいだけだったのに、何度も話がズレたよ。なんとなく感じ取ったかもしれないね、双子だし。
「ソラさん、一緒に食べましょうか」
「……それ、オレのセリフじゃない?」
焦ってる先生の横で、オレはどれがいいかなーと覗き込む。やっぱわたしのオススメかなーと、指をさせばダメって言われたよ。
「それはソラさんのオススメでしょう。ソラさんにはあげません!これは先生が食べます!」
「そっか。じゃあ別のにするよ」
どっちにしようかなーと思ってたら、カルマ君がオレはこっちと指定したから、残った方をもらうことにした。
「カ、カルマ君、先生のケーキですよ!?」
「ふーん。じゃ、みんなに言ってこよう。先生が生徒にケーキ奢ってもらってるって」
先生の威厳が勝ったらしく、シクシクとカルマ君に渡してた。そのカルマ君はべーっと舌を出してたから、思わず笑ってしまったよ。自分のためにと見せかけたカルマ君らしい気遣いだなと思いながら3人でケーキを食べた。