うげっと顔を歪める。HRで球技大会の話し合いをすることになったから。うーん、女子はバスケかぁ。まぁ代表っぽいし、オレには関係ないかな。
「も、もしや……ソラさんはバスケが苦手なのですか!?」
「……先生としてどうかと思うよ。その反応」
すげー嬉しそうにオレのところにやってきたんだけど。
「まぁ球技全般苦手かな」
あのリボーンがサジを投げたぐらいだからね。なんて思ってると、なぜか結構な人数にキラーンとした目で見られて、殺せんせーはバスケットゴールを作ってた。え、これオレがやる流れなの。
仕方ないから、ドリブルしてシュートする。
「あれ?普通に入ったね」
「そりゃ、欠点と言われないぐらいは出来るよ。ただオレの身体能力と……思考もかな。それがボールと噛み合わないんだよ。そもそもオレは素手派だし。わたしがメスに拘ってるから、短い刃物や投擲系もいけるけどさ。銃は先生の武器だから、みっちり覚えさせられたの。でもやっぱ基本的に物を使うのが苦手なんだよ」
「先生?」
「超一流の殺し屋。って、そんな殺伐とした関係じゃないよ。よく屋根の上で一緒に寝そべって喋ってるし。先生のモットーで、女にはちょー優しいの。オレは女に産まれて、これほど良かったことはないと何度思ったか!!」
オレが思わず拳を握っていたら、だからオレも女の子に優しいんだねと言われたよ。さりげなく荷物持ってくれるし、絶対ビッチ先生って呼ばないもんねと女子が頷き合ってたよ。え?そうだっけ?って何人かの男子はしてたけど。もちろん気付いてる人もいたけどさ。そういうところでモテる男と違いが出るんだろうね。
「まぁね。だから殺せんせーを見てると、ないなって思う」
ズーンっと落ち込んでるよ。や、でもないよ。
「でもまぁ男だったら酷い目に合うから、男なら間違いなく殺せんせーが良いと思うよ」
今度はパーッと嬉しそうに輝いたよ。え、忘れてない?オレは今、女だよ?まじで殺せんせーの女性の扱いはないと思ってるからね。
結局、オレはヤル気がないから指揮が下がるよと片岡さんに言って外してもらった。女子はリーダーシップがある彼女に任すとして、男子は杉野君が勝ちたいと言ったため殺せんせーが張り切った。ヤル気がないオレはぼーっと見るつもりだったんだけど、なぜかバントの見本をさせられた。や、確かに見えるけどね。オレ球技苦手なの。当てるぐらいなら出来るけどさと渋々付き合ったよ。
球技大会当日。オレは遠い位置から女子と男子を応援する予定。人が多いとね、やっぱ無理なんだよ。ちょうど体育館とグラウンドを覗ける場所があってよかったよ。なんて思ってたら、理事長に声をかけられた。よくこの場所に気付いたねとオレはピョンっと飛び降りる。
「あなたは参加しないのでしょうか?」
「……そんなにオレが動くところ見たいの?」
ニコッと微笑まれたよ。やっぱり合ってたんだ。オレの技を盗みたいって目をしてるもん。それにこんなに見られてるのに嫌悪感なかったしね。
「でもまぁオレが参加するとズルいでしょ」
「それはこの学校のテストもかな?」
げっ、それもバレてんの。
「んーオレがヤル気を出すと困っちゃう子がいるんだよね。ほどほどにやるよ、ほどほどに。中学は義務教育で良かったよ」
まぁ私立の進学校だから学力が合わないとか校則違反で転校させることは出来るかもしれないけどさ。オレ、破ったとしても見つかるようなヘマはしない。制服はちゃんと許可もらったもん。
「……そうですね。しかし沢田ソラさん、君はE組には勿体ない人財だ」
「もしかしてA組に誘ってんの?担任の許可がいるよ?あとさ、当然オレはそんな気はないし」
理事長先生が作ったルールだよとオレは微笑む。雇用主だからこそ、殺せんせーに有効な手はいくつも浮かぶだろうけど、生徒のオレにはやりようがないんだよね。たとえまた範囲をかえたり、E組全体に嫌がらせしても、それは殺せんせーが頑張ることだもん。内申点とかどうだっていいしさ。オレをE組に行く許可をした時点で理事長先生の負けは決定している。
人の気配がしたしさっさと去ろうしたら、まだ終わってなかったらしい。
「なぜ君は強者なのに弱者のフリをするのでしょう?」
や、別にオレは弱者のフリなんてしてないでしょとオレは首を傾げる。だってさ、E組のみんなから見ればオレもやばい奴だよ。そしてそれは理事長先生も気付いているでしょ。
「んーっと、オレはバカだからよくわかんないけど、多分違うんだよ。目指す先というか、ベクトルというか、うん。というか、ごめんね。理事長先生はオレらにあてられてるね。夢だと思って忘れた方がいいよ」
本当の理不尽という存在を、支配者になれるものを知ってしまったってところかな。オレはこの人の教育理念にはすげー異物なんだろうね。この人と違って、オレとわたしは生かす者じゃなくて、死を与える者だもん。
「あなたがまだ教育者で居たいならね」
じゃあねとオレは歩き出す。殺せんせーは元々裏の人間だったから問題なかったけど、この人には刺激が強過ぎたんだろうね。にしても、面倒になったなぁと思いながら、聞いていた生徒の顔を気付かれないように確認する。うーん、絶対父親が心配だったとかじゃないよね、これ。まぁでも親子だからこそ、異変に気付いたんだろうけど。
……つーか、牽制する人数が増えてしまったよ。バランスが難しいなぁとため息が出た。今日の夜はリボーンにグチろうかな。ほんとオレが女で良かったよ。男ならオレの気持ちなんて無視してこっちの世界に引きずりこんでたよ、絶対。だってリボーンだもん。
この後、注意深く見てたけど理事長先生は理事長先生っぽい感じで、野球部を指導してた。うーん、今んところ大丈夫かな。ただ理事長先生が強者って言ったせいで、試合終了後にE組の方へ行けば、息子さん……浅野君からすげー視線を感じた。まだ接触して来なかっただけ、良かったと思った方がいいかな。
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制服が半袖の時期になった。もちろんオレも半袖に、並中のセーラー服だけど。で、登校したら菅谷君がメヘンディアートを左手に残したままやってきた。だから描いてあげると称して、殺せんせーに暗殺をしかけたんだけど、結末は衝撃的だった。そりゃ致命傷じゃないけど、あの溶け具合は怖すぎる。殺せんせーの顔面がドロォと溶けたもん……。
菅谷君は殺せんせーに嘆かれ、ちゃんと描いてあげてたよ。でもさ、殺せんせーのリクエストってカッコいい模様じゃないの。結構可愛い感じになってるよ。まぁ本人が気に入ってるからいいけどさ。で、その流れで菅谷君がみんなの腕にも描いてあげることに。
「ね、オレにも描いてくれるの?」
「ん?おう。いいぜ」
あんま喋ったことないのに、ノリがいいねと思いながらリクエストする。わたしが描いて欲しいものをね。オレは興味ないし、ヒバリさんがキレるからさ。だから手の甲に気持ち程度にデフォルメされた魚を描いてもらったよ。菅谷君はそれだけじゃ納得いかないのか波とかも描いてくれたけどね。まぁ意味わかると思うし、これぐらいなら許してくれるだろうね。というか、許してくれなかったら、しばらく会わないようにすればいいだけだし。
「でもなんで魚?」
「弟のイメージ」
どういうこと!?みたいな顔を渚君にされた。まぁわたしはすげー喜んでたよ。多分、帰ったらオレも母さんも喜ぶ。
そうこうしてる内に、授業のためにイリーナ先生がやってきて殺せんせーに狙われた。好き放題描けそうなキャンバスっていう意味で。それでイリーナ先生が逃げようとしたら、滑っちゃってさ。オレ、慌てて助けたよ。頭からは流石に怖いって。
「つーか、自分の触手に描けばいいじゃん」
呆れたようにツッコミしてたら、イリーナ先生にディープキスを狙われた。……オレ、助けてあげたんだけど。もちろん避けたよ。プンプン怒ってたけど、助けてあげたのもあってしつこくなかったけど。
「先生は誰かに描いてみたいんです!!」
「でもさ、嫌がってる女の人にすることじゃないでしょ。烏間先生のところに行って来なよ」
すげー衝撃的な顔されて、シクシクと自分の腕に描き始めたよ。殺せんせーでも烏間先生に仕掛けるのは嫌なのね。いやまぁわかるけど。そういう冗談が通じなさそうで怖いもんね。
で、出来上がった作品はある意味芸術だったよ。ある意味ね。最終的に悲しくなって自分で触手を斬ってたけどね。なかったことにしたかったみたいだけど、ちゃんとカルマ君は写真撮ってたよ。また忘れた頃にイジられるんだろうね。可哀想。
まぁ結局烏間先生にバレて、みんなは定着してない間に落とされてたよ。オレはそのままだったけどさ。オレに怒れない烏間先生、可哀想。
ちなみに予想通り、家に帰ったらすげー喜ばれた。ヒバリさんはわかってたけど、骸とXANXUSにもすげー微妙な顔をされた。オレ、XANXUSの考えてることはよくわかんないけど、今回は流石にわかったよ。まぁわたしが喜んでるのはわかってるから何も言ってこなかったけどね。ただその後に3人からデザイン案を渡された。や、XANXUSはルッスーリアからだったけどね。面倒なことになるのはわかりきってたし、オレとわたしは話し合って封印した。
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今日も今日とて、殺せんせーと砂場で遊ぶ。殺せんせーほどではないけど、オレも砂場アートが上手になった。
「んー、いい忍び方だね」
暗殺者はこうじゃないと!と目立ちたがり屋の暗殺集団に向かって心の中でツッコミする。にしても、ほんとどうするの?と殺せんせーに視線を向ける。落ちちゃったわけじゃなくて、そっちに行きたいって本人が言えば、オレが紹介してもいいけどさぁ。まぁまだ卒業まで時間があるし、様子見かな。殺せんせーもわかってるみたいだし。
放課後になると、新しい先生がやってきた。暗殺者ではないけど、あんまり好きくない感じ。差し入れとかも食べたいと思わなかったし。貰えるものは貰える主義のわたしもいらないって言ったぐらいだもん。や、別に毒とかは仕込んでないんだけどね。
「オレも烏間先生の方がいいな」
こっそり、みんなはどっちがいいか話してたから、つい答えちゃったよ。まぁ賛同してくれたって倉橋さんが喜んでくれたからいいけど。烏間先生は何考えてるかわかんないし、真面目だからちょっと人気ないね。
「ソラちゃんはどこがいいと思ったの?」
「えー。あの人、超良い人じゃん。オレとわたしの育った環境とか、すげー心配してくれてるし」
誰でもするよ……みたいな顔された。いや、しない人はしないよ。
次の日、鷹岡明が出した新しい時間割にため息が出た。ほらね、好きくない感じがすると思ったよ。理事長先生もよくやるよね。当然、鷹岡明もオレには指図できないから、オレは免れるんだけどさぁ……。うーん、見届け人という立場だと手を出しにくい案件なんだよね。
反抗した前原君も殴られちゃったのはまぁいいけど、女の子に手荒なマネをしちゃダメだよってことで神崎さんが殴られる前に受け止める。
「おまえは……」
「んーっとさ、世の中に父親の命令を聞かない家族は結構いると思うんだけど。オレは借金まみれにしたし、わたしは出血多量で死にそうなぐらいズタボロにしたよ?」
なにしてんの!?みたいな顔をみんなにされた。
「……見届け人は教育のやり方まで口を出すのか?」
そう言われたら痛いんだよ、やっぱ。殺せんせーも烏間先生も止めに来たけど、一応筋が通ってんだよ。やり方は最悪だけど。
「うーん、わかった!じゃぁさ、女の子が罰を受けるってなったら、オレを殴ってよ。なーんもズルとかしないし、圧力とかかけないよ。もちろん、オレもわたしもやり返したりしない。ほら、これも家族でしょ?」
誓約書を書いてもいいよ?とオレが言えば、鷹岡明は乗ってくれたよ。オレを殴る場合でも沼にはハマっていくからさ。女子からはすげー反対の声があがったけど。男子からは男前すぎるという視線をもらったよ。
「ちょっと折れたり、血が出るぐらいでしょ。オレは痛みには慣れてるし、それでいいじゃん」
まぁみんなが反対したって、誓約書を書いて父親と名乗る人物に渡せば反対なんか出来ないんだけどさ。というか、予想通りサインし終わった時点で鷹岡明は女子に言ったよ。父ちゃんに反対したとみなして、オレを殴るぞって。まぁだからピタって止まっちゃったね。
反対意見がなくなったところで、スクワット300回が始まった。当然初日から耐えられるわけもなく、小言いっちゃうよね。特に烏間先生の名前は禁句だったらしい。裏方担当でも先生にはかわりないんだから、オレは家族でいいと思うんだけど。
まぁそれを女子の倉橋さんが言っちゃったから、オレはいいよと頷いて目をつぶる。
「よーく見とけ。おまえが父ちゃん以外を頼ったから、家族におしおきだ」
予想通り痛みは来なくって、烏間先生が止めてくれたよ。やっぱ超良い人だよね。
教育論で揉めた2人は烏間先生が育てた生徒が鷹岡明に一度でも当てれたら勝ちというルールの勝負をすることに。ただ、使う武器は本物のナイフ。残念ながら見届け人のオレは烏間先生に育てられていないから、生徒からは除外された。結局オレは家族なのか、見届け人なのかどっちなんだよってちょっと思ったよ。
この子しか居ないよねと烏間先生がナイフを渡した人物を見て頷く。ほんと、そういうところもオレとそっくりなんだよね、渚君はさ。オレが絡まなければ、すげー弱そうだし、相変わらず不良に絡まれてる。けど、一番怒らせたらヤバイタイプなんだよね。まぁオレはわたしが居るから隠してないけど、同じこと出来るもんね。というか、たまにみんなも忘れてるでしょ。オレがヤバイって。
当然、渚君の勝利だったよ。
その後に出した渚君の結論を聞いて、烏間先生が応えてくれたよ。思わず口笛ふいちゃうぐらいカッコよかったね。
それでもまだグチグチ言いそうな感じだったけど、理事長先生が来て解雇してあいつは逃げてったよ。そん時にちゃんと誓約書はスっておいた。
「美学がないんだよ、やっぱ」
ビリビリと破りながらオレが呟いてると、理事長先生がフッと笑って去っていった。こういうところは通じるんだよと思ってると、オレは倉橋さんに抱きつかれ、女子に囲まれた。
「うーん、あんま気にしなくていいよ。オレ、勝算あってやってたし」
「え?もしかして直感」
そ!とオレは頷く。わたしの身体なのに無茶しないってば。
「それに外して殴られたとしても、あの人は今日で去っていったからね。1日の我慢だよ」
「どうして?」
「そりゃ、オレとわたしは手を出さない約束だけどさ。キレる人がいっぱい居るからね。社会的は当然として、命までかは勝ち取った人次第かな」
オレがニッコリと笑うと、ヒクッと倉橋さんは引き攣った顔をしたよ。なんとなくわかっていたのか、ため息と共に烏間先生にはポンっと頭に手をおかれたよ。優しいお仕置きすぎて、思わずオレはあははと笑っちゃったよ。わたしもオレの中で笑ってた。
そのままの流れで烏間先生はみんなに強請られてご馳走することに。オレも今回はちゃんと食べたよ。ちょー美味しかった。
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殺せんせーも良くやるよねーとオレは見つめる。まさか裏山にプールを作ろうとするとは。まぁ水が溜まるのに時間がかかるだけで、それ以外一瞬で出来るんだけどさ。もちろん他の生徒達には秘密って言われたよ。頑張ったのは殺せんせーだし、オレはもちろんと返事した。
次の日、お披露目をした殺せんせーはみんなの喜んだ顔に嬉しそうな顔をしてたよ。まっ、オレも入るかなとセットするために髪をかきあげる。
「……なんかエロいね」
「今までそういうのは胸の大きさで決まると思ってたよ」
「んなわけないじゃん」
思わず女の子達に呆れたツッコミをしてしまったよ。だってさ、継承された経験の中に女装があったんだよ。つまりみっちり男を落とすテクニックもリボーンに教わってました。男のオレが違和感なく足せるパットの量でね。胸の大きさで決まるわけないって。いやまぁそんな意図せずやった仕草でエロいと感じるとは思わなかったけど。
「はいはいはーい!!どうやってやるのー!?」
や、そんな勢いよく手をあげるのはやめた方がいいと思うよ。ほら、すげー憐れみの視線がカエデちゃんに集まってるからね。
「というか、さっきのはギャップでしょ、ただの。後は……近寄りがたい雰囲気とかで、そう感じたんじゃない?」
なんて言いながらセットし終わったオレはプールに入る。素で魔性の女をやってるとか言われてるけど、オレは聞き流したよ。言ったのは女の子だしね。
「あー極楽」
「……風呂じゃないんだからさ」
渚君にツッコミをされちゃったよ。いやでもさ、すげー冷たくて気持ちいいじゃん。
「んーまぁ君なら大丈夫そうかな」
ハテナマークを浮かべてる渚君をよそに、カエデちゃんに声をかける。あの子、泳げないみたいで必死に浮き輪を回転させてたよ。なんかごめん。
「わざわざ教えないけど盗むならいいよ」
そう言って、オレは渚君を見る。未だ不思議そうな顔をしてる渚君に妖艶に笑って囁いた。イイコトしよ?って。
「うーん、中学生には刺激が強かったかな」
ほとんどの子が真っ赤になっちゃったし、渚君は真っ赤なまま沈んでいっちゃったよ。いやまぁもちろん助けたけどさ。
「とまぁ、今のが狙ってやったギャップだね。渚君は勘違いとかしないからやったけどさ。それとこれはカルマ君みたいなタイプには効かないよ、彼はまた別方向だね。試せば、ノリでやりそうだから絶対やらないけど」
カルマ君はやってみせてよとか言いそうだからしっかり釘をさして、渚君を殺せんせーのところまで届ける。
「……殺せんせー、生徒をエロい目で見るのは教育者としてどうかと思うよ」
「はっ!違いますよ!!」
や、思いっきり鼻の下?を伸ばしてたじゃん。まぁオレがいつもの雰囲気に戻ったから、殺せんせーもちゃんと戻ったみたいだけど。……にしても、やっぱリボーンの教育はヤバイね。未だに何人かドキマギしてるよ。カルマ君はすげー楽しそうにチェックしてた。イジるネタが出来たからね。
渚君は復活したら、みんなにやっぱ男なんだねみたいな反応されてた。水着になった時も言われてたから本日2度目のツッコミをしてたよ。もちろんオレの予想通り、渚君は勘違いとかしなかったよ。もうやらない方がいいよとは言われたけどさ。
浮き輪でプカプカ浮きながら、オレはわたしと会話する。いやさ、なんでアレが出来て鈍いの?と聞かれたんだよ。あれはリボーンに教わった男を落とすテクニックだからね。意図して落とすとはまた別問題だよ。まぁオレなりにこの教室では気をつけてるけどね。惚れられて裏の世界なんて興味持ったら意味ないし。住む世界が違うよとたまに漏らしてるのは、そういうのもあんの。わたしが大丈夫と太鼓判押してくれてるから安心。……やっぱヒバリさんが変わり者なんだよ、うん。あの人は障害がある程、燃えるもんねとわたしに言われた。そういうのはさ、もうちょっと早く教えてよ……。
オレがゲンナリしてる間に、殺せんせーはピーピーと笛を吹きまくってうるさかった。そんな中、倉橋さんが殺せんせーに水をかけたんだ。カタいこといわないでって感じでじゃれたの。
「きゃんっ」
えっ……とオレも思わず呟いたよ。すかさず、カルマ君が殺せんせーが座ってる監視台を揺らした。
「きゃあッ。ゆらさないで水に落ちる!!」
この反応で気付いたのはオレだけじゃなくて、殺せんせーは水に弱いことがわかった。思わず、まじかぁとオレが空を見上げていると、カエデちゃんが溺れかけていた。
ちょ、あの子も触手持ち!!と、オレが慌てて助けに行こうとしたら、片岡さんが助けてくれていた。そういや、水泳が得意だったっけ。カエデちゃんはそこまで酷いことにはならないみたいでホッとした。周りも安心したのか、片岡さんは女子なのにオレとはまた違ったイケメンだよねと盛り上がってたよ。あはは……とオレは苦笑いのリアクションをしながら、心の中で呟く。……スクアーロ、お前のところなら殺れたじゃん。
殺せんせーの暗殺の難易度一気に下がった。……下がってしまった。殺せんせーが殺されるだけならいい。問題は……ここの生徒達だ。間違いなく、殺せんせーの弱点は生徒達。ボンゴレの意向を真っ向から反対する奴は利用するに決まってる。それにここの生徒達は戦闘訓練を受けている。使い道はいくらでもある。……ボンゴレが守ってるからこそ、その道は百億より価値があると考える奴もいるはずだ。
ちゃんと気取られないようにしたオレは放課後にふつーに帰ったよ。みんなは暗殺計画を立てるみたいだから、頑張ってとは伝えたけど。あ、一応オレも誘われたよ。見届け人だから作戦を漏らすことはないと思われたみたいでさ。まぁオレが今日は殺せんせーはまだ殺されそうにないし、あいつのところに行こうかなーと思ってんだよねって言ったら、行ってらっしゃいと見送られたんだよ。……オレ、みんなにどんな風に思われてんだろ。
疑問に思われなかったのはいいけどさぁ……とボヤきたくなるのを押さえながら、オレは飛ぶ。XANXUSというより、ヴァリアーのところに、ね。
オレが報告したら、予想通りスクアーロは叫んだよ。そして頭が痛い事態になったことも察してくれた。
「まぁまだどれぐらい水に弱いか、わかんないんだけどさ。それにあの教室、結構うまくまわってて下手に横から手を出されると歪む。そうなると……」
最後までは続けなかったけど、スクアーロにもちゃんと伝わったみたい。わたしがもっと危うくなるって。
「まっXANXUSへの報告は頑張って」
言うだけ言って、オレは飛んだ。スクアーロが叫んでたのはきっと気のせいだよ。
着いて安全だと確認した瞬間にオレは奥底に沈み、わたしが骸に飛びついていたのを見守ってた。……にしても、なんで骸のところなんだろ。や、骸に会いたい気持ちはわかるから、そこは理解出来るんだけどさ。ただXANXUSじゃないの?とオレは思うわけで。すぐそこに居たじゃん?とオレは思うわけで。一瞬で移動出来るのはわかってるけどね。それとこれは別問題でしょとオレは思うわけで。
オレが奥底でツッコミばっかりしてると、わたしは骸に抱きつきながらも不思議そうにしてたよ。なんでわかんないのかな?って感じで。……やっぱオレにはわたしとXANXUSとの空気感は読めません!!
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この教室は本当にうまくまわってると思う。ただまぁ簡単に馴染めない子もいる。わかるけど……と警戒してるイトナ君の目を搔い潜って、オレはシロからお金を受け取ってる寺坂君を見ていた。
にしても、どこまでオレは見届ければ良いのかな。下手に手を出すと、その時点でオレは見届け人の資格を失う。シロって奴は気にくわないけど、あいつはちゃんと雇われて派遣された者なんだよ。裏の世界の住人じゃないしさ。鷹岡みたいにオレに手を出そうとしたら、いろいろ抜け道はあるんだけどなぁ。うーん、あの時にサボるんじゃなかったかな。とりあえず無事に方がついたら、烏間先生に圧力はもう一回かけないとね。生徒達に危害を加えると報酬は払わないよって。ただこれもやり過ぎると地球の危機と天秤をかけられちゃって自前で用意するなんて言われそうなんだよなぁ。あーもう、バランス難しすぎない!?……ボンゴレ、さっさと滅べ。
まぁ殺せんせーはオレの匂いを覚えたし、オレがこの教室に来た理由もわかってくれるからね。見届け人を切られも、こっそり見守ってればいいんだけどさ。ただ、そこまでするとオレの弱点とも思われそうなんだよね。そうなってくると、またややこしいんだよ。マフィアは男社会だからなぁ。殺せんせーに護衛する人達を引き合わせて去るってのが一番なんだよね。……そのかわり、殺せんせーが気に病みそう。
うーん、この世界を滅ぼした方が楽だよね。
……って、ダメだ、ダメだ。わたしにつられてると慌てて家に帰ったよ。つっても、屋根の上だけどさ。リボーン……とオレは泣きついた。女に優しいリボーンはオレに付き合って屋根の上で寝てくれた。
次の日、復活したオレはいつものように授業をうけて放課後をむかえた。あ、昼ごはんの時に起きた殺せんせーの粘液まみれは、もちろんオレは回避したよ。ヤバイと思った瞬間に、木の上で食べました。母さんが作った弁当がまずくなるからね。
みんなと違ってオレは制服のまま、プールへと移動する。みんなが配置に付いて寺坂君が改造された拳銃を撃とうとした、その一瞬だけオレは目を閉じた。
ドグァッという音と共にプールが爆破され、みんなが流されていくのをオレは見届ける。何人かは免れたみたいでオレの存在に気付いたのか、声をかけられた。オレなら、なんとか出来るだろって。
「これは殺せんせーへの暗殺の一手だ。見届け人のオレは手が出せない」
冷たいオレの言葉に、また得体の知れないものを見たような目をされる。さらにパニック中だった寺坂君にも聞こえてたらしく、知ってたのかと詰め寄られた。
「昨日、君がお金を受け取ったところもみてたよ。それがオレの仕事だから」
ガッと胸倉を掴まれたけど、オレが女だからなのか、それともただの八つ当たりと気付いているからなのか、プルプル震えたままで腕は振り下ろされない。その代わり、寺坂君がぶん殴られたよ、爆破音が聞こえてやってきたカルマ君に。
「わかってたことじゃん。オレ達と一緒だけど、一緒じゃねーって。で、なんでここに居るの?もしかしてサボり?」
「あはは。やっぱ君は最高だよ」
ここは任せたよとオレは移動する。わたしには悪いけどオレのわがままで、一発ぐらいもらってもいいかな、なんて思ってたのもバレてたみたい。あと今んところ、オレの超直感に引っかかってないのもバレてたんだろうなぁ。
オレが駆けつけた時には、殺せんせーはちゃんとみんなを救出していた。ただ助けあげた位置が悪かったみたいで、殺せんせーが本気を出せない位置にいる。特に原さんは枝にぶら下がってて危険だ。
殺せんせー用ナイフを、オレは左手でクルクルまわす。まだ超直感には引っかかってない。けど、もし反応した時はオレが殺す。もちろん賞金はシロとイトナ君と寺坂君に渡すよ。けど、手をくだすのはオレにする。まだその方が、わたしにもこのクラスにとってもいい結末だ。
なーんて思ってたんだけど、カルマ君が考えた作戦で寺坂君が起死回生の一手を打った。その後は怒涛の展開でさ。取り越し苦労だったよ、とオレは少し離れた位置でホッと息を吐いた。寺坂君もクラスに馴染めたみたいだし、今日はこのまま帰った方がいいかなと思ったんだけど、カルマ君がオレに指をさしながら言った。
「寺坂、まだ濡れてない奴がいるよ」
「……やってやろうじゃねーか。カルマ、作戦たてろ!」
「え?なんで?1人でやりなよ」
ブハッとオレはふいたよ。酷い裏切りをみた。
「それに俺が立てなくても、1人で出来るだろ。え?もしかして出来ねーの?」
「あーくそ!……さっきは悪かったな。…………てめぇも濡れやがれ!!」
ばしゃーんとバケツで水をかけられたけど、流石にオレは避けなかったよ。謝られちゃったしねぇ。
「あーあ、オレ制服なのに下着スケるじゃん。……エッチ」
「興味あるか!!」
真っ赤な顔してツッコミしたからね、みんなからイジられる格好のネタになった。でもまぁ多分これぐらいやり返さないと、寺坂君が気にすると思ったんだよ。
殺せんせーは笑った後、エロ本を渡そうとして寺坂君に暗殺を仕掛けられていた。良いオチかなと思いながら、オレもわたしも笑って見てたよ。
……あ、もちろん下着は見せてないよ。ちゃんと濡れる直前に制服の中を水着にかえた。めんどくさいことが起きるからね。