見届け人、来る!   作:ちびっこ

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見届け人の時間・5

期末テストの時期がやってきた。今回は総合点ではなく、教科ごとの成績で競わせるらしい。ただ同じE組でもオレとカルマ君は相変わらず総合トップを狙えと殺せんせーに付きまとわれてる。

 

「つってもさ、オレはふつーに進学する気はないし」

 

ぶっちゃけると、どんな悲惨な点数をとっても……というか、受験しなくても並高には合格する。そして授業を受けてなくても進級出来る、ヒバリさんの権力で。いやまぁ高校に行くかも悩むところだけどさ。わたしも学校生活は結構楽しんだみたいだし。片割れの方のオレが誘ったら、行くかなってレベルじゃない?つーか、それがわかってるからかヒバリさんからの圧力が凄いらしい。受からなかったらどうしよう……と真っ青な顔をしている。オレには融通しても、こっちのオレには融通せず自力で受かれってのがまたヒバリさんらしいよね。

 

「権力って怖いね」

「ソラさん、あなたはまだ学生ですよ!?薄汚い大人になってはいけません!!」

「や、振るってるのはオレじゃないし。というか、あの人も学生だからね。ガキの頃からいろいろ牛耳ってヤバかったけど、最近またヤバくなってきたよ……。ほんと、あの人どこ目指してるんだろ」

 

思わずオレは遠い目をする。いやまぁあれはあれで上手く回ってんだよ。オレも助かってるしとなんとか自分を納得させる。

 

「現実的な話、進学するとしたらあの人が牛耳ってるところしか無理なのは、殺せんせーが一番わかってるでしょ。そしてオレもわたしも普通の生活にそこまで興味ないの。あの人はフラッとオレに来てほしいから手を回そうとしてるって話なだけ。まぁあの人もオレがここに通ってる間にって動き出したから、高校に行かないって言ったらなんか違う提案をしてくるでしょ。暇だからってわたしがあいつの方へ入り浸るのは避けたいだろうしね。あれ?そう考えるとあいつのところも仕事持ってくるようになるの?依頼内容によってはオレらが受けることは今回で証明されちゃったし。……どうしてこうなった」

 

自分で冷静に分析した結果、頭を抱えることになった。モテモテですねぇと殺せんせーにニヤニヤされた。イラッとしたから、オレらの将来は安泰だし真面目にする必要はないね!と笑顔で言ったら、ちょー焦ってた。少しは気分が良くなったから、今回のテストについて話す。

 

「ってかさ、オレになんもメリットないんだよね。見届け人のオレが点数とっても、殺せんせーの触手破壊に混ざっちゃ公平じゃないから参加不可だし。その、沖縄リゾートだっけ。それも全く興味ないんだよね」

 

つーか、行きたくない。あそこの島は黒のマフィアがウロウロしてるところじゃん。オレの仕事が絶対増えるし、わたしも落ち着かない。復讐者と交渉して先に潰しちゃう?けどなぁ、出入りしてるマフィアの量が多いし、全部潰すってなったら面倒なことになりそうなんだよね。そりゃ出来なくはないけどさ、この教室に通ってる以上、目をつけられるのは良くないよね。

 

残念ながら殺せんせーはその情報を掴んでなかったみたいで、必死にパンフレットを見せてきた。みんなと沖縄ですよ!って。いやまぁ知ってたらA組との勝負の報酬にこれはどうかと、発破かけることはなかったと思うけど。みんなヤル気を出しちゃって、オレは殺せんせーに言えずじまいでいる。

 

「それでも今回はまじで興味ないの。オレもわたしも」

 

殺せんせーは打ちひしがれたようにガーンとなってたよ。

 

「ソラちゃんはあんまり欲とかなさそうだもんね」

「うーん、そうだね。家族が絡めば少しあるかなってぐらい。けど、満足したのか、執着もかなり減ったしなぁ……」

 

屋根の上以外でも眠れるようになったのはそういうことだろうし。なんとなくわかってるのか、並盛にいるオレは必死だよ。何せヒバリさんに受けてたったぐらいだし。その割には並高に行くことには協力的だけどね。や、理由はわかるけど。オレがオレらと一緒にいる時間が長くなるのはそれだからね。

 

「まっフラフラと生きてるんじゃない?だからそういう意味では殺せんせーが居なくなると寂しいだろうなぁ」

 

バミューダは7³を守ってるから動けないもんね。たとえ使える人が増えたとしても、何かに絶望して復讐にこだわってるでしょ。フラフラするのに付き合ってくれるわけがないしさぁ。たまにでいいのにね。けど、生半可な気持ちじゃ夜の炎なんて生まれないんだもん。条件が厳しすぎるんだよ。オレらが連れて行くのはまた違うしさぁ……。なんとなくわかってるのか、みんな頼まないし。や、シモンの聖地から出る時には送ってあげたけど、あれは別だからね。そもそも、あそこで戦うようになったのはオレのせいだしさ。

 

「……って、ごめん。オレらのことは気にしないでいいからね。暗殺成功させないとみんな死んじゃうんだからさ」

 

そんな重く受け止めなくていいからね!とオレは必死に訴える。転校初日にそんな死に方も悪くないと言った意味をすげー重く受け止められてる気がする。

 

「オレらのことを気にかけてる人はいっぱい居るから、気にしなくていいってば。それに暗殺に成功したら、フラっと君達の将来とか見届けたりしてるよ」

 

ボンゴレが頑張るだろうけど、オレの方でも気にかけるよ。それぐらいこのクラスのみんなをオレもわたしも気に入ってる。まぁ会うことはないだろうけど。

 

そのあと、恥ずかしいところは見せれませんねと殺せんせーが言って、みんなにテストを頑張るように発破をかけた。どの道を進みかはまだ決まってない人も居るだろうけど、学力があったことに越したことはないからね。みんなも通じたのか、テストに向き合ってたよ。その姿を見て、オレもわたしもニコニコしちゃったよ。教室全体の様子をみた殺せんせーもニコニコしてたよ。……オレに点数を取らせようとするのは変わらなかったけどね。

 

 

●●●●●●●●●●

 

中間テストの時と一緒で、E組は本校でテストを受けることになる。あー今回もしつこかったよと歩いてると、E組のテスト会場の前が騒ついてた。またケンカでも売られてるっぽい。飽きないものなのかなと思ってると、バッと道が開かれた。……え、なにこれ。

 

「随分ゆっくりと来たね。君にとってはこの学校のテストはお遊び程度なのかな、沢田ソラさん」

「えーと、人違いだよ!オレの本名は沢田ソラじゃないし!」

 

やっぱりそうなの!?とみんなからツッコミの念が届いたよ。というか、なんでここに浅野君が居るんだろうね。君、テスト一位狙ってるんじゃないの?遊んでていいの?

 

「……噂によるとE組は中間テストで50位以内を目指していたとか。その目標を達成出来たのは、赤羽君と君だけ」

「前日に範囲がかわるという嫌がらせがあったからね」

 

それがなかったら全員入ったんじゃないとオレは首を傾げる。つーか、なんでオレに絡むんだよ。カルマ君でいいじゃん。や、原因は理事長先生なのはわかってるんだけどさ。

 

「彼と一緒に特別コース受けてたけど、オレは目標ギリギリの50位ちょうどだったよ」

 

あははと苦笑いしてると、E組のみんなからは微妙な視線が届いたよ。オレが狙って50位を取ったことを知ってるから。

 

「先生の話では、君が記入したところは全て正解だった。5教科全て、ね」

「そりゃ間違ってないと思ったところだけ書いたからね」

 

のらりくらりと躱していると気付いたのか、ちょっとイラっとしたね。けど、それは一瞬だった。理事長先生と対等に話していたことはわかっていたから。

 

「……僕のためにも本気でやってほしい。君と一位をかけた勝負をしたいんだ」

 

オレがクラス目標には手を貸したから、情に訴える作戦に出たっぽい。あと、自分がイケメンというのもわかってるんだろうね。といってもなぁ、オレもわたしもこの子に情はないし。イケメンは見慣れてる。

 

「え、えっと……オレ、ちゃんと一位を狙うね。今回は君に免じて特別にね!」

「ありがとう」

 

とっても爽やかな笑顔で浅野君は去っていったよ。オレは頬を染めながら手を振って見送ってあげた。見えなくなった途端、めんどくさかったというオーラを出して、顔色も戻したけど。やっぱり!みたいな顔をみんなにされた。

 

「まぁ言っちゃったし、やるかなぁ」

「えっ!?本当に狙うの!?」

「オレはウソつかないってば」

 

困ったことになったと思いながらオレは席に座った。ちらっと見た限りではガン無視されたカルマ君は相変わらず飄々としてたけど、多分内心イラッとしてるんだろうなぁ。まっ頑張って一位とってね。

 

 

それから3日後、全教科のテストがかえってきた。

 

みんなのテストが返されて、A組との勝負には勝った。そして寺坂君達のグループの作戦により、家庭科も学年トップを取り全員で7本の触手が破壊されることが決定した。戦利品の内容も決定して、いえーいとクラスみんなが盛り上がってたよ。

 

「……あれ?そういえば、ソラちゃんは?」

 

思い出したようにカエデちゃんが言った瞬間、殺せんせーは崩れ落ち泣き始めた。

 

「……なにも泣くことないじゃん」

「泣きたくもなりますよ!!ソラさんが一位を狙うと宣言して、どれだけ先生は嬉しいと思ったか」

「や、ちゃんと一位とったじゃん」

「一位は一位でも、ワースト一位でしょう!!!!」

 

えー!?というみんなの反応をみて、オレとわたしは爆笑した。

 

「あー笑った、笑った。ただ、この後は補習地獄が待ってんだけどね……」

「なんでやったの!?」

「トップの人が捨身のギャグをしてくれって言うからさぁ」

「絶対違うよ!?」

 

浅野君、可哀想……とみんなが同情してた。えー?テスト当日に絡まれたオレの方が可哀想じゃない?

 

その日、放課後に職員室へ呼び出された。みんなに苦笑いされながら見送られ、出迎えてくれた烏間先生はため息を吐いてたよ。イリーナ先生はニヤニヤと笑ってたけど。殺せんせーはお茶を飲んでいた。

 

「理事長からの伝言だ。『沢田ソラさんには補習の必要はないでしょう』だと」

 

やったー!とオレは両手をあげる。理事長先生が話のわかる人でよかったよ!烏間先生はまたため息を吐いてたけど。

 

「カラスマ、どういうことよ。圧力でもかかったの?」

「違う。全教科に名前を書き忘れただけだからな。ちゃんと書いていれば、こいつは全教科満点で学年一位だ」

「ついうっかり」

「何がうっかりだ!ご丁寧に名前の欄に魚のマークを書き残して、よくそんな口が開けるもんだ……」

 

あちゃー、烏間先生が怒りMAXから急に脱力しちゃったよ。

 

「えーっと、ごめんってば。正式な記録で先にオレが勝っちゃうとさ、ダメかなって思ったんだよ」

「……赤羽業か」

 

当たりとオレは静かに頷く。別にふざけてやったわけじゃないんだよ。カルマ君はさ、オレの事をよく理解してくれてるけど、殺せんせーみたいに勝てなくてもしょうがないものとも思ってんだよね。まぁそれはクラス全体にも言えるけどさ。多分カルマ君が一番そう思ってる。中間だってあえて50位を狙ったの。範囲が変更されてるなんて思わなかったけど。

 

「適当にかわしても良かったんだけどさ。理事長先生が興味持ってるところを見ちゃったのもあって、彼がオレに頓着するのは避けられないし。今回のテストでカルマ君が彼の視界に入ってくれるのが一番良かったんだけどね」

 

まさかカルマ君の成績がここまで下がるとは思わなかったよ。そりゃ一緒にいる時間が長いのもあって、オレが一番殺せんせーの特別授業受けてるけどさぁ……。でも本当に殺せんせーの授業はわかりやすいよ。綺麗にまとめてくれてるし、あそこまでやってくれれば超直感でかなり絞れるんだよ。そこはリボーンの爆破学習のせい。危機感があったせいで超直感が反応する身体になってるんだよ。この先生の組み合わせは本当にヤバイ。オレどんどん頭が良くなってる気がするもん。並盛にいるオレのハードルもどんどんあがっていく。可哀想な、オレ。

 

「まぁ今回は特別って言った盾でオレは押し通すよ。手を抜かずに真面目にやったのは事実だし。後はカルマ君次第じゃない?」

 

発破をかけたんでしょ?と殺せんせーを見ると、もちろんというような顔をしてたよ。

 

「これではどっちが教師かわからんな……」

「なんでそこで私を見るのよ!カラスマ!」

 

そこは流してもいいと思うよ。烏間先生は自分も含めて言っただろうから。オレの意図に気付かなかったという理由でさ。

 

「まぁオレはこれからもほどほどにやるよ」

「いけません!ソラさんは真面目にするべきです!」

 

なんで?って言おうとしたけどやめた。オチが読めた。殺せんせーが意地になってるだけだ。烏間先生も察したのか、深いため息を吐いてたよ。ほんと苦労人でいい人だよね。

 

 

あ、もちろん終業式はサボったよ。絡まれるのがわかってて行くわけないじゃん。あと、殺せんせーが作ったしおりはちゃんと持って帰ってあげたよ。まぁみんなと別れたらすぐに飛ばしたけどさ。せっかくだからと片割れの方のオレに見せたら、なにこれー!?ってすげー叫んでた。オレはやっぱツッコミキャラだなと思った瞬間だった。

 

 

●●●●●●●●●●

 

夏休みに入って、オレは殺せんせーと避暑めぐりをしていた。生徒が来てるかもしれないから、毎日様子を見に帰ってるけどね。この前だって、岡島君が暗殺仕掛けてたし。トラップの種類はどうかと思ったけど、案外ちゃんと組めば行けそうな気がする。術師とやれば特にさ。やりたがる人がいるかはわからないけどね。術師ってプライド高いから。

 

その後は、岡島君以外が集まった当初の目的である売れる昆虫探しに戻った。すげー珍しいのが居たんだって。凄いらしいけど、オレからすればヒバードの方が謎だなと思っちゃうんだよ。すっげー頭いいし、大きくならないし、どうなってんだろ。あの時はみんな頭の上に乗ってただけだから、ヒヨコがいるぐらいにしか思わなかっただろうね。

 

ちなみにクラスメイトに会うたびに補習は?って聞かれたから、理事長先生が快くオレには必要ないって言ってくれたんだと答えてる。みんな、何したの!?みたいな顔をするよ。何もしてないよと笑顔で言うと、絶対ウソだという顔をされる。酷いよね。

 

暗殺旅行の前に、みんなが学校に集まるというからオレはそっちに向かった。エベレストは寒いし、嫌な予感もしないし、烏間先生の部下が生徒達のために見張ってたからね。多分オレがこっちに来れるようにと気遣ったんだと思う。相変わらず良い人だよと思いながらも、殺せんせーが隠れて特訓する気なのは黙ってる。見届け人だからね、そういう融通はしません。

 

「おーやってるねぇ。お土産、1人一個ずつ好きなの取っていきなよ」

「……満喫してるね」

 

殺せんせーほどではないよと渚君のツッコミを流す。そのままみんなの訓練を眺めておこうかなと思ったら、ロヴロさんと一緒に渚君に質問された。一番優れた殺し屋ってどんな人ですかって。目で会話して、先にロヴロさんが答えたよ。まぁよくある話だね、本名も誰も知らなくて、あだ名で死神って呼ばれる殺し屋なんてさ。

 

「オレは正反対だなぁ。超有名人。マフィアの遊園地とか行けば、バルーンとか飾ってもらえるぐらい人気者でもあるよ。まぁ変装技術とかもピカイチらしい。オレは見破っちゃうから実感はないけど、みんな騙されてるね。というか、そもそもの見た目が詐欺なんだよ。黒のスーツを着た子どもだもん」

「ええ!?子どもなの!?」

「いろいろ事情があって、何年も身体が小さいままだったんだ。最近はちょっとずつ成長しているよ。話を戻すけど、腕はやばいね。数ヶ月前にオレもそいつにいっぱい食わされたよ。や、でも虹を全員集合させるのはズルイ」

 

にじ?と渚君が不思議がってると、ロヴロさんは顔を手で覆って後ずさったよ。その反応でかなりヤバイ殺し屋というのが渚君にも伝わったっぽい。

 

「まぁオレが知ってる中での一番の殺し屋はそいつだよ」

「た、たしかに……。彼は超一流の殺し屋に相応しいかもしれない。しかし俺のように教育者になっていると聞いていたが……」

「そうそう。でも腕は落ちてないね。ちょー元気に暴れまわってるよ。一応、オレの先生だし元気に越したことはないんだけどさ」

 

ロヴロさんは納得したように頷いたよ。師匠が彼なら仕方ないみたいな感じで。まぁ記憶と経験を継承しただけだから正確には違うんだけどね。それでもあいつは背負って、オレを導こうとするんだよ。だから他の人にも言ってもいいかなって思ってんだよね。

 

「あれ?でも女の人に優しいんじゃなかったの?いっぱいくわされたって……」

「……逃げるとわかっていたから退路を絶たれただけだよ。先生が一肌脱いで、家族と再会出来たんだ」

 

オレが頬をかきながら言うと、渚君は優しい先生だねと笑った。素直にオレも頷いたよ。オレが女じゃなかったら、背中を蹴っ飛ばしていた。

 

「ふむ。彼ほどではないが、必殺技を授けてやろう」

 

構わないだろうとロヴロさんに視線を向けられて、いいよとオレは頷く。この人はちゃんとわかってるだろうしさ。案の定、渚君に教えたのは必殺技だけど、殺しの技ではなかったよ。

 

みんなが着々と準備してるし、そろそろXANXUSのところに行くべきかな。わたしからもいいよと返事が来たし今日の予定が決定。まぁ正確に言うとマーモンにだけどね。依頼をして、出入りしているマフィアがどこか調べてもらったんだよ。わたしがXANXUSを通して依頼したからウソでもないんだけどさ。

 

ちなみにマーモンになったのは消去法。いろいろあってわたしが話してもいいと、オレが許可を出したのはマーモンとルッスーリアだけなんだよ。ボスであるXANXUSを通さなきゃならないから、わたしが言うよってなって、適任はマーモンだったの。一応、XANXUSがその場にいたから、法外な額をふっかけられることはなかったよ。オレからすれば寝てんじゃないの?って感じだったんだけど、わたし曰くちゃんとXANXUSは聞いていたらしい。オレにはサッパリわかんないね。

 

 

●●●●●●●●●●

 

 

南の島についた途端、オレの超直感が反応し続けている。

 

こっそり烏間先生に聞いたら、防衛省内で問題が発生していて、さらに連絡が取れなくなった殺し屋達がいるらしい。後、烏間先生はこの島のことを知っていた。オレと一緒で止めるタイミングを失ったらしい。まぁ烏間先生は噂程度だったから半信半疑だったらしいけど。オレが確認したことで真実と気付いてしまったっぽい。だからちょっと睨まれた。なぜ黙ってたって感じで。オレがこの島に来るまで聞かなかったからね。この報酬に興味ないって言ってたじゃんっていえば、わかるか!って顔された。結局いろいろと飲み込んで、俺の方でも警戒はしておくと言って頭をポンっとされたよ。まじ、良い人。

 

着々とみんなが殺せんせーの暗殺準備を終わらせていく。今のところ、問題は起きていない。けど、オレの超直感は船に乗った時にキツくなった。つい顔に出ちゃったのか殺せんせーがオレのところにやってきた。

 

「ソラさん、どうかしましたか?」

「んーちょっと頭が痛い」

 

日焼けして真っ黒な殺せんせーは慌ててオレに体温計をくわえさせ、氷の入った袋を頭に乗せた。好きにさせたけど、当然平熱だったよ。それと、みんなびっくりしてるからね。それにそんな動くと船酔いするよ?夕飯のために船上に移動したところなんだからさ。

 

「そういうのじゃないってば。それに野宿生活中で雨ざらしになっても風邪ひいたことなかったしさ。結構身体イジられたのもあって頑丈なんだよ」

 

いやまぁ女だから体力は少なめだけどさ。一般人と比べたら多いし死ぬ気の炎で強化すれば関係ないしね。なんて思ってたら空気が凍ってた。

 

「……や、ごめん。余計なこと言った」

 

雨ざらしぐらいならまだいいけど、身体イジられたのは余計だったね。凍ってる間に、オレはフラッと夕食会場から出て行った。ま、タイミングは良かったかなと思いながら船の中を歩き回る。そんなオレに付いてくる気配がしたから声をかける。

 

「ご飯食べ損なうよ?」

「……お前もだろ」

 

やっぱこういう時に来るのは烏間先生だよね。殺せんせーはみんなのフォローしなきゃいけないし。イリーナ先生は想定の範囲内だろうし、声をかけるとか不器用だしね。まぁそれはこの人もだけどさ。何と声をかければ良いかと困ってそうだし。ただ裏の世界をちょー可愛いレベルでも知ってるイリーナ先生は来ない、そういうものだと思ってるから。表社会で生きている烏間先生は来ちゃうんだよね。

 

「……すまなかった」

 

ぶっと思わずオレはふいた。オレもどうしよっかなーなんて思ってたけど、烏間先生が真面目すぎて笑うしかなかったよ。別に嫌味のつもりじゃなかったんだよ、防衛省は頑張ったほうがいいとか言ったけどさ。そもそもわたしが赤ちゃんの時ってこの人何歳だよ。ちらっと見れば、烏間先生はよくわからんという顔をしていた。想定外の反応だったんだろうね。

 

「いやさ、クソ親父が謝らなかったことをオレもわたしも評価したんだけどさ。すげースッと入ったよ、烏間先生の謝罪はさ。だからそれで充分だよ」

 

甲板に出たオレは振り返って烏間先生を見る。

 

「オレもわたしも烏間先生のそんなクソ真面目なところ好きだよ。だから殺しにきて良いんだよ。オレへの暗殺任務も来てんでしょ」

 

烏間先生は、カッと目を見開いた。真面目で良い人過ぎるんだよね、この人は。

 

「日本政府は相当圧力がかかってるから、殺せんせーみたいに大規模なことは出来ない。けど、どう考えてもオレはヤバイ奴じゃん。でもね、考えが甘いんだよね。裏の世界でもオレはすげーヤバイ奴なの。ただみんな殺しちゃってるから、オレの実力は知れ渡ってなくて数は減っても途切れることはなかったの。この任務を受けたことで、手を出しちゃヤバイ奴って実力者であればあるほどわかったと思うよ。まぁそれでも血筋の問題で仕掛けてくる奴は居るだろうけど」

 

それは別問題だよねとオレは続ける。一矢報いるとか、そういう切迫詰まってる奴がすることだからね。あとはまぁ恨みとか。

 

「ただなぁ、表の人間はなーんもわかってないんだよ。オレの実力も、オレがどうしてこの教室に来たか教えたのにわかってないんだよ。だからオレを唯一殺せる機会がありそうな烏間先生に命令する。板挟みになってるんでしょ。だったらさ、殺しにきなよ。オレは死なないよ。烏間先生が出世とか興味あるのかわかんないけど、傷が少ないのはどう考えてもそっちでしょ。それに烏間先生はこの教室に必要だし。というか、オレもわたしも他の人が仕掛けてきたら殺しちゃうんだよねぇ」

 

オレらのためにも受けてほしんだよねと首を傾げると、烏間先生はふぅと大きな息を吐いたよ。

 

「鷹岡の時に俺は言ったぞ。プロとして最低限の報酬は当たり前の中学校生活を保障することだと。当然、見届け人であるお前もその中に入っている。お前はE組の生徒だからな」

「……わざわざ苦労する道を選ばなくて良いのに」

 

真面目な性格がそっちに転んじゃったかぁとオレは空を見上げる。ほんと、こういう日はいつも綺麗な夜空だよ。

 

「烏間先生がそう決めたならオレからはもう何も言わないよ」

 

なんて言いながらオレが服を脱ぎ出したから、烏間先生はギョッとした。や、中にちゃんと水着きてるからね。

 

「ちょっと仕事してくる」

「仕事……まさか!」

「そ。ルールを破ったものが来たみたいでさ。この船ごと沈めて助けようとする殺せんせーをドスンってところかな」

 

ついでにオレも狙ってるかもしれないけど。

 

「……シロと同じようなことをする気なのか。だが、ここは普通の海だ。泳げるものがほとんどだぞ」

「言ったじゃん、ルール破ってんの。ったく、あの子達が考えた暗殺計画の場所から離れてて本当に良かったよ。表の人間がここら一帯の海に浸かれば、生命活動を停止するぐらい弱っちゃう。だから烏間先生も追いかけて来ないでね。助けるの大変」

 

じゃぁねとオレは海の中に飛び込む。殺せんせーの鼻とオレが使うメスにも警戒したんだろうね。そしてクラスのみんなが船に居て陸から離れたこのタイミングを狙った。殺せんせーは水が弱点だしね。この船に乗ってから超直感の反応がキツくなったし、どこかなーと探してたんだけど、まさか海の底だったとはね。や、ある意味正しいのかな。クラスのみんなが立てた暗殺計画のスナイパーも水の中に潜る予定だしね。

 

タネがわかったら後は簡単だった。予想通り数人がかりで鎮静の炎を浴びせてたけど、オレは体内でちゃんと身体強化してたし。そのまま飛ばして処理したよ。流石にここで殺しちゃうと血生臭いだろうからね。マーモンの情報を元にファミリーを割り出せたから、ヴァリアーに連絡して終了。

 

電話に出たのはルッスーリアで報告したら、流石ボスだわ〜という返事がかえってきた。

 

「もしかして、準備万端?」

「そうねぇ。ボスの合図待ち状態ね。私はお留守番よ」

「あーごめん。オレの相手に選ばれたのね」

「気にしなくていいわ〜。ボスの命令だもの」

 

滅多にない命令だから、嬉しそうで本当に気にしてなさそうだね。というか、あいつ動いたんだ。いやまぁボンゴレに敵対したからなんだけどさ。それでも普段なら確定してからスクアーロが動くでしょ。今回はあいつが指揮したっぽいし。うーん、この子のためかなと思ったら、わたしがテレたのか頬が熱くなったよ。

 

「じゃ、命令した本人は寝てるの?」

「スクとお出かけよ〜」

 

ふーんと返事をしつつ、これはまだ何かあるなと超直感を使わなくてもわかった。まぁ全部話せとは言えないしね。あいつはわたしのために動いてくれてるみたいだし。ルッスーリアにちゃんとお礼はしたけど、それはボスにしてだってさ。たしかにと思ったオレはわたしに声をかける。オレからしても何言ってんだコイツみたいな顔されるだけだしね。わたしからは嬉しそうに了解の返事がかえってきた。

 

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