見届け人、来る!   作:ちびっこ

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見届け人の時間・6

何事もなかったように甲板に顔を出せば、烏間先生はすげーホッとしてた。オレからすれば、この人が飛び込んで来なかったことにホッとしたよ。特に会話もなく、オレは服を着なおす。なんとなくそのままの流れで、夕食会場に戻ったよ。まぁオレは髪がまだ濡れてたから、拭きながらだったけど。

 

部屋に入った途端、殺せんせーが酔いながらも駆け寄ってきたよ。うーん、血の匂いが残ってたっぽいね。ちゃんと海で流してきたんだけどなぁ。

 

「ソ、ソラさん」

「ちょっと頭が痛いのをなんとかしようと思ってさ。海に入っただけだよ」

「ワイルドすぎない!?」

 

渚君のツッコミに、思わず笑ったよ。正しい意味を理解した殺せんせーはなんも言えなくなって、烏間先生はため息を吐いてたけど。観察が得意な渚君が感じ取ってしまったのか、不思議な顔をしたから誤魔化すように声をかける。

 

「オレの飯って残ってる?」

「えっ、うん。もちろん」

 

みんなにありがとうねと声をかけながら、美味しくいただいた。あ、烏間先生の分もちゃんと残ってたよ。殺せんせーが食べようとしたらしくて、みんなが一品ずつあげてそれで我慢してって言ったんだって。多分オレを追いかけたのを知ってるからだろうね。珍しく烏間先生がフッと笑ってお礼を言ったよ。なかなか見れないのもあって、みんなちょっとテレてたよ。殺せんせーとイリーナ先生はグヌヌってなってたけど。

 

食後は計画通りに殺せんせーの暗殺が始まる。正直、オレは今回すげー悩んだ。見届ける位置をね。下手な場所に居ると邪魔しちゃうことになっちゃうんだよ。や、オレの超直感では失敗するのはわかってるよ。けどね、それを悟らせちゃ見届け人として失格でしょ。かなり良いところまで行くのはわかってるしさぁ。オレが余裕でいると殺せんせーが油断して、もしかしたら成功するかもしれないレベルだからね。超難しい。オレが居る位置で狙撃ルートがバレるわけにはいかないしさぁ。

 

ってことで、散々悩んだオレは水の檻ができるまでは殺せんせーと一緒にいて、律さんが来たら彼女の足元に居ることにした。律さんはサイドからの攻撃しかないから空いてるからね。それにデータのために映像を撮るらしいから、律さんは良い位置に居るんだよ。さらに一斉射撃は律さんから始めるのもあって、タイミングもいいんだ。もちろんみんなにもちゃんと許可をもらったよ。

 

第一弾である殺せんせーへの精神攻撃。映像を用意してたのは知ってたけど、オレもこれは初めて見る。

 

「うーん、これは酷い」

 

見届け人なのに思わず口にして、精神攻撃しちゃったよ。殺せんせーはそれどころじゃないから助かったけど。当然、オレも殺せんせーの行動は知ってたよ、見てたし。それをわかってるのか、ナレーターの三村君の声で、女子生徒に見られてるとわかってるのにやるゲスな教師とか入れられてた。撮ってることを知ってたオレは当然映ってないけどね。やらかしてるのは散々見ている。けど、まとめて見ると改めて酷いなと思った。わたしはちょー笑ってるけど。

 

1時間後、殺せんせーはグッタリしてたよ。満潮で触手が海水を吸ってることにすら気付かないぐらいに。7本破壊できる権利を持つ子達が立ったと同時にオレも椅子から立ち上がる。オレも動かないといけないからね。疑問に思われないこのタイミングにしたの。

 

7本の破壊と同時に小屋が壊れ、新たな檻が完成する。破壊できる権利を持つ子達は、水の檻のギリギリまで後ろに下がって撃つ準備を始める。オレも律さんが出てくる場所へと移動した。ちゃんとゴーグルはつけたよ。水が飛んでくるから見えなくなると困るし。

 

とどめを請け負った狙撃手の2人の攻撃が殺せんせーに当たる瞬間、オレは思った。まーだ隠してたんだねって。そして再びオレの超直感が反応し始めて思わず眉間にシワが寄った。

 

●●●●●●●●●●

 

殺せんせーもこの完全防御形態は使いたくなかったんだろうね。殺せんせーが身動きできなくなるんだもの。オレが今日一回やりあってるのを知ってるしさ。オレに負担がかかるとわかってでも、手を抜けなかったんだよ。それだけ本気にさせたのはこのクラスのみんなだ。オレもその頑張りに応えらなきゃね。

 

だからと言ってこれは予想外だったよ。10人……いや、11人が発症ね。タイミング良く烏間先生のケイタイに電話がかかってきたよ。それも非通知設定。烏間先生も察したのか、お前の仕業かって言ってるよ。オレは耳をすませて声をひろう。

 

「烏間先生」

 

オレが名前を呼んだことで察したらしい。つい最近、生徒達に危害を加えると報酬は渡さないよってオレが圧力かけたからね。烏間先生もそれをここでもう一度伝えたけど、殺せんせーを連れてきたらちゃんと解毒薬は渡すから問題ないだろという強気発言が帰ってきた。オレは思わず眉間にシワがよったよ。一度対峙したのもあって、オレが手を出せない範囲をしっかり理解している。

 

電話を切った烏間先生にこっそりと視線を送る。それだけで察してくれた烏間先生は場所を移動して、みんなに状況を説明した。

 

「それで……監視カメラがあると視線を送ったんだ。お前は今回こっちの肩をもってくれるんだな」

「防衛省が見逃してくれるならそのつもりだけど」

 

そう言って視線を向ければ、烏間先生は頷いたよ。許可がもらえたからオレは口を開く。

 

「まずオレの予想じゃ、一枚岩じゃない」

「なに?」

「タイミングが良すぎるんだ。まずオレの直感は別の方に反応していた。それは烏間先生も知ってるよね?」

「……ああ」

「それに紛れ込ませる形でうまく感染させた。けどまぁ、はっきり言うけど命に関わるレベルじゃない。みんなこんな熱を出してるけど、たいしたことはないと思う」

 

みんなが希望を持つようににオレを見た。けど、オレはややこしいことになったのは変わらないよとため息を吐く。

 

「ソラさんの直感をよく知ってる人物が別にいるということですか」

「そういうこと。さっきの電話の相手は本当にヤバイものに感染したと思って、オレに見届け人として動くなと牽制している。まずここで矛盾が起きている。このまま無視ってもいい状況なんだよ。けど、タイミングが気にかかった。あまりにも上手すぎる。そしてオレの直感は殺せんせーがその形態になったタイミングで警告を出している。まだ危機的な状況を脱していない。感染が原因なら一度おさまったことが説明できない。また別だ」

 

少なくとも三枚はあるとオレが伝えたかったのはわかってくれたみたい。

 

「一番隠れてる奴の敵の狙いは何だろうね。とりあえず……捕まえようっと」

 

烏間さんと呼びながら現れた人物を組み伏せる。

 

「なにを……!園川!!」

「いえ、ソラさんが正しい!」

「本当に幻術に強いんだね、殺せんせー。この人、そこまで下手じゃないよ」

 

なんて言いつつ、ゴキッとオレが右腕を折ったら、痛みに耐えかねたのか幻覚が解けた。全く違う体格である男に変わったことで、みんな声を失っていた。唖然としてる間にさっとリングを抜き取る。

 

「ちょっとわたしの才能をナメすぎたね。この子達が感染できたから、そこまで直感を警戒するほどじゃないと思ったのかな」

 

まぁどっちでもいいけどと思いつつ、グサリと左の手のひらにメスをつきさす。血が出たせいでヒッと何人か声を漏らしたけど無視し、オレはファミリーの名をあげていく。ペスカファミリーといったところで、血の出る量がかわった。それは本人にもわかったみたいで、舌を噛もうとしたから半日は起きないように神経を麻痺させた。うーん、もうちょっと情報が欲しかったんだけどなぁ。それもさっきと別のところだよ。たしかマーモンの話によれば、ボンゴレをよく思ってないところだったっけ。

 

「……沢田ソラ」

「聞きたいことがいっぱいなのはわかるよ。けど、ちょっと待って。今思い返してるの、オレと殺せんせーは彼女と最後にいつ会ったっけ?」

「先生はディナー後から会ってません。先生と一緒に行動していたソラさんも似たようなものでしょう」

 

ハッと烏間先生は息をのんだ。そう、ずっと偽物じゃなかったんだよ。

 

「監視カメラに映らなくなったから様子を見に来たってところかな」

「ええ、おそらく。ですから、時間はどれほどあるか……。烏間先生は彼女に何か指示を出していたのでしょうか。先ほどニセモノの彼女は烏間先生に呼びかけてましたから」

「あ、ああ……。日本政府へ問い合わせを頼んだんだ。お前も知ってるだろう、あそこの山頂のホテルは国内外のマフィア勢力やそれらと繋がる財界人が出入りしている。政府との繋がりがあるらしく、うかつに警察も手が出せないところなんだ」

「ふーん。つまりニセモノだった園川さんがオレらに烏間先生の頼まれごとを報告して、うまく抜け出すまでしか時間がないってことなんだ」

「そうです。ですから、それを逆手に取ります。律さん、そこにある監視カメラの映像で園川さんを映すように偽造してください。出来れば看病で忙しく抜け出せないような感じで」

 

カルマ君もだけど、殺せんせーも頭の回転はやいね。それナイスアイデアだよ。オレを騙せる自信もあっただろうし。

 

「腕がいいのが幸いしたね。優れた術師じゃないと監視カメラを誤魔化すほどじゃないもん。機会は少ないって言っても、園川さんの映像データは律さんが持ってる」

「はい。お任せください」

 

なんとなくでも察したのか、体調を崩している人達を監視カメラが映る場所で休ませようとみんなが動き出した。その間にオレはルッスーリアに報告をする。ベスカファミリーのアジト近くにはマーモンが待機しているらしい。え?まじ?ってなったオレに、ボスだものとウキウキと返事が来た。ちなみに今のところ幹部でハズレを引いてるのはレヴィだってさ。XANXUSの命令で誰よりも張り切ってそうなのにね、焦れったくなってそう。や、でもマーモンを配置してくれたのは助かった。

 

「ほんと、ヤル気を出せば結果を出すね。悪いけど、気付かれないように内部探ってくれる?ちょっとでも情報が欲しいんだ。別料金払うからさ」

「いらないわよ〜と言いたいところだけど、あなた達が納得しないものね。マーモンちゃんに依頼って形でお願いするわ」

 

そうしてとオレは電話をきる。さて、烏間先生の方針は決まったかな。

 

悩みに悩んだ結果、烏間先生は園川さんを助けに行く決断をした。つっても、最初は生徒達を危険な目に合わせるわけにはいかないから、諦めかけてたんだよ。だけど、その生徒達に説得させられた。律さんが大活躍したのもあるけどね。地上のホテルの見取り図はオレも入手してたけど、ハッキングはできないから。オレ1人で行くっていうのもあったんだけどねぇ、それは嫌らしい。まぁみんなの気持ちを汲み取って殺せんせーが作戦を立ててくれた。

 

「うん、オレもその作戦ならいいよ。その感染を狙った敵の方が大したことはないだろうしね。気付かれないのがベストだけど、バレても反抗しただけに見えるだろうし、背後にいる奴も騙せる。みんなが頑張ってる間にオレが園川さんを救出しておくよ」

「……頼む」

「そんな心配しなくても大丈夫だって。直感では園川さんに今のところ命に別状はないだろうし、オレは死なないよ」

 

それより……と渚君に視線を向ける。

 

「あんまり言いたくなかったけど、今伝えた方が衝撃が少ないから教えるよ。多分あいつは渚君に恨みを持ってる」

「僕に……?」

「うん。だって、あの電話の主は鷹岡明だから」

 

鷹岡……!?と衝撃を受けてるみんなにオレは視線を巡らせ、口を開く。

 

「殺し屋も何人か雇ってるだろうけど油断禁物だよ。1人は薬をすり替えてくれた人物がいるけど、薬を操る奴とは限らない。そしてそいつも殺さないようにと思ってるぐらいで、間違いなく戦闘不能状態にはしようとする。それがプロだからね、ナメてかかると一瞬だよ。行くっていうなら、オレが彼女を救出できるまでは時間稼ぎしてみせてよ。自信がないなら残って……足手まといだ」

 

ピシッと引き締まって、顔をあげた。鷹岡明のことで動揺していた渚君も。

 

「ヌルフフフ。先生のセリフを取られてしまいました」

「や、殺せんせーは重要な役割あるからね。烏間先生と一緒に指揮しなきゃいけないしさ」

 

そう言ってチラッと見れば、わかってますというような顔をされた。オレじゃなきゃ倒せない相手が来たら瞬時に連絡してくれるなら大丈夫だね。超直感が働いた時に、オレはどっちに飛べば一瞬悩むんだよ。動けない子達がここに残るからね。ってことで、誰かにケイタイ貸してと頼んだ。オレのケイタイに律さんは入ってこれてないからさ。感染して動けない神崎さんが貸してくれることになったよ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

オレも侵入ルートは一緒で裏口から入る。や、飛んでも良かったけどね。ギリギリまでは一緒に行くよ。崖を目の前にしてもイリーナ先生以外、無理とは言わなかったよ。まぁ先に作戦を立てた時に見せてたしね。行けなさそうなイリーナ先生は烏間先生が運んだ。オレでもよかったんだけどね、烏間先生の方が嬉しそうだから声はかけなかった。というか、オレ結構鈍いのにわかりやすい人多いよね。わたしもすげー深く頷いてた。オレにバレるって相当だよって感じで。

 

裏口からホテルへ入れたのはいいけど、非常階段に行くにはロビーを通らなきゃいけない。どうしよっかなぁと思ったら、イリーナ先生が「何よ、普通に通ればいいじゃない」と言った。何かいい作戦あるんだろうね。視線の動きからピアノの演奏者のフリをするとわかったオレはパシッと手を掴む。

 

「私だってプロよ」

「わかってるって。念のため、こっちを付けて行って欲しんだよ」

 

そう言ってオレがネックレスを見せると、ギョッとされた。うん、すげーいい石だよね。オレもそう思う。

 

「何か意味あるのか?」

「あいつが動いてるって聞いたからさ。こっちに来てそうな気がするんだよね」

「……えっと、ソラさんの言うあいつってマフィアで暗殺部隊のボスだよね……?」

「そ。でさ、あいつが所属してるマフィアは、ドラッグとかそういうの全部禁止しているマフィアなの。だから多分ここをぶっ壊す」

 

はぁー!?みたいな顔をされた。みんな声をよく我慢したね。殺せんせーはひぇぇぇ……って声漏らしてたのに。や、誰かわかってるから怖いんだろうけど。

 

「まぁ文字通りぶっ壊すんだよ。オレの予想じゃ、最初に景気付けにロビーを半壊させる。あいつ、忍んだりしないから」

「あ、暗殺部隊なのに……?」

「忍べるだろうけど、性格的にコソコソとか無理。これでも一般人を逃す時間も作ってんの。あいつはマフィア界では超有名人だから、あいつが来た時点でここに出入りしているマフィア達は終わるんだ。ワガママ王が気にくわないってだけで潰すから。だから逃げても意味ないって、マフィアだからこそヤケクソ気味に仕掛けるんだよ。あいつは人数とか関係ないからさ、ザコが何人いても一緒って感じで終わらせる。で、あいつに仕掛けたから本拠地もろともぶっ壊し確定」

 

つーか、オレに仕掛けた時点で確定してる。オレを雇ったのはヴァリアーを経由してるけどボンゴレだからね。だけど、あいつはわたしのために動いてくれたんだよ。わたしはボンゴレが嫌いだからさ。理由づけを変えてくれようとしてくれてるんだよ。合図待ちってそういうことでしょ。

 

「まぁマフィアの取り壊しとかどうでもいいんだけど……あいつが来る前に早く助けないと園川さんが巻き添えで死ぬんだよね。攫ったのはマフィアっぽいし。あいつ、人質もろともぶっ潰すからさぁ」

 

味方のようで味方じゃなかったーー!?みたいな顔をされた。や、あいつはわたしがいてもぶっ放してくるよ。わたしなら避けれるってわかってるからさ。ある意味平等だよ。超実力主義者なの。

 

「で、あいつもオレと似たような直感持ちだからさ。なんとなくイリーナ先生には当たらないように最初は避けると思う。ただ視界に入ってからはわかんないからさ。これ、あいつがわたしにくれた宝石だから撃つなよっていう目印になる。ただ、宝石に目がいった後に外せとか睨まれたりしたらすぐ外してね。首から上をなくして取っちゃうだろうから」

「なんてものを渡そうとすんのよ!?」

 

イリーナ先生の小声ツッコミに、確かに……みたいな顔をみんなしていた。それでもイリーナ先生はネックレスをつけて、ロビーにあるピアノへと向かって演奏し始める。警備の目をイリーナ先生に向けさせてオレ達は非常階段へと進んだ。

 

「いい腕だったねぇ。今度お金払ったら聴かせてくれるかな」

「ソラさんでも真似出来ませんか?」

「そりゃ色仕掛けは出来なくはないけど、スキを一瞬作る程度だよ。潜入技術ならオレはイリーナ先生に勝てないね。伸ばした技術が違うんだもん」

 

殺せんせーはわざと聞いたんだろうなぁと思いながらも返事をした。烏間先生もイリーナ先生の腕は認めてるから、甘く見ないようにと釘をさしたよ。

 

二階についたところで、オレはみんなと別れた。別れた途端、律さんには上にあがる階段はここにしかありませんよ?って言われたんだけどね。オレが行きたいのは地下なんだよと教えれば驚いていた。

 

「実はさ、きな臭い噂もあったしオレの方でも雇って調べてたんだよ。地下に続く道を見つけて専用ICカードも奪えたのに、入れなかったんだ」

「監視カメラに移るからでしょうか?」

「ううん。ただ単純に腕力が足らなくて。だから誰か出入りするのを待ってたんだけど、先に期限が来ちゃったんだよね」

 

マーモン、ブツブツと怒ってたなぁと思い出す。まさか扉が重くて開けれないとはオレも想定外だったよ。マーモンも一般人よりは力があるのにね。換気のためのところも網がかかってて、壊せれば入れるけど幻覚を使って騙す維持費は別料金だからやめたみたい。つーか、そもそも見取り図はマーモンのサービスだったし。オレが頼んだ依頼は出入りするマフィアがどこか調べて、だったからね。調べてる内に何かあるのはわかったから、探ろうとはしてくれたんだよ。扉の向こうに人の気配はしたから、合図でもして開けてもらうんじゃないかっていうのが予想だった。その合図がわかんなくて騙せなかったんだけどさ。ちょっとでも扉が開いたらマーモンの独擅場だったのにね。騒ぎを起こすのは依頼主であるオレの意向とはズレちゃうしさ。出来る範囲で頑張ってくれたんだよ。

 

まぁ入れなかったからさ、流石にどういう場所か目にしないとオレも飛べなくて。みんなが向かってるルートは写真付きでくれたところだから、いつでも飛べる。どこにいるか場所さえわかればってことで、律さんを連れてきたの。まぁ会話はしてるけどポケットに入れてカメラに映らないようにしてるけど。あ、ちなみにみんなと別れたところで着替えたよ。気をつけるけど血で汚れるかもしれないからね、正体隠してた時の服装にした。手袋もしてるしさ、黒だしちょうどいいんだよ。久しぶりに仮面もしよっかな。

 

「あ、そうだ。律さん、この暗殺教室が終わったらオレらと組まない?」

「私と……ですか?」

「うん。卒業後、予定ないでしょ。このままE組のメンバーのサポートとかしてさ、あの子達に何かあったらオレに連絡してよ。場所さえわかれば、いつでも駆けつけれるからさ。悪くない提案だと思うんだけど」

「……私に決定権はありません」

「んー、そうかなぁ。たとえば軍事目的に使われるなら、律さんは拒否してデータを壊す気がするけど」

「……はい」

「やっぱり。そこでさ、壊す判断されても律さんならネットに逃げれるでしょ。まぁそれでもいいんだけど、オレなら本体ごと攫っちゃえるよ?愛着とかあるだろうしねぇ」

 

……あれ?返事がないね。ヒョイっとケイタイをポケットから取り出す。律さんは驚きすぎてフリーズしてたよ。つっても、動作が止まったっていう意味じゃなくて、パチパチと瞬きを繰り返してるっていう意味ね。

 

「んーっと、オレの周りにメカに強い人がいるしさ。律さんの意思で動かせる人型タイプのロボットも作れるよ。そりゃこっちの世界に巻き込むのは悪いとは思うけど、ちゃんとE組よりにするから。進路の候補の1つに入れてくれれば嬉しいな」

「はいっ」

 

うん、いい笑顔で可愛いね。まぁまだ組んだわけじゃないから見せないよと声をかけてポケットに戻す。不満がないのか、またいい返事がかえってきたよ。

 

そうこうしてる内に問題の扉が見えた。確かに重そうな扉が幻覚で隠してあったよ。今まで話しながらでも大丈夫だったのは、律さんが監視カメラを乗っ取ってくれてるからだったけど、この奥からは厳しいみたい。敷地面積からいって扉を開けるとすぐにエレベーターがあると思うんだよね。オレならこの扉を開けられそうだけど……しばらく悩んで、律さんに外からの監視カメラも乗っ取ってる?と確認した。答えはイエスだったから、オレは外へ飛んで窓枠に捕まる。

 

そのタイミングでルッスーリアから連絡があった。

 

「ナイスだね。もうちょっと後だったら出れなかったよ。今から地下に侵入しようとしてたんだ」

「そっちも楽しそうねぇ」

 

なんて軽い世間話をした後、マーモンからの情報を受け取った。改造死ぬ気弾を大量に発見したんだって。あの重そうな扉を開けれる奴がいる理由がわかったよ。そっちにあったのは全部幻覚ですり替えたらしい。当然こっちにもあるだろうし、ここで作ってるんじゃないか、だってさ。見覚えのある見取り図の資料があったんだって。やだやだ、物騒だねぇ。

 

というか、改造死ぬ気弾で思い出した。オレ、最近バミューダから聞いたよ。その弾を開発するのは別にいいんだけど、その弾を使って善良なマフィアを襲ったらしい。出回ってるせいで、どこのマフィアが襲ったかわからなくて面倒とか言ってたような。ここで開発してるなら購入者リストもあるかもね。せっかくだし、送ってあげよっと。

 

電話を切ったオレは殺せんせーに警戒度を2ランクぐらいアップしといてと律さんから伝えてもらった。向こうはカルマ君が2人目の暗殺者と対峙中らしい。電話してたのもあって、オレより進み具合はやいね。ただ1人目の時に烏間先生が薬のせいでフラフラなんだって。まだ大丈夫っていうからその言葉を信じて、オレも仮面をつけて侵入開始。

 

エレベーターが通ってると予想した外壁をちょっとだけ飛ばしてみた。やっぱオレ、復讐者より使いこなしてる気がする。うーん、超直感と空間把握の相性が良すぎるんだよ。夜の炎を使った早着替えをやり始めた時も、復讐者になんとも言えないような目で見られてたもん。や、目は見えてなかったんだけどね。そこは雰囲気で。

 

「騒がしくなってる?」

「私が確認した限りでは変わりありません」

「ありがとう、助かったよ」

 

少しでも中が見えたらこっちのもんだよねとオレはヒョイっと覗き込んで飛んだ。

 

「侵入成功っと」

 

エレベーターを吊り下げるワイヤーを掴んで、オレは滑り落ちていく。手袋して正解だったね。まぁ夜の炎で何度も飛んでもよかったけどさ。下に行けば行くほど、炎を感知されそうだからね。これがベストかなぁって。

 

トンッとエレベーターの箱の上に着地する。

 

「ここからはスピード勝負かな」

 

マーモンが探った限りでは階段はないみたいだし、ルートはここしかない。まぁ改造死ぬ気弾が出回ってるなら、エレベーターとか関係なくなっちゃうんだけどさ。オレが大っぴらに炎を使えば、こっちに寄せることは出来るはず。ただその分、向こうも危険になる。そりゃ仮面してオレの顔は隠してるけどさ。さて、どうしようっかなぁと思ったら、向こうも行き詰まったらしい。クラブのようなところだから女子だけで策を練って突破させようって案もあったけど、さすがに殺せんせーと烏間先生から離れるのはこの状況では危険すぎるという判断で止まったんだって。術師とかと出会ったら終わりだもんね。

 

だからオレがひと暴れしたタイミングで行くんだって。オレからすれば、もう離脱してほしいんだけどね。ただ鷹岡明を一発ぐらいはやり返さなきゃ気が済まないらしい。まぁ薬を入れ替えてくれてなきゃ、死んでたかもしれないしね。気持ちはわかるし、オレは止めなかったよ。今止めるなら最初の時に止めてる。

 

「……ん。あいつが来たっぽいってわたしが言ってる。いいタイミングでくるよ、ほんと。なんとなくわかるみたいだから、あいつのタイミングと合わせるよ。そっちもパニックになるだろうから気をつけてね」

 

また殺せんせーがひぇぇぇって言ってるみたい。どんだけ、あいつ怖いの。や、たしかに怖いけどさ。まぁ殺せんせーが嫌がってもあいつは止まんないからね。もう後戻りはできませんってことで、死ぬ気の炎で身体を強化してぶん殴る。派手に扉をぶっ飛ばした。

 

「悪いね、死んでくれる?」

 

わたしが殺したいって言ってんだとオレは仮面の中で嘲笑う。抑える気のないオレは大量のメスを投げ、夜の炎を使って見えている範囲の全員の首元へと飛ばした。正確にいうと、首の内部へ飛ばしての破壊。

 

「あれ?やりすぎたかな?」

 

一瞬で殺しすぎちゃったよ。まぁいいかと床が血まみれになる前に進む。異変に気付いてやってきた者も同じようにサクサクと殺していく。ついでにそれっぽい資料を飛ばしてると園川さんが居そうな部屋にたどり着いた。誰かわかんないと困るから仮面は取ったよ。ただちょっと寂しい。これからたまにしようかな。

 

「動くなっ!」

 

部屋に入ると園川さんに銃を突きつけていた。よくある人質ねとオレは気にせずに歩けば、園川さんは絶望したような顔をした。大丈夫だって、オレの視界に入ったんだよ?

 

「撃ったって意味ないよ。だって、それ弾が入ってないじゃん」

 

オレの言葉に慌てて撃ったけど、もちろん空砲。オレが中身を飛ばしたんだもん。

 

「良かったね、見せしめに君達のところは選ばれたよ。正直、もうちょっと手応えがあると思ったんだけどねぇ」

 

つっても、クソ親父ですら弱すぎて話にならなかったもんなぁとオレは勢いよくぶん殴った。園川さんは緊張の糸が切れたのか、へなへなと腰が抜けていた。これでも気を遣って、殺さなかったのにね。

 

「律さん、こっちは任務完了。そっちはどう?」

 

なんと返ってきた返事は渚君と鷹岡明のタイマン中だって。それも引き伸ばしてる間に、なかなかゲスなことをしたらしい。まさかの治療薬を爆破だってさ。いやぁちゃんと死ぬような感染じゃないって教えてよかったよ。

 

「遠慮なくやっちゃって」

「了解です」

 

敬礼姿も可愛いね。なんて思いながらも携帯を再びポケットに直す。

 

「園川さん」

「は、はい」

「悪いけど、ちょっと眠ってて。急いだ方がいいみたいだからさ。こっからは企業秘密なんだ」

 

え?え?みたいな顔をしている彼女を気絶させる。にしても、まさか鷹岡明が原因で超直感が反応してるとは思わなかったよ。あんなに見届け人には手を出すなと釘をさしたのに、あっさり治療薬を爆破させたってことはオレに対抗するために手を出したってことだろ。

 

「落ちるとこまで落ちちゃったかぁ」

 

なんて言いながら、彼女と一緒にオレは飛んだ。

 

●●●●●●●●●●

 

 

パァンと渚君の必殺技にみんなが注目している時に、オレはこっそりと合流を果たして彼女をその場におろす。そのまま流れるように渚君はスタンガンを鷹岡明に食らわせていた。

 

「とどめ刺せ、渚。首あたりにたっぷり流しゃ気絶する」

 

……ってか、寺坂君も感染してたんだ。よくここまで来れたね、フラフラじゃん。

 

「普通ならそうなんだけどねぇ」

 

オレがこの場にいるとは思わなかったのか、みんなが勢いよく振り返った。オレは気にせず、一歩ずつ歩いていく。

 

「ククク。その通り、スタンガンなんて屁でもない。こんな力がこの世にあったとはな!!」

「それは表の世界には出しちゃいけないものだ」

「そういうお前はどの力を得た、見届け人さんよぉ」

「……お前は硬化かな。スタンガンを食らってもなお、動いてるみたいだし」

 

なんて軽口を叩きながら、ぴょんっとヘリポートへと飛び乗った。チラッと視線を向ければ、渚君はゆっくりと下がってくれた。けど、やっぱり鷹岡明の恨みは渚君に向いていて、拳を振り落とそうとしていた。以前のように、オレはその拳を受け止める。

 

「うん、やっぱり硬くなってるね」

 

鷹岡明はさらに力を込めたのか、腕がどんどん太くなっていく。人の形を保てなくなったからか、複数の息を飲む声が聞こえた。その中に混じるように3つの足音が近づいたので視線を向ける。

 

「嫌な仕事を引き受けちまった。まさか依頼主がルールを知らねぇとはな」

「まったくだぬ。ルールを破れば、見届け人が敵にまわる。裏の世界では常識だぬ」

「あのボンゴレが雇った者だ。只者じゃないのはわかりきっていた」

 

……1人だけマトモなのもあってツッコミにくいね。みんなが知ってるみたいだから、対峙した殺し屋っぽいけどさ。この感じだとここに居る全員がすり替えることに賛成したっぽいね。依頼主はアレだったけど、まともな奴が多かったみたい。まぁ鷹岡明も知らないままなら、終わるはずだったのにね。悪魔の囁きに耳を貸しちゃったんだよ。

 

「君たちは見逃してあげるよ。もうちょっと軽い症状の出る薬が良かったけどねぇ。でもまぁコイツを騙すためには仕方なかったって納得させる」

 

あからさまにホッとしたよ。鷹岡明と同じ道を歩むのも嫌だろうし、見逃されたとしてもボンゴレに睨まれれば最悪だもんね。

 

「どういうことだぁ!!」

「そのままだよ。お前は知らなすぎたんだ。オレはお前と同じ硬化の力を使える人を知ってるよ。けど、身体が変化したりしない。そもそも、身体じゃなくて武器を強化するんだ。……オレというより、わたしは血筋。身体強化とか出来るのはそういう一族の産まれだから。まぁ特殊なアイテム使えば、似たようなこと出来なくはないよ。コツを掴むために血筋関係でも使ってるぐらいだもん。ただリスクは大きいから、ちゃんとした人が見てないと下手すりゃ死んじゃうんだ。……わたしはさ、無理矢理だったせいでいろいろと危なかったよ。オレという人格を作って、抑え込まなくちゃいけないぐらいにはね。お前はさらに硬化の力を追加した改造品を使ったんでしょ。どれだけリスクを背負ったんだよ……」

 

オレは憐れむような視線を向ける。でも、多分それはオレだけじゃない。誰がどう見ても背負い切れなかった姿に変わり果ててしまったから。

 

「見るなぁ!!そんな目でオレを見るなぁ!!」

「おい、退け」

 

相変わらず、せっかちな奴だよ。迫ってくる炎に溜息を吐きたくなるのを抑えてオレは渚君を連れて飛んだ。……オレ達が死んだと思ってるよ、絶対。いやまぁオレが炎を使うことを考慮して、みんなの視界を遮る角度と威力でぶっ放したんだろうけどさ。

 

「1拍……や、2拍かな。置いてくれただけ、すげー親切だなってオレは思うよ。でもさ、一般人がいるんだよ。一番危なかった子がすげー疑問符浮かべてるからね」

 

大丈夫?と渚君の前で手を何度か振ったら、「え?う、うん?」みたいな返事だった。あまりにも意味わからなすぎて恐怖を感じることもなかったみたい。ちなみにオレと渚君が無事だったと知り、何人かは腰を抜かしてた。やらかしたXANXUSはハッと鼻で笑ってたけど。

 

XANXUSが軽く放った一撃で鷹岡明は血だらけだった。硬化の力があったから保ったんだろうけど、死んだ方がマシだったかもしれない。だってほら、鷹岡明の首に錠がかかる。にしても、ちょっと離れた位置に飛んで、わざわざ登ってきてくれたんだ。

 

「よりにもよって、外れマフィアを引いたの?」

「そうだ」

「……そっか」

 

鷹岡明が連れて行かれそうになるのを見て、恐れながらも手を伸ばそうとした烏間先生の腕をオレは掴んだ。

 

「彼は法の番人だよ、鷹岡明は裏の世界の裁きを受けなければならない。恨むならオレにしなよ、証拠を送ったのはオレだ。こんなにも早く来るとは思わなかったけどさ。……ほんと、オレらに甘いよねぇ。一番強い君が来る案件じゃないだろうに」

 

オレらがこの子達の前で殺したくないなぁって思ってるから、イェーガーが大急ぎで来てくれたんだろ。復讐者が来た時点で、XANXUSも引くしかないからさ。だから気に食わなくて睨んでるけど、動くことはない。……わたしは残念ねって感じでふふっと笑ってるよ。オレには無理、そんなこと出来ません。

 

オレらは連れて行かれるのをただただ見送った。

 

「……忘れろっていうのは無理だろうけど、切り替えなよ。大なり小なり生きていれば、どうしようもないことがあるよ。まぁ今回は特大過ぎたけどさ」

「そうですね。刺激の強い夏休み、と思うことにしましょう。先生も少々刺激が強かったです」

 

ヌルフフフと笑ってるところ悪いけどさ、殺せんせーはまだ終わってないからね。わたしが通訳してくれたから、オレは動く。

 

「カエデちゃん、殺せんせーかして」

「う、うん」

 

ヒョイっとオレは殺せんせーを空へと放り投げると、XANXUSは容赦なくぶっ放したよ。ちゃんと今回は見えたからか、みんなの口が開きっぱなしだった。カルマ君だけはへぇみたいな顔だったけど。

 

「チッ」

「……完全防御形態かぁ。今回はカッコつけてつけた名前じゃなかったんだね、殺せんせー」

 

無傷のまま落ちてきた殺せんせーをキャッチしたら、すげードキドキしている顔だった。

 

「ふふっ。でもわたし達の作ったルールに助けられたね。彼、ルール内で今の威力なんだ。もっと凄いよ?」

 

ひぃぃぃとビビってる殺せんせーを直接見れたわたしはとっても満足した。

 

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