お題の紙に『イケメン』という文字が見えた瞬間、オレは思わず笑ったよ。わたしもオレの中ですげー楽しそう。タタタタっとオレはA組のところへ向かったよ。なんでE組がこんなところにっていう視線が集まるから、オレはビクビクしながらも浅野君がいる方へ向かう。浅野君だけは何を考えてるってすげー警戒してるのが笑える。もちろん顔には出さなかったけど。
A組とE組に確執があるのは聞いてはいるだろうけど、明らかに困ってる女性をほっとけないんだよね。特にヨーロッパ圏の外国人はさ。フランス人のカミーユに話しかけられたよ 、どうかしたんだ?って。オレがフランス語を話せることを知ってるからね。ぶつかった時にオレがフランス語で大丈夫だよと答えたから。
だからオレはフランス語で説明したよ、書かれたお題にぴったりなのが浅野君だったんだって。もちろんイケメンという言葉を説明して、頬を染めながらね。コイツ……!みたいな顔をしている浅野君の反応に腹筋がすげー鍛えられる。
カミーユが日本語を話せないのはわかってる。そしてA組でフランス語を話せるのは浅野君だけだ。カミーユを説得できる人が誰も居ないことを意味する。特にフランス人は英語で話しかけられても無視する傾向にあるからね。まぁ母国語を優先するのは気持ちもわかる、日本人だって日本語が大好きじゃん。ちょっとフランス人は露骨だけど。
ポンっと行ってやれよとカミーユは浅野君の背を押した。応援というより、女に恥をかかせるなという意味で。カミーユは助っ人だから、断りにくい。浅野君以外に話せないから亀裂がはしると誰もフォローできないから。
「……行こうか、沢田ソラさん」
「わあ、ありがとう」
白々しい掛け合いをしてオレたちはゴールへ向かったよ。あ、ちゃんとカミーユにもお礼を言ったよ。オレの中のMVPだもの。
進行役も浅野君を連れて来られれば、認めないわけにはいかない。だってお題はイケメンだ。否定すれば、A組で一位の彼を貶すことになる。
「助かったよ、浅野君。君はA組だけど、E組のオレに手を貸すなんて、心もイケメンだね」
「ああ、ありがとう」
周りの目があるから頑張ってるけど、言葉と顔が噛み合ってないよ。すげーピキピキしてるよ、オレはちょー笑顔だけど。
オレがE組のところへ戻ると、浅野君可哀想……って空気になってた。殺せんせーには素晴らしい暗殺でしたって褒められたけど。
「まっ、これでイトナ君のことは完全に抜けるんじゃないかな。あとは君たち次第だよ」
ハッとなった男子達は気合を入れてたよ。やっぱ、そういうところは男の子だよね。女のオレが頑張ったら、期待に応えないとってなるんだよ。オレがいくら規格外だと思ってもさ。緊張が少しほぐれたようだから、殺せんせーにまた褒められた。
浅野君の強さは想定外だったみたいだけど、作戦が見事にハマった結果、棒倒しはE組の勝利に終わった。浅野君のことだから、磯貝君のバイトのことは黙ってるだろうね。何だかんだ言って、約束は守るんだよ。
片付けを抜け出して、オレは窓からお邪魔する。あちゃー血塗れじゃん。それに負けたからって死ぬ寸前まで悔しがるのを強制するのはどうなんだろうね。
「……私の教育方針になにか?」
「や、オレはそういうことに口出ししないよ」
「お前は……!」
適当にヒラヒラと浅野君に手を振る。
「ちょっと殺気を感じ取って見に来ただけだよ。オレそういうの敏感なの。まっ理事長先生が教育っていうなら、それでいいよ。教育者じゃなくなったのか気になっただけだから」
「随分教育者にこだわりますね」
「あはは。そうかもね。オレには最高の先生が居るからさ。先生って言っても家庭教師だけど、教育者なのはかわらないでしょ」
「……ええ、そうですね」
殺せんせーじゃないから、気にはなってそうだね。殺せんせーも気になってたし。うーん、オレが認めたっていうのが大きいのかな。
「頑張りなよ、先生」
用が済んだから、ヒョイっと窓から飛び降りた。浅野君が心配して窓から顔を出したっぽいから、ヒラヒラと手を振ったよ。心配してしまったことにイラッとしただろうに、フッと笑ってたよ。悪い子じゃないんだけどねぇと思いながらオレはE組に戻った。
●●●●●●●●●●
またこの時期がやってきてしまったかぁとオレは殺せんせーの暑苦しい説得を流す。や、今回はオレだけじゃないかもしれない。A組に勝つ時が来たと殺せんせーがすげー張り切ってるもんね。
「何度も言うけどさ。オレが頑張ると困る子が居るんだって」
「ソラさんはいつもそのように答えますね。いったい誰なんです?」
いつも踏み込んでこないのに、今日は聞いてきたよ。いやまぁそれだけ信頼関係を結んで、オレが話してくれると判断したからなんだろうけど。
「弟だよ。オレが出来ちゃうと、ハードルがあがるの」
「弟さんでしたか。ですが、ソラさんはソラさんで、弟さんは弟さんですよ」
普通ならそうなんだけどねぇ。あの子が出来たから、オレらも出来るんだよ。未来のあの子の経験を継承したからさ。
「複雑な事情があるんだよ。それにあの子自身がちょっと頑張る気で居るからさぁ。ただ、長年ダメダメだったのが染み付いてて、すぐ諦める。すぐ復活もするけど」
「ふーん。渚君に似てるのは前に聞いたけど、ダメダメなのは初めて知ったよ。どれぐらいヤバイの?」
言わないとダメな空気じゃん。オレにもグサッと刺さるんだけど……。
「テストは赤点の常連。というか、0点の常連。運動もダメで、あの子が入ったチームは負ける。だから疫病神扱い。うーん、出来る方が少ないかな、優柔不断だし」
「……まじ?」
「ウソついてどうすんの。それで渚君に似てるから、不良とかにも絡まれるよ。まぁ渚君と違って、よくボコられてるけど」
想像つかない……みたいな顔をされた。
「あとはそうだなぁ。わたしと違って一人じゃ何も出来ないタイプ。逆を言えば、一人じゃなかったら強いタイプかな。誰かのためになら頑張れるんだよ」
「そこはあんたに似てるね」
そう言われて、あははと声を出して笑ったよ。喜んでる笑い方なのもあって、カルマ君が驚いてた。
「オレはあの子に似たかったんだよ。 あの子がいれば、紛い物のオレは居る意味がないと思ったこともあるし。や、そんなバカなことはもう考えてないけど。すげーわたしに怒られたし。ただ何も知らない君がそう言ったから、ちょっと嬉しかったんだ」
「ふーん」
あ、これはちょっとテレてるね。隠そうとしてるけど、殺せんせーは気付いてるよ。すげーニヤニヤしてるからね。まぁ今回は助けてあげるよ。
「そういうわけで、オレはあの子のハードルをこれ以上あげるのは可哀想かなって。今回もクラス目標の50位で」
「ダ、ダメです!!」
慌ててゴマすりにきたけど、オレはスルーし続けた。
今日の放課後は、殺せんせーは先生たちと交流してるみたいだからオレはヒバリさんのところへ向かった。や、呼び出されたんだよ。話があるから近いうちに会いに来てって。普段なら絶対見つけるって感じなのもあって、素直に向かったの。
何かなって思ったら、オレの誕生日の予約。家族と過ごすと断りつつも、そんなことのためにオレを呼び出したのとジト目をすれば、やっぱり本題は別にあったらしい。ため息を吐きながら、オレの進路の話だと言った。
「そっちは知らないけど、並盛中学校ではもうそういう時期だよ。君が随分のんびりしてるから僕から声をかけたんだ」
「それはすみません。あっちではそんな話はまだ無くて。みんな、成績があがってるからギリギリに狙う学校を決めようとしてるんだと思います」
そう。と返事をしつつ、ヒバリさんは資料をオレに手渡した。ペラペラとめくりながら、この人はやっぱ有能だなって思った。オレがヴァリアーを通してだけど、ボンゴレの仕事を受けたから、これから起きるであろう流れを書いてあったよ。
「オレもこれは思ってました。周りから見れば、オレらはボンゴレの人間にしか見えないなって」
確執が起きてることを知ってるマフィアは一握りしか居ないんだよなぁ。そしてオレらは女で、初代の血を引いてて、ボンゴレの後継ぎではない。言い方は悪いけど、極上の物件なんだよ。9代目はオレらとのいざござを抜いてもXANXUSのことがあるから、突っぱねてるでしょ。どう考えても9代目はXANXUSを応援してるだろうし。けど、下手なことはやらないし言わない。9代目がお節介すれば、拗れるのはわかってるからね。反抗期というレベルじゃないもん。
話を戻すけど、ボンゴレの人間という流れになっても、オレらは知らんぷりするつもりだった。裏の世界で生きてるって言っても、今んとこお金も困ってないし、当然パーティとか出るつもりもないし、本気で逃げれば捕まることはないからね。周りがどう思ってもオレらはフリーだと言い張る。そんなことはこの人もわかってるはずなんだろうけどなぁとヒバリさんを盗み見る。
懐から新たな紙を一枚と鍵を置いた。あれ、さっきと違って手書きだよ。……ここって確か最近できたマンションだ。ってことは、部屋の鍵だよね。
「君達はどこでも生きていけるだろうね。でも持っておきなよ。炎を感知されないように作ったから」
そんなこと今のヒバリさんでも出来るの?とオレは首を傾げたら、白蘭だよとヒバリさんは言った。……あいつ、わたしのこと気にしすぎでしょ。リングを持ってない時に、リングに適応してしまった同士ってだけで。一人だけ抜け出せてしまった負い目でもあるのかなぁ。いやまぁ単純にオレのことを好きってのもあるんだろうけど、もちろん深い意味はない。あればわたしが全力で嫌がる。まぁヒバリさんが考えてるとわかったから接触したんだろうね。鬱陶しいけど、これからも電話に付き合うかぁ。あいつはそれだけでいいと思ってそうだし。
「あの男は忘れたみたいだよ。僕もこの部屋のことは忘れる」
一人で全部用意出来なかったことはムカついてるだろうけど、技術は欲しかったから白蘭と手を組んだんだろうなぁ。白蘭は馴れ馴れしいけど、馴れ馴れしくないからね。線引きはしっかりしてる。
「……条件は?」
「僕に会いに来て」
まさかそんな条件だとは思わなかったから、頬が熱くなった。だって、何日に一回とか詳しく設定しなかった。それにわたしとXANXUSが結ばれる可能性だってあるんだよ。それなのに、そんな条件を出すなんて思わなかった。この人はオレと会い続けることを選んだんだ。
「僕が地下施設を作った時はまた声をかけるよ。僕はボンゴレと不可侵規定を結ぶから」
「……それはオレを囲い込もうとしてません?」
「さぁね」
とぼけたような返事をしたけど、XANXUSを選んだとしてもわたしの精神安定には必要と判断したんだ。そして並盛には安全な場所があると伝えたかったんだと思う。この人の誇りだから。
「それで君、並高に行くの?」
「この流れでそれはズルくありません?」
また罠にはまった気がするよと思いながら、片割れが受かったら通いますよと答えたよ。わたしもここまでされちゃったらねと笑ってたから。熱心に通えとはヒバリさんも思ってないだろうしね。3年間は拠点を並盛で過ごせばいいってことでしょ。
詳しく詰めようとしたけど、嫌な予感がし始めたからヒバリさんに別の日にと頼んで学校に戻る。返事も聞かずに飛んだから、機嫌悪くなっちゃってるかも。さっきまでは絶対良かったのに。
はぁとため息吐きながら、職員室に顔を出すと殺せんせーが居て驚いた。烏間先生に居場所を聞こうとしたのに大人しく職員室に居たからね。
「ソラさん、どうかしましたか?」
「嫌な予感がしてさ。って、命の危機とかそういうのじゃないよ。なんか悪いことしてるなぁってレベルの嫌な予感。てっきり殺せんせーだと思ってさ」
あははと笑って誤魔化したら、殺せんせーはスネてたよ。烏間先生には日ごろの行いだと言われてたけど。イリーナ先生も頷いていた。
「でもオレの直感は何に反応したんだろう?」
オレが不思議そうに首を傾げてると、烏間先生の携帯が鳴った。自然と視線が集まる。耳を澄まして盗み聞きをしていれば、やらかしたのは生徒達だった。
オレは呆れたようにみんなに視線を向ける。殺せんせーが激怒してるのを見て、まだ謝るなら良かったのに、言い訳から始まるんだもん。殺せんせーは女の子にも一発殴ったけど、オレも止めなかったよ。女に優しいリボーンでも怒るだろうし。
烏間先生も責任感じちゃってるしなぁ。でもオレがフォローしても意味がない。どうするんだろうと思ったら、殺せんせーは被害者の松方さんを説得させ、クラス全員で職場の手伝いをすることになった。2週間後に賠償分の働きを認めれば、公表しないんだって。随分いい人だよ、この松方さんも。
「ソラさん、あなたもそれでいいですか?」
「わざわざオレの許可とならくていいよ。見届け人って言っても、オレもE組の生徒だからね。この教室の方針に従うよ」
そりゃ、オレが動けばなんとかなるかもしれないよ。けど、それじゃ意味がないぐらいわかるもん。
「ただまぁオレにも賠償してほしいぐらいだよ。オレ、あの人と交渉中だったんだ……。超怖い、ふっかけられるよ、絶対」
ああああ……とオレが嘆き出すとみんなに謝られた。一度しか会ってないのに、ヒバリさんの理不尽さは察してるもんね……。
「誕生日にデートをすればいいじゃないですか。おそらく彼はそれで納得しますよ」
「……殺せんせー、オレが家族関係やり直し中って知ってるのにそれを言うの。今年が初なの!!家族がすげー楽しみにしてんの!!」
「す、すみません……」
ニヤニヤしてる態度から、しょげた態度にかわったよ。みんなにまたやらかしてるって目で見られてるね。松方さんが居る手前、最低とか言わないだけ。呆れて烏間先生がため息を吐いていた。
「まぁいいよ。誕生日過ぎるまで、オレがあの人から逃げ切ったらいいだけだから」
「野宿はいけませんよ!?」
「えっと、ごめん。オレ、今も天気のいい日は外で寝泊まりしてるんだけど……」
ガーンっと打ちひしがれてたよ。今まで殺せんせーはオレの生活には一切干渉してこなかったもんね。
「なんだ、行くところがないなら、ワシのところへ来い」
「あはは。ありがとうございます。でも大丈夫です。オレ、空が好きなだけですから。特に夜空が好きで」
「……そうか」
踏む込まずに、殺せんせーを見るだけでやめたよ。この人も教育者の一人なんだろうなぁとオレは笑った。
次の日、みんなはわかばパークの現状を見て、2週間で何が出来るかと話し合った。けどさ、当たり前のようにオレが力仕事班に入れられたことが気になる。
「オレ、結構子どもの面倒をみるの得意なんだけど……」
ええ!?みたいな顔をみんなにされた。
「幼ければ幼いほど、わたしは警戒しないからね。オレも子ども好きだし。ミルクあげたり、オムツ交換も出来るよ」
「……ソラちゃんが男の人にモテるのはそういうところだよ!」
「や、それ今関係なくない?」
ギャップが良い意味で酷い……とみんなが囁き合ってて、なんか納得出来ないとオレは首を傾げたよ。結局、学童保育はなんとかなっても、保育所として集まった子達の面倒を見れる人は少ないから、オレはそっちの担当になった。みんなで決めたのに、赤ちゃんを抱いてると二度見されたけど。烏間先生にもされたから、ちょっとオレはやさぐれた。
2週間頑張った結果、松方さんは認めてくれた。まぁあそこまでやられると認めないわけにはいかないよね。オレも規模が大きいからビックリしたし。ただ次の日が中間テストというのが問題だ。いくら殺せんせーでも間に合わない。
「あんた、本気でやりなよ」
チラッとオレはカルマ君を見た。伝えたいことはわかるけど、オレにそういう提案をしてくるとは思わなかったからね。カルマ君がフォローすれば十分だし、自信もあるでしょ。
「俺は本気のあんたを殺したい」
言うだけ言って、カルマ君は帰っていったよ。返事はテストで返せってことなんだろうね。うーん、どうしようっかなぁとオレはポリポリと頬をかいた。まぁオレだし、なんとかするでしょ。並盛の方で、ひぃぃ!と叫んでそうなのはきっと気のせいだよ。……それにオレがまじめにやるかは別問題だしね。
テスト返却の順位を見て、あれ?とオレは首を傾げる。カルマ君、すげー頑張ったんだね。や、頑張ってたのは知ってるけど。浅野君は何位だったんだろうと疑問に思ってると、殺せんせーが一位ですよと教えてくれた。ああ、そういうことかぁ。一点差とかすげー惜しかったじゃん。
「しかし、ソラさんも人が悪い。カルマ君の合計点数に一点加えた点数を狙うとは……」
「そう簡単に殺せると思われるのもねぇ。っつっても、結構オレも大変だったよ。ここのテスト難易度高すぎない?オレもう勉強やりたくないよ」
「ヌルフフフ。一流のプロでも勉強はするものですよ」
そうだけどさ、分野が違うじゃん。まさか学力で暗殺をしかけてくるなんて、この教室に来るまで想定してなかったよ。ここの生徒で居る限りは付き合うけどさ。はぁとため息を吐いてると、殺せんせーは慌てて移動した。カルマ君がこっちに視線を向けたから、浅野君もオレが電柱の上に居ると気づいたからね。
つーか、なんでA組と会ってるんだろうね。いやまぁ絡んできたのは向こうなんだけどね。カルマ君はみんなのフォローするために来ただけだろうし。でもさぁオレに視線を向けなくてもいいじゃん。オレ、着替えることが出来なかったんだけど。そりゃ殺せんせーみたいに逃げることは出来たけど、空気は読む。
「次はあんたをそこから引きずり落とす」
「完膚なきまでに倒そう」
「あはは。それは無理だよ。さっきカルマ君が言ってたじゃん、次が最後なんでしょ。オレも遊ばずに満点とるからね。並べれば上出来じゃない?」
イラッとしてる二人を見て、オレはニッコリと笑う。
「オレを本気にさせたのは君達二人だよ。オレはE組に馴染む程度の点数で良かったのにさ。だから、失望させないでね?」
フンっと鼻を鳴らして、浅野君は去っていったよ。カルマ君はいつものように飄々としながら帰ったよ。どっちも言われるまでもないって思ってそうだねぇ。
「まっこんなもんでいいかな」
「ヌルフフフ。面白くなってきましたねぇ」
「気楽で良いなぁ。オレ、変に歪ませないように頑張ってるのに」
「先生でも出来ないことはあるんです」
まぁそうだけどさ。生徒のオレじゃなきゃ意味がないこともあるってことでしょ。
「あーもう。絶対、潜入方法間違えたよ!」
「そんなことはありませんよ。君だけじゃなくもう一人の君にとっても、E組は良い学び場です。何より先生がいいですからねぇ」
「……それを殺せんせーが言うから台無しなんだよね。わたしが呆れてるよ?」
慌ててる殺せんせーを見て、ふふっと思わず出てきて笑えば、すぐに気付いて触手で頭を撫でてくれた。
●●●●●●●●●●
偶然なんだろうけど、誕生日に体育着をもらった。いろいろあるはずなのに、烏間先生がオレもE組の生徒だからって。オレが着ることがあるかはわからないけど、ちょっと嬉しい。わたしも喜んでるね。
「……たしかに喜び方が小動物かも」
「私達も嬉しかったけど、ソラちゃんがあんなソワソワするとは思わなかったね」
「でも写真にはうつらないんだよね」
当たり前でしょ。オレが写った写真とか何に使われるかわかんないじゃん。この子達じゃなくて、悪いことを企んでる奴がって意味ね。監視カメラとかに映ったものは、ボンゴレがヴァリアーに依頼して消してくれてる。これは最初の話し合いで向こうから言い出したこと。最後にはマーモンが暗示をかけてオレのことは忘れる手筈になってるし。今のところ、この教室で過ごした人達はやらないつもりだけど。あとは理事長先生と浅野君ぐらいかな。律さんもオレの映像は出さないように、自主的にセキュリティを組んで守ってるみたいだし。これは律さん本人ではなく殺せんせーから聞いたけど。
とまぁ、オレが喜んでたらイリーナ先生に文句言われた。なんでアンタばっかりって。
「や、オレ個人へのプレゼントじゃないからね。今日がオレの誕生日だっただけで」
「わかってるわよ!わかってるけど……」
まいったなぁとオレは頭をかきながら、イリーナ先生を追いかける。一応、オレは忘れずにイリーナ先生の誕生日にプレゼント渡したんだけどね。ただのチョコといえばチョコだけど、現地でしか買えない限定品。まぁオレがちゃんと用意したからこそ、すげーチラチラと烏間先生を見てアピールしてたんだけどね。結果は惨敗だったんだろうなぁ。
ちゃんと確認してないのは、放課後になった途端にイタリアへ飛んだから。その日はXANXUSも誕生日だったからね。まぁあいつは9代目の息子だから、盛大なパーティが開かれるのもあってすげー機嫌悪そうだったけど。そのパーティも主役なのにちょっとしか出なかったっぽい。ほとんどわたしと一緒に居たから。まぁあいつらしいと言えば、あいつらしいけど。ちなみにわたしはXANXUSにプレゼントは用意しなかった。わたし曰く、会いに行ってあげたのがプレゼントらしい。オレにはそんなこと出来ないね。
……そういえば、あいつはわたしに誕生日プレゼントとか用意してるのかな。ヒバリさんは用意してそうな気がする。オレが今逃げ回ってるから会えてないけど、用意はしてくれてる。でも絶対素直に喜びにくい物な気がする。まぁ貰えるのは間違いないから、イリーナ先生はスネて、オレに八つ当たりしそうになってるんだろうなぁ。
「んーまぁオレらの恋愛事情は置いとこうね。イリーナ先生はあの人やあいつに好きになって欲しいわけじゃないんだから」
当たり前よという顔をしながら振り向き、止まってくれた。イリーナ先生が好きになってほしいのは烏間先生だもんね。生徒に恋愛事情バレバレでいいの?とは思うけど、まぁこれも横に置いとく。
「イリーナ先生は大人の女性でしょ」
「はぁ?そんなのわかってるわよ」
「烏間先生がオレに甘いと思うなら、それはオレを子どもと思ってるから。土台が違うんだよね」
「……なにが言いたいのよ」
「うーん、男を何人も落としてきたイリーナ先生ならわかると思うんだけどなぁ」
もったいぶってないで教えなさいよと睨まれちゃったよ。
「イリーナ先生はオレになりたいの?……もう一つヒントを言うなら、堅物な烏間先生はやれと言われても、すぐにオレを大人扱いは出来ないよ」
烏間先生はプロとしてイリーナ先生を扱ってるけど、大人の女性としても扱ってるんだよ。好きになるかは別問題だけど、烏間先生はイリーナ先生を恋愛対象として見れる。オレは子どもだから見れない。特に烏間先生の性格上、無理でしょ。
「それとさ、厳しいことを言うかもしれないけどさ。出会いが出会いだからプロとして烏間先生は求めるの。子ども扱いはしてるけど、オレも見届け人としてやることはやれと求められてるし。オレから見ても、イリーナ先生はすごく中途半端だよ」
「……あんたはいけるかもしれないけど、私はあのタコを簡単に殺せないの!」
「や、烏間先生も殺せてないじゃん。そりゃ暗殺出来れば、烏間先生はすげー喜ぶだろうけど」
はっきり言っていいなら、イリーナ先生は殺し屋に向いてない。リングの力を知らないとか、それ以前の話だ。けど、それはタブーだ。イリーナ先生は今までの人生を否定されたと思うから。特に殺し屋として実力が上であるオレが言うのはダメだ。や、オレは殺し屋と名乗ったわけじゃないんだけどね。
「後、5ヶ月かな。プロとして努力し続けてたら、案外烏間先生はあっさり落ちるかもしれないよ?」
「…………先に地球が崩壊したら意味ないじゃない」
そういえばそうだった。すっかり忘れてたよ。オレの中では崩壊しないと思ってるからなぁ。
「まっ、そん時はそん時でしょ。最後に過ごす人に選ばれるかもしれないじゃん」
「あの堅物は最後の最後まであのタコを殺そうとしてるでしょ!」
「あはは」
笑い事じゃないわよ!?とグラグラとオレは揺らされた。でも実際努力すれば可能性あるだけどなぁ。だってね、一度刺さってるじゃん。イリーナ先生のナイフが烏間先生にさ。訓練でも単独で刺せたのはイリーナ先生だけだよ。あ、オレは銃だからノーカンで。
その日の放課後、無事に誕生日パーティが開かれ家族と過ごすことができた。無事にというのは、ヒバリさんがぶち壊す可能性があったから。ディーノさんが味方をしてくれて、ヒバリさんの足止めをしてくれたらしい。普段とは逆なのがちょっと面白い。にしても、相変わらずマフィアなのにマフィアっぽくない人だよね。
ただパーティの途中でソラ宛にバラの花束が届いてひと騒動が起きた。送り主は書いてなかったし示すようなヒントもなかったけど、誰からかはすぐに察したよ。もちろんわたしは喜んでた。オレはイタリア人だなぁと思ったぐらい。片割れの方のオレはわたしの態度で察したのか、白目向いていたけど。いい加減、慣れればいいのにねとわたしとオレは仲良く頷きあった。ちなみに復活したオレは花束が視界に入るたびに頭を抱えていた。まぁオレもその気持ちもわかるけどね。
パーティが終わると、わたしが満足したと言ったからオレは部屋へと飛んだ。予想はしてたけど、すぐさまトンファーが飛んできたよ。まぁ邪魔しに来ずに待ってたってことは、ディーノさんに教育され一応理解はしたみたい。ただ激しいバトルだったんだなぁとヒバリさんの怪我をみて苦笑いする。オレの反応にさらにムカついたのか、バトルをするハメに……。まぁ2週間逃げ回ったし夜通しで付き合ったよ。部屋が壊れるから並中に変更させてもらったけど、正直何やってんだろとしか思えなかったね。太陽が出てきたらヒバリさんも落ち着いたのか、解放してくれた。最後に指輪を投げられたけど。……相変わらず過程を飛ばしすぎでオレは頭を抱えた。わたしはすげー笑ってたよ。
まぁ悪くない誕生日だったかな。
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そのまま学校に行けば、イリーナ先生の誕生日を祝おうという話になってた。あくびをしながら計画を聞いたけど、ないわーって思ったよ。
「悪いけど、オレは反対。というか、やるっていうならオレがぶち壊すよ」
「えー!なんでー!?」
「沖縄の時はまだ見逃せる範囲だった。イリーナ先生が協力を求めてる形だったからね。失敗しても、まだイリーナ先生は納得できただろうし。けど、今回君達が立ててる計画は最悪じゃん」
みんなが不思議そうな顔をしていた。
「本人達の意思を無視して、周りが勝手に盛り上がって失敗した時は地雷しかないんだよ。余計なお世話ってこういうことなの」
「で、でもさ、ビッチ先生は不器用だし。烏間先生は鈍感だもん」
「それとこれとは別問題。どうしても烏間先生の手から渡したいなら、オレ達が後ろにいる状態で烏間先生が代表で渡すならまだいいよ。オレ達がお節介したんだなぁってわかるし、イリーナ先生も受け取れるだろうから」
それだと意味がないって顔をしてるから、ため息を吐きながら続ける。
「わかりやすく大げさに説明するよ。例えば、片想いしてる相手から『好きです』と告白されて、返事をしようとしたところで後ろから、手本を見せてもらっただけだから本気にするなよーとか言われたら?その本気にするなと言った人物が自分の気持ちを知ってたとしたら?あとでニヤニヤしながら『ウソでも良かったでしょ』とかこっそり言ってきたら?」
は、腹立つ……と殺気が渦巻いた。
「で、オレの提案だと、自分が見てるところで、告白の手本を見せてとか誘導して好きな人に告白される場合なら?後ろで本気にするなよーとか言われたら?あとでニヤニヤしながら『ウソでも良かったでしょ』とかこっそり言ってきたら?」
「あれ?さっきほどムカつかないね」
「でしょ。どっちもお節介なのに、過程が見えるか見えないかで受け取り方がかわるんだよ。告白がプレゼントで、ニヤニヤしながらこっそり言うのが、失敗した場合のことね。理解した?」
しょぼーんとなったよ。それと、モテる女は違うねとかコソコソ言うのはやめようね。モテるとかそういう話じゃないから。
「誰かを思って行動するのは良いことだよ。けどね、それを盾に何をしてもいいって訳じゃないんだよ。そりゃ恨まれてもいいって考えならやってもいいよ。君達はそこまでじゃないでしょ。オレはたまにやるけどさ」
「……わかってるならやめようよ」
「恨まれても成し遂げたいことがあれば、オレはやるって話。それによくある話でしょ、会社を潰さないためにリストラをするとかさ。君達も生きていれば、選択を迫られる時がくるよ。というか、規模が小さいだけで君達はずっと選択はしてるんだよ。人生は選択の連続ってね」
みんな頭がいいから、名言をいってもわかってくれるのが助かるよね。オレの周りだと通じない人もいるからさ。どっかで聞いたことがあるような……みたいな反応がかえってくる。まぁその筆頭がオレなんだけど。
「で、どうするの?恨まれてもやるっていうならオレはもう止めないよ。助言はしたしねぇ」
みんな顔を見合わせて、ただ純粋にイリーナ先生を喜ばせることを選んだ。というわけで、カンパのしてお金を出す。みんなの金額を見て、それに合わせたよ。一人だけ飛び抜けた金額は出さないってば。もちろん殺せんせーと烏間先生にも貰いにいった。みんなにやるの!?みたいな顔をされたけど、烏間先生の手から渡そうとするなら尚更出させないとダメでしょとツッコミすれば納得した。殺せんせーは仲間はずれにしたらスネるといえば、残念な空気が流れたよ。
生徒だけじゃなく大人二人……といっても、殺せんせーは貧乏だったから実質大人一人が参加したことで、一万円近くまで集まった。烏間先生も何だかんだ言いながら協力してくれるよね。必要か?みたいな顔するけどさ。みんなでやりたいからと生徒に迫られたらちゃんと出してくれる。
他のみんながイリーナ先生が帰らないように足止めしてる間に、買い出し班はプレゼント探しに。ちなみにオレも買い出し班の一人。オレの方がわかる気がするってだけで。
「つっても、1万いかないんでしょ。みんなでケーキを食べるとかでもいいとオレは思うんだけど」
「ソラちゃんは誕生日にあの二人から何もらったの?」
えー……言わないとダメなのと思いながらも教えたよ。参考にしたいってことだろうし。
「ゆ、指輪はすごいね……」
「凄いのは凄いけど、違うでしょ。女心をわかってるのはあいつの方だね。まぁあいつと特定できるものはなかったけどね。バラの本数は年齢と一緒だから絞れないけど、色は赤だったもん。オレらの知り合いで花を贈りそうな奴はいるけど、名前をわざわざ伏せて、さらにバラで赤は選ばないよ」
「……花言葉?」
そうそうとオレが頷いてると、みんなが律さんに調べてもらってた。ウブな子達は顔が赤くなってたよ。並盛にいるオレも獄寺君に聞いて、さらにショック受けてるだろうなぁ。
「花束はいいなぁって思ったけど、花言葉も考えないといけないのかぁ」
「オレは先生がイタリア人だったから覚えさせられただけで、普通はそこまで気にしなくていいと思うよ。バラぐらいは覚えた方がいいかもしれないけど。ただ今回の相手はイリーナ先生だからそこはちゃんと考えた方がいいかもね。つーか、オレも専門職には敵わないってば。餅は餅屋だよ」
なんて話してたら、ちょうど花屋さんに声をかけられた。チラッと見ると、ニコッと笑いかけてきたからオレもニコッとかえしたよ。互いに胡散臭いなって思ってそう。
今回は日常に潜めるタイプの殺し屋ねと心の中で頷きながら、オレも積極的に花を選ぶ。
「凄いね、君。専門の僕より出来そうで自信なくしそうだよ」
「ソラちゃんはねぇ……」
「なんでも出来るもんね……」
「あのね、オレにも出来ないことはあるよ?」
えー?という顔をしてるカエデちゃんの頭を撫でる。カエデちゃんも、花束に盗聴器を仕掛けられることも、止めることが出来ないんだよ。
「まぁオレは出来ないなりに出来るようにするけどねぇ」
「するってところが、あんたらしいよ」
「それは先生……オレを育てあげた先生の影響だね。オレが出来ないなら周りを巻き込んでやれって言うんだよ。出来ないという答えを許さない。だから出来る人に頼んで、オレはいろいろと搾り取られるハメになる」
ははは……とオレが遠い目してると、みんなもヒバリさんを思い浮かべたのか苦笑いしていたよ。
「ご、ごめんね。僕が言ったからだね。これはサービスだよ。ユリオプステージー、花言葉は『円満な関係』ってね」
「……魔性の女だ」
「や、これはどう考えても違うでしょ」
杉野君の言葉に思わずツッコミすれば、みんなが笑ってたよ。やれやれと思いながら、花屋に扮した殺し屋から差し出された花を受け取った。
●●●●●●●●●●
イリーナ先生へのプレゼント作戦は大成功をおさめた。普段なら殺せんせーが盗聴器を仕掛けられても壊すんだけど、花の匂いで誤魔化されて気付かない。そもそもイリーナ先生が嬉しそうに職員室に飾ってるし手は出さない。そしてイリーナ先生も束を壊さずそのまま水につければいいよとアドバイスを聴いて解かないしね。
ただもうあれから二日になるんだけど。まぁ電池が切れる前に仕掛けてくるのはわかってるよ。そう簡単に盗聴器は仕掛けられないし、枯れれば盗聴器の存在はバレるからね。花屋の人が怪しいと気付く。
うーん……と放課後に突撃しよっかな。や、だってオレもわたしも単純な性格してんの。ジッと待つとか性に合わないの。別に邪魔するわけじゃないし。計画とか教えてっていう話。
なんて思ってたら、律さんが急にラン♪ラン♪と歌い出した。授業中なのもあって、みんなギョッとしてる。オレは最悪……と遠い目をしてると、ケイタイが振動する。表示された名前を見てオレは切ったよ。素直に取るのはムカついたからね。すぐにまたかかってきたから、イラッとしたら今度は表示された名前が違った。
「久しぶり。……まぁ君から電話がかかってきたから察したよ。またね、お姫様」
ユニの許可ありならほっといていいでしょと思ってたら視線が集まってた。今の会話だけでもオレの関係者の仕業ってわかるよね。どう説明しようかなと思ったら、また電話かかってきたよ。仕方ないから今度は出てやる。
「…………そろそろ黙らないなら切るけど。ったく、何がプレゼントだよ。頼んでねぇつーの。つーか、律さんの協調性プログラムはイジんなよ。や、お前のわかってるは信用出来ないからね。酷くないだろ、鏡を見ろよ」
胡散臭い顔しかないでしょとため息を吐く。
「えー、お前とお茶?うーん、お姫様が居るならいいよ。マシュ……マシマロね、まぁそれを持っていくよ。はいはい、言ってろ」
まだなんか言ってたけど無視して切ったよ。相手してたらキリがないから。
「ソ、ソラさん……!」
「アップデートしてるだけだって。律さんが歌ってるのはあの男の趣味みたいなもん。あと心配しなくていいよ。電話の相手ぐらいだから、遠隔で律さん本体を乗っ取れるなんてさ。知識量が桁違いでおかしいんだよ。こういう電子系から医療とかあらゆる分野で天下取れるぐらいにね。それに今回はお姫様が許可したっぽいし」
「お姫様?」
「そ。笑顔が似合う可愛いお姫様が手綱を握ってんの。あとオレの弟もかな。ついでにオレらも好かれてるけど、わたしの方が同属嫌悪が酷くって。基本オレが適当にあしらってんの」
白蘭のことを簡単に教えていれば、律さんの歌が終わった。
「律さん、どうせイジってるのはあそこだけでしょ」
「……はい。そのようです。もしや、ソラさんのケイタイの開発者でしょうか?」
「プログラムを組んでくれたのは別の子だけど、知識はあの男が出してるから間違いではないね。や、今回も実行はその子がやってくれたのかな。……当たりっぽいね。ごめんよ、本当にごめんよって謝ってるだろうから、先に伝えとくよ」
正一君はね、白蘭と出会ったのが運の尽きなんだよ。いやまぁ全てが悪いとは言わないよ。けど、マイナスに振り切ってるのは間違いないね。
「こちらからお礼を申し上げたいほどですから、お気になさらずとお伝えください」
「そう言ってくれると、その子の胃痛も治るから助かるよ」
さてと、とオレは立ち上がる。最後の授業だし別に良いでしょ。
「じゃ、悪いけどサボるね」
「にゅやッ!先生は許しませんよ!」
「や、あの男が迎えに来るとか最悪だから。この校舎があるからソラチャンが来ないんだよ♪とか言いながら笑って壊すよ。お姫様と弟が怒るから、殺さないってだけ。弟は物を壊すのも口うるさく怒るけど、怒られるのもかまってもらえるってことだから喜んでる。お姫様は普段からかまってあげてるし、守ってあげたいと思ってるからあの男にしては大人しいかな。オレらは壊したり殺した方が反応しないからあんまりやらないだけ。逆にオレらに良いことすれば、間違いなくオレにかまってもらえるとわかってるから手を貸す。ただ鬱陶しすぎたらわたしが殺すだろうから、向こうも引き際はわかってるんだよ。だからリアクションが良すぎて貧乏くじを引いてるのは弟だね、可哀想」
可哀想というレベルじゃないじゃ……?という空気になってたよ。でもあの子がちゃんと声をかけたら手を貸してくれるよ。オレらにはわかんないね。
「まぁ今回の対価はオレとお茶会だから行ってくるってこと。お姫様も準備して待ってるだろうしねぇ。あの子は簡単に家から出れないからオレから行くの」
「本当にお姫様なんだ」
「うーん、正確にいえば違うかな。まぁ誘拐を企む奴が居るんだよ。けど、お姫様は腕っ節はさっぱりでさ、おちおち一人で外にも出れなくってね。血筋関係の苦労はわかるから不憫で、オレらにしては対応甘いかも」
「その理屈なら、あんたもお姫様じゃん」
カルマ君は揶揄うつもりで言ったんだろうけど、殺せんせーがすげーアタフタしてしまった。オレはいつものように流そうとしたのにさぁ。
「え、まじなの?」
「……殺せんせー、もうちょっとなんとかならないの?」
「す、すみません!!」
はぁとため息を吐いてオレは教室から出て行ったよ。あそこと仲悪いことも知ってるし、殺せんせーがうまく説明するでしょ。マシュマロ買って、さっさと行こ。
ユニと白蘭とお茶会はそこまで悪くなかったよ。オレにテレビ電話して遊んだりしたし。……まぁ途中でオレの直感が反応したけどね。タイミングからして、狙ってやったとわかったからオレは態度に出さなかったよ。ユニは相変わらず笑ってた。無理して笑うなら、オレらのことなんてほっといたらいいのにね。特にオレらは二重人格で読みにくいし、わたしの方を読もうとすればつらいのにさ。損な性格だよねと思ったから、白蘭が鬱陶しいけど長々と付き合ったよ。
ついに追いつかれてストックがなくなりました。ここからは不定更新です。
今回の話を書く時に、防衛省から新しい服を渡された日とソラ(ツナ)の誕生日が一緒で本当にビビった。
計算したら、え?まじで?ってなった。せっかくなので盛り込んだ。
あとソラにヤキモチを焼くイリーナ先生は可愛いと思うw