サムライ8最終幕劇 第一幕 犬死
花一「達麻!五空たちのことは、任せたぞ!」
達麻「花一!!」
五空「師匠!」
花一を乗せた因幡は宇宙にて爆発散体した。
新たな鍵を探しに宇宙へ飛び出た達麻一行。パンドラの箱となった八丸が指し示す鍵がいる星へ向かったまでは良かったが、その星はいわゆる要塞星、外部宇宙からの侵入者を自動防衛システムにより排除する星であった。
鳥出星(とりでせい)。雲一つない、薄墨色に覆われた星。
数分前、気づかぬうちに星の防衛圏内に入ってしまった船に自動追尾型強制散体ミサイルを撃ち込まれた。
いち早くそれに気づいた花一は二つの横綱級ホルダー、洋犬と因幡を合体さえた状態の船では逃げ切れぬと判断した。ゆえに彼は一人因幡へ乗り移り船を分離、囮になり自らの愛ホルダーと共にその生涯を終えた。
洋犬『…ホルダータグ偽造システム構築完了。現在鳥出星への侵入は安全です』
三打「…おせえよ…今さら…」
アン「花一様…」
肩を落としながら呟く三打とアン。花一との付き合いは短いものだったが、やはり目の前での死には堪えるものがある。
五空「師匠…」
達麻「……」
ましてや、彼の弟子やライバルはその比にならぬ想いがあることだろう。
苺(花一おじ様は、また私を救けてくれた。なのに、私は何もできなかった…)
かつて花一、五空に故郷の危機から救い出してもらった過去のある齢十にも満たない彼女は、彼らへの感謝、そしていつか恩返ししたいと心に想っていた。
だがその一人、優しき瞳を持つ黒犬の彼はもういない。彼女の目から一筋の涙がつたっていた。
荒野に降り立つ洋犬。
五空「空から見ると機械で埋め尽くされた星でしたが、こんな土地もまだ残っているんですね」
達麻「五空よ、今回は苺、三打、七志と共に船を護っていてくれないか?拙者とアン、竜で鍵を探しに行く」
最初こそ皆で活動するつもりであったが、かの師匠爆発の件からの達麻なりの気遣いであった。だが返事は違った。
五空「…心遣い感謝します。でも僕も行かせてくれませんか?師匠の為にも、頑張りたいんです」
達麻「…わかった。迷いはないようだな」
五空は灰色の空を見上げた。
『お母様、なぜ僕の名前は五空なのですか?』
『どうしたの?突然』
『道場の友達の間で流行っている読み物の主人公の名前が僕と同じなんです。その人は五じゃなくて悟で』
『それは空を悟るから名付けたのよ』
『じゃあ僕の字は』
『足りないのは心、ね』
『僕に心がないって言うんですか!ひどい!』
『ごめんなさい!違うの、そういう意味じゃなくてね…………
達麻と竜とアン、それに五空は街で得た情報から、鍵の可能性がある人間の元へ向かっていた。
名は墨二朗(すみじろう)。武士用の刀や鎧を造る刀鍛冶一家としてかつて宇宙でも名を馳せたクド家の末裔で、今は人里を離れ、一人山内で暮らしているらしい。
さっそく四人は墨二朗が住む佐切山へ向かうのであった。
千「伝えねば…皆に…」
真っ二つに斬られ上半身だけでずるずると地を這いずるのは、あの銀河球連邦精鋭特務隊、静寂の千であった。
彼の姫、キリクや仲間の侍たちは気を失い横たわっている。
千(まさか…死吟まで雇っているとは……カーラめ!)
アタとの交戦後に達麻たちと別れ、特務隊として鍵を探していた千。見下星での一件でも十二分なカリスマを発揮して皆を率いた彼が今、赤子の如く捻られていた。
死吟「ふん…連邦の精鋭と言ってもこの程度か」
千「死吟…! 分かっているのか!? お前を雇ったカーラは銀河を滅ぼそうとしているのだぞ!」
死吟「ぎゃーぎゃーぎゃーぎゃーうるせえなぁ。俺は金に従う。それだけだ」
死吟は千の頭部に小刀を突き刺す。それっきり千はぴくりとも動かなくなった。
死吟「《静寂》らしく静かにしてろ…!何にもできねえ犬死野郎が… あと俺の名前は死吟じゃねえ!誰だか知らねえが変な渾名つけやがって……うっ!?」
突如、死吟の額の一本角に大きな切れ目が入る。
死吟(黙切り…こいつ…いつの間に)
動かぬ千を一瞥する死吟。
死吟「ふん…鳥出星か…」