卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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10:二次試験(裏)

 中忍試験の第二次試験は、木ノ葉隠れの里が保有している第44演習場で行われる。演習場を使ったサバイバル訓練であり、この試験からは死亡同意書にサインが必要になる。受験者同士の殺し合いは勿論、猛獣や現地生物に殺される事もある。

 

 第44演習場の広さは半径10kmもある。その面積は静岡県の島田市相当だ。このレベルの演習場が何個も存在しており、火の国の財政を圧迫している。年間の維持管理費を考えただけでも頭が痛い金額だ。里のスポンサー達である大名が口を酸っぱく軍縮を言うのも頷ける。

 

 そんな馬鹿みたいに広い演習場のゲートで、挟間ボンドルドは受験生を待っていた。みたらしアンコ特別上忍は、一次試験でもっと受験生が減る事を想定していたが予想が外れた。その為、演習場ゲートに張り付かせる忍者が足りなくなってしまい、救護班の彼まで駆り出される。

 

 カツユの夕食献立を考えていると、受験生……第七班が挟間ボンドルドが待つゲートに到着した。

 

「これは、皆さんお揃いで。一次試験合格おめでとうございます」

 

「ありがとうってばよ!! でも、なんでここに挟間ボンドルド特別上忍がいるの? 救護班って言ってなかったけ?」

 

 うずまきナルトは、救護班と聞いた事をちゃんと覚えていた。

 

 自らの班に怪我人が居れば出張してきてくれた事も理解できたが、そんな状況ではないので疑問を呈した。

 

「お恥ずかしい事ですが、下忍の皆様が予想より優秀でした。その為、ゲートを受け持つ試験官が不足してしまったんです。みたらしアンコ特別上忍の見積もり不足が原因です」

 

「救護班なのに大変なんですね。私達って、この演習場について何も知らないですが……教えてくれたりは?」

 

 春野サクラは、慰労の言葉を掛けると同時に情報収集を始める。忍者たるもの情報は命である。筆記試験と違い、この演習場については情報は公開されている。その為、挟間ボンドルドは教えても問題無いと判断した。

 

「開始時刻までの暇つぶし程度に少し教えてあげましょう。みたらしアンコ特別上忍から既に聞いているかも知れませんが、半径10kmある演習場です。この中には猛獣や大型の生命体が大量におり、独自の生態系を築いております」

 

「それは既に聞いた。他に有益な情報はないのか?」

 

 うちはサスケが情報公開を迫る。挟間ボンドルドは、そこまで中忍になりたいのか疑問でしかたがなかった。有能なのは間違いないので、急がなくても中忍になる事は間違いない逸材。担当上忍が付く時代にゆっくりと成長する方が、最終的に近道になると感じていたからだ。

 

「水も食料も現地調達できますので、そこは安心して構いません。所詮は演習場です。それ以上でもそれ以下でもありませんので……なので、演習場の成り立ちでも教えてあげましょう。ここの生物の大半は忍者が口寄契約出来なかったモノを放逐したモノの為、特別な生態系になりました。裏話としては、ココを試験会場にした事で大名達に演習場の破棄を突き返すため里ぐるみで動いています。その見返りで、どこぞの女性特別上忍の懐に大金が入っていたりと」

 

 酷い話だが、こんな使い道の無い演習場を選んだのは大名達から助成金を確実にもぎ取るためだ。みたらしアンコ特別上忍が、出所不明金を貰っている事実も存在している。全く、大人の汚い話であった。

 

「なんだそれ!! もしかして、俺等ってば、裏で動く金の為に命がけの試験をやらされてんのか!?」

 

「今頃、気がつきましたか うずまきナルト君。他にも、この中忍試験は裏で大名達が賭けをしています。第二次試験からは死者も出るとの事で安全地帯で優雅に楽しんでおりますよ。今の君達は、大名達を楽しませる駒でしかありません」

 

 監視カメラが無いところで色々と真実を教えてあげている綺麗な大人の挟間ボンドルド。そんな汚い世界を知り、真実に耐えきれない忍者もいる。そんな連中は、万年下忍で命の危険が無い綺麗な任務ばかりを担当している。

 

「大人って本当にどうしようも無いわね。でも、中忍になる為には通る道だから我慢するのよナルト。サスケ君だって、我慢しているんだから」

 

「おや? 春野サクラさんは勉強面では大変優秀なのでご存じだと思っておりましたが……別に、この中忍試験を受けずとも中忍になれる方法はありますよ。考えた事はありませんか? 年に二回しかない中忍試験、木ノ葉隠れの里ですら合格者の平均数は片手で十分です」

 

「あっ!! そうよ!! 人数が合わないわ」

 

 毎年、忍者アカデミーを数十人単位で卒業する。アカデミー卒業生には中忍以上の担当がついて任務に同行する事となる。毎年、中忍になる人数とアカデミー卒業生の数を鑑みて、スリーマンセルなんて構成は不可能。

 

 つまり、毎年二回の中忍試験以外に中忍になれる方法が存在している事を示唆している。

 

「くっそ、確かにその通りだ。何で、気がつかなかった」

 

「うちはサスケ君、気がつかないのも無理はありません。担当上忍の方が意図的に伏せていたんでしょう。中忍試験で合格者を出したら、大名達の鼻も高くなるので、担当した忍者には色々便宜が図られます。担当していた下忍が死んでも構わないと思わせるほどです」

 

 全員が全員そうだとは一概に言い切れない事実もある。だが、大名から直々に賞賛され、多額の金と叶えられる範囲の望を聞いてくれたりと様々な事も、また事実である。

 

 挟間ボンドルドの言葉を否定しようにも、理論的に成り立っており、嘘だと証明する術が下忍達には無かった。

 

「それで、肝心の中忍になる他の方法を教えてくれってばよ!!」

 

「勿論です。一つ目は経歴ロンダリング。簡単な話、暗部に入隊する事です。暗部を出る時は最低限中忍以上となります。これははたけカカシ上忍が詳しいでしょう」

 

「「「………」」」

 

「二つ目は他里への出向。同盟国へ何年か行く場合に、里はしれっと下忍であっても中忍として派遣します。その方が貰えるお金が多いですからね。無事に出向が終われば、そのまま中忍になります」

 

「「「……」」」

 

「三つ目はコネです。依頼などで大名などの里のスポンサーと親しくなり推薦を受ける事です。主にくノ一や医療忍者はこのパターンが多かったりします。理由は、言わないでも分かりますね?」

 

「「「…」」」

 

「四つ目はヘッドハンティング。有能な忍者は他の里からスカウトがあります。上忍待遇で里に来ないかという話です。まぁ、これは抜け忍扱いにもなるので余程実力がないとお勧めできません」

 

「もう、いいってばよ」

 

 中忍試験に一番意気込んでいた、うずまきナルトが挟間ボンドルドの話を止めた。知りたいと請われたから教えたのに、酷い対応である。

 

 他にも、任務中にビンゴブックに載るほどの忍者を捕獲したとか、偶発的にSランク任務に携わり貢献したとか、規定数以上のCランク及びDランク任務を行ったなど、方法は多種多様存在する。

 

………

……

 

 第二次試験が始まる時間になった。

 

 未だに心の活力が回復しきっていない第七班。だが、時間が止まるわけでもない。挟間ボンドルドは無慈悲に開始を告げる。

 

「皆さん、第二試験の開始です。貴方達には期待しています」

 

 挟間ボンドルドは信じていた。こういう場面は、主人公が馬鹿をやって皆のやる気を回復させる事を。だから、彼に出来る事は見送ることだけだ。

 




みんな大好き二次試験の始まりだ!!

作者の記憶と調べた情報だけで執筆するのも
限界になってきたので、Bookoffにでネタ集めもし無ければいけない。

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