卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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14:混ぜるな危険

 大蛇丸の部下達が発動させた結界術の外で、挟間ボンドルドはビデオカメラを用いて撮影を開始した。その様子に、結界術が解けたタイミングで加勢に入ろうと考えている暗部達から睨まれる。

 

 奇妙な行動が大蛇丸の眼にも止まる。研究されない為、全ての監視カメラを使えなくした。だが、堂々と撮影されてはその意味も薄れる。何もせず待機している無能な暗部より遙かに厄介だと大蛇丸は感じていた。

 

「久しぶりね~、ボンドルド。貴方は、まだこんな里に居たのね。こんな無能な里にいるより、私の所に来ない? 待遇は保証するわよ」

 

「ご無沙汰しております、大蛇丸様。スカウトなら、私より有能な上忍達からにしてください。そうしないと、私が殺されてしまうでしょう」

 

 「それもそうね」と、大蛇丸は納得した。どう考えてもこの場で抜け忍になりますと宣言したら、横に居る暗部だけでなくはたけカカシも敵に加わるだろう。そうなれば、挟間ボンドルドは無事では済まない。

 

 大蛇丸は火影候補だけあって、当時の下忍から上忍までの全ての顔と名前を覚えている。性格面を除けば本当に火影に相応しい男であったのは間違いない。だからこそ、殆ど会話した事がない挟間ボンドルドの事すらしっかりと覚えていた。

 

「きさまぁ!! 敵に様を付けるだと!! 音のスパイか」

 

「何か問題でしたか? 例え敵の忍者であっても、尊敬する相手なら様を付けたとして問題とは思いません。それに、大蛇丸様は木ノ葉隠れの里で伝説の三忍と呼ばれた程の御方です。抜け忍となった事実はあれど、偉人である事実もあります。それに、考えてみてください……万が一、木ノ葉崩しが成功したら、大量の忍者が今後の身の振り方を考える事でしょう。どちらに転んでも問題無いようにするのが忍者ではありませんか?」

 

 暗部の連中は、挟間ボンドルドの言葉をよーーーく理解できている。

 

 忍界大戦の時にはよく見られた事象だ。規模こそ里レベルでは無いが、故郷の里の不利を悟り、小隊ごと有利な国に亡命。そういった連中が暗部にもいる。

 

「止めておけ!! 挟間ボンドルドは医療忍者だ。火影様の治療にも必要な人材だ」

 

「えぇ、だから撮影中の私をしっかり守ってください」

 

 タダで暗部3名の護衛を手に入れた挟間ボンドルド。これで安心して撮影できると喜んでいた。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは目の前の光景に興奮していた。

 

「素晴らしい、素晴らしいです。これ程、高レベルな忍術の応酬など戦争でも見れないでしょう。ただ、初代様と二代目様の動きがイマイチな気がします。二代目様が考案したという穢土転生を完璧にマスターできていないのか、改良の余地があるのかどちらかですかね」

 

「へぇ~。そこまで見抜けるなんて、流石ねボンドルド。無許可で撮影しているんだから、見逃す代わりに意見の一つでも聞きたいわね」

 

 3代目火影が死闘を繰り返す中、混ぜるな危険が相応しい二人の交流が始める。だが、誰も止めようとはしない。大蛇丸の気が変わって、初代と二代目と一緒に闘う事をすれば、三代目火影が更に窮地になるからだ。

 

 だったら、他の事に気を取られていた方が何倍もマシである。

 

「穢土転生のベースとなった忍者の質が作用しているとかは、考えられますか? 火影レベルを穢土転生するのに、並みの忍者で降ろせるとは思えません」

 

「残念ね。穢土転生の素晴らしいところは、生け贄によって左右されない事よ。下忍だろうと上忍だろうと、変わらない事など既に研究済みよ」

 

 穢土転生……二代目以外に使い手がいなかった高難易度の禁術。それに関する研究情報は価値があった。ビデオカメラの前だというのに、気前よく教えてくれる大蛇丸。大蛇丸は、自らを様付けして呼ぶボンドルドの事は嫌いでは無かった。尊敬していると言われて誰も悪い気などしない。

 

「では、意志を縛りすぎなのが原因ですね。穢土転生は忍者の固定概念を覆す術なのはこの目で理解しました。ですが、呼び出した穢土転生体に裏切られる事が無い様に制約で縛り付けていると推測します」

 

「……なるほど。命令を実行しようにも常に穢土転生体が反抗の意志を見せているから、制約と命令が常に行われているという事ね。あり得るわね~、初代と二代目を相手に三代目がここまで長持ちする訳がないもの。他には、何かないかしら?」

 

 自分では気づかなかった視点からのアドバイス。有能な忍者は相手の言う事を全否定しない。取り込むべき意見や視点があるならば、思考し必要可否を判断する。それだけの能力を大蛇丸は持っていた。

 

「今、起爆札で破損した初代様の肉体は中身が空洞ですよね? つまり、生前と比較しても体が軽いと考えます。外見こそ同じですが、中身がそこまで違えば当の本人達にとっては別人の体にも等しいでしょう。力が十全に発揮できない事があっても不思議ではありません」

 

「いいわね、ボンドルド。こういう有意義な話ができる相手が少なくて本当に困るわよね。どうやら、お喋りはココまでのようね。三代目にトドメを刺しにいかなきゃ」

 

 大蛇丸が草薙の剣を取り出し、遂に戦闘を始めた。

 

 大蛇丸を話術だけで長時間止めていた功績は大きい。暗部の連中も文句は言えなかった。その内容が、大蛇丸が更に強くなる可能性がある内容だったとしても。

 

◇◇◇

 

 大蛇丸が舐めプしなければ、三代目を完封できた。だが、原作通りに大蛇丸は窮地に陥り、その両腕を犠牲にした。その結果、結界術を解除し大蛇丸は部下と共に逃亡する。

 

 屍鬼封尽による攻撃が始まってから、初代火影の木遁が視界を遮るだけで無く、死神はカメラにも映らない。つまり……撮影している挟間ボンドルドの暇な時間は終わった。

 

「結界術が解けた!! 挟間ボンドルド、早く火影様の治療を。後の者は、大蛇丸を追えーー」

 

 暗部が格好良く大ジャンプしたところを大蛇丸の部下が糸で纏めて捕縛した。こいつ等は本当に何がしたかったのだろうか。結界術の外で待機していて、術が解けたら大蛇丸共々敵忍者を逃がす結果になった。

 

 実は、こいつらがスパイだったのでは無いかと疑うレベル。

 

「その為の私です。貴方達はもう少し働いてください。自分の仕事に取りかかります。生きてさえいれば、必ず助けましょう。私は医療忍者ですから」

 

 挟間ボンドルドは火影が倒れている場所に急いだ。

 

 現場には、穢土転生で使われた術の残りや火影のサンプルを手に入れられるチャンス。禁書の一部は、火影の血液が無ければ解錠できない物も存在している。

 

「おやおや、草薙の剣の一つが…ありませんか。猿魔に回収されましたか。三代目火影は、既に手遅れです。せめて、見た目くらいは綺麗に取り繕ってあげましょう」

 

 医療忍術を使っていると、他の忍達も火影の元を訪れた。そして、医療忍者が居ながら、なぜ火影を助けられなかったと責める者達も少なからずいる。だが、四代目と同じ封印術を使った事を知ると挟間ボンドルドを責める者も引き下がった。自らの魂を犠牲にして相手を封印する術という程度は里の忍者達も知っていた。

 

………

……

 

 3代目の葬儀が行われる中、挟間ボンドルドは自来也と会う。里の被害は甚大であり、負傷者の手当で医療忍者は近年稀に見る激務だった。

 

「これは、ガマ仙人様。もしかして、お手伝いをしてくださるんですか?」

 

「儂は医療忍術は専門外だ。用件は分かっておるじゃろう?」

 

 自来也が手を出してクイクイと催促する。

 

「お目当ては、三代目の戦闘映像ですか? それが、急ぐ余りテープを入れ忘れてましてね。録画に失敗していたんですよ」

 

「よく言いよる。暗部連中みたいにそんな言い訳で納得する儂だと思うなよ。ボンドルド、何が欲しい? 忍術は、もう教えてやるほどの物は残ってないぞ」

 

 自来也は挟間ボンドルドが用意した最高級遊郭の見返りに本気で忍術の印からコツを提供していた。人生であれほど楽しい時間を過ごした事は無いと言える取材だったので自来也に後悔はなかった。

 

「草薙の剣……一本は、猿魔が持ち帰ったのが分かっています」

 

「無理な要求を突きつけた後に本命を出す。交渉の基本じゃの~、いいから本命をいえ」

 

「妙木山に存在すると言われているガマの油。仙術を極める際に体に塗ると良いと言われる物だと聞き及んでおります。妙木山以外では、すぐに気化する事までは把握しておりますので、特別な容器をコチラで用意します」

 

 仙術を取得した忍者は、片手で足りる。すなわち、この油を武器に転用すれば如何なる強敵であっても、瞬く間に人間を止めさせる事ができる。これを兵器転用しないでどうする。

 

「どこで知ったかは知らぬが、お主は仙人になれる素質は無いと思うぞ。だが、それでよいなら交渉成立だ」

 

 挟間ボンドルドは、コピーしておいた三代目の戦闘画像を提供した。

 




今週はリアルが忙しくなることが分かったので、
更新は土日までお待ち頂けると幸いです!!

きりよく、中忍試験編まで終わったので、
次回からは、綱手様捜索編?的な感じのアレです。


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