お休み予定でしたが、細かい事はゆるしてください。
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木ノ葉崩しは、里に甚大な被害をもたらした。だが、戦争は簡単には終わらない。木ノ葉隠れの里は、砂と音に降伏しない。大蛇丸が風影に化けていたとしても、砂の忍者が里を攻撃し、死者を多数出した事実は変わらない。
やられたままでは面目が立たないので、選抜された報復部隊が結成されて音と砂へと向かった。風影が行方不明である為、原作と異なり全面降伏になるまで一定期間が生じる。どれだけ人的被害が出たか、計算したくないほどだ。
最終的に木ノ葉崩し後、2週間で両国が火の国に全面降伏。木ノ葉隠れの里は、多額の賠償金と資源を手に入れる。最も、金があっても人材が居ないという窮地であった。
他よりマシだとはいえ、木ノ葉隠れの里も窮地であった。これを機会に、現役引退する忍者が後を絶たない。他にも親族などが大怪我をしたので、長期休暇の申請も多い。今では、里に来る依頼書を処理する能力が平時の1/5程度しかなかった。
こんな時にと誰もが思うが、この時こそチャンスであった。本来、忍者は退職や休暇取得が大変難しい。場合によっては、火影承認が必要になるからだ。だが、今のタイミングならば、火影不在である為、各部署に権限が分散している。すなわち、部署の承認だけで認可される。
出来る忍者達は、このシステムを最大限に利用していた。
挟間ボンドルドもその一人。長期休暇を取得するため申請書を携えて総務まで来ていた。しかも、受付に新人が居る時間を狙い撃ちにする。
「えーーと、挟間ボンドルドさんでしたね。休暇理由は、育児休暇。皆さん、この時期に狙い澄ましたかのように申請してきますよね。分かりました、承認します!! 」
「お連れの可愛いお子さんが……」
総務の忍者が申請書を確認する。そこには、しっかりと名前が明記されていた。きょろきょろと周りを物珍しそうに見渡す、銀髪の子供。
「私、プルシュカ!! 挟間プルシュカっていうの!?ここが、パパの仕事場ね~」
「あまりはしゃぐと危ないですよ、プルシュカ。さぁ、里をゆっくり見学してから(大きな)ママの所に行きましょう」
正式な休暇申請が受理された挟間ボンドルドは、愛娘を連れて里の観光へとくりだした。産まれて初めてみる外の世界は、プルシュカには何もかもが輝いて見えていた。
◇◇◇
木ノ葉隠れの里に似つかわしくない格好をした可愛らしい子供――プルシュカ。だが、挟間ボンドルドの肩の上におり、父親も里に似つかわしくないので皆納得していた。彼女は、復興中の里を楽しげに見ていた。あれは、なんだ。これは、なんだろう。外の世界は彼女には大層面白い場所だった。
「ねぇ~、パパ。カツユママはどうして、変化していないといけないの?」
「ママは、一部の界隈では有名人。だから、外だとこうして変化をしていないと大変な事になるんですよ。それと、人が多い場所では
プルシュカの帽子から、兎のような不思議生物が飛び出してきた。外でカツユを連れ歩くのは目立ちすぎる為、こうして変化している。可愛い我が子にいつでも付き添っていられるカツユも大満足であった。
『この日をどれだけ待ちわびた事か!! ほらほら、私とボンドルド様との愛の結晶を見て見て!! 可愛いでしょ』
「おやおや、メーニャも負けじと可愛いです。里の外に出る前に、ダンゴでも食べていきましょう。プルシュカもダンゴで構いませんか?」
挟間ボンドルドの肩の上で満面の笑みを浮かべる少女。
………
……
…
暁コートを着た
「パパは、何のお団子にするの?」
「ゴッホゴホ」
プルシュカが挟間ボンドルドの事をパパと呼ぶと、客の一人がむせかえった。お茶が気管に入り苦しんで居る。
「おやおや、うちはイタチさんではありませんか。ご無沙汰ぶりですね。娘のプルシュカといいます。プルシュカもご挨拶なさい。里の抜け忍で、とっても強い忍者ですよ」
「へぇーーー、挟間プルシュカ。よろしく、オジさん。あと、そっちのオジさんも!!」
子供から見れば、年上はだいたいオジさんであった。
「くく、私をオジさん呼ばわりは構いませんが、イタチさんまでオジさんとは将来性がある子供ですね」
干柿鬼鮫も、オジさん発言に苦笑した。
「娘が失礼を。干柿鬼鮫さん、うちはイタチさん。娘の非礼のお詫びに、お代は私が受け持ちます。それに、ダンゴ屋の外で首を長くしてお待ちの方々も……」
ダンゴ屋の外には、下忍の
はたけカカシと猿飛アスマは、男として挟間ボンドルドには負けていないと思っていた。独身で絶対自分の方が先に結婚すると考えていた。だが、既に子供まで居たことで敗北の味を知った男達。
◇◇◇
水路のほとりで、妻と娘と一緒にくつろぐ挟間一家。
火影同士の戦い程では無いにしろ、上忍とS級指名手配犯の戦いを観戦する。子供にとっては、派手な水しぶき、不思議な爆発と興味深いようだ。
『危ないから、あんまり近付いちゃだめよプルシュカ。ママ、貴方に何かあったら本体を動かしちゃうから』
「もう~、メーニャママは心配性なんだから。私だって、少しは忍術を使えるのよ。それに、何かあってもパパとママが守ってくれるもん」
「ははは、そうでしたね。ですが、忍術は人前で余り多用してはいけませんよ。目立ってもいい事はありません」
と、常識を言った挟間ボンドルド。だが、目の前で人目も気にしない大技を使っている忍者達がいる。説得力の欠片も無い言葉になってしまった。
「すごーーい、すごーーい」
プルシュカにとって、初めて見る忍者同士の殺し合い。その派手さに心が躍っていた。子供が忍者に憧れるのは、これが原因だ。
「楽しい時とは短いもの。勝負がつきました」
万華鏡写輪眼の月読……精神世界の中で何度も殺されるという極悪非道の技。だが、木ノ葉隠れの里の忍者は忍者アカデミー卒業試験、下忍卒業試験、中忍卒業試験である程度の拷問耐性を持っている。それがなければ、はたけカカシも廃人になっていた可能性が濃厚であった。
家族で一家団欒している所、はたけカカシを抱えた猿飛アスマが仲間と共に駆け寄ってくる。長期休暇中の同僚に仕事を持ち込んで来るとは、忍者とはブラック企業である。
「ボンドルド!! 良いところに居た。カカシを診てくれ」
「分かりました。それと、何時も申し上げておりますが、医療忍者を当てにしないでください。何時も側に居るとは限りません」
挟間ボンドルドは治療を始めた。だが、外傷は殆どない。精神的なダメージよる昏倒だと直ぐに判明した。平常時の脈圧と心拍数に戻す事で回復を待つほか手立ては無い。
「ねぇねぇ、おばちゃんは私が治してあげるね。パパより上手にはできないけど、上手いんだから」
「おばちゃんって、私は……嘘でしょ。この子、掌仙術を!?」
夕日紅は、戦闘で負った傷が癒えていくのを見て驚いた。高度な医療忍術を、こんな年端もいかない子供が使ったのだ。親が医療忍者だとはいえ、恐ろしい才能を垣間見る。
「はたけカカシ上忍の治療は終わりました。恐らく、かなり高レベルの幻術を食らったのでしょう。外傷ではなく、精神的な疲労から来る昏睡です。安静にしておけば直に目を覚まします。プルシュカ、実に素晴らしい医療忍術でした」
「私、パパの力になれた?」
「勿論です。貴方が娘で、パパは誇らしいです」
見た目からは想像すらできない完璧な父親像を見せ付けられる上忍達。あの挟間ボンドルドがパパとか口にしている時点で幻術かと本気で疑い。必死で解をする皆。
「感謝するわ、ボンドルド特別上忍。まさか、こんな可愛い子に治療されることになるなんて思ってなかったわ。で、ダンゴ屋に居たと思ったら、何故こんな場所に? 子供を連れてくるような場所じゃないわよ」
「娘と里の観光です。遠出する前に、里を見せておこうと思いましてね」
遠出。その言葉に首を傾げる上忍達。こんな大事な時期に医療忍者が里から出かけるなど許されるのだろうか。不眠不休で働く忍者も多い。加えて、S級の指名手配犯まで現れる始末だ。
「今、里は大事な時期なのよ!! 何処も人手が足りないのに数少ない医療忍者が居なくなるなんて」
「里に居れば安全という神話は崩れました。だからこそ、妻とプルシュカの安全を最優先に考えるのは間違いでしょうか。勿論、無許可の遠出ではありません。里から許可を頂いた上での正式な休暇です。一人の忍者である前に、私は父親。家族を大切にする事がそれほどまでに罪でしょうか」
原作ネームドキャラは良心がある。そこを突けば、イヤとは言えない。なにより、夕日紅は猿飛アスマと恋仲であった。もし、ここで家族を捨てて仕事をしろといってしまえば、妊娠した場合でも仕事を休みませんと自らが宣言するなもの。
「パパ、ママの所に行けないの?」
涙目で訴えるプルシュカ。空気を読んですかさずフォローするのは、流石は挟間ボンドルドの娘であった。芝居であっても、その様子に上忍達の心を抉るダメージが入る。
「そうなってしまうかも知れません。すみません、プルシュカ。次回は、ちゃんとママの所に連れて行ってあげます」
「この間も次回って。一体いつ、ママに会えるの。酷いよ、産まれてからずーーと(おおきな)ママに会った事ないのに、今回は絶対会えるって約束したのに」
想像の斜め上を行く重い話に夕日紅はタジタジだった。そんな複雑な家庭事情など考えていなかった。話の流れ的に、プルシュカは挟間ボンドルドが一人で育てたと聞こえる。更には、実の母親は何かしらの事情で別の場所にいると。
「なぁ、紅。何も言わずに行かせてやるのが仲間ってもんだろう」
「ちょっと、アスマ!! なんで私が完全に悪者みたいに言うのよ。貴方達だって、少なからず同じ事を思っていたでしょう。私だって、そんな事情を知ってたら何も言わなかったわよ」
誰も、泣く子とボンドルドには勝てなかった。
大事な事ですが…ストックはこれで無くなってしまった!!
土日まで本当にお待ちを。