卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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16:抜け忍

 挟間ボンドルドが木ノ葉の里を出た頃、猿飛アスマは総務へと足を運んでいた。彼の狙いは、挟間ボンドルドが提出したという休暇申請書だ。

 

 卑の意志を継ぐ木ノ葉の忍者……その筆頭であった三代目火影。その火影の命令で、九尾事件の被害者であり、人柱力を快く思っていない連中は火影の息の掛かった手練れの忍者によって処理されている。

 

 猿飛アスマもそんな黒い事に手を染めている一人である。忍者である為、任務があれば例え女子供でも手に掛ける。立派な忍者であった。当然、立派な忍者は、正規の手順を踏まずに人様が提出した書類を確認する。

 

「アスマさん、困りますよ。部署が違う方が、書類を閲覧するのは越権行為です」

 

「わりーな。コッチも仕事なんでな。えーーっと、挟間ボンドルドの申請書は……休暇申請少し多くないか。里が緊急事態だってのに」

 

 挟間ボンドルドの書類なんて簡単に見つかると思っていた猿飛アスマの考えが甘かった。この時期だからこそ、大量に申請がある。そして、数十枚めくったところで、ようやく申請書を発見する事ができた。

 

 申請書に不備はない。だが、不備が無ければ、不備を作れば良い。簡単な事だ。

 

「あぁ、挟間ボンドルドさんの書類ですか。風変わりな方ですが、皆さんあの人くらい書類をしっかり作って欲しいです」

 

「ふーーん、中忍試験の時は妻が子供を妊娠していると言っていたな。挟間プルシュカね~」

 

 猿飛アスマの記憶が間違いで無ければ、年齢と子供の成長度合いが合わない。無論、常識では計れないのが忍者だ。血継限界や特異体質の可能性だって存在する。

 

「そうそう、休暇申請を出さずに里を出た忍者がどうなるか知っているか?」

 

「アスマさん、ワタシはこう見えて総務ですよ。知らないと仕事になりません……えっ、何ですかこの札束?」

 

 猿飛アスマは、ニッコリと笑った。

 

「これだけ多い休暇申請書だ。誰が申請に来たかなんて覚えてないだろう。金を受け取って忘れるか、物理的に忘れさせられるか選んで良いぜ。俺はどちらでも手間にならない。だが、賢いなら前者を薦めるね」

 

 今は亡き、父親からの仕事を引き継ぐ男。

 

 猿飛アスマは、挟間ボンドルドの書類に火を付けた。だが、総務もそれを止める事はできない。上忍の猿飛アスマ。猿飛というネームバリューは、未だに健在であった。

 

「――」

 

「交渉成立って事だな。大丈夫さ、何かあったら(お前等が)責任を取るから」

 

 猿飛アスマは、心の中で謝った。悪いな、恨みは無いが親父から依頼されている仕事は無期限なんだと。地獄で挟間ボンドルドが三代目火影に会えれば、息子がしっかりと任務を真っ当したと伝わる。言わば、メッセンジャーにするつもりでもあった。

 

 こうして、挟間ボンドルドの所に暗部の卯月夕顔が猿飛アスマによって派遣された。火影亡き今、暗部の権限を一時的に親族であった猿飛アスマが握っている。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、娘のプルシュカを"タマウガチ"の背に乗せて旅路を楽しんでいた。プルシュカにとって父親との初めての旅行……しかも、大きな母親(カツユ)に会う為であり、楽しさは倍増している。

 

「ねぇねぇ、パパ!! ママって本当にすごーーく!! すっごく大きいんだよね!?」

 

「えぇ、木ノ葉隠れの里で一番大きな建物と同じ程度のサイズですよ。それでも何十分の一程度ですけどね」

 

『全くです、未だに誰も完全に私を呼び出せた人が居ないほどなんです。でも、プルシュカちゃんなら出来るかも知れません。だって、ママとパパの子ですもん』

 

 娘の膝の上で抱かれるメーニャという謎生物に擬態化しているカツユ。彼女も大概親ばかであるが……うずまき一族とうちは一族の両方の血を兼ね備えた彼女ならば、チャンスはある。更に、挟間ボンドルドが加わる。足りないチャクラをカートリッジで補充すればいいという回答が既に出ている。

 

『パパ、ママ!! 僕の事も忘れたら駄目だからね!! 』

 

「勿論。貴方は、プルシュカの兄的ポジションです。兄は妹を守るんですよ」

 

 挟間ボンドルドは、"タマウガチ"を撫でる。犬のようにぶるんぶるん尻尾を振り、周辺の草木をなぎ払っている。大型の白い犬もどきに乗る美少女、それを見守る温かい両親。まさに、幸せの模範回答がそこにはあった。

 

………

……

 

 挟間一家が、宿場町へと歩いていると道中で身に覚えのある二人に出くわした。うずまきナルトと自来也だ。螺旋丸という高等忍術を習得する為、訓練をしていた。だが、高等忍術と呼ばれるだけあって、誰もが簡単に習得できる物では無い。

 

 知り合いに旅路で会って無視する様な人間ではない挟間ボンドルド。

 

「これはこれは、ガマ仙人様とうずまきナルト君ではありませんか。奇遇ですね、このような場所で術の特訓ですか?」

 

「ボンドルドか。……そっちのちっこいのは?」

 

 "タマウガチ"が自来也から距離を保つ。相手の間合いを察して、瞬時にプルシュカを連れて逃亡できる構えをしていた。勘が優れているだけあって、闘っても勝てない相手には逃亡が一番だと本能で理解している。

 

 自来也とて"タマウガチ"が危険動物である事は見ただけで分かった。少なくとも、現在のうずまきナルトでは太刀打ちできないだろうと。

 

「私、挟間プルシュカ!! よろしくね、おじいさん!! そっちの金髪のお兄ちゃんも」

 

「おじいさんって……儂ってそんなに年に見えるかのう? この白髪は、ファッションじゃ!! ファッション!!」

 

「よろしくってばよ。で、なんで挟間特別上忍がこんな場所にいるんの? もしかして、俺の治療をしてくれるとか!? それとも、あの波の国で見せてくれたスパラ何チャラって必殺技を教えてくれるとか!!」

 

 忍術が使える者ならば、誰もが憧れる必殺技。

 

 必殺技とは……その名の通り、必ず殺す技。

 

 相手を一撃で殺す事で、生存率を上げる。医療忍者は、最後まで生き残って仲間を治療する為、攻撃より回避が最優先とされる。だが、異色の医療忍者挟間ボンドルドは、防御力と回復力、それと必殺技で相手を殺す。

 

「うずまきナルト君も必殺技が欲しいという事ですか」

 

「そうだってばよ!! エロ仙人から教わっているけど、なかなか進まなくて……」

 

 挟間ボンドルドは、自来也の意思を確認した。修行途中に、外部から雑念を入れるのはよいのか判断に迷ったからだ。彼は、自来也との敵対の意志はない。強い者には巻かれるタイプである。

 

 行き詰まった修行の息抜きも兼ねて挟間ボンドルドの必殺技を披露する事になった。螺旋丸がどれほど優れた術であるかを他の術と比較し、理解させる事で修行へ熱を入れさせる算段を立てていた。

 

 だが、その時、第三者の気配。

 

「ボンドルド、お主の客人かの~?」

 

 挟間ボンドルドの前に、木ノ葉隠れの暗部が現れた。暗部の名は、卯月夕顔。

 

「抜け忍、挟間ボンドルド。殺す前に聞きたい事がある。砂隠れと共闘してハヤテを殺したのは本当か」

 

「実に面白い発言をなさいますね。休暇申請が受理されている忍者を抜け忍とは酷い物言いです。まぁ、その殺気から何を言っても無駄ですね。ガマ仙人様、必殺技をみせる代わりに正当防衛の証明をお願いしますね。では、うずまきナルト君……必殺技がどういう術かをお見せしましょう」

 

 自来也は、どちらにも加勢しない。

 

 忍者の世界、勝った者が正義である。それに、長い人生で彼はこのような状況など腐るほど見てきた。欺し欺されが忍びの世界。

 




時期的に忙しくて吐きそう……。
話が進まなくてごめんなさい。

必殺技とは、食らった時点で相手を殺す技で無ければならない。

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