卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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18:医師

 木ノ葉隠れの里において、三代目が死んだ今、多大な権力を掌握しているのが御意見番の水戸門ホムラ、うたたねコハル。そして、木ノ葉の暗部養成部門「根」の創設者である志村ダンゾウだ。

 

 そんな三人が一介に集まっていた。

 

「挟間ボンドルドが勝ったようだな。それで、次も誰か送るのか? もしも、本気で奴を殺す気があるなら、「根」からも精鋭を出そう」

 

「不要じゃ、ダンゾウ。砂隠れと同盟が締結した状況で、不穏な種はこれで摘まれた。それに、挟間ボンドルドはこの状況になっても帰属意識は高いようだ。九尾の子とも、繋がりがあるようだから、抹殺対象から除外してもイイ頃合いだろう」

 

 水戸門ホムラは、里の維持を最優先に考えている。だからこそ、再同盟を組んだ砂隠れと問題になる種は摘んでおきたかった。その種というのが、暗部の卯月夕顔だ。中忍試験中に恋人を砂隠れに殺された。その復讐心は強く、いつ爆発するか分からない。

 

 御意見番という地位を活用すれば暗部の一人くらい亡き者にするのは難しくない。

 

 だが、それでは意味が無い。自らの手を一切汚さず、第三者が自発的に行動できるように場を整える。自らの評価を一切下げること無く事を解決させる。

 

「やはり、アスマに暗部の権限を一時的に持たせたのは正解じゃったな。ヒルゼンが死んでもなお行動してくれるのだから扱いやすいわい。総務には、此方から手を回しておこう」

 

 もう一人の御意見番であるうたたねコハルがお茶を飲みながら、猿飛アスマの行動を評価した。

 

 木ノ葉隠れの里では、九尾を宿す うずまきナルトを丁重に扱っている。目的は、ただ一つ……飼い殺しだ。その為、帰属意識を高めるのが大事な事だ。だからこそ、九尾に排他的な連中を少しずつ闇へと葬ったり、暗部から腕利きのはたけカカシを担当上忍として付けたり手筈を整えた。

 

 更には、うずまきナルトが思いを寄せる春野サクラが同じ班になった事も彼等の手の内である。

 

「九尾のチャクラを完全に制御下におけるならよし、おけない場合は例の計画を進める。ダンゾウ――分かっているな?」

 

「あぁ、分かっている」

 

 尾獣を使ったチャクラ爆弾の研究。その膨大なチャクラを破壊という一点利用する事で、周囲の環境ごとなぎ払う人型爆弾。人道に反する計画が裏では進められていた。原理は至って単純……起爆札の原理を尾獣で行う。

 

「アスマから聞いた情報だが、挟間ボンドルドがハゲ治療を行える。研究成果として提出はされておらん。不在の今、奴の家を隅々まで洗っておけ。チャクラ爆弾の研究もいざとなれば奴の責任にする。今のうちに証拠も仕込んでおけ」

 

「相変わらず人使いが荒い。この年になってからハゲ治療でもしたいのか。まぁ、「根」としては、当然請け負う。対価として、先日提出した予算に判子くらいは貰えるのだろうな」

 

 木ノ葉隠れの里は、人的資源は減少している。だが、金銭面では余裕があった。砂隠れと音隠れからの賠償金。更には、相続人が居ない死者の財産を没収。復興税などを掛けていた。

 

 卑の意志は、三代目亡き今も確実に受け継がれていた。

 

◇◇◇

 

 "タマウガチ"は、久しぶりに鮮度の良い人肉を食べられて大満足だった。忍者の肉は、栄養価が高く、口寄せ動物達には人気であった。その為、強い口寄せ動物は死後にその肉体を貰うという条件で契約する者達も居るほどだ。

 

 挟間ボンドルドは、卯月夕顔が死んでからしっかりと遺体を処理した。身ぐるみを剥いだ上で、口寄せ動物の餌として。

 

「パパ、暇~。まだ、着かないの?」

 

「そうですね~、近くの宿場町で一泊していきましょうか。ガマ仙人様やうずまきナルト君もこの先にいるでしょうからね」

 

 自来也達は、挟間ボンドルドが死体処理をしている間に先にある宿場町へと向かっていた。その道のプロが、忍者の解体ショーを披露してくれるのに見ないで先に行ったのだ。人体の仕組みを理解する機会だったのに、非常に惜しいことだ。

 

………

……

 

 宿場町の方へ進むと挟間ボンドルド達の前方から暁コートを着た二人組が駆けてきた。考えようによっては、万華鏡写輪眼が向こうからやってきたとも捉えられる。だが、その側にいる干柿鬼鮫という特級の存在が厄介であった。

 

 だが、娘の為にもこのチャンスを見逃さないのは父親である。

 

「おやおや、またお会い致しましたね。うちはイタチさん、干柿鬼鮫さん」

 

「こんな所にも木ノ葉の忍者ですか、ここは私がやりましょう」

 

 干柿鬼鮫が前に出る。こんな見た目の男だが、仲間思いのいい人だ。干柿鬼鮫以外の忍者がパートナーだったら、今頃は万華鏡写輪眼が奪われていただろう。

 

「ご安心ください。どうにも、私は木ノ葉隠れの里から抜け忍扱いされているので、フリーの忍者です。私は医療忍者ですから、うちはイタチさんを診てあげます。病人を放置しておくなど人道に反します」

 

「そっちの叔父(・・)さんは、体調が悪そうだね。パパは、凄腕なんだから診て貰えばすぐ良くなるよ」

 

 無垢なプルシュカの前に、良心派の暁二人は屈した。下手な事をすれば、娘共々殺すという事を条件に治療する事になった。

 

………

……

 

 研究施設から機材を取り寄せて、可能な限りの調査を行う挟間ボンドルド。あまりの準備の良さに、怪しさが倍増する。

 

「うちはイタチさん、貴方は殆ど眼が見えていませんね。視力を数字で表すならば0.02程度です。よく、そんな眼で戦えていましたね」

 

「あぁ、写輪眼があれどギリギリだがな」

 

 うちはイタチの眼は、瞳力を使う度に悪化している。その悪化を軽減する方法は、現代医学では存在しない。だが、目が悪いなら対応は実に簡単だ。

 

「視力低下の原因は、恐らく強すぎる瞳術です。このままでは、失明を避けられません。医師としては、早急な移植手術を勧めるのですが……貴方の目は血継限界の結晶です。瞳術を捨てる覚悟ができたら、いつでも声をかけてください」

 

「そうか、やはりどうにも出来ないか」

 

 挟間ボンドルドの医療忍術の腕前を知っていた為、うちはイタチも僅かな期待はしていた。掌仙術による治療で多少改善はしたが、根本的な問題は解決に至らない。

 

「ですが、目が悪いなら補助具を使えば当座の問題は解決します。一応、うちはイタチさんの視力に合わせた眼鏡を用意しました。後は、まだ世に公開していないコンタクトレンズなる忍具も……」

 

「えっ」

 

 うちはイタチにとって、寝耳に水であった。挟間ボンドルドから眼鏡という言葉を聞くまでその発想が無かった。失明しているわけで無いので、眼鏡で補えば当座は凌げる。その事実に今まで気がつかなかったのかと。

 

「良かったじゃありませんか、イタチさん」

 

「見て見てパパ!! このオジさん、パパと同じくらい背が高いの!? 」

 

 プルシュカを肩車する干柿鬼鮫。

 

 コンタクトレンズという忍具を眼に付けた うちはイタチ……最初に眼に飛び込んできたのが幼女を肩車している相方であった。あまりのシュールな光景に幻術を疑う。

 

「それで、お代は幾らほど払えば?」

 

「木ノ葉の里で貴方達の忍術に娘が大変喜んでいたので、そのお礼です。それに、医師として当然の事をしたまでです」

 

「ハッハッハ!! 聞きましたか、イタチさん。私も長い事、忍者をやっていますがここまで胡散臭い台詞は初めて聞きましたよ。あぁ、失礼……悪気は無いですよ。お金の代わりに、鮫肌の鱗を一枚差し上げましょう。お嬢さんの首飾りにでもしてあげてください。きっと、役に立ちますよ」

 

 干柿鬼鮫は、プルシュカの事を気に入ったらしく惜しげも無く、鮫肌の鱗を一枚剥ぎ取って渡してきた。

 

「プルシュカ、人から物を貰ったらなんて言うのかな?」

 

「ありがとう!! 鬼鮫オジさん」

 

 情けは人のためならず とは、この事である。いい事をしたら、巡り巡って自分に返ってくる。挟間ボンドルドは、仮面の下で最高の笑顔になっていた。




リアルが忙しいので来週の投稿がお約束出来ない状況。
なので、今回の投稿でしばらく許してください。

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