卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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投稿が出来ずに申し訳ありません。

感想や評価本当にありがとうございます!!

読者の皆様から、執筆意欲となる感想なども頂いているにも関わらずorz


20:家族

 綱手は、カツユの声を聞き驚いた。

 

 蛞蝓の姿をしていないカツユを見るのが初めてであった。勿論、チャクラがあるので忍術が使えないという事は理論上無い。だが、一度もそんな素振りを見せた事はない。

 

 【蛞蝓 = カツユ】という固定概念が崩れそうになるが、綱手は必死に考えた。

 

「カツユが母親だと!? あぁ、分かった!! そのメーニャの母親がカツユなのか」

 

 綱手は、カツユが去り際に産休と育休届けを出した事を思い出した。

 

 つまりメーニャは、二代目カツユ。綱手の脳内では、綱手とボンドルドの子供がプルシュカとなっていた。どうして記憶を封印したから分からないが、深い事情があって思い出せないのだろうと察する。

 

 腐っても木ノ葉隠れの伝説の三忍と呼ばれ、千住の血を引く女だ。その子孫ともなれば、人質としての価値も計り知れにない。自らの記憶すら封印して情報が漏洩しないようにした可能性もあると考えた。

 

『どうしてそうなるんですか!! プルシュカちゃんは、私がお腹を痛めて産んだ可愛い可愛い愛娘なんです。それなのに、急に母親面で立場を乗っ取るつもりですか。これだから、卑の意志を継ぐ人達は~』

 

 カツユからしたら当然の反応だ。

 

 娘を紹介しに来たら契約者が母親だと名乗りをあげる。産みの親でも育ての親でもないのに、周りから言われてその気になってしまったのだ。カツユとしては面白くない。

 

「考えても見ろ、カツユ。ボンドルドは、人間。カツユは、蛞蝓。カツユが雌として類い希なる女子力を持っていたとしても、越えられない壁という物がある。医療忍術の開祖が言うのだから間違いない」

 

『綱手様、医療忍術は確かに素晴らしい物です。医療忍術だけでは、不可能かも知れません。ですが、お忘れですか? ボンドルド様は、忍術より科学方面の方が優れている事を。後、あんまり母親面していると契約を更新してあげませんよ』

 

「まぁまぁ、綱手様も落ち着いてください。カツユ様も。推測で物を言うより、ボンドルドさんに聞いてみましょうよ。で、正直……プルシュカちゃんは、誰の子供なんですか? ワンチャン、私って事はありませんかね」

 

 驚愕な事ばかりで一周回って、最初に冷静になったシズネ。

 

 伊達に、長年綱手に付き添って無理難題や事後処理をしてきたわけではない。伝説のカモと言われるまでになった綱手が今になってまで生きているのは、彼女がいたからである。

 

 普通、多重債務者である綱手に金を貸す業者などいない。それも、常識的に考えて忍者に金を貸すなど、ありえない。分身の術、変化の術など卑劣な術がおおい。一般人にしたら本人確認が出来ない。更にいつ死ぬか分からないご身分だ。貸す方のリスクが高すぎる。

 

 ならば、どうして綱手が借金が出来るのかというと、返済の実績があるからだ。だが、その返済を一手に請け負っているのがシズネ。綱手が次の宿場町という名の賭博場に行く前日に、金を巻き上げた連中から薬と幻術で金を回収し返済していた。

 

 だが、それだと大勝した賭博場の運営側が何時か気がつく可能性がある。勘の良い賭博運営側は、木ノ葉隠れの里の暗部が突入する。そして、罪を捏造して存在自体を抹消している。犯罪すれすれの後ろ暗い連中が何人死んでも、一般人からしたらどうでもいいので騒ぎにもならない。

 

 御意見番の後ろ盾を持つシズネならばこそ、出来る芸当だ。

 

「何度も言いますが、私の子供です。そして、カツユの子である事も間違いありません。何を勘違いされたか分かりませんが、綱手様は全く関係ありません」

 

 挟間ボンドルドの言葉に、今までの発言を顧みてマズイと考える自来也。

 

「……儂は、そうだと思っていたぞ!! いやーー、良かった。よくみれば、カツユに似た美声だしな。白い肌や可愛らしい性格なんてそっくりではないか。儂の見立てでは、後数年もすれば絶世の美少女、いずれは美女で間違いない」

 

「俺だって、分かっていたってばよ!! 流石に50代で出産はねーって事くらい常識だってばよ」

 

 自来也が挟間ボンドルドから真実を告げられて、華麗に掌を返す。母親としての自覚などと妄言を全て無かった事にして、カツユを褒めちぎる。それに便乗して、うずまきナルトも自らの罪を精算しようとする。

 

『二人とも分かっていますね。そうです!! プルシュカちゃんは、私の可愛い可愛い娘なんです。でも、娘はあげませんからね。欲しかったら、私の本体を倒してからにして貰います』

 

 場が和んだ。娘が母親似だと言われて喜ぶカツユ。

 

 だが、そんな場に取り残された綱手としては、文句の一つも言いたいところだった。だが、ぐっと耐える。カツユという存在は、綱手にとっても大事な存在。ココは、我慢するのが大人だと理解していた。

 

 冷静になりカツユの実子だと想定した場合、いくつかの問題のクリアが必須になる。綱手は、そこに気がついた。伊達に、医療忍術の開祖ではない。

 

「ボンドルド、貴様に聞きたい事がある。母胎はどこで仕入れた?」

 

「流石、綱手様です。カツユの実子だと確信した時点で、プルシュカの出生について当たりを付けましたね。母胎は、波の国で売り込まれた商品を使いました。足は着きません」

 

「貴様は、自分が行った事を理解しているのか? 生命への冒涜だぞ」

 

「二代目火影の穢土転生も同じでしょう。それに、綱手様とて似たような事は試された事があるでしょう。著者:千手綱手『今日の献立1000種』――忍術視点ではありましたが、実に興味深い研究成果でした」

 

 綱手は、嘗て忍界戦争で恋人と弟を失った。

 

 魂を口寄せして別人に転生させる事ができないか研究をしていた過去がある。赤子に対して魂を定着させる研究……それは、すなわち本来居たはずの魂を押しのける事を意味していた。

 

 赤子というのは、魂の定着が不安定であり研究材料としては最適解であった。

 

「貴様は、アレを読み解いたのか」

 

「おやおや、それほどまでにアレを解読できたのが疑問でしたか。これでも、綱手様の教えを学び、吸収し、発展させたと自負しております。安心してください、綱手様より人の命を弄んでおりませんよ」

 

 先駆者がいたので挟間ボンドルドの研究では、これ(・・)については死人はあまりでていない。寧ろ、最小限の犠牲で溢れる程の才能を持った娘を産みだした。

 

「カツユ!! なぜ、ボンドルドの研究に手を貸した!? 」

 

「カツユを責めないでください。愛した女性と子を成したいと思うのは不思議な事でしょうか。血は薄いですが、私の子です」

 

 挟間ボンドルドが両手を広げて、その存在を誇示する。そして、娘への愛を語る。その様子に、酒場の者達も耳を貸していた。

 

「薄い? ボンドルドの子ではないのか。まぁ、お前が子供を作れるわけも……」

 

 ゾクリ

 

 背筋が凍るような殺意に、綱手が言葉を止めた。それ以上、余計な一言を言っていたら間違いなく口寄せ契約が解除されていた。

 

 愛する夫を悪く言うような契約主など要らぬと考えるカツユ。

 

「綱手様、家族とは血のつながりのみを言うのでしょうか。私は、そうは考えません。慈しみあう心が愛する二人を家族たらしめるのです。血は、その助けに過ぎません。愛、愛ですよ綱手様。家族とは、他人同士が作り上げるものです。そこに人種や種族など些細な問題です」

 

「パパーー!! 二人じゃなくて、プルシュカもいれて三人で家族だよ~」

 

 父親の胸に飛び込んでくるプルシュカ。それを抱き上げて肩に乗せる挟間ボンドルド。

 

『そうでしたね、ボンドルド様とプルシュカちゃん。そして、私で家族です』

 

「えぇ、そうでしたね。私とした事がすみません、プルシュカ」

 

 パチパチパチ

 

 周囲から喝采される挟間一家。

 

 その演説を聴いた自来也、うずまきナルト、シズネも同様に拍手した。彼等の中では、挟間ボンドルドの株がストップ高。忍者という世知辛い職業のなかで、ここまで立派な父親は希有だ。

 

 だが、綱手だけが計算をしていた。大蛇丸と挟間ボンドルドの両名に味方して、美味しい何処取りできないかと。彼女は、まだかつての恋人と弟の事を諦めていない。彼女の前には、過去に出来なかった事を実現できる道が二つ用意されている。

 




ごめんなさい、リアルがくっそ忙しくて。
六月及び七月の投稿は絶望的です。

不定期投稿はあるかもしれませんが
一旦は生活を守るため、休載させてくだちゃい。

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