卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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28:額当ての正しい使い方

 挟間ボンドルドは、火影よりSランク任務を受領した。

 

 そして、下準備も兼ねて秘密の施設へと足を運ぶ。そこで、彼の愛娘であるプルシュカが暁コートを着て何やら怪しげな儀式に参加している。

 

「儀式は順調ですか?プルシュカ」

 

「パパ。お帰りなさい。うん、順調だよ」

 

 伝説の三忍や暁メンバーから忍術指導を受け、プルシュカはメキメキと頭角を現してきた。同年代では、まず間違いなく最強クラスである。超一流の指導を受け、才能もあり、血継限界もある。

 

「それは良かった。私は少しSランク任務で里から離れます。定期的に連絡はしますので、何かあればママを頼るんですよ」

 

『ボンドルド様、プルシュカの事は任せて置いてください。プルシュカちゃん、カートリッジを追加しました。チャクラ消費を気にしないで良いですからね。そんな儀式、直ぐ終わらせてママと遊びましょう』

 

 最年少で暁メンバー入りを果たしたプルシュカ。暁の現役メンバーも、見ず知らずの野郎を追加するくらいなら、往診の際に医師が連れてくる才能豊かな子供をメンバーにした方が良いという結論に至った。

 

 当然だが、その存在はメンバー以外にはバレていない。そもそも、あんな目立つコートを着て歩くことは無いからバレるはずもない。なにより、こんな年端もいかない子供が暁のメンバーなんて誰が信じるだろうか。

 

「頼みましたよ、カツユ」

 

 挟間ボンドルドは、愛妻(カツユ)愛娘(プルシュカ)と別れ、同盟国へと足を運ぶ。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、口寄せ動物――ベニクチナワを呼び出した。その背に乗り、風の国を目指す。今回の任務で大事な事は、決して木ノ葉隠れの里の仕業とバレない事だ。

 

 よって、忍術で変装するだけでなく一度他国を経由する事で、犯人を特定できないようにする事が大事だ。

 

「地理的に考えて、岩隠れの里の仕業に見せるべきでしょうね」

 

『じゃあ、進路は北西。落ちないようにね』

 

「えぇ、気遣い感謝します」

 

 挟間ボンドルドは、ベニクチナワを優しく撫でる。

 

 空を移動できる貴重な口寄せ動物である。見た目は大きなナマズだが、コレで何故空中を移動出来るのか謎な生物だ。

 

 岩隠れの里の額当てを付ける。正直、挟間ボンドルドはこの行為に意味があるか謎であった。こんな額当てなんて戦争で幾らでも手に入った。今回のような任務に備えて各国が他国の忍者の死体から略奪した品がいくつもある。

 

 だが、なぜか…忍者達はこの額当てで、相手の里を特定する。それが嘘である可能性を考えない。確かに、暁のようなS級犯罪者であっても、抜けた里の額当てを付けるなど謎な現実はあった。

 

 それを逆手にとるやり方――むしろ、コレこそが額当ての正しい使い方だ。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、どのような方法で任務を遂行するか考えていた。彼が持つ忍術は、類を見ないほど特異だ。だからこそ、下手に忍術を使えばそこから足が付く可能性がある。態々他国を経由し、警戒網を潜って風の国に潜入した事が全て無駄になる。

 

 しかし、ヒッソリと集落が幾つも壊滅しただけでは、注意を引きつけられない。今回の任務の目的は、陽動による暁の支援だ。彼の元に砂隠れの里の精鋭が向かわないように注意を引きつける必要がある。

 

「つまり、メッセンジャー以外は皆殺しにしろと言うことですか。火影様は、私が医療忍者であるのを忘れているかと思いそうです。ですが、コレも仕事です」

 

 この日の為に、挟間ボンドルドはカードリッジをフル装備。彼の重装甲を貫通し、ダメージを与えられるであろう風影は既に居ない。更に言えば、風の国周辺にある集落では守備をしている忍者など居ないも同然。

 

『掃除が終わったら、食べていい?』

 

「構いませんよ。では、終わったら呼びますので待っていてください。少し、大きな子を呼び寄せます」

 

 挟間ボンドルドは、対人特化といっても過言でない忍術が多い。その為、広く浅い広範囲殲滅の忍術は不得手といえる。だが、それならば得意なモノを呼び寄せれば良い。だというのに、忍者とはなぜか自前で何でもやりたがる者がおおかった。

 

 ベニクチナワを戻し、空から自由落下を楽しむ挟間ボンドルド。超重量装備の男が空からダイレクトエントリーをしてくるのだから、落下地点の建物が程よく崩壊する。

 

 ズドンという鈍い音と共に、地響きが鳴り渡り、集落の者達が何事かと駆け寄ってくる。建物崩壊による砂埃が開けると、岩隠れの額当てを付けた平凡な風体をした男が現れた。何処にでもいそうな感じ…それが大事である。

 

「い、岩隠れの忍びだ!!」

 

「おやおやおや、ようこそと歓迎はして頂けないのですね。悪く思わないでくださいね。口寄せの術――リュウサザイ」

 

 スポーン

 スポーン

 

 挟間ボンドルドのカートリッジが二本失われる。莫大なチャクラを食らう口寄せ動物。現時点で、彼が単独で呼ぶ事が可能な最大戦闘力の一角。見た目だけで言えば、スタイリッシュな巨大キリンというのが相応しい。だが、衝撃を受けると破裂する毒の鱗を持つ。

 

 忍者にとって壁一面の的みたいなリュウサザイ。当然、現地防衛に当たる者や偶然居合わせた忍者などは応戦する事になる。それが運の尽きとも知らず。

 

『パパ、そこ、巻き込まれる』

 

「問題ありません。装備の耐久テストです。鉄分も十分補給可能ですので、遠慮は不要です。それに、目立つように派手でなければ砂隠れの里が襲撃に気がつけないでしょう。そうそう、多少は撃ち漏らしてよいです。メッセンジャーは必要ですから」

 

 岩隠れの里が暁襲来に合わせたかのように襲撃してきたと情報が伝達される。現地勢力の鎮圧と報復部隊が即座に結成され、砂隠れの里は木ノ葉隠れの里の思惑どおりに動く事となった。砂隠れの里上層部は、岩隠れの里と暁とのズブズブの関係を疑い始める。

 

 そんな原因の一端を作った挟間ボンドルド討伐にテマリ率いる砂隠れの精鋭部隊が派遣される事になる。

 




テマリって『祝福』持ちですよね。

次話『その身体…是非欲しい』
まじ、性的な意味なしで言葉が似合うのは彼以外いないでしょう。

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