卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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29:その身体…是非欲しい

 死とは、これ以上苦痛を与えられない。当然な事ではあるが、コレを理解できる者は少ない。そもそも、死んだ方が楽になれるだとか想像すら出来ないだろう。だが、カートリッジに詰め込まれたチャクラ持ちは、理解していた。

 

 無駄に優秀過ぎる挟間ボンドルドの医療忍術も相まって、何日も意識を保ち生きながらえてしまう。しかも死ぬまでチャクラを吸い上げられる。本来、人間は死を恐れて全てを出し切ることはできない。だが、肉体という殻が壊れ、死を望むカートリッジ達は挟間ボンドルドが望む以上のチャクラを振り絞る。

 

「こんなことなら、大蛇丸様にもご同伴願うべきでした。これだけの生け贄があれば、更に体調が改善できたでしょうに。まぁ、妊婦を戦場に連れ出すのはよろしくありませんね。仕事と家庭の両立で大変でしょうから」

 

 血の匂いと焼ける集落。大災害にでも見舞われたかのような、惨状だ。せめてもの救いは、生き残りが僅かにいること。彼等は、生き残っただけで全ての運を使い切った。

 

 挟間ボンドルドが生き残りの頭蓋骨を切開し、脳に針を差し込みグチャグチャといじくり回す。

 

「あっあぁ」

 

「安心してください。私は医師ですので、拷問はしません。ですが、体に聞くのは得意な方です。避難所の場所を教えてください」

 

 どの集落にも避難所が備えられている。敵勢力が来た場合に、味方が来るまで逃げ隠れする場所だ。部外者には見つかりづらい場所にある。そこには、女子供などが避難している場合が多く、大抵の者は敵にこの場所を死んでも教えない。

 

 なんせ、家族の生死が掛かっている。だから、時間を掛けずに体に…脳に聞いている。

 

 グチャグチャ

 

「あっあ……しゅ、集会場の…ゆ、ゆかした」

 

「定番ですね。『祝福』を回収するだけ、痛みを感じる事は無いでしょう。それに、目撃者は必要ですから、大丈夫ですよ。運が良ければ、生き残れます」

 

 突然の忍者襲撃でも生き残った。普通これだけでも運が良いことだ。つまり、生き残れるだけの何かを持っているという事になる。それは、運なのか『祝福』なのか。挟間ボンドルドは後者であると考えている。

 

 世の中、生き残るべき人間が生き残る。そんな者達から、『祝福』を回収する。

 

 リュウサザイによる広範囲殲滅で壊滅状態に追い込む。

 ベニクチナワが建築物を食い散らかすついでに、金品も回収する。

 挟間ボンドルドが勇敢にも立ち向かってくるチャクラ持ちを倒し、尋問してからカートリッジに加工する。そして、避難所で『祝福』の回収。

 

 全くもって、忍者らしい仕事だ。

 

 そんな事を繰り返し、5つめの集落で遂に砂隠れの里の精鋭部隊が挟間ボンドルドに追いついた。

 

 

◇◇◇

 

 テマリは、大名達が危惧していた事態が本当に発生した事に悩んでいた。

 

 彼女は、こんな絶妙なタイミングで襲撃してくる敵など居ないと考えていた。泥沼の殺し合いに発展する可能性があるから、やるからには全滅させるという覚悟が必要になる。

 

 だが現実に、国境付近の集落が幾つも壊滅させられたという報告が届き、彼女の計算に狂いが生じた。彼女は、里の上層部が国防優先の為、風影奪還の主体を他国に任せている事を抗議していた。

 

 つまり、彼女の立ち位置は『里上層部の命令で泣く泣く国防を優先させられた悲劇の女』『弟思いの良い姉』であった。

 

 更に言えば、風影奪還が成功し他国からの攻撃が無ければ、上層部と事を構える考えがあった。『里の長を他国の忍びが助ける事態になった事を責めて、総入れ替えする』算段まである。風影奪還が失敗したならば、『砂隠れの里の忍者がいれば、成功した可能性があったと上層部を一掃する』算段もある。

 

 だというのに、本当に他国からの攻撃があったらその二つのやり方が使えなくなる。この戦いで勝っても負けても里上層部の言う事が正しかったとなり、上層部の権力が増す。現状テマリは、負ければ死ぬ、勝っても里上層部の権力が増して、立場が悪くなるという負のスパイラルに嵌まる。

 

 大事な事だが、里の権力者達の世代は、人柱力を良く思っていない。それに、我愛羅という存在自体を嫌っている人間も多い。物理的な力があるからこそ黙って従っていたが、抑止力の風影はいない。ならば、我愛羅の支持基盤を削ぐ機会が今であるという上層部の結論。

 

 それが、危険な最前線に風影の姉であるテマリが向かわされた最大の理由だ。

 

「警戒を怠るな。敵勢力の排除より、人命を優先しろ」

 

「分かりました。――テマリ様!! あそこに人が」

 

 テマリの部下が、正面から歩いてくる一人の忍者を発見した。岩隠れの額当てを付けた忍者。砂隠れの精鋭部隊を前に臆する事無く現れる。

 

 臨戦態勢にはいりテマリが前にでる。

 

「一体何が目的でこんな事を!分かっているのか」

 

「勿論です。あぁ、素晴らしい。貴方からは強い『祝福』の気配を感じます。その身体…是非欲しい」

 

 風貌から想像できないほど異質な気配を漂わせる岩隠れの忍者。それに、忍者の後方にいる巨大な口寄せ動物。部隊を二つに分けて対応をする事を決める。

 

 大事な事だが、忍者業界……どの里の上層部も黒い奴は多い。当然、その息が掛かった者が精鋭部隊にもいる。出来すぎる弟を持った彼女の運命は、これから決まる事になる。

 




若すぎる革新派のトップなんて、旧体制の者達は望んでないのよね!
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