卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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何時もありがとうございます!!




03:可愛いですね

 下忍達は、挟間ボンドルドのメンタルケアのお陰で任務に忠実であった。担当上忍としても従順で勤勉な下忍が増えた事を大変喜ばしく思っている。年齢的に子供は自己の実力を過信して、毎年何件かは想像を絶する事故を起こす。

 

 だが、今年はソレが発生していない。

 

 そのお陰もあって里は平和そのものであった。こんな日々がいつまでも続けば幸せだと誰もが感じていた。だが、そんな平和を維持する為、絶対的な力が足りていない挟間ボンドルドは、忙しい毎日を送っている。

 

「優秀な母体が欲しいですね」

 

 試験管の中には、白い液体……里の有能な者達の遺伝子が詰まっていた。本来破棄されるべき物だが、挟間ボンドルド謹製の避妊具は中の液体を永久保存できるようにしっかりと設計されていたのだ。

 

 彼が欲するのは、三大瞳術。その中でも現実的に入手可能な写輪眼、白眼。無論、倫理観がある大人は、略奪などしない。安全で確実に手に入る方法があるならば、そちらを採用するのは当然だ。時間など些細な問題でしか無かった。

 

「足が着かない健康な母体。更には忍者……あぁ~、時期的に丁度良い駒がいましたね。彼女なら、元気なお子さんを産んでくれるでしょう」

 

 大事な遺伝子情報をしまう。忍術とは実に便利なものであった。口寄せの術を使えば契約した本人であればどこからでも呼び出せる。時空忍術万歳だ。更に、本人認証のトラップまで用意すれば大事な情報は盗まれず自爆させる事も出来る。

 

 その時、コンコンと彼の仕事部屋がノックされる。

 

 挟間ボンドルドの仕事部屋は、特殊であった。医療忍術が使える事で捕虜達から移植手術もよくやる事から外部に漏れないように里として対策されている場所。白眼でも覗く事ができない程、厳重に管理されている。

 

 緊急の依頼であっても、人が足を運ばないと来れない場所であった。

 

「鍵は解錠しました。中へどうぞ」

 

「挟間ボンドルド特別上忍。火影様より至急の依頼があるとの事でご足労お願い致します」

 

 貴重な医療忍術の使い手すら駆り出す木ノ葉隠れの里。人材不足は、よほど深刻な状況だと改めて理解する彼であった。

 

◇◇◇

 

 いつ来ても書類が山積みされている火影執務室。

 

 多重影分身の術という仕事効率を最高にする忍術を何故使わないのだろうか。自分と同スペックの能力を持つ分身を酷使できるだけでなく、消えても経験がフィードバックされるのだから使わない手はない。

 

「忍者とは、舐められたらお終いだと思わんか?」

 

「当然ですね。この業界では、舐められたら依頼が減るだけでなく、依頼料まで足下を見られます。税収が落ちれば、給与が減る。人材流出や質の低下にも繋がる最悪な事だと考えます」

 

 3代目火影の考えを態々と口にする。

 

 ぐぅの音も出ないほどの事実であった。里としては、依頼をくれるクライアントは大事である。だが、それは金づる的な意味である。

 

「誰もそこまで心中を口に出せとは言っとらんわい。つい先ほど、第七班……はたけカカシが担当上忍をしているチームから緊急の連絡があった。道中で他里の忍者に襲われた。依頼人が忍者からの襲撃される可能性がある事を十分知った上で、我々に嘘の依頼をしたという訳だ」

 

「おやおや、木ノ葉隠れの里の忍者も舐められた物ですね。万が一、上忍と未来ある下忍達が死んでしまったら総合的な損失は甚大でしょう。では、私に何をしろと?」

 

 万が一にも依頼人が無事で、周囲に『忍者に襲われる可能性があったから、低ランクの依頼で出したら本当に忍者の襲撃にあった。後付けで、差額分払うことで許して貰ったから、みんなもそうやって依頼料抑えた方が良いぞ』なんて情報が出回れば、里の沽券に関わる。他国の里からも馬鹿にされるのは間違いなかった。

 

「ケジメじゃよ。挟間ボンドルド特別上忍、お主に緊急の任務を言い渡す。第七班と合流し、敵対勢力の殲滅と忍者に舐めた態度を取った依頼主に地獄を見せてやれ」

 

「承りました。しかし、3代目も医療忍術の使い手に一般人に地獄を見せろなど。これでも医者ですよ」

 

「医療忍術がずば抜けて得意なだけで、他が苦手というわけでもあるまい。安心しろ、今回の依頼は存在しなかった事となった。つまり、正規な依頼では無い為、戦利品は全てお主の懐にいれて構わん」

 

「素晴らしい、実に素晴らしい。では、最高の働きをお約束致しましょう。そう言う事でしたら、援軍は私一人で構いません。取り分が減ってしまいますので」

 

 どの里にも言える事だが、援軍依頼に駆けつける忍者が少ないのは取り分が減るからであった。常識的に考えれば、数十人単位で援軍を出せば大体解決するのだが、報酬額には上限があるので、一人あたりの取り分が減る事態になる。

 

 挟間ボンドルドは、第七班の依頼任務であるタズナの護衛に関する情報を受け取った。瞬身の術を使い仕事へと向う。戦闘になる事は目に見えているため、カートリッジをフル装備し完全武装だ。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、最高に気分が良かった。

 

「まさか、こうも早くチャンスが訪れようとは。しかも、火影からの許可の元で実験材料が手に入るなど僥倖です。先を……あれは」

 

木に巻き付けられ気絶させられた忍者が無様な姿を晒されていた。

 

 本来であれば、はたけカカシがいるのでこの程度の雑魚を血祭りに上げるのは簡単だ。だが、第七班である下忍達の事を考慮し、生かした状態で放置した。後で来る救援部隊の者達が回収するだろうと読んでの行為であった。

 

 しかし、忍者を武装解除もせず縄だけで縛るなど逃げてくれと言っているも同じ。目が覚めたら5秒と経たずに逃亡する。

 

 挟間ボンドルドは、手裏剣を取り出し忍者の股間を切り裂いた。そして、血が流れるが反応が無い事を確認する。安全確認を終えた彼は、忍者を触診する。

 

「なるほど、脊髄が破損していますね。情報を抽出するための脳だけを壊さず無力化するとは、良い手際です……意志があるのに動けないのはさぞ辛いでしょう。ですが、安心してください」

 

 これからの戦闘に備えて、材料を現場調達できるとは幸運だと感じていた。相手は、名の知れた抜け忍……備えは幾らあっても足りない。

 

 挟間ボンドルドは、空のカートリッジを取り出した。そして、助手を呼び出す。

 

「忍法口寄せの術!!」

 

 挟間ボンドルドが契約しているカツユを呼び出した。彼女こそ、挟間ボンドルドが長い時間掛けて口説き落とした助手である。呼び出されたカツユのサイズは2m程であった。

 

『ボンドルド様、今日は一体どういったご用件でしょうか?』

 

「貴方に会いたかったという理由では駄目でしょうか。貴方は、今日も可愛いですね、その白い肌につぶらな瞳……仕事を終えたら是非背中を流させて頂きたい」

 

 何処まで本気かと正気を疑うが、全部本気で言っている挟間ボンドルドであった。決して裏切らず、人に尽くすというカツユの心は素晴らしい。カツユとならば世界を変えられると本気で信じ、時間があれば呼び出して色々話していた。

 

 密かに、綱手以上に長時間呼び出していた。

 

『またまた、そんな事を言って仕事を手伝わせる気でしょう』

 

「えぇ、貴方だけが頼りなんです。お願いできませんか、カツユ」

 

『こ、今回だけなんですからね!! それと、背中を流す約束忘れたら駄目なんですからね』

 

「いい子ですねカツユ。勿論です」

 

 挟間ボンドルドは、優しく応えた。

 

 そんな様子は意識はあるが動けない忍者にしてみれば、絶望的。

 

 太陽が照らす中、二人の忍者がカートリッジへと姿を変えた。死んだ方がマシという言葉を体現した境遇の彼等は、忍者らしい末路である。

 




カツユってヒロイン属性あると思うんですよ。
寧ろ、作中で一番可愛いきがする。

忍者の世界ってコレでも優しいと思うよね。
きっと、原作でも裏側ではこんな感じだったはずw

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