テマリの『祝福』が奪われ命を落とした時、別の場所でサソリの命が尽きた。
ナルト達…主に春野サクラと砂隠れの相談役チヨの手によって、希代の傀儡師であったサソリを撃破した。本来の実力を考慮すると、達成する事が不可能な偉業。だが、春野サクラが居たからこそ達成できた。
そんな素晴らしい忍術の戦いをしっかりとその目に収める第三者がそこには居た。戦いが終わり貴重な戦利品が散らばるそこに足を踏み入れる存在――青白く光る線が入った仮面を付けた者。
当然、戦いが終わった瞬間を待ってましたと言わんばかりの登場に春野サクラやチヨが警戒する。
「安心しろ、私はグェイラ。旦那……挟間ボンドルドの依頼でこの場に来た」
「サクラ、気を抜くでないぞ」
異質な存在にチヨが疲労困憊の身体を起こす。暁コートや額当てを付けていない事から忍者でない事は理解出来ていた。だが、一般人でもない事も同時に理解していた。
「まって、チヨ婆様。彼の言う事が本当なら味方です。ボンドルド特別上忍は、綱手様の一番弟子で私の兄弟子に当たります。幾つか質問させて、ボンドルド特別上忍の子供の名前は?」
「警戒心が強いね。挟間プルシュカ、銀髪の可愛い女の子だ。ペットのメーニャと何時も一緒にいる。コレで満足かい?」
完璧な回答であった。それも当然だ、全て事実である。この戦いの全てを記録に収める事こそが彼の目的だ。更に言えば、現場に残ったサソリの忍具……これだけで万金に値する。
「えぇ、できれば援軍として来て欲しかったわ」
「無茶いうな。とりあえず、物資補給と治療くらいはしてやれる。あんた等は他にもやる事があるんだろう」
口寄せの術で届けられた物資を春野サクラが受け取る。そして、医療忍術による治療を受けた。高度な忍術で普通であれば、忍者で無い者が使える事は無い。だが、彼女は兄弟子である挟間ボンドルドが送ってくれた者ならば使えてもおかしくないと考えてしまった。
………
……
…
治療と補給を受けた春野サクラとチヨ。万全な状態には程遠いが、通常行動が行えるレベルには十分回復した。
「ふむ。良い腕じゃな、忍者でない事が信じられない程だ」
「コレでも、旦那から色々と教わっている身なもんでな。婆さんも年なんだから無理するなよ。若くねーんだから生命力なんて分け与えたら死ぬぜ」
「分かっておるわい。世話になったな若いの」
「助かりました、グェイラさん。挟間ボンドルド特別上忍には、後でお礼に伺わさせて頂きます」
木ノ葉隠れの里からの応援はなかったが、兄弟子からの応援に春野サクラは心底感謝した。そして、ナルト達を追ってその場を後にする。
二人が完全に見えなくなったのを確認し、グェイラは
「サソリの本体だけ残して、後は全て回収。封印忍術と転生忍術・己生転生…全く、旦那が喜びそうなものが沢山だな」
チャクラを完全に封印する術など素晴らしいという他ない。忍者であれば、誰にでも有効打になる。転生忍術も同じだ。つまり、誰かを犠牲にすれば誰かを復活させられるなど、卑劣様が開発した穢土転生に勝るとも劣らない。
………
……
…
風影が死んで蘇り慌ただしい日が過ぎ去った。そして、木ノ葉隠れの里の忍者達が無事に帰還を果たす。それから、数日後、春野サクラは挟間ボンドルドの家にお礼をもって現れた。
一般人の出自である彼女ならではの行為であった。律儀にお礼をしにいくなど、汚い忍者の発想ではない。
そんな彼女が、とある家の前で足を止める。そして、玄関の表札を確認する。何度も…。
「ここよね。それにしても、大きな家ね~」
おおよそ豪邸と言っても過言でないサイズの家であった。普通の忍者の稼ぎでは到底不可能といえる不釣り合いの家。数々の医療特許などを持っている挟間ボンドルドは木ノ葉隠れの里の中でも上から数えた方が早いくらいに金を持っている。
ピンポーンとチャイムを鳴らす。兄弟子の家にお礼に来ただけだというのに、緊張する春野サクラ。
「はーい。誰ですか?……サクラお姉ちゃん~!!無事に帰ったのね。グェイラから話を聞いたけど大変だったんだよね。上がって上がって」
「これは、春野サクラさん。任務お疲れさまでした。どうぞ、上がってください。直ぐにお茶を入れましょう」
プルシュカが元気に春野サクラを迎える。そして、その後ろには鉄仮面を被った兄弟子である挟間ボンドルド。彼も優しい声で迎え入れる。
「パパ、私が淹れるの!!」
「おやおや、そういってこの間は、渋いお茶を作ってしまいませんでしたか」
お客様の前で良い格好をしたいプルシュカが微笑ましいと思い、苦笑する春野サクラ。彼女もこんな理想的な家庭を持てればと思ってしまう……そう、うちはサスケと。
だが、彼女はまだ知らない。ビッグダディサスケという男のことを。
次は、遥かなる再会編ですね。
勃った一人のムスコで一族復興を果たした男……男だから出来る方法で復興するとは漢気がありますよね。
何でもヤるといったからは、本当に何でもヤらないとね。