卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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33:温泉宿

 カカシ不在にも関わらず、カカシ班という謎の班名。上忍の名前を冠した班名にすれば、誰もが仲良くなれるのならば苦労などしない。

 

 事実、班員達の仲は最悪に近い状態であった。

 

 大人の意見で言えば、里抜けして仲間を傷付けて大蛇丸の所に自主的にいった忍者をいつまで仲間だと思っているのかと、問い詰めたい所だ。だが、多感な年齢であるナルト達にそれを言わないのは、大人の忖度だ。

 

 しかし、サイはその事を平然と言う。正論が常に人間関係をよくする答えではないという事を彼は理解していない。正論は人を傷つける。そのおかげで、サイは春野サクラに殴られる始末だ。

 

「君等ね~、これ以上揉めると本当に檻にぶち込むよ。天地橋までもう余り時間が無い」

 

「良いではありませんか、ヤマト隊長。まだ、お互い顔を合わせたばかりです。こうなると思いまして、近くの温泉街に部屋を用意しておきました。少し休まれて考えを巡らせてみてはいかがでしょう」

 

 頭を抱えるヤマトに挟間ボンドルドが助け船を出す。

 

 風呂に入り、同じ飯を食べれば多少なりともお互いの距離が縮まると言うアイディアだ。ありきたりだが、若者には意外と効果がある。同じ場所で、同じ行動をする事で仲間意識を植え付けるという方法だ。

 

 本来ならばヤマトからタイミングをみてこの提案をする予定であった。食事に自らのチャクラを含んだ木片を混ぜる事で何処にいても追尾可能にする仕込みをしたかった。

 

「でもよ~、挟間特別上忍。そんな時間なんて」

 

「大丈夫ですよ、うずまきナルト君。一日くらいゆっくりしても時間的な猶予はあります。今すべき事は少しでも、任務の成功率を上げる事です……違いますか? 直ぐに仲よくなれなど言いません。しかし、お互いの良いところを見つけ、尊重する事はできるはずです。当然、春野サクラさんとサイ君もですよ」

 

 現カカシ班で子持ちの大人の意見だ。

 

 だが、言われたことの正しさはナルト達も分かっていた。仲違いしたままでは、任務失敗に繋がる。千載一遇のチャンスを不意にしたくないのは、この場に居る全員の思いだ。

 

「挟間ボンドルド特別上忍がなんと言おうとも、サイがサスケ君を侮辱した事だけは許せません」

 

「それで構いませんよ、春野サクラさん。人には誰しも譲れない一線があります。ですが、サイ君にはサイ君の良いところもあります。今回の事で先入観をもって接しないようにしてください。人は、変われるのですから」

 

 険悪なムードが緩和する。そして、温泉街で一泊する為、カカシ班が足を運ぶ。

 

………

……

 

 人の金で食べる飯は美味しい……だが、ヤマトだけは宿泊先の宿を確認し財布事情を考えた。流石に、全額を挟間ボンドルドに出させるわけにはいかず半分は出そうと思っていたが、その半分ですら怪しかった。

 

「あの~、ボンドルドさん。本当に、この宿に泊まるんですか?」

 

「えぇ、そうですよ。プルシュカも気に入っており重宝している系列店です。それに、ココの温泉は、疲労回復と美容にいいとカツユのお墨付きです。あぁ、お代は気にしないでください」

 

 暗部の給料も安いわけでは無い。後ろ暗い任務で命をかけるのだから、それ相応の収入がある。だが、任務が無いときの給料は察しの通りだ。面が割れないため、表の仕事ができない。その為、一発の仕事でどかんと稼ぐ……カニ漁船的な感じだ。

 

 

◇◇◇

 

 ナルト達は、最上級の待遇を受けて大満足していた。任務が大蛇丸絡みだと忘れるレベル。そして、楽しい食事時にとある議題が持ち上がる。

 

「なぁなぁ、サクラちゃんは挟間特別上忍の顔って見たことあるの? いっつも、仮面被っているじゃん。食事だって俺等と別だしさ~」

 

「そういえば、見たこと無いわね。私に修行を付けてくれた時も何時も付けていたわ。でも、綱手様も知らないみたいよ。ヤマト隊長は、知ってますか?」

 

「いいや、僕も知らない。でも、別にいいんじゃないかな。カカシ先輩だって、履歴書の書類とかマスク姿だし。仮面を付けていたとしても大差ないと思うよ」

 

 流石に、一切素顔を晒していない忍者は、木ノ葉隠れの里では彼しかいなかった。管理する里側としては、何度か問題に取り上げて素顔で履歴書を作ろうとしたが、本人が断固拒否。遂には、大名の介入まであり仮面有りで問題無しに落ち着いた。ハゲ治療やアンチエイジングなどを餌にされては大名とて彼の側に付くのは当然の帰結。

 

「うーーーん、見たい。隠されるほど、気になるってばよ」

 

「止めておきなさいよ、ナルト。隠しているのも事情があるんでしょう。あんまり失礼な事をするとここの宿代ナルトだけ自腹にされるわよ」

 

「素顔なんて大した問題じゃないよ、ナルト君。忍者ってのは場合によっては、名前すら偽る必要があるんだから顔が何だって言うんだ」

 

 本名より偽名を名乗る事の方が多く、書類に本名を書けなくなりそうな元暗部は言う事が違う。 




ナルト君が九尾の力に目覚める。

妊婦に対して暴力は良くありませんよね、少年誌ですから!!

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