卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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34:天地橋

 挟間ボンドルドは、温泉宿から大蛇丸へ連絡を行ってから天地橋へとナルト達と赴いた。何事も、報告・連絡・相談が大事だ。大蛇丸は、木ノ葉隠れの里のお得意様でもあり、入念な打ち合わせも怠らない。

 

 出産を控えた妊婦――オロチママ。

 

 大事な時期だというのに、遠路はるばる来たナルト達に会う為、足を運ぶ。そもそも、サソリの死亡は既に連絡済みである為、来ないでもよいのにきてくれる。

 

 ヤマトが橋の中腹当たりに辿り着くころ、橋の向こうからフードを被った者が一人現れる。

 

「一体、どんな人が大蛇丸のスパイなのかしらね」

 

「あぁ、だが直ぐに分かるってばよ」

 

「顔を出し過ぎて、見つからないでください」

 

 春野サクラ、うずまきナルト、サイがそれぞれ訳も分からないことを口走る。

 

 少し考えれば答えが出てもおかしくない。伝説の三忍とも言われた大蛇丸が、スパイの潜入など許すはずも無い。怪しい人物を自由行動させるような頭が緩い忍者なら、木ノ葉崩しを計画及び実行する事など不可能。

 

 大蛇丸の側近的なポジション、比較的に自由行動が可能、大蛇丸の目を欺ける、大蛇丸の研究が理解出来る……といった条件を付けて絞っていけば答えは出る。

 

「恐らく、スパイは薬師カブトさんです。以前に、木ノ葉崩しで大蛇丸様と一緒に抜け忍となった。むしろ、彼以外に居ないでしょうね。そんな有望な忍者がいたならば、木ノ葉崩しの際に連れてきているはずです」

 

 挟間ボンドルドの言葉に、ナルト達一同が思考する。

 

 あり得ない選択肢ではなかった。寧ろ、考えれば考えるほどしっくりくる人選。そして、ヤマトがスパイと接触する。フードが取れて顔が現れた。

 

「本当にカブトだってばよ。ぜってー、捕まえてサスケの情報を吐かせてやる」

 

「いいわね、ヤマト隊長の合図で一気に行くわよ。サイと挟間ボンドルド特別上忍も」

 

 薬師カブトの実力が高いのは、この場に居る全員が承知していた。過去にはたけカカシと対峙した時、同程度の実力があると公言もしていた。十分に脅威に値する。だが、あの頃とはナルト達も違う。

 

 それに加えて、木遁忍術が使えるヤマトや医療忍者の挟間ボンドルドまで居るこの状況だ。絶好の機会ともいえる。

 

「申し訳ありませんが、私は辞めておきます。あの大蛇丸様が、薬師カブトをここまで単独行動させるとは思えません。確実に、泳がされているとみて間違いないでしょう。綱手様やうずまきナルト君はご存じでしょうが、私は大蛇丸様と個人的な契約を結んでおりお互いに敵対しない事となっておりますので」

 

 うずまきナルトはこの時になって思い出した。木ノ葉崩しの後に、次期火影として綱手を探しに行った際の出来事を。挟間ボンドルドは、明言していた『大蛇丸様と敵対する事はお断りさせていただきます。折角、家族に手を出さないとお約束いただいたのです。』と。

 

 当然、綱手も知っていながらの人選であり、ここで挟間ボンドルドが手を貸さないのは何ら問題ではない。人選をした綱手に全ての責任がある。

 

 春野サクラにとっては、初耳であった。兄弟子が、あの大蛇丸と個人的な取引をしていたなんて。しかも、綱手やうずまきナルトも知っていると。期待の戦力が早速戦力外になる。だから、思わず仲間を本気で締めあげる事になっても不思議ではなかった。

 

「本当なのナルト!! 正直に答えなさい」

 

「苦しいってばよ。綱手のばーちゃんを火影に迎えに行った時に言ってたけどよ~、今はそんな場合じゃないのだろう挟間特別上忍」

 

「うずまきナルト君、大事な事を伝えていないのはいけませんよ。大蛇丸様が愛娘(プルシュカ)に手を出さないとの条件で敵対をしないと約束したのです。貴方達にとってうちはサスケ君が大事なように、私には彼より娘の方が大事です」

 

 娘の安全の為と言われて、文句を言える人は少ない。

 

 うずまきナルトと春野サクラは、プルシュカの事を知っている。だからこそ、娘を危険にさらす可能性を前提で手を貸してくれなど鬼畜な発言はしなかった。

 

「でも、大蛇丸が約束を守るなんて保証はないんじゃないかな」

 

「サイ君が言う事は、尤もです。しかし私は、大蛇丸様の人間性を信じております。こちらから約束を破らない限り、あの方は約束は守りますよ……さぁ、皆さん出番ですよ。ヤマト隊長が先ほどから、なんで来ないんだよって目で見ていますよ」

 

 挟間ボンドルドが信じると言っても、ナルト達は大蛇丸の事を全く信用できていなかった。流石に、この件に関しては認識が一致する事は難しい。

 

 

◆◆◆

 

 うずまきナルトは、挟間ボンドルドが言った通りになったと思った。大蛇丸本人がこの場に現れる緊急事態。

 

「遅いよ君達!!何で合図を無視するの。僕一人じゃこの二人相手は無理があるって。で、ボンドルドさんは?」

 

「彼なら来ませんよ、ヤマト隊長。なんでも、大蛇丸と取引しているとかで」

 

 サイの発言にヤマトは、驚いた。そして、後方を確認すると、倒れた木に腰を掛けて、コチラを眺めている挟間ボンドルドがいた。状況から考えて、綱手が言っていたとおり、木ノ葉を裏切って大蛇丸と内通していたと思われても仕方が無い。

 

「酷いわね。折角、私が自ら出向いてあげたのに、よそ見なんてしていたら死ぬわよ。それに、ボンドルドも来ているなら挨拶くらいしたらどうかしら?目上の人に失礼じゃない」

 

 圧倒的な存在感を放つ大蛇丸。

 

 挟間ボンドルドは後方で待機しているつもりだったが、呼ばれたからにはご挨拶に伺うのは礼儀であった。そして、ナルト達と同じ位置まで移動する。

 

「失礼しました、大蛇丸様。誤解を招かないように後方で待機しているつもりでしたが、ご挨拶もしないのは失礼でした。お元気そうでなによりです。綱手様からの依頼で、(大蛇丸様の)サポートをしろと言われております」

 

「相変わらず綱手は、人使いが荒いわね。人材はもっと大事に扱わないといけないわ。で、ナルト君達は何の用だったかしら?」

 

 うずまきナルトは、挟間ボンドルドと大蛇丸が自分たちなど居ないかのように会話を続ける事に苛立ちを感じていた。そして、意図せず九尾のチャクラが漏れ始める。

 

「サスケを返せ!!」

 

「あぁ、そう言うことね。ナルト君は分かってないわね、サスケ君を余程殺したいのかしら」

 

 大人はその言葉の意味を良く理解していた。

 

 うちはサスケは、他国の忍者に攫われたのではなく自主的に抜けた。そして、木ノ葉隠れの里の忍者だけでなく、修行の一環で他国の忍者も負傷させている。つまり、うちはサスケが何事も無く里に戻るのは不可能。存在だけで戦争の火種になる。

 

 だからこそ、良くて写輪眼を剥奪された上で死ぬまで地の底。それ以外は、他国への配慮も兼ねて死刑だ。無論、今までの事を帳消しにする程の功績があれば別だが……S級犯罪者と一緒に行動を共にして、犯罪の片棒を担ぐ事しかやっていない。

 

 彼を擁護する者は、うずまきナルトと春野サクラくらいだ。担当上忍であったはたけカカシですら、我が身可愛さに擁護しない。

 

 そんなのは子供には理解出来ない。感情の赴くまま、うずまきナルトは大蛇丸に飛びかかる。

 

「いけません、うずまきナルト君。妊「ふざけるなぁーー!」に手を上げるなんて」

 

 挟間ボンドルドが、妊婦を気遣う言葉が彼の叫びでかき消された。九尾チャクラを纏った大ぶりの攻撃が、大蛇丸に直撃してしまう。

 

 本来、今の一撃でも並みの上忍ならば五体バラバラとなっている。だが、大蛇丸の『祝福』は桁違いであった。お腹の中にあるもう一つの命が持つ『祝福』までその身に宿しており、敵からの攻撃は絶対に致命傷にならないという強力なパッシブスキルを手に入れていた。




親友の子供を宿している妊婦を容赦なく攻撃する主人公…いけませんね。

オロチママは原作同様に強いです^-^


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