卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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35:二重の『祝福』

 大蛇丸とうずまきナルトの戦いが始まると、挟間ボンドルドは影分身を残し、移動する。九尾チャクラの余波で巻き添え負傷した春野サクラの治療の為だ。妹弟子への優しい配慮。

 

 そして本体は、九尾チャクラを纏ったうずまきナルトと大蛇丸の戦いを目で見て、ビデオ録画する為に向かった。そして、ヤマトがいる特等席の近くに場所を構えた。

 

 そこで、二重の『祝福』が産んだ奇跡を目の当たりにしている挟間ボンドルド。

 

 一撃一撃が環境を破壊する程の威力を秘めている九尾チャクラの攻撃。腕を振るえば、地面が砕け、衝撃波で木々がなぎ倒される。同じレベルの事を実行するには火影クラスの実力が必要になり、消費されるチャクラ量も相応になる。

 

 そんな攻撃を何度も身に受けて実質無傷でやり過ごす大蛇丸。

 

「ほぅ、これはこれは興味深い。二重に宿した『祝福』が大蛇丸様にもたらしたのは、チャクラの絶対量向上だけでなく、死ねなくなるモノだったのです」

 

「何を言っているんだ、ボンドルドさん」

 

「見て分かりませんか?うずまきナルト君の一撃一撃は、生身の忍者が耐えきれるレベルを遙かに超えております。失ったはずの手足も生えてきます。致命傷となるはずのダメージはこれで9回目ですが、少々疲労した程度で済んでいます」

 

 忍者の戦いというより、大怪獣の戦いと言うに相応しい。

 

 ヤマトとしては、大怪獣の戦いであっても止めなければならない。それを可能とする木遁があり、カカシ代理となった最大の理由でもある。隙さえあれば、九尾チャクラを封印できる。

 

「くそ、なんて戦いだ。これじゃ隙を見つけるなんて」

 

「ヤマト隊長が、何故、そのような事で悩むか理解できません。大蛇丸様にお願いすれば良いのではありませんか?大蛇丸様は、うずまきナルト君の実力を測りたいだけです。キリの良い所で隙を作って貰えるようにお願いすれば叶えて頂けますよ」

 

 大蛇丸とて、長々と実力を測るつもりは無い。機を見て、うずまきナルトの処遇は木ノ葉隠れの里側に任せる気でいた。彼の性格上、手伝えとは言わない。だが、こちらからお願いすれば、「仕方ないわね~」と言って、なんだかんだで引き受けてくれる。

 

 本当に出来た人間だ。

 

「言えるわけ無いでしょ!」

 

「言えますよ。ヤマト隊長がうずまきナルト君の事を心配しているのならば急いだ方が良いです。医療忍者の視点から言わせて貰えば、制御できていない九尾チャクラは心身に重大な負担を掛けています。最良の治療を約束致しますが、生きていなければ治せません」

 

 人間が扱えるチャクラの質ではないのは、上忍にでもなれば分かる。それに、皮膚がはげ落ちて、出血したのをヤマトも確認していた。負傷と再生を繰り返せば、寿命を削る事になる。

 

 よって、部下の命を守るという事を優先するならば、ヤマトが頼るべきは大蛇丸である。頭を下げて、声に出してお願いするだけで、部下の命が救えるのならば安い買い物だ。

 

「お、大蛇丸。ナルト君を……」

 

「いけませんよ、ヤマト隊長。大蛇丸様は、目上の方です。それにお願いする立場ですので、言葉遣いには気をつけた方がよろしいかと。ヤマト隊長の忍道は、プライドと部下の命……どちらが重たいんでしょうね。大丈夫です、私がしっかりと証言します」

 

 挟間ボンドルドの言葉の誘惑。声色も相まって、恐ろしい程に心に響く。カカシ班の隊長代理として、成すべき事はなんなのか。答えは一つしか無かった。

 

「大蛇丸様!!ナルト君を止めてくれ」

 

 木ノ葉隠れの里……火影直轄の暗部にして、今現在はカカシ班の代理隊長。木遁使いの忍者が大蛇丸に様付けしてお願いをする瞬間がビデオに収められた。

 

 当然、その声は大蛇丸にも届く。

 

「仕方がないわね。見ようによっては、私の息子からのお願いだから叶えてあげる。とりあえず、あのチャクラを凌いで隙を作ってあげるから、後は任せるわよ」

 

「ヤマト隊長にとっては、大蛇丸様はある意味パパみたいなものでしたか。これは失礼しました。様付けなんて不要でしたね」

 

 過去はパパ。今はママ。時代を先取りすぎたトランスジェンダーの申し子である大蛇丸。そんな偉大な親を持つヤマトは誇っても良い。

 

「えっ!? なんでそうなるんですか!? 僕と大蛇丸は、血の繋がりなんてありませんよ」

 

「家族とは血の繋がりのみを言うのでしょうか?私はそうは考えていません。慈しみ合う心がヒトを家族たらしめるのです。血はその助けに過ぎません。愛です、愛ですよヤマト隊長。それに家族とは他人同士が出会い築き上げるものなのですよ」

 

 ヤマトの木分身が精神負荷により崩壊してしまった。木分身は、リアルタイム通信が可能な珍しい能力であり、同時進行で本体ヤマトが倒れ込んでいた。近くに医療忍者の春野サクラがいなければ、任務続行が出来ないレベル。

 

 

◆◆◆

 

 春野サクラは、急に倒れかけたヤマトを支えた。体温の低下、瞳孔が開き、過呼吸になったのを把握し、即座に医療忍術で治療に取りかかった。

 

「ヤマト隊長!! いいですか、ゆっくり深呼吸してください。大丈夫です」

 

 スーーーハーーーと、ヤマトが春野サクラの指示に合わせて呼吸を整える。そして、落ち着いたところで挟間ボンドルドの影分身に文句を言う。

 

「ボンドルドさんのせいですよ!! あんなこと言われたら、誰だって体調を崩しますよ」

 

「あちらで何があったかは知りませんが、どうやらヤマト隊長の出番みたいです。九尾のチャクラを纏ったうずまきナルト君の肉体は、草薙の剣ですら貫通できませんか。私の外装より堅いとは、じっくり研究したいものですね」

 

 ヤマトから苦情を言われる挟間ボンドルドの影分身。

 

 そして、大蛇丸が約束通り、ナルトをヤマトが居る場所まで直送する。草薙の剣を使って運ぶなど贅沢な使い方だ。

 

 九尾チャクラを纏った痛々しい姿のうずまきナルトを見て、春野サクラは心を痛めた。うちはサスケを助けるためとはいえ、自らをここまで犠牲にして力を行使する。そこまで、追い詰めてしまった一端は自らにあり、謝ることで多少なりとも心の負担を軽くしたいと。

 

 だが、理性を失っているうずまきナルトには届かない。理性を失った怪獣の前に無防備で飛び出すなど自殺行為をする春野サクラは、仲間の手によって傷を負う事になった。彼女が倒れたと同時に、うずまきナルトを追ってきた挟間ボンドルドが合流した。影分身が分身を解いて即座に情報連携を行う。

 

「間に合いませんでしたか。水遁・月に触れる(ファーカレス)!閉じろ。4本も尾を出した状態の九尾相手に長くは持ちません、ヤマト隊長。封印をお願いします」

 

「分かってますよ、ボンドルドさん」

 

 九尾チャクラを纏ったうずまきナルトを拘束する忍術。頼りになる医療忍者だが……大蛇丸をパパと認識させたことだけは一生許さないと心に誓うヤマトであった。

 

 




年末年始、年度末は忙しい。
投稿頻度は、ご容赦ください。

そろそろ
ビックダディ・SA・SU・KE
にご登場願わないとね。



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