暁の目的は、尾獣。当然、忍び里としても一発逆転の秘密兵器でもある為、存在は隠匿されている。万が一、人柱力が殺されてしまえば、戦争での切り札が一枚減る。だから、暁も地道に情報を集めて、探している。
大国である火の国であるならば、九尾以外にも存在している可能性を考えて虱潰しに行動するのは正しい判断だ。だが、そこで問題が生じる。暁には、木ノ葉隠れの里の抜け忍が多く所属している、もしくは所属していた。
伝説の三人の一人大蛇丸やうちはイタチ。特に、大蛇丸に至っては四代目火影候補にまで名前が挙がっていた。彼の性格上、里の機密である尾獣について調べていないはずが無い。その為、知っていれば暁所属時代に、情報が伝わっている。
「これは、切られましたね」
誰にも聞こえないレベルの小声で挟間ボンドルドが呟く。
火の国で暁が最初に忍寺「火ノ寺」を襲撃した事が、可笑しいことだ。人柱力は基本的に不発弾的な要素から、嫌われることが多い。その為、人づてに噂を聞いて回れば、より可能性が高い場所へ行ける。長年、尾獣を探している暁が効率的な探し方を知らないはずが無い。
つまり、今回の忍寺「火ノ寺」襲撃は、誰かに差し向けられた可能性が高い。そこに尾獣の情報を持った者がいるとか、偽情報を。それを可能にする人物は、暁とコネクションがあり、火の国で警備状況を把握もしくは操作できる者である可能性が極めて高い。
「そういえば、ボンドルドさん。アンタの得意忍術は?」
奈良シカマルが作戦立案の為、皆の得意忍術を確認する。
どこからどう見ても医療忍者の挟間ボンドルドに、得意忍術の確認は不要のはず。下忍試験や中忍試験の時に医療忍者として色々と会う機会もあったのに、信じて貰えていない。
「医療忍術ですよ、奈良シカマル君。おや、不思議そうな顔ですね」
「シカマル失礼だぞ、ボンドルドさんは見た目は奇抜だが医療忍術の腕は抜群だ。治療を受けた俺が保証するぞ」
見た目が奇抜というのがフォローになっているか微妙であった。治療されている時からそんな風に思っていたとは、医師に対する感謝の念は彼等にはないのだろうか。
「すまねー。以前にナルトがすげーー忍術使うって言ってた気がしたから。医療忍者なら基本戦いは俺等に任せてくれ」
「シカマル。ボンドルドは、ただの医療忍者じゃないぞ。上忍クラスと仮定して頭数に入れておけ。暁相手だ、使える戦力は使う前提でいろ」
「ですが、アスマ先生。医療忍者は」
「構いませんよ、奈良シカマル君。私とて、木ノ葉の忍びです。多少なりとも、戦いの心得はあります」
この時、アスマの心の中では第一関門突破と思っていた。
五代目火影からの密命である挟間ボンドルドを戦死させるという任務。幸いなタイミングで暁が火の国にきており、奴らとの戦闘ならば名誉の戦死も不思議では無い。それに加え、猿飛アスマは、父親である猿飛ヒルゼンから託された思い――『九尾事件の被害者であり、人柱力を快く思っていない連中を人知れず闇に葬る』事を遂に果たそうとする。
その思いを託した本人が、近隣の里でバ車ウマのような扱いを受けて、元気に過ごしているなど猿飛アスマは知るよしもない。
「そうか、分かった。なんか重武装そうだし、サクラの師匠でもあるらしいから怪力とかあるんだろう。期待してるぜ」
挟間ボンドルドは、勿論と答えた。
そして、火の国に来た暁が誰かを考察する。暁は、持ち回りが決まっている。土地勘が大事でもあり大体は出身国やその周辺国が多い。各国で文化や文明レベルに異次元の差がある為、他国の人間はどうしても悪目立ちする。そもそも、暁コートで相当目立っているのに、これ以上目立つと目も当てられない。
そもそも、あんな目立つコートを着て移動しているのに未だに発見できない木ノ葉隠れの里の忍者は無能といえる。
………
……
…
地陸の遺体が無いと言う事から、換金所を目指すことになったアスマ班。そこで、挟間ボンドルドは誰が来たか理解した。組織運営において、金管理を担当している不死コンビ。暁側に慢心でも無い限り、現状のメンバー構成では勝率が0に近い。
そして、目的のトイレ兼換金所に部隊が到着した。外には、暁コートを着た目立つ男が一人座っている。
「常々疑問に思っているのですが、暁を全国指名手配すればスムーズに発見できるのではないでしょうか。あれだけ目立つ特徴があれば一般人に懸賞金でも出せば簡単かと」
「そいつは無理だぜ、ボンドルドさん。一般人に幻術が掛けられたら通報の嵐で収拾がつかなくなる。じゃ、作戦を説明するぜ。もう一人が何処にいるか分からねーが、一人で居る今がチャンスだ」
奈良シカマルが暁討伐に向けての作戦を伝達する。詰まるところ、作戦の肝となるのは奈良シカマルの秘伝忍術である影縛り。この忍術は、下手をすれば卑劣様の忍術に比肩する能力だ。
影縛りで拘束したら一瞬のうちに相手を殺せば全て片が付く。チームで行動しているときにこの秘伝忍術が味方に居ればどれだけ心強いことか。
◇◇◇
猿飛アスマは、暁の連中が適度に強い事を期待していた。可能ならば倒したい。それが無理なら痛み分け……挟間ボンドルドを犠牲にして撤退に持ち込みたい想定でいる。その為に、奈良シカマルが彼の班に配属されていた。
敵ごと足止めして貴い犠牲作戦。
暁ほどの難敵ならば、普通にあり得る展開だ。近接戦ができる奴が接敵して、纏めて動きを止めて、二人纏めてさようなら。一人一殺で行くスタイルならば最上のやり方。
だが、様子見の最初の行動で暁を一人串刺しに出来てしまう。不死身である為、攻撃を避けるという事に疎い飛段だからこそ、成功した。
「いっちょあがり」
「いってぇーなーー。なにも……あぁ、木ノ葉隠れの連中か。全く、
だが、飛段は死なない。
死ねないという特異体質。その上、奈良シカマルを超える術を使う事が可能だ。相手の血液を体内に取り込む事で、何処に隠れていても確殺可能な凶悪な能力。
「もしかして、俺等の先輩だったりしますかアスマ先生?」
「こんな教え子が居てたまるか、シカマル。今、誰をみて先生と言った?聞くことが増えたな」
飛段の口の軽さが災いした。
先生という単語が誰を示すのか、現状構成で考えれば怪しいのは奈良シカマルを除く全員だ。忍術的な教師という意味での先生、後は医者的な意味での先生。額当てが他国である為、怪しいのは後者となる。
つまり、後者であれば、怪しいのは挟間ボンドルド以外に存在しない。
奈良シカマルは、同じ里の忍びを疑いたくは無かったが挟間ボンドルドへの警戒レベルを引き上げる。最悪、敵と想定して動く必要があると。
「あぁ、飛段さんは私の患者です。最近は、ご出張が多いとかで診れておりませんでしたね。お元気そうで何よりです」
「どういうことです!? 挟間ボンドルド特別上忍」
「私は医者です。医師として、病に苦しむ人がいれば誰であっても助ける。それが医師として取るべき道ではありませんか。それに、木ノ葉隠れの里のダンゴ屋だって、暁に食事を提供していたでしょう。それと何ら変わりはありません」
別段不思議な事では無い。木ノ葉隠れの里で食事をして帰った暁もいる。その際、飯屋に罪はあるかといえばない。医者が患者を診ることも同じレベルの話だ。仕事を真っ当しただけの事。
「そんな言い訳が通じるはずないだろう。暁を診ていたなんて」
「神月イズモさん。私は、飛段さんが暁だとは今初めて聞きました。医師は患者の事情に深入りはしません」
ブラック企業の社員としか、一応聞かされていない。だから、挟間ボンドルドの発言に嘘偽りは無い。一言も、火影からの勅命で診察にいったなどと言わないのは、守秘義務を守る紳士だからこそだ。
「どうします、アスマ先生。暁を相手にしたまま、挟間ボンドルド特別上忍を拘束しておくのは難しいぜ」
シカマルの不安は当然だ。ただですら未知の能力を持つ暁相手に、敵味方不明の者を抱えて戦えるはずが無い。後ろから攻撃される可能性もある。
「ボンドルド。事が終わるまで、拘束されていろ。暁相手に何もしなければ、疑いが晴れたとして上にもしっかり報告する。コテツ、ボンドルドを拘束してつれてこい、シカマルの影縛りが効いている間に」
はがねコテツは、挟間ボンドルドに幾度も治療を受け信頼をしていた。だからこそ、彼の疑いを晴らすためにも涙をのんで、拘束を承諾した。事が終われば無罪放免。その証明には、幼なじみである神月イズモと一緒に証言するつもりだ。
「すみません、ボンドルドさん。後で必ず解放しますので、今だけは……」
「気に病むことはありません、どうぞ気の済むままにしてください。また、事が終わりましたら診察に来て下さいね。はがねコテツさんは、尿酸値が高い健康診断結果でした。生活指導が必要ですよ」
患者一人一人の事をしっかりと覚えている男。
大人しく拘束され、猿飛アスマの前に連れて行かれる。
「てめぇーら、いい加減に拘束を解け。おぃおぃ、先生も素直に拘束されんなよ。俺には分かるぜ、下水を煮込んだような臭いがプンプンしてやがる」
「飛段さん、人は信じる事から人間関係が築かれます。私は、猿飛アスマさんを信じております。身の潔白を証明するためにもここは大人しくしておくのが得策でしょう。さぁ、これでよろしいですか?」
本来、暁を拘束する為に用意されたチャクラを封じる鎖。これに巻かれては、伝説の三忍であっても抜け出すのは難しい。
「悪いな、ボンドルド。戦場において、疑わしき者は……とりあえず、殺しておくのが一番安全なんだぜ、悪いな」
猿飛アスマが言う事は正しい。拘束から抜けられる場合もある。敵か味方か分からないなら、潜在的な敵として処理するのが正しいことだ。忍者なら誰でもやってきたこと。
チャクラ刀に可視化できる程ハッキリと刃が見える。猿飛アスマは、綱手から事前に聞いていた通り、挟間ボンドルドの外装の付け目……特に頸元を狙う。動く相手ならば、狙うのは困難だが、拘束された相手ならば猿飛アスマのレベルならば、一撃でスパッとやれる。
「アスマーーー、まてぇーー」
奈良シカマルが止めに入るが無駄な事だった。彼は、暁の一人を拘束しており、動ける状態ではない。更に言えば、位置的に彼だけが気がついた……茂みに見覚えのある子供と付き添いの仮面を付けた変人が居る事を。
スパン
鋭い風音と共にボトリと鈍い音がした。地面に転がる紫ラインが入った鉄仮面。猿飛アスマは、目の前で死なない忍者を見たことから念には念を入れて死体処理も始める。綺麗な切断面の頸元から火遁で中をこんがり焼き始めた。
「これで、万が一もない。次は貴様の番だ飛段」
死なない忍者の倒し方としては間違っていないが、仲間の忍者にここまでやれる忍者はあまりいないだろう。しかも、子供が見ている前で。
愛する者を失う悲しみ……万華鏡写輪眼を満たすには十分ですよね。
不死コンビが、不死トリオになるときが来た!