火影率いる直轄暗部と志村ダンゾウ率いる『根』の合同作戦。表に出せない不祥事などの一斉精算。更に言えば、挟間ボンドルドが蓄えている莫大な財産、特許をこの機に押収。犯罪者から巻き上げた財産を里の為に使いますという建前だ。
その作戦開始の合図――挟間ボンドルドの名誉の戦死情報が届く。現場で死を確認した後に、影分身が戻るという方法。
「切り札を使わせたのだ、それ相応の見返りは期待しているぞ」
「無論だ。しかし、カツユに幻術を掛けるとは余程の切り札だな」
志村ダンゾウが保有しているうちはシスイの万華鏡写輪眼が有する能力――『別天神』。最強の幻術とうちはイタチですら認める。幻術に掛かったことすら、掛けられた本人は認識できない。その幻術とカツユのリアルタイム通信能力を利用して、全てのカツユが幻術の支配下に落ちる。
挟間ボンドルドは、暁との戦闘による名誉の戦死。ボンドルドが死に、カツユという厄介な存在を誤魔化せるのならば、子供であるプルシュカ程度なんとかなる算段であった。優秀な子供など火影をやっていれば過去に嫌と言う程見てきた。
父親を暁との戦いで失った子供、その子供を火影が引き取り育てるという美しい美談。その美談の裏では、莫大な金と特許がおまけで付いてくる。更には、将来が約束されたかのような優秀なプルシュカという忍者までいるのだ。一粒で三度美味しいってレベルでは無い。
「ダンゾウ様、入り口の掘り出しに成功しました。合図でいつでも突入可能です」
「よし、施設はなるべく無傷で抑えろ。目撃者は中に居る物は全員殺せ……それでいいな、綱手姫」
「構わん。証拠の仕込みはコチラでやっておく。明日には、里の気に入らない連中の何人かが辞職して実質我々には被害はない。だが、プルシュカという子供には手を出すな。私の養子にするつもりだ」
挟間ボンドルドの秘密の施設イドフロントが、里の暗部総出で見つけられてしまう。複数の候補地がある中で白眼を用いて、見通せない場所がここという実に単純だが合理的な見つけ方だ。
そして、里の腐敗掃除作戦が開始された。
◇◇◇
春野サクラは、空元気で過ごしていた。長年会いたかった思い人には会えたのだが、既に子持ちのパパとなっていれば誰だって凹む。年上とかで無く、同級生がそんな状況だ。どのように感情を整理したら良いか彼女は分からない。
部屋に篭もる時間が多くなり、時間が経つのが異常に早いと感じる日々を送っていた。たまに、うずまきナルトの修行の様子を確認しにいくが、その位のことしかやっていない。
里が慌ただしい日の昼に、彼女の部屋の窓をコンコンと叩く口寄せ動物――手乗りサイズのカツユが訪れてきた。口には手紙を咥え、目から大粒の涙を流している。
「カツユ様!? 一体、どうしたんですか」
『サクラ様~、ボンドルド様が!ボンドルド様が殺されてしまいました。これは、生前ボンドルド様が自身に万が一があった場合に渡してくれと頼まれていた物です』
その言葉は、春野サクラにとっても衝撃的な物だった。兄弟子である挟間ボンドルドの死。自身にも色々と修行を付けてくれたり面倒を見てくれた大人の男性。父親のような安心感があり、年上の男性で一番素敵な人は誰かと言われれば挟間ボンドルドと答えるくらいには彼女は信頼していた。
「一体誰なんですか!! 誰が殺したんですか」
『
カツユの能力を知っている春野サクラ。現在、どこかで暁と挟間ボンドルドが闘っていた。その結果、死亡した……しかも、父親を子供の前で殺すゲス外道がその場にいると。あんな幸せそうな家庭を壊す暁。その事を彼女は許せない。
第二の師匠からの手紙をカツユから受け取る春野サクラ。手紙内容は、カツユも知らない。むしろ、見ては効果がなくなると言われていた。決して、光に当てて透かしてみたりしていない。
「なんて酷い、私も直ぐに向かいますカツユ様」
『でも、手紙を……』
「移動しながらでも読めます!! 場所は何処ですか」
春野サクラは、直ぐに準備を整えて部屋を後にする。そして、手紙を読み始める。
【拝啓、春野サクラ様
この手紙を読まれているという事は、私の身に何かがあった事でしょう。何も問題はありません。来るべき時が来ただけです。
貴方は優秀な忍者です…だからこそ、お願いがございます。私が切られる事態になったということは、綱手様に勝算があってこそでしょう。つまり、カツユの眼を欺ける方法が用意されているはずです。カツユを見て違和感があったら、解除をお願いします。
勿論、タダとは言いません。
火影の執務机、その袖机二段目が二重底になっております。解除キーは、綱手様の元恋人の名前『DAN』です。そこに貴方が知りたい真実があります。生きているうちは守秘義務を守りますが、死んでしまえば無効ですから。
勿論、この件に関して強要はしません。何もしないことも選択の一つですし、報酬だけ受け取るのも構いません。私は、貴方の生き方を尊重します。
PS:
音隠れの里で行われる新事業の参加チケットをご家族分含めて同封しておきます。是非、お越し下さい。
………
……
…
春野サクラは、読み終えて足を止めた。心臓の音がハッキリ聞こえるほど、嫌な重圧がのしかかっている。この手紙の内容は、挟間ボンドルドが木ノ葉隠れの里によって謀殺された事を示していた。
そして、綱手と挟間ボンドルド仕込みの医療忍術でカツユを徹底的に診察する。
『何事ですか、サクラ様。今は、そんな診察を受けている暇なんて』
「必要な事なんです、カツユ様。挟間ボンドルド特別上忍からの手紙を読みました。私だって馬鹿じゃありませんから、意味を理解しました……カツユ様に異常があったら、あの手紙は全てしん………じ…っ」
僅かな違和感。だが、そんな違和感にカツユが気がつけない事が不思議だと春野サクラは思った。
『どうしたんですか、サクラ様』
「カツユ様、今ここ以外で何処に居ますか。具体的には誰と一緒にいますか」
『プルシュカちゃん と 綱手様ですよ。でも、後はボンドルド様の施設にもいます。あれ?なんで綱手様とダンゾウ様が施設の近くに……あれ?あれ?』
違和感を理解しようとする力と、都合の良い解釈で誤魔化そうとする力がせめぎ合っている。本来このような事態などあり得ない。最強の幻術は伊達じゃ無い。だが、カツユという生命体も規格外だ。だからこそ生じた矛盾。
「カツユ様、適当な理由を付けて、綱手様の所から戻って下さい。それから、治療を始めます。挟間ボンドルド特別上忍が信じた私を信じて下さい。必ず治します」
春野サクラにより、体内のチャクラの乱れを正常に戻されたカツユ。一度正常な思考ができれば、その思考を分裂体にフィードバックする。そして、静かになったカツユは、一言だけ綱手に向けて言葉を発して、去って戻っていった。
『小娘が』
と。
………
……
…
火影執務室のざるな警備。開放的な窓からの侵入も容易で、双眼鏡があれば書類も覗き放題という謎の立地。今日に限っては、子供でも誰に止められること無く侵入可能だった。暗部は総出で任務にあたり、暁襲撃で20小隊も無理に捻出したため、ほぼ無人。
春野サクラは、そこで機密書類を見つけた。
次話……あなたの愛があれば私は不滅です
大蛇丸様のスパイって各国にいるんですよね^-^