卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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44:挟間一家

 S級犯罪者として全国指名手配をうけてしまう挟間ボンドルド。そんな彼が足を運んだのが、音隠れの里だった。三日三晩の儀式という長丁場に娘のプルシュカが参加するのだから、安全な場所が必要だった。

 

 仮にも隠れ里の長である大蛇丸の拠点ともなれば、おいそれと木ノ葉隠れの追忍達もこれない。つまり、ここにいれば必然的に大蛇丸とその里の忍者が守ってくれる。当然、タダではない。

 

 差し出されたのが、アスマイヤベガという新しい金を生む卵。

 

「なに、もう行くの?」

 

「えぇ、一箇所に長居してはご迷惑をおかけします。今回の一件は、プルシュカが自分で戦いに参加したのですから、最後までやらせたいというのは親心という物です。何より、実戦経験を積めると言う事に、大きな意味があります。その為、暁の皆さんと暫く行動を共にするつもりです。経験値は、師の弔い合戦をするために、勝手に来てくれるでしょうから」

 

 大蛇丸は、別に挟間ボンドルドが居座っても構わないと思っている。挟間ボンドルドの隠れ家として最有力となるのは、どのみち音隠れの里だ。

 

「そういう事なら構わないわ。しかし、ボンドルドじゃなくてプルシュカが暁だとは私も想定してなかったわ。暁コートなんて目立つ物なんて着なければ誰も分からないわよね……なんで、私も着ていたのか謎だわ」

 

 大蛇丸は、挟間ボンドルドが、木ノ葉隠れの任務で暁と繋がりを持った事を知る。だが、情報を求める事はしない。暁側に大蛇丸の情報を漏洩していなかった事から、必要なら自力で集めるから不要と言い切った。

 

「同感です。では、次に来るときはまた別の手土産を持って参りますね。……あぁ、そういえば、一つだけ大蛇丸様にお伝えし忘れておりました。暁のサソリを覚えておりますか?」

 

「えぇ、一応コンビを組んでいたから覚えているわ」

 

 挟間一家が音隠れの里に連れてきたのは、挟間ボンドルド、挟間プルシュカ、メーニャ(カツユ)レグ(サソリ)のメンバーだ。大蛇丸としても見慣れないレグの存在は気にしていた。

 

「サソリをレグの身体に転生させました。どうでしょう、暁メンバーにも大人気でしたよ」

 

「貴様ぁぁぁ、大蛇丸にそれは教えるなとあれほど言っただろう」

 

 

 怒っているようだが、全然恐くない。寧ろ微笑ましいとすら思える。

 

 尾獣封印の儀式でプルシュカがレグをサソリだと暁メンバーにも紹介した。誰もが信じなかったが、デイダラとサソリだけが知るやり取りなどを証言することで皆が信じた。そして、デイダラが『サソリの旦那!! 随分可愛らしくなったじゃねーか。いいや、これが本体だったのか』とあのイタチですら一瞬吹き出していた。

 

 そのお陰で精密さが求められる儀式が失敗しそうになる大惨事。結果、挟間ボンドルドが責任を取る事になり、サソリの代わりに儀式に参加して尾獣を封印する事になる。

 

「くっくっく、これがあのサソリなのね。よかったじゃない、あっちのバ体達と比べたらましよ。で、この身体、動力は何で動いているの?気になるわ」

 

「火力です。天照――消えない炎という永久機関を利用しています。うちはイタチさんの瞳術なので、タダなんですよこれが」

 

 レグは自らの動力源が何であるかは気になっていた。チャクラを持たぬ肉体である事は理解していた。だからこそ、何で動いているのだと。電力という可能性はあったが、充電をした記憶が無い為、その可能性は捨てていた。そして、知らされたのが暁の同僚であったうちはイタチの瞳術だったのだ。

 

「そんな危険な動力で動いているのか。大丈夫なんだろうなボンドルド」

 

「心配無用ですよ、レグ。その身体の設計は私が一から行っております。貴方の最高傑作の人傀儡にも劣らぬ自信があります」

 

 ベクトルは違えど、同じ天才である大蛇丸が考える事は近かった。

 

「なにそれ、つまりイタチ君がいれば里の電気代が実質無料になるってことじゃない。もう、彼の目には興味はないわ。大型の火力発電施設を建造しておくから、連れてきなさい」

 

「今度、お声を掛けてみます。ほら、プルシュカもそろそろ出発しますので、大蛇丸様に赤ちゃんを返してあげなさい」

 

 大蛇丸とサスケの第二子をプルシュカが抱っこしていた。赤子の可愛さを自慢げに見せ付けてくる大蛇丸。本当に人は変わるものだ。

 

「ねぇねぇ、大蛇丸様。その子の名前はなんて言うの?」

 

 プルシュカが、子供の名前を大蛇丸に訪ねる。生後一ヶ月も経たない赤子。そろそろ名前があってもよい頃合い。こういう時、父親であるうちはサスケは無能だった。打倒うちはイタチといって、修行をする日々。産まれた子供に興味はあれど、名前を付けるセンスが無い。

 

「ボンドルド、光栄に思いなさい。貴方にこの子を命名させてあげるわ」

 

「それは光栄です。では、男の子……最強になるように願いを込めて――『ブロリー』」

 

 うちは最強の男となるうちはブロリー。その栄誉ある名付けの親となった挟間ボンドルド。

 

 かっこよく去って行くが、春野一家が音隠れの里に来る事を伝え忘れており、数時間後に出戻りしてくる事態となった。

 

 

◇◇◇

 

 元アスマ班――通称第10班のメンバーが木ノ葉隠れの里を出発しようとしていた。だが、その事に事前に気がついていた綱手によって、止められる。

 

「シカマル、お前はコチラで再編成した小隊に組み込む。そして、しっかりとしたプランを立てて行かせる」

 

「後で増援を送ってくれればいいっすよ。俺等の連携で既に作戦も立ててありますから」

 

 猪鹿蝶と名が通るレベルの連携。だが、連携でどうにかなるレベルの相手でなければ、意味を成さない。圧倒的な暴力を前に連携が崩れれば終わる。連携を前提とした戦いはそれだけ危うい。

 

 ミスが一つも許されない。

 

 綱手としては、今は一人でも貴重な戦力を無駄にはできない。中途半端な戦力では、暁や近くに居るであろう挟間ボンドルド、挟間プルシュカを止められない。

 

「小隊はフォーマンセルからだ、三人では規定未満だから許可できない。戻れシカマル。これ以上、里の規律を破る事は…」

 

「だったら、俺が第10班に加わればいいんですよね。それで、どうですかね」

 

 機を見計らったかの如く、はたけカカシが現れた。

 

 第10班メンバーの『祝福』がこの場を乗り切るため、助っ人を呼び寄せた瞬間だ。あの朝に弱く、担当上忍となった初日から遅刻するような男が、ここにいる。同僚の死など暗部時代から見飽きるほどあった男が今回に限って現れる。

 

「カカシおまえ。――わかった。ただし、暁だけで無くボンドルドやプルシュカも敵だと思え。暁に関しては分からんが、挟間一家の情報ならば分かっている事は全て教えてやる。一回で覚えろ」

 

 新生第10班が結成された。

 

 そして、挟間ボンドルドと挟間プルシュカの情報が共有された。それを聞いたはたけカカシは早まったかも知れないと思う。

 

 防御不可能な火遁・枢機に還す光(スパラグモス)

 4本の九尾チャクラ状態のナルトを拘束する水遁・月に触れる(ファーカレス)

 八門遁甲の強制開門による必殺。

 シェイカーという謎の投擲忍具…当たれば即、成れ果てとなり人間性を喪失。

 暗部クラスの攻撃では傷を付けるのも困難な外装。

 綱手にも比肩する怪力と医療忍術。

 特異な口寄せ動物"タマウガチ"。

 三すくみの一角である口寄せ動物"カツユ"。

 死んでも蘇る転生忍術。

 里の忍者全員の身体情報や忍術情報。

 祈手(アンブラハンズ)という私設部隊。一人は医療忍術の使い手だとの情報。

 

 これだけのことが最低限、木ノ葉隠れの里が把握している挟間ボンドルドの情報だ。

 

「あの~僕、挟間特別上忍の事はよく知らないんだけど……特別上忍より上忍の方が強いんだよね? カカシ先生なら楽勝だと思っていいんだよね?」

 

「と、当然だろうチョウジ」

 

 無理な笑顔を作るはたけカカシ。きっと、楽な戦いにはならないと考えていた。だが、はたけカカシも何だかんだで生き残り今まで過ごしてきた強者だ。今回も何とかなると甘く考えている節はあった。




娘のために、暁に同行する父親。
年齢的に保護者同伴は必須ですよね。

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