卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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新年明けましておめでとうございます。


自来也・サスケ編
48:音隠れの里


 S級犯罪者になった挟間ボンドルド。定住する事無く各地を転々としていた。木ノ葉隠れの時代では、年休をとるのも一苦労であり長期休暇するようなら、抜け忍扱いされて暗部を差し向けられた事も彼にはあった。

 

 だからこそ、この機会に娘である挟間プルシュカと妻であるカツユと家族旅行を楽しんでいる。S級犯罪者が気軽に旅行が出来るかと、挟間ボンドルドも一時期は心配していた。だが、蓋を開けてみれば何ら問題はなかった。

 

 そもそも、S級未満の犯罪者も多くいる世の中だ。そんな連中ですら普通に国を移動する。宿にも泊まる。金さえ払っていれば、誰もお咎めするような事は無い。

 

 大事な事だが…S級犯罪者を捕まえるなら、賞金首になっている忍者を捕まえた方が遙かに金になる。S級犯罪者を捕まえたところで貰えるのは名誉ぐらいなものだ。だったら、金が貰える賞金首の方が良いに決まっている。

 

「パパ~、あっちで綿飴が売ってたから買って買って」

 

『こらこら、甘い物ばかり食べたら虫歯になっちゃいますよ』

 

 挟間プルシュカの帽子から顔を出すメーニャ(カツユ)が小言を言う。縁日でのご定番の台詞であり、娘が出来たら一度は言ってみたかった台詞であった。言うだけ言って満足したので、メーニャ(カツユ)は満足顔でリンゴ飴をむさぼっていた。

 

「えぇ、構いませんよ。カツユも何か欲しい物はありますか?」

 

『欲しい物……あれは? 見てください、ボンドルド様。あそこにある射的の景品は、自来也様の新作"ウマぴょいパラダイス"です』

 

 暁調査という名目で、音隠れの里に来ている自来也。元暁メンバーである大蛇丸がトップをやっており、現役暁メンバーである挟間プルシュカも良く立ち寄る里だから調査対象として間違いでは無い。

 

 そこで、死に別れした弟子と再会し、親睦を深めるために温泉旅行に行こうとするのも無理は無い。だが、それを実現する為には、数居る強豪バ体を打ち破ってレースで何度も一位を取らなければならない。今では、大蛇丸との過去も清算し、第二の人生をトレーナーとして過ごすのも悪くないと思っている自来也がいた。

 

「あの方もお忙しいですね。忍者やったり、トレーナーやったり、本を書いたり。どれも一流の才能があるのだから、勿体ない」

 

「自来也のおじさん? 忍者としては凄いんだけど、プルシュカのお風呂まで覗こうとするから……ちょっと苦手かな」

 

『よし、殺しましょう!!私の可愛いプルシュカちゃんにつく悪い虫は居ない居ないしてあげますわ。伝説の三忍が何だって言うんですか。文字通り伝説にしてやります。いいえ、それじゃダメですね。勝手に作った自来也様の娘でもけしかけますか』

 

 自来也の実力は、挟間プルシュカも認める程であった。一時期は忍術の師と仰いだこともあり、強くなったからこそ分かる……自来也が頭一つ抜けて強い忍者であると。

 

「問題ありません。そのうち、長門さんの情報が自来也様の耳にも入るでしょう。彼の初見殺しには、自来也様でも対応はできません。その時は、女風呂を覗かないでも良い身体にしてさしあげます」

 

 挟間ボンドルドは、娘と手を繋ぎ縁日を楽しむ。

 

 

◇◇◇

 

 木ノ葉隠れの里では、日夜葬儀が行われていた。

 

 うずまきナルト達が暁と対峙して無事に帰還した頃から、徐々に忍者の損耗率が右肩上がりになる。暁による被害ではなく、通常任務での損耗であった。

 

 今現在、裏社会の総意で木ノ葉隠れに対して報復を行っている。そこに便乗して、暁が挟間ボンドルドのアドバイスに則り切り崩しに掛かっていた。うずまきナルトの同期や知り合い達を賞金首にする。これにより、任務中に金に困った犯罪者や他国の忍者達に襲われる事になり、死亡する事態。

 

 大事な事だが、忍者とは畑で取れるわけでは無い。長い年月を掛けて育てる必要がある。それを、芽が出る前に刈り取られては大損害。木ノ葉隠れの里の規模でも由々しき事態として、千手綱手も頭を悩ませていた。

 

「今月に入って、15件だぞ!! 水の国や雷の国での任務ならまだ分かる。だが、国内や同盟国の砂の国での死亡事故はおかしいだろう。シズネ、調査結果は」

 

「はい。木ノ葉隠れの忍者…大半の人物に賞金が掛けられている事が判明致しました。平均して、下忍に1000万、中忍2000万、上忍3000万です。その為、他国の忍者や犯罪者から狙われております」

 

 その言葉に、綱手は耳を疑った。賞金首にするシステムは存在している。それを取り仕切っているのが裏社会であり、つい先日その出先機関の者に拷問を掛けて廃人にした事を思い出した。だが、それだけだ。それだけの事で、木ノ葉隠れの里と一戦交えるなど裏社会としてもリスクが高いからやらないだろうと綱手は思っていた。リスクとリターンが合わない。

 

 世の中には、面子のために採算を度外視する連中だっている。そんな連中に、5影クラスが多数所属する暁が特記戦力の提供、挟間ボンドルドが遺体と引き替えに資金提供をすれば、裏社会の連中は喜んで木ノ葉隠れの情報を賞金稼ぎや他国にリークする。

 

「この忍者らしからぬやり方は、ボンドルドも裏にいるな。だが、それだけの資金力は奴にもないはずだ……口座は凍結済みだったな」

 

「ボンドルドさんのことですから、どっかの大名にでも裏で囲われてた可能性もあるかなと。なんでもやれる人でしたからね~。あ~ぁ、プルシュカちゃん可愛かったな~。……後、控えめに言って、マズイですよ綱手様」

 

 シズネも具体的にどうまずいか説明しなかった。忍者損耗率もマズイ要因の一つだが、何より挟間ボンドルドの罪状に疑念の声が出てきたからだ。長年、木ノ葉隠れの里に尽くしてきた医療忍者が、無実の罪で犯罪者扱いされているのでは無いかと声が上がってきた。

 

 事実、暁との戦闘で死者がでた山中一族は、一族の女子を失う発端となった挟間ボンドルドの罪状について真相を求めて火影に情報開示の請求をしていた。無論、こんなことは火影として認められないので却下する。頭の中を覗かれては、暁を支援していた事や大蛇丸との同盟までバレてしまう。それは許されない。

 

「頭を覗かれない限り証拠は出てこない。証拠の仕込みも完璧だ、どの機密書類を盗み見ても奴の犯罪にしかならん。私と暗部、それとシズネ自らが仕込んだ事だ。まさか、手抜かりでもあったのか」

 

「ありえません。とりあえずは、任務のローテーションなどを色々と組み替えて対応をしてみます」

 

 綱手やシズネでも、挟間ボンドルドの資金源には気がつけなかった。音隠れの里での新事業……そのレースの興行収入で莫大な利益を上げており、大蛇丸と二人で山分けしている。まさか、自国の元火影やトップクラスの忍者達の稼ぎが里の首を絞めているとは、誰も想像できなかった。

 

「そういえば、シズネ。暗部の者から聞いた話だが、音隠れの里から定期的に金の振り込みがあったくの一がいるとか。大蛇丸と繋がりが深い音隠れの里からの謎の入金、これは怪しいよな」

 

「えぇ、おかげで慰安任務をしないでも親子暮らせる程度の収入にはなっていましたね」

 

「暁方面は、ボンドルドに全面的に罪を被せた。大蛇丸方面でも少しは必要だとは思わないか」

 

「はぁ~、分かりました。手配しておきます」

 

 大名と蜜月な関係が求められる昨今、大事な慰安任務を断る元くノ一など火影の権力の前では風前の灯火だ。折角、助け船と称して、妊娠中の未亡人くノ一という属性モリモリで大名達に売り込んだ綱手の計画が全て水の泡となった。その理不尽なツケを精算するつもりでいる火影がいる。

 

………

……

 

 音隠れの里に到着した春野サクラ一家。

 

 その発展している里を見て驚いた。木ノ葉隠れの里と比較しても何十年も先を行った設備投資がされている。他にも、国外からの人の受け入れにも積極的である事も発展を助けており、各国の情報が集まる場所にもなっている。

 

「今日のレースは、トビラマテイオーとハシラマックイーンが出バだってよ」

 

「本当かよ。また、二代目の卑劣なステップが見られるのか」

 

「馬鹿言うなよ、ハシラマックイーンは印を結ばず斜行出来るんだぞ。負けるはず無いだろう」

 

「いいや、それ反則だからな」

 

 春野サクラは、通りすがりの男達の会話を聞きどこぞで聞いた事がある名前だなと思っていた。里をあげての振興事業がそれだと当たりを付けた。

 

 だが、本当に春野サクラが気がつかなければいけなかったことは他にある。結構な数の女性がうちはの家紋入りの服を来ている事に。更には、そういった女性の子持ちの頻度が凄まじく高い事だ。

 

 その時、近くで揉めている一組の男女がいた。その片方が、この場に春野一家を招待した男…挟間ボンドルドであった。

 

「おぃ、てめーーボンドルド!! なんだ、この身体は巫山戯てんのか」

 

「おやおや、お気に召しませんでしたか。アグネスデイダラ(・・・・)さん。その衣装、良くお似合いですよ」

 

「ふざけるんな。俺は、うちはイタチと決着を付けなきゃいけないんだ。こんな身体で、どうしろってんだよ」

 

 死んだはずの兄弟子が平然と他国の里にいる。更には、美少女と揉めていれば、春野サクラも混乱する。

 

「なるほど、つまりどのような形であれうちはイタチさんと同じ土俵で勝負出来れば今の立場に納得して走って頂けるんですね」

 

「あぁ?まぁ、そうだな」

 

「分かりました。貴方が快く走れる環境をご用意する事を約束しましょう。近日中に、うちはサスケ君が感動の再会を果たすでしょうからね」

 

 うちはサスケ。その名を聞いて春野サクラは、安堵した。この里にいれば、やはりうちはサスケに会えるのだと。

 

 そして、挟間ボンドルドが春野サクラに気がついた。バ体の女性との会話を終えて春野一家と対面する。

 

「これは、春野一家のみなさん。ようこそおいで下さいました。春野キザシさん、腰痛は良くなりましたか。春野メブキさん、音の里はあちらより寒いですので関節痛にならないように温かい格好をしてくださいね」

 

「挟間ボンドルド特別…いいえ、ボンドルドさんは、両親の事をご存じなんですか?」

 

「当然です。私は患者一人一人の事をしっかりと覚えております。春野サクラさん、色々と聞きたい事もあるでしょう。後で、大蛇丸様も含めてお話をしましょうか」

 

 大蛇丸同席という事で、春野サクラは悩んだ。

 

 その事を読み取って、挟間ボンドルドは伝説の三忍の一人でミナトブルボンの尻をなで回そうとしているトレーナーを同席させる配慮をした。

 

 そこで聞かされる真実とうちはサスケの現状。

 

 うちはサスケの抜け忍は全て仕組まれていた事、挟間ボンドルドが無実だった事、うちはサスケが万華鏡写輪眼の為に大蛇丸と部下のカリンを切ってプチ家出した事。大蛇丸は当然無事として、カリンはバ体のカリン(・・・)チャンとして転生し、うちはサスケと仲よくヤっているなど。

 

 そんな頭が悪いような状況を全て理解して飲み込んだ春野サクラは、両親を音隠れの里に永住させる事を決める。その上で、大蛇丸と仲よく握手をして木ノ葉隠れの里へと帰ることを決意した。

 

 その帰りの道中の宿で、気を利かせた兄弟子が彼女の思い人を誤って彼女と同じ部屋に泊めてしまう不手際をしてしまう。同室に年頃の男女が泊まって何事も無いはずが無く……春野サクラは、誰が本当に信じるべき相手かよく理解した。




自来也とイタチには、申し訳ないけど早々に退場願う!

次回、うちはサスケが遂にイタチの真実を知ってしまう。
そして、すぐさま音隠れの里で働く事になる。


PS:
退役した バ体 忍者
通称 退バ忍!!

「お前の父ちゃん退バ忍」と罵られることにる夕日紅の子供。
ナルトも同じか。

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