挟間ボンドルドは、長門の健康診断を終えてから音隠れの里に戻って直ぐに暁の裏のトップであるトビに呼ばれる。うちはイタチとうちはサスケの兄弟喧嘩があるので、その後始末という名の治療のお手伝い。
視力問題を眼鏡で解決し、内臓にあった致命的な病も挟間ボンドルドの手腕で一年以上前に解決していた。今では、生気が満ちあふれており全盛期以上の仕上がりとなっている。まさに、パーフェクト・イタチ。
対するは、伝説の三忍と呼ばれた大蛇丸の元で数々の術を学び、たった数年で忍界上位に位置する実力を身につけたうちはイタチの弟。更には、忍術を学ぶ最中、たった一人で現在進行形でうちは一族を起こした精豪でもあった。今は、子供の数は350人を超えた。あまりの規格外の子供の数で里で管理している住民情報システムを特注せざるを得なくしたビッグダディ・サスケ。
「ゼツさん、余り近付くと流れ弾が当たりそうなので、このあたりで待機していて構いませんか」
「あぁ、そうだね。で、ボンドルドは、どちらが勝つと思う?俺は、イタチだと思っている」
普通ならば、誰もがうちはイタチと答える。だが、うちはサスケとて負けてない。この日の為に大蛇丸を切って、子供の眼を万華鏡写輪眼に開眼させたのだ。その移植手術を挟間ボンドルドが行った。だが、その事実を暁の者達は知らない。
万華鏡写輪眼持ちのパーフェクト・イタチ。永遠の万華鏡写輪眼持ちビッグダディ・サスケ。瞳術の性能でいえば、うちはサスケに軍配があがる。
「お互いが、うちはイタチさんに賭けては勝負になりません。私は、うちはサスケ君に賭けましょう。そうですね、負けた方が次回の飲み会費用を全部持つというのはどうでしょうか」
「協調性の無い連中だが、他人の金で飲み食い出来るとなると集まるからな。まぁ、その程度ならいいだろう。プルシュカも参加するだろうから、貸し切り、禁煙だな。あぁ、サソリ……今はレグだっけ連れてきていいから」
中間管理職のポジションのゼツ。チームが上手に回るように気配りを忘れない常識人だ。忍具の準備やアジト確保、タイムスケジュール管理、各里の動向なども全てまとめて仕切っている。
「えぇ、では勝負の行く末を見守るとしましょう。ゼツさんは、これからあそこに?」
「そうだよ。あそこに行けるのは俺くらいしかいないからね。一緒に来るかい?」
「お気になさらないでください。私は、ここからでもよく見えます。そろそろ、試合のゴングがなりそうです。行かれるのでしたらお早めに」
狭間ボンドルドの白眼には、しっかりと現地の様子が見えている。なにより、万華鏡写輪眼持ちが二人もいる戦いに割り込むなど、お断りだというのが本音だ。
「ねぇパパ~。イタチ叔父さんが勝つと思うんだけど、なんでイタチ叔父さんに賭けなかったの?」
「単純に賭けを成立させるためですよ。それに、案外うちはサスケ君が勝つかもしれません。なんせ、彼の『祝福』は、うずまきナルト君に比肩しています」
うちはサスケ程数奇な人生を送っている者は数十年に一人レベルだ。そんな男が悲願を達成するためあらゆる努力をしてきた。その努力の成果をここで見せるとき。
◇◇◇
うちはイタチは、弟であるうちはサスケがついに自分の元までやってきたことに歓喜していた。木ノ葉隠れの里の上層部の命令で、両親や一族をすべて殺してまで救った弟。あのころとは見違えるほど力をつけてきた。
これならば、忍界で十分にやっていけるとすら、うちはイタチに思わせるほどの仕上がりを見せていた。
「久しぶりだなサスケ。随分と、老け……大人びたな。お前はその写輪眼でどこまで見えている?」
「写輪眼?何を言っているイタチ。お前に言われた通り、同じ万華鏡写輪眼を持ってきてやった。そう、俺のこの眼に見えているのは、あんたの死にざまだ」
万華鏡写輪眼というパワーワードは、うちはイタチに動揺をもたらした。
既に開眼しているならば、彼の目的が半分以上達成されている事になる。つまり、わざわざ嫌われ役をやっている意味が半分ほど意義を失う。
「そうか、お前も開眼したのか。うずまきナルトを手にかけたのか」
「この眼は、俺の娘……ツムギの眼だ。俺たち親子の力でお前を倒す!!」
天才うちはイタチの頭脳をもってしても、なかなか理解できない状況。仮に、これがうちはサスケの戦略というならば、うちはイタチもべた褒めしただろう。
大事なことだが、うちはイタチは音隠れの里の事情を何も知らない。
「そ、そうか。お前が所帯を持ったか。お前の亡骸を届けてやる。最後に妻の名を聞いておこう」
「―――大蛇丸だ」
答えるまで長い時間がかかるだけでなく、苦い顔をして妻の名を告げるうちはサスケ。
大蛇丸は、家事万能、才色兼備など誉め言葉を並べればいくらでもある天才だ。肉体は永遠に若いままで希望すればどのような女性にも転生してくれるという素晴らしいオプションも兼ね備えている。
つまり、苦い顔をして妻の名を言うこと自体失礼だ。子供の育児にろくに関わらず、修行に明け暮れ、必要になったら金だけもっていくという事をうちはサスケはやっている。事実、プチ家出して組んだチームの活動資金やメンバーですら元々は大蛇丸の持ち物だ。
「サスケ。こういう場で冗談を言うものではない」
「ちげーーよ。本当のことだよ。お前のせいで俺は大蛇丸と一族再興する事になったんだよ。だが、そんな自分も悪くないと最近思えるようにはなった」
里より大事な弟が、あろうことか大蛇丸と子供を作って一族再興。二人の間に産まれた子供の眼を万華鏡写輪眼にして自身に移植までしてやってきたうちはサスケに、うちはイタチは本気で気分が悪くなってきた。
ここまで弟を追い詰めてしまったのかと。
だが、天才うちはイタチ。この冗談のような状況が幻術である可能性に気が付いた。世の中には、幻術にかかったことすら気が付けない別天神という物もあるのだから。
「俺相手にここまでの幻術をかけるとは、強くなったなサスケ」
「馬鹿かイタチ!幻術ではなく現実なのが最悪なんだぜ」
うちはイタチとうちはサスケの幻術勝負がこれから始まる。
兄と弟……女の趣味は似ていた。つまり、弟の趣味にストライクな容姿となっている大蛇丸との夜伽を幻術で兄に当てつける外道が生まれる。うちはイタチは、嘗ての恋人が大蛇丸に上書きされた悪夢を見せられて嘔吐する。
原作では吐血ですが、ここではパーフェクト・イタチさんなので嘔吐になっております。
さて、サクサク進めるぞーー!!
50話を超えた…ここまできてやっと疾風伝の折り返し地点くらいだよね。