卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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54:おれって、ほんとバカ

 話の分かる蝦蟇達のお陰で客人扱いで妙木山に留まる事を許された挟間一家。挟間プルシュカはメーニャを連れて、妙木山の観光へと出かける。挟間ボンドルドは娘を見送り、フカサクとシマの家にうずまきナルトと共にやってきた。

 

 挟間ボンドルドが答える質問は二つのみ。質問の仕方が大事だ。その事をガマ仙人達は良く理解している。だが、うずまきナルトは正しく理解出来ていない。彼にとって、情報とは価値が低い……なぜなら、いつも欲しいタイミングで欲しい情報が転がり込んでくるからそういった事に関しては素人同然だ。

 

 うずまきナルトの中では、挟間ボンドルドが二つとは言っていたが聞けば幾らでも教えてくれるとすら思っていた。実際、彼の経験からすればそうだった。敵ですらべらべらと情報を教えてくれるのが常であり、それを当然だと思っている。

 

 だからこそ、うちはサスケが里抜けした時も時間が有り余っていたのに自ら動いて情報収集をしなかった。周りが勝手に調べて教えてくれるのを常に待つという受け身姿勢。その結果、二年もの歳月がたった。大蛇丸に関して自身で動いて調べていれば、もっと早く再会もできていたはずだ。

 

「さぁ、プルシュカに快く修行を付けて頂くためにも何でも聞いて下さい。但し、質問は二つだけです。何が聞きたいか決まりましたか、うずまきナルト君」

 

 ここに移動するまでの間に、うずまきナルトも色々と考えた。だが、碌でもない質問で大事な機会が潰れる事を察したフカサクが入れ知恵をする。

 

「じゃあ、一つ目。挟間特別上忍が知っていて、俺が知らない情報にどんなのがあるか教えてくれってばよ。二つ目の質問は、その情報から選ぶ事にする」

 

「どうじゃ、いい案じゃろう。さぁ、お主が知っている事を洗いざらい教えて貰おうか」

 

 シマは、どんな情報が出てくるか漏れずに書き留めるように筆記用具を準備して構えていた。

 

「勿論です。私の主観で、うずまきナルト君が知りたいと思われる情報から並べていきます。"うちはサスケ君の最新情報"、"春野サクラさんの秘密"、"ペインの正体"、"ペインの六道システムの詳細"、"自来也様の最新情報"、"うずまきナルト君のご両親の情報"、"木ノ葉隠れの里の闇"、"暁の構成メンバーの情報"、"暁の目的"、"音隠れの里の情報"、"綱手様の情報"。おおよそ、この当たりかと。知りたい情報はございましたか?」

 

 どれも他では手に入らない一点物の情報ばかり。ここから選べなど酷だと言える。挟間ボンドルド以外にも同じような情報を知っている者は確かに居る。だが、大蛇丸だったり、暁の裏のトップであるトビだったり、死んでも情報を教えないような連中ばかりだ。

 

「どうするナルトちゃん。儂なら"ペインの六道システムの詳細"を選びたい。なぜ、この男が知っているかは分からんが、嘘を言うような奴でもないじゃろう。だからナルトちゃんが選ぶといい」

 

「え、選べねーーーってばよ!!なんなんだよ。その情報量。本当に何者なんだよ挟間特別上忍は。なぁなぁ、挟間特別上忍……選ぶのにもう少しだけ情報を開示してくれってばよ。勿論、タダとはいわねーー。俺がプルシュカに螺旋丸を教えてやるからよ~」

 

 悪くない取引であった。螺旋丸は、プルシュカですら会得仕切れていない高難易度の忍術。螺旋丸とはうずまきナルトが尤も得意とする忍術であり、その者から直接指導を受けれるとなれば更に強くなる。印を結ばず使える数少ない忍術であり、その価値は高い。

 

 だが、ここで甘い顔はしないのが挟間ボンドルド。

 

「おやおや、うずまきナルト君は取引上手ですね。では、プルシュカへの螺旋丸指導とその首飾りを妙木山に居る間だけ私に貸して頂けるのならば、うずまきナルト君が望む情報二つに対して、もう少しだけ教えてあげます」

 

 初代火影が残したと言われる尾獣を抑える力がある石の首飾り。そんな謎の力を秘めた石が、木遁や写輪眼が無くても尾獣を制御できる可能性を秘めているとなれば、研究者の血が騒ぐ。知っている情報を少し開示するだけで借用できるなら安い物であった。

 

「まじか!流石、挟間特別上忍。話が分かるってばよ。じゃあ、"ペインの六道システムの詳細"について、もう少しだけ教えてくれってばよ。後……サクラちゃんの秘密を」

 

 本当は、"春野サクラさんの秘密"を一番知りたかったうずまきナルト。思春期であり気になる女性の秘密が知れる機会があるなら、欲望に忠実になる。なにより、今回はナルト自身が対価を出す事で挟間ボンドルドと取引をしたのだからフカサクとシマも文句は無かった。

 

 うずまきナルトの本命の質問は、"春野サクラさんの秘密"。だが、それだとあからさますぎるので、一つ目の質問にそれっぽいものを持ってきていた。大事な事だが、"ペインの六道システムの詳細"が本命の質問を隠す為のカモフラージュになっていない事を彼は気がついていない。

 

「"ペインの六道システムの詳細"は、死体をチャクラでリモート操作するシステムの事です。今の最新鋭六道システム開発者は、私です。"春野サクラさんの秘密"は、彼女は妊娠一ヶ月です」

 

 知りたがっていた情報の詳細を少し教えただけだというのに、挟間ボンドルド以外は目が点になっている。過度な情報で人は殴れる…殴られた人は、何が何だか理解出来ずフリーズする。

 

「理解が追いつかないから、待ってくれってばよ。ちょっと、外の空気吸って落ち着いてくる」

 

「そうして下さい。私は、コチラのお二方とお話しております。後、よければプルシュカに昼食のため戻るようにお伝え頂けると助かります」

 

 わかったといい、退室していくうずまきナルト。

 

 それから、無言となる部屋の者達。挟間ボンドルドとガマ仙人達。双方、ほぼ他人に近い者達なのだから、共通の知り合いであるうずまきナルトが不在となれば会話など弾まない。

 

「多くは言わん。だが、これだけは覚えておけ。世の中には、開発したらいけなかった術もある。例えば、二代目火影が考案した術全般じゃ。お主が作ったという六道システムの同列じゃよ」

 

「フカサク様、それでは二代目様の存在そのものをご否定されていますよね。彼女が聞いたら怒りますよ」

 

………

……

 

 暫くして、うずまきナルトがプルシュカを連れて戻ってきた。もう、蝦蟇たちと仲良しとなっており、コミュ力の高さは挟間ボンドルドを遙かに上回る。

 

「それで、何が聞きたいか決まりましたか?」

 

「あぁ、サスケの事も確かに知りたい。だが。アイツの事はなんかそのうち分かる気がする。他も大体そんな気がした。だから、サクラちゃんの秘密について教えてくれってばよ。何か困っているなら俺でも助けになるかもしれねーし」

 

 完全にいい男ポジションになっているうずまきナルト。この場合、どうでもいい男とか都合の良い男というのが正しい。

 

「おやおや、女性の秘密を知りたいとは。私から聞いたとは内緒にしてください。春野サクラさんは、一ヶ月前にうちはサスケ君と再会し、その日のうちに妊娠しました。お腹の子どもの父親は、うちはサスケ君です。彼にとっては、えーーと381人目のお子さんです」

 

「さすけぇ」

 

「それと、春野サクラさんは木ノ葉隠れの機密情報でうちはサスケ君の里抜けの真実や私が追放された真実を知りました。その為、安全な音隠れの里にご両親を移住させて、私同様に大蛇丸様と仲良い関係です」

 

「嘘だってばよ…だって、サクラちゃんは、サスケとあんなに会いたがっていたんだぜ。この間だって、暁に邪魔されて会えなかったが、サスケを見つけに……」

 

「演技ですよ。女性とはそういうものです。私もその場におりましたが、実に見事な演技でした」

 

 第七班で実は自分が仲間はずれだったと知る事になったうずまきナルト。思い人と親友の為に頑張っていたと思ったら、一人相撲をしていたと今知った。彼の心のダメージは計り知れない。

 

 うずまきナルトは自身が泣いている事にすら気がついていない。

 

「おれって、ほんとバカ」

 

 この時、謎の電波を受信した日向ヒナタがいた。今この時こそ、絶好のチャンスだと。彼女の『祝福』もこの世界最高峰の一つである。

 

「ねぇ、パパ。ナルト兄ちゃん、泣いてるよ……大丈夫よ!サクラ姉ちゃん以外にも女性なんていっぱいいるんだから。男は、失恋して成長するのよ。ほら、元気出して」

 

「ぐすん、すまねーーってばよ。そっか、俺失恋したんだな。サスケとサクラちゃん……お似合いじゃねぇか。でも、一言くらい俺に言ってくれてもいいじゃねーかよ。俺達、同じ第七班の仲間だろう」

 

 見ていていたたまれない光景であった。

 

 フカサクとシマも、第七班の者達について詳細こそ知らないが話の流れで察した。親友が思い人と結ばれて子供まで作っていた。自分は完全に道化となっていた事に今気がついたと。

 

どうすんじゃよ、この状況。儂等の手に余るぞ。お前(挟間ボンドルド)のせいなんだから、何とかしろ。ほれ、誰か居るだろう、ナルトちゃんの事を大事にしてくれそうな女子の一人や二人。紹介してくれるなら儂からも何かやる。見てるだけで、こっちまで泣きたくなるわ

 

フカサク様、私にそのような都合の良い知り合いは――あぁ、条件にぴったりの方がおりました。訳あって直接会わせる事はできませんが、電話ごしで会話くらいなら。ですが、万が一の場合、倫理的な問題が少々

 

何でも構わん、やれ!儂が全責任を持つ(・・・・・・・・)。このままじゃ、仙術の修行にも影響がでるわ

 

分かりました、とても美人で気立てが良く、ナルト君を大事に思ってくれるお方です

 

 うずまきナルト……失恋した傷心を新たな出会いで癒やす事になる。まるで、父親のように全肯定してくれるその存在は、日向ヒナタの見えないライバルとなる日も訪れるかもしれない。

 

 新しい出会いを導いた挟間ボンドルドは、フカサクから仙術チャクラを体外に追い出して、仙術モードを強制解除する謎の棒を貰う事になった。

 




さて、そろそろ、暁が木ノ葉隠れの前でスタンバっていますよね!
ペイン、不死コンビ……おまけで挟間プルシュカの参戦があるかもって程度の予定です。

PS:
わたしって、ほんとバカと言わせたかった…。

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