卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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55:親子の縁

 蝦蟇の隠れ里である妙木山で快適に過ごしている挟間一家。元々、カツユの実家である湿骨林でも過ごせていた者達である為、適応力は高かった。土地を借りて家を建てて、そこに研究機材まで持ち込んでいる。

 

 挟間プルシュカが修行する最中、挟間ボンドルドは研究に心血を注いでいた。

 

「これで完成です。フカサク様から頂いた物が存外役に立ちました」

 

『流石、ボンドルド様です。早速、プルシュカちゃんにも新しいお洋服をお渡し致します。ふふふ、プルシュカちゃんのデビュー衣装、素敵です』

 

 挟間ボンドルドの外装である暁に至る天蓋。チャクラ吸収機能、自己再生機能、チャクラによる硬化機能など夢とロマンが詰め込まれた物に、新しい機能が加わった。仙術チャクラの制御機能と尾獣チャクラ抑制機能。

 

 仙術チャクラの制御機能は、過剰に摂取している仙術チャクラを体外に自動排出する事で仙術モードを自動で維持できる優れた機能。

 

 尾獣チャクラ抑制機能は、謎の石の成分分析を行い尾獣チャクラに反応する物質を培養し取り込む事に成功。それを利用して尾1本分の力を押さえ込む事を可能とした。

 

 デザインこそ異なるが、挟間プルシュカの外装も挟間ボンドルドと同じ機能を有している。

 

「そうしましょう。プルシュカの修行もそろそろ大詰めです。次の仕事もありますので、そろそろお別れのご挨拶をしましょう」

 

『そうでしたね。しかし、長門さん達もバカなんでしょうか。なんで、暁コートで木ノ葉隠れの里に空から入ろうとする計画を立てるんですか。普段着で顔のとげとげを化粧で隠して入れば楽なのに』

 

 自称隠れ里でもある木ノ葉隠れの里。当然、一般人や忍者の出入りも多いが……里へ続く扉は何時も開放されており、誰でも受け入れている。入り口に関所も無い為、フリーパスで入る事が可能だ。

 

 だから、抜け忍であったうちはイタチや干柿鬼鮫が平然とダンゴ屋で食事ができていた。

 

「ですが、これもお仕事です。暁の木ノ葉隠れの里潜入のアドバイザーとして手を抜くわけにはいきません。それに、あそこは『祝福』の宝庫でもあります。木ノ葉隠れの里には、追放された時に色々と略奪されましたので、少しはお返しを頂く必要があります。それに、師であった綱手様へお別れのご挨拶もできておりませんでした。丁度良い機会です」

 

『あぁ、そういえばそんな方もいらっしゃいましたね』

 

 嫌な事を思い出したといった感じだ。やらかした事を考えれば当然であり、今現在は口寄せ契約も更新されておらず、既に他人といった状態だ。もはや、伝説の三忍として残っているのは事実上、大蛇丸だけとも言える。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドの元で健康診断とメンタルケアを受けるうずまきナルト。当初こそ、何か良からぬ事をするのでは無いかとフカサクとシマの監視もあった。だが、両名の診察や蝦蟇達の診断もして、怪我や病気を治療する内に信頼を勝ち取った。

 

 医師という職業は、人から信頼を勝ち取るという事に関してはチート能力だ。

 

 挟間ボンドルドは、手元にある診断結果を確認する。

 

「利き腕の経絡系に僅かな傷がありましたので治療をしておきました。極小のチャクラによるものです。忍術の弊害だと思われますが、同じ術を使われた場合には綱手様クラスの方に精密検査をしてもらってください。九尾チャクラを持つうずまきナルト君の自然治癒能力でも限界があります」

 

「ありがとうってばよ。確かに、少し楽になった気がする。やっぱ、挟間特別上忍はすげー。ところで、お願いがあるんだけど~。今晩も30分でいいから電話を貸してくれってばよ。絶対にこっちから掛けるって約束してるんだよ」

 

 傷心のうずまきナルトのメンタル回復の為、彼を全肯定して優しくしてくれる女性を紹介した挟間ボンドルド。その結果、案の定ド嵌まりしてしまっていた。

 

「修行で疲れているでしょうし、早めにお休みになる事をお勧めしますよ。ここ最近毎日ではありませんか」

 

「だってよーー!電話って、挟間特別上忍の家にしかねーんだから仕方ないじゃん。ここ、ド田舎なんだから。じゃあ、今日の電話は我慢するからミナトさん(・・・・・)の写真とか持ってない?」

 

 ある程度責任を感じている挟間ボンドルドは、仕方なくうずまきナルトの求める写真を見せた。選ばれた写真のチョイスが、自来也が彼の父親と肩を組んでいるものであった。

 

 そして、真実を教えてあげようと思った。ここら辺が潮時であると。そうしなければ、この先は地獄になる。

 

「お名前を教えて頂けたのですね。自来也様の横に写っている勝負服を着ているのが、貴方のお父上ですよ」

 

お乳上(・・・)って……そんなの分かってるてばよ。しかし、挟間特別上忍もそんなことを言うんだな、意外だったぜ。って、横にいるのエロ仙人じゃねーかよ」

 

 そして、しれっと懐に写真をしまい込んでうずまきナルトは去って行った。著者自来也のエロ本には、お乳上という単語がでる回もあり、うずまきナルトはエロイ言い回しを良く理解していた。

 

 退バ忍(退役してバ体となった忍者)の子供の頭が、残念な事になっているとは知らず、これで肩の荷が下りたと挟間ボンドルドは本気で思っている。

 

 

◇◇◇

 

 挟間プルシュカが修行に加わってから幾らかの月日が経過していた。忍者の中には、子供でも並みの大人より強い者がいる事をフカサクも知っていた。だからこそ、挟間プルシュカも同じであると考えていたが、想像の遙か上をいっている事を知る。

 

 停止状態での仙術モード移行をうずまきナルトと同レベルの期間で習得をしていた。その合間には、螺旋丸も教わっており実質的にはうずまきナルトより短い期間で完成に至っている。

 

 常に傍らで母親であるメーニャが見守っている。だから、間違っても虫を食べるような事は起こらない。

 

『どうです、どうです!私達のプルシュカちゃんは、凄いでしょう』

 

「全く、会得できない者の方が多いというのにこの年で仙術モードを覚えるとは。カツユ様、この子はもしかしたら予言の子かもしれませんぞ」

 

『あ、そういうの結構なので』

 

………

……

 

 真面目な話をしようと思ったところを完全に切られたフカサク。忍びの世に変革をもたらす存在になり得るとフカサクは思っていたが、この返しは考えていなかった。

 

「待ってくだされ。これは真面目な話なんですぞ、カツユ様のお子様であるプルシュカちゃんは本当に忍びの世界に変革をもたらす子かもしれません」

 

『だから、結構だといっているんです。プルシュカちゃんは自由に生きて欲しいんですよ。人の人生は短い物です。そんな中で縛られて生きるなんて可愛そうじゃありませんか。忍びの世に変革?そんなに変革が欲しいなら、私が本体で5大国を転がって横断しますよ』

 

 変革どころでは無く滅亡するレベルの大惨事。力業で変革を止められるカツユが言うと説得力があった。

 

「そうか、すまなかった。確かにカツユ様の言うとおりじゃわ。話は変わるが儂と母ちゃんもプルシュカちゃんとなら融合もできるから、三位一体でやるスタイルはどうじゃ。あの子の忍術センスなら問題無かろう」

 

 両肩にフカサクとシマ。頭部にカツユを交えた最強の融合仙人モード。事実、それは可能であった。融合を教える上で試行錯誤した上での挑戦でそれが実現している。

 

『両肩にフカサク様とシマ様ですよね。もっと、サイズが小さくないと見た目が~』

 

「あぁ、そうじゃったの。自来也ちゃんクラスの体格なら我々も比較的小さくみえるんだが、プルシュカちゃんサイズだと不格好か。一旦は、口寄せ契約だけ母ちゃんと一緒にしておくかの。ナルトちゃんといい、将来が期待できる子供達に会えた事が最大の収穫じゃったわい」

 

「ほんと、ええ子なんだけど……私が作った料理にだけは一切口を付けないのが納得できんさかい。ナルトちゃんは、あんなに美味しそうに食べるのに」

 

 虫料理を旨そうだと感じ始めたうずまきナルト。自身も人間じゃなくなってないかと本気で心配しており、挟間ボンドルドの健康診断で人間判定された事が彼の心の支えの一つでもあった。

 

 そんな保護者達であるフカサク、シマ、カツユが話している元に仙術モードでの組み手を終えたうずまきナルトと挟間プルシュカが戻ってきた。お互い泥まみれで切り傷や打撲傷が目立つ。

 

「ママ、見てた見てた!今日は、10本中2本もナルトお兄ちゃんから取れたよ」

 

「どんどん追いつかれている感があるってばよ。それに、プルシュカも本気じゃなさそうだし」

 

 お互いに本気を隠した組み手で、プルシュカ相手に8割の勝率を誇るうずまきナルトが凄いのか、うずまきナルト相手に2割の勝率を誇る挟間プルシュカが凄いのかどっちもどっちであった。

 

 だが、挟間プルシュカはハッキリとうずまきナルトの異常性を理解した。影分身の術は、チャクラを均等に分ける特性がある。それなのに、うずまきナルトに至ってはそのマイナスとも言えるリスク無しで術を行使していた。

 

 チャクラ量が多い挟間プルシュカであっても、影分身は余程の時しか使わない。僅かなダメージで消えてしまう分身に残チャクラの半分も持って行かれるなど効率が悪い。本来、実戦で使うのでは無く、経験値のフィードバックを目的とした潜入任務や修行でしか使い道が無い。

 

 

 

 その翌日、挟間一家は当初の目的を果たした為、次の仕事に向かう事にする。お世話になった蝦蟇たち全員に挨拶して回る営業行為も忘れない。フリーの忍者となった挟間ボンドルドは、こういう横の繋がりが大事であるとよく分かっている。

 

「うずまきナルト君、お借りしていた首飾りはお返し致します。それと、これが彼女への直通電話番号です。いいですか、電話は監視されておりますので話す内容には気をつけてください。相手にも生活があります、電話は多くても二日に一回、夜の決められた時間に30分までです」

 

「分かった。色々とありがとな!」

 

 親子の縁を繋ぐ手伝いをした。親子愛が正しい形となった事に喜びを感じている挟間ボンドルド。

 

「プルシュカちゃんが一緒なら、また来てもいいぞボンドルド。儂も里の蝦蟇たちも世話になった事は感謝しとる。見た目は胡散臭いのがいけないが、腕は確かじゃった」

 

「えぇ、良く言われます。フカサク様もシマ様もお体にはお気を付け下さい。何かありましたら、依頼としてならお受け致します。フリーの忍者ですから、次会う時は敵かもしれませんけどね」

 

 忍者故に、昨日の敵は今日の友という事もある。また、その逆もある事はフカサクもシマも承知の上だ。それが、忍びの世の常だ。

 

「またね~、フカサク様、シマ様!!何かあったら絶対に呼ぶから、その時は一緒に闘ってね~。後、年なんだから無茶はしないこと」

 

『短い間でしたがお世話になりました。そのうち、湿骨林にも遊びに来て下さいね』

 

 うずまきナルトと蝦蟇達に見送られた挟間一家。

 

 逆口寄せで呼ばれた先で待つ暁と合流し、木ノ葉隠れ潜入計画を立てる事になる。

 




木ノ葉隠れの卑の意思を見せて貰いましょう!
綱手様、今参ります。


PS:
少しリアルが忙しくなり、更新が遅くなるかも知れません。
すみませぬ。





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