卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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57:パパ活

 他国の忍者が入り交じり、挟間ボンドルドが知っていた頃とは様変わりしていた。特に夜にもなれば、飲み歩く忍者達で問題も多く発生する。里の警邏部隊も忍者同士の問題には不介入と決めており、当人達での解決を望んでいた。

 

 その為、変化の術で姿を変える必要はあるが暁コートでも着ていない限り出歩いても問題はない。

 

 夜の街を変化の術を使い堂々と歩く挟間ボンドルドと挟間プルシュカ。

 

「ねぇ、パパ。畜生道って、前のパパの職場にいるのかな?」

 

「病院ですか。確かに病院には、霊安室や検死室などがありますから可能性はあるでしょう。しかし、今回の件、病院とは関係無い為、捕虜がなぜか突然死した時に検死する方の部屋でしょうね」

 

 捕虜の取り扱いは、各国との協定で決まっている。だが、突然死した場合などは、木ノ葉隠れの里が責任をもって遺体を綺麗にしてから元の里に送り戻すデリバリーサービスを行っていた。三代目火影である猿飛ヒルゼンが始めたデリバリーサービス事業だ。当然ながら、上忍や中忍で生きて帰れた者は、100人中2人も居ればいい方だ。

 

 当然な事だが、既に挟間ボンドルドは白眼を用いて遺体を確認済み。里を丸裸に出来る眼は本当に素晴らしい。他里の忍者が欲しがるのも納得の一品であった。

 

「そうなんだ。ねぇ~パパ、お腹減った。仕事前に何か食べていこうよ~」

 

「食事ですか――?あぁ、素晴らしい。やっと、理解出来る域にまで達しました」

 

 挟間プルシュカからの夕食の要望に対して、答えとなっていない回答をする挟間ボンドルド。だが、彼はこの時初めて違和感に気がつく事ができた。

 

「どうしたの、パパ?早くいこうよ~」

 

「プルシュカ、今までも食事前に仕事をした事が何度もありました。私の記憶にあるかぎり、プルシュカが自分から仕事より食事を優先した事はありません。確かに、おかしな事ではありませんが……何故、今、この時なのでしょうか?」

 

 子供が夜に食事を食べる事は当然だ。育ち盛りの子供に食事を食べるなと言っている訳ではない。だが、大事なのは、なぜ今回の任務で初めてそのような事を言い出したかという点に尽きる。

 

「だって、この道は食事処がいっぱいあるよ。てっきり、パパもそのつもりだからこの道を通ったのかな~って思って」

 

「こう言う場合、裏通りの最短ルートより人通りが多い方が目立たないと思ったのですが……なるほど、『祝福』の影響ですね。恐らく、我々が食事をした場合には何故か遺体が移動されていたり、不思議に強い上忍が現場に居合わせたりするのでしょう」

 

 今、遺体を回収されたら不利になるという事で誰かしらの『祝福』が作用していると挟間ボンドルドは認識した。事実、検死解剖を正しく終えるには明日の朝まで掛かる。なにより、今検死室には戦える忍者が誰も居ない状況であり、このまま挟間一家が訪れたら結果は火を見るより明らかだった。

 

「パパ。でも、それだと他の人達も同じ状況になっているんじゃないのかな?確か、今晩から動くスケジュールだったよね」

 

「そうですね。今から戻ってこの事を伝えるにしても、何かしら邪魔がはいるでしょう。でしたら、我々だけ先に仕事を終えて他に合流すべきか……これも、罠なのか。理解してもなお選択を迫るとは。一体これは、誰の『祝福』なんでしょうか」

 

『くっくっく、私には分かります。この腐敗したような感じ、あの小む…じゃなかった。綱手様ですよ。ボンドルド様、こんなこともあろうかと私の分裂体達が暁の皆様に付いておりますので、その情報を共有しました……が、少し遅かったようです』

 

 メーニャ(カツユ)経由で、他の暁メンバーの状況が共有される。

 

 飛段と角都がルームサービスで食事をしていたところ、部屋にGが出たためテーブルをひっくり返した。その拍子に、血液が入った瓶を割るだけに留まらず、名前のシールに醤油やソースなどの液体が付着して誰の物か判断できなくなっていた。

 

 小南は、部屋の風呂場で身体を洗っている最中になぜか水道が止まり泡塗れ。水遁が使えないので、泡を落とせない状況となりそのままカビカビとなってしまった。当然、紙分身などは使えない。

 

 長門は、火の国のインフラ工事の影響で一部区間で停電が発生しておりペイン六道が木偶の坊となっていた。お陰で、口寄せで小南の泡も洗い流せず、一人雨隠れで右往左往しているらしい。

 

「これは酷い状況です。飛段さんと角都さんは、まだ動けそうですがメインとなる長門さん達が動けないとは。プルシュカ、私達は直ぐに動きます。夕食は、これで我慢して下さい」

 

「これ、行動食4号。あんまり、美味しくないよ~」

 

 行動食4号は、挟間ボンドルドが作った長期任務にも対応した兵糧丸の一種。保存食としても優れた年単位で持つ食料であり、栄養バランスも完璧な商品だ。だが、これだけ素晴らしい品なのに、売れ行きが芳しくない。味の事を二の次にしており、食べた者の感想は壁の味がするとの事。

 

『私は好きですよ、行動食4号!行動食4号は、ボンドルド様の味~』

 

「私だって、食べれるもん!行動食4号は、パパの味~」

 

 行動食4号は、パパの味~。行動食4号は、ボンドルド様の味~。といって、我慢して食べてくれる子と妻は偉い。だが、自他共に認める味が二の次の保存食が自分の味と言われる挟間ボンドルドの心境は微妙であった。

 

 次からは、保存性や栄養だけでなく味を第一にした兵糧丸を作ろうと決意する。

 

………

……

 

 木ノ葉隠れの里に潜入した暁の中で、いち早くスマートに任務をこなすため動き始めた挟間一家。だが、その道中を拒むかの如く、様々な厄災が降りかかる。

 

「パパ、この先工事中だって」

 

「私達は、忍者です。その程度の障害は、飛び越えます」

 

 忍者は、足にチャクラを集中する事で壁だろうが水面だろうが、お構いなしの存在だ。工事現場など迂回せずとも通り抜けられる。

 

………

……

 

 更に進んだ先では、忍者同士が一触即発の雰囲気。両名とも中忍以上であり、場合によっては、周囲を巻き込んだ大惨事になる。

 

「パパ、砂隠れの人と木ノ葉隠れの人が路上の真ん中で大げんかしてるよ」

 

「時間の無駄です。木ノ葉隠れは私がやります。砂隠れを制圧できますね、プルシュカ」

 

 喧嘩に割り込み、挟間ボンドルドが木ノ葉隠れの忍者の点穴を的確に付く。チャクラを止めると同時にそのまま意識を沈めた。同時に挟間プルシュカは、砂隠れの忍者に幻術を掛け、身動きが止まった瞬間に顎を殴って脳震盪を起こさせた。

 

 その鮮やかな喧嘩の止め方に周囲が称賛する。

 

………

……

 

 パパ活疑惑で職質にあったり、砂隠れの忍者に知り合いだと間違われたりと、あらゆる足止めがされる挟間一家。そして、ついに手が尽きたのか……今度は、産気づいた妊婦まで現れる。

 

 挟間ボンドルドの記憶の限り、産婦人科などは開いていない時間。寧ろ、出産を控えた妊婦が何故出歩いているのかとすら思っていた。本来なら、挟間ボンドルドも気に掛けない……だが、知り合いならば話は多少変わる。それも、バ車ウマの如く働いている夫を持つ女性ならば。

 

「おやおやおやおや、どうなさいましたか夕日紅さん。こんな夜更けに女性が一人で外を出歩くのはよろしくありませんよ。今の木ノ葉隠れの里は、他里の忍者も多くおります。どうぞ、早く病院にお戻りください」

 

「だれ? 知り合いだったかしら……でも、関わらない方がいいわよ。私に関わると、貴方も木ノ葉隠れに居づらくなるわよ。っ、お願いもう少しだけまって」

 

 お腹を大事そうに支える夕日紅。

 

 どうやら向かっている先は病院らしいが、色々と複雑な状況を抱えていると察した。

 

「なんで、出産を控えているのに病院にいないの?それに、顔色も悪いわよ」

 

「夕日紅さん、少し失礼しますよ。安心して下さい、私はこれでも医師です。苦しんで居る人を見捨てる事はできません。さぁ、困っている事があるなら話して下さい。知らない人にならば言える事もあるでしょう」

 

 挟間ボンドルドの言葉に反応して、夕日紅が触診を素直に受けた。医師というチートは何処でも役に立つ。僅かな触診だけで、食生活がボロボロである事がわかる。更に言えば、衣服の質もよくない。元上忍とは、とても思えない。

 

 暁の任務の事もあったが、挟間ボンドルドはコチラを優先する事にした。この状況だ……これ以上、強引に進んでも更なる厄災が起こり妨害されると理解する。『祝福』による妨害だと理解出来ても、回避できることとは別問題であった。

 

 それから、挟間ボンドルドは医療忍術を使いつつ夕日紅の話を聞く。

 

「大変でしたね。謎の仕送りのせいで、口座が止められて生活苦。更には、口座凍結解除と引き替えに、大名達へ特別任務とは……」

 

「お姉ちゃんは、なんで里抜けしなかったの?こんな状況になってまで」

 

 挟間プルシュカが純粋な疑問をぶつける。だが、酷なことだ。お腹に子供を抱えて逃げ切れるはずも無い。子供を産んだ場合は、産まれた子供を守る必要があり、彼女には選択肢など無いも同然。

 

「私は、貴方達(・・・)と違って弱いのよ。お願いよ、この子だけは助けたいの。私はどうなってもいいから」

 

「おかしいですね。変化の術は完璧だったはずです。話を伺うに、この件は私達も無関係というわけではありませんから、構いませんよ。まさか、この年でプルシュカに助産の経験を積ませる事になるとは思いませんでした。さぁ、私の手をお取り下さい」

 

「ありがとう。それと、変化の術を使うなら口調も変えなさい。貴方を知っている人が聞いたらバレバレよ」

 

 辛そうながらも助かったと思う夕日紅。そんな彼女をみて、挟間プルシュカとメーニャが威張り倒す。

 

「感謝しなさいよ、パパ活のお陰で助かるんだから」

 

『そうですよ、ボンドルド様のパパ活は偉大なんですから』

 

「貴方達、パパ活って意味知ってる?」

 

 その日の夜、挟間ボンドルドのパパ活のお陰で夕日紅は一人の女の子を出産した。同時に、暁メンバーは結局何も出来ずに一晩を無駄にして、翌朝から行動を開始する事になる。僅か半日、されど半日の差がこれからの暁の活動に大きな影響を与える事になる。

 

 

 




原作と違って少し紅先生の出産早いけどいいんや。
生え際が後退していないアスマさんがやらかしたんや。


PS:
スカーレットって緋色らしいよね。
紅色も似たような物だとは思いませんか?
ダイワスカーレット()

夫婦が離ればなれって、作者はいけないと思います。
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