木ノ葉隠れの里に夜襲を掛ける計画が頓挫した暁。何が嬉しくてS級犯罪者で全国指名手配されている忍者が、真っ昼間に騒ぎを起こさないといけないのかと、挟間ボンドルドはその事を早朝のミーティングで議題に持ち上げた。
だが、結果はこれ以上時間を無駄に出来ない。どんな障害があろうとも我々は負けないという事で真っ昼間に五大国の一つである火の国……その隠れ里である木ノ葉隠れの里に強襲を仕掛けることになった。
多数決の民意で決まった事に文句など言わずに、素直に仕事に向かう挟間一家。昨日とは打って変わって、何ら妨害されない。素直に、捕虜が謎の死を遂げる建物へと足を運んでいた。
「私が提案した警備体制やパスワードの規則性を今も利用しているとは。前任者がS級犯罪者になっているという認識が希薄すぎます」
建屋は、捕虜の命を守る為、外からの侵入には強固だ。捕虜になる忍者もそれ相応の事をやって捕まっている為、恨みを買っている。だからこそ、里の忍者から守るという体裁で人気の少ない場所にある。中の警備も多くは無い。
金庫にしまってあったマスターキーを手にした挟間ボンドルドは、娘を連れて目的地へと着々と進んでいた。不法侵入には、警報が鳴り暗部が駆けつける場所でもあるが、正規手順で進む彼等には全く役に立たない警備システムだった。
「パパは、見てるだけだからね。ここからはプルシュカの仕事なんだから」
「分かりました。あなたの輝きを私に見せてください」
父親の言葉に、やる気に満ちる挟間プルシュカ。
命の取り合いとなる実戦。訓練では格上ばかり、実戦では格下ばかりであった挟間プルシュカにとって、木ノ葉隠れの里とは実によい実戦場所であった。嬉しいことに他里の忍者もおり、殺気を含んだ様々な忍術を経験できる機会だ。
その時、建物全体が揺れた。
『ボンドルド様、どうやら長門さん達の総攻撃の余波のようです。それと、綱手……様の呼び出しが五月蠅いんですが、どうしましょうか』
「火急の用事なんでしょうから、是非行ってあげてください。既に契約が切れていたとしても長年付き添った仲である事は変わりません。それに、行けば里の情報を色々と教えてくれるでしょう」
後々のことを考えて挟間ボンドルドは、綱手の元へ行く事を勧めた。『祝福』を回収するに際し、目的の人物が何処にいるか分かる方が都合が良いからだ。回収する目星は彼の中で既に決まっていた。
………
……
…
検死室の前まで来た挟間一家。挟間ボンドルドは既に中がどのような状況か理解しているが口を出さない。娘の仕事なのだから、余計な事を言わずに見守るのが父親の仕事だと思っている。
気合いが入っている挟間プルシュカが、検死室のドアを開けた。そして、元気な声で挨拶をする。戦であっても、憎い相手であっても礼儀を重んじるのがニンジャであると、東の小国で出会ったニンジャから挟間プルシュカは学んだ。
「ドーモ。コノハノサトノニンジャ=サン。挟間プルシュカです。ペイン六道を回収にきました~」
「こ、こんにちわ。お嬢ちゃん……挟間って、確か前にいた抜け忍の?」
検死室の中には、検視官とその護衛をしている犬塚ツメと犬塚キバ。忍犬使いの二人が詰めていた。犬が本体なのかと言いたくなる忍術使い。決して弱くない。寧ろ、同数の忍者相手では勝ち越せるだけの実力がある。
「母ちゃん!!その子の後ろだ」
「これは、ご挨拶が遅れてしまいましたね。お久しぶりです、犬塚ツメさん、犬塚キバ君。忍犬達も見る限り健康状態は良好のようですね」
挟間ボンドルドの登場に犬塚親子は焦っていた。匂いに頼った感知は、種が割れていれば対策を打つのは簡単だ。挨拶抜きでの初手殺し合いならば、確実に一人は死んでいた状況だった。
「ワンチャン!!ほら、お手だよお手」
『はい、お手』
挟間プルシュカの帽子の中から、飛び出してお手をする
「もう、ママったら焼きもち焼いて~可愛いんだから。大丈夫よ、プルシュカは強いんだから!」
「私は、手を出しません。お二人とも手を抜いていると、直ぐに死んでしまいますよ」
ジャイアントキリングの経験がある者ほど、己はその対象にならないと考えている事がある。事実、犬塚キバは過去に何度も上忍クラスを倒すという経験をしており、少なからず慢心があった。
挟間プルシュカを観察して、いち早く危険に気がついたのは犬塚ツメの方だった。濃厚な死の匂いを感じ取る。即座に印を結び迎撃にはいる。
「黒丸!!牙狼牙」
「はい、土遁・おろし金の術」
土遁・土陸返しを挟間プルシュカが改良した忍術。直進してくる相手に床板をおろし金のようにして迎え撃つ技だ。物理攻撃に対して耐久度は高いとは言えないが、回転してくる敵に対しては絶大な破壊力を持つ。
相手は、人体を抉って貫通する殺人忍術を使っているのだから、メタ忍術で対抗する事は倫理的に反しているとは言えない。人間と犬がミキサーに掛かってミンチになってもだ。
「ぎゃーーー」
「くぅーーーん」
両腕がミンチになったタイミングで何とかおろし金から逃れる事ができた犬塚ツメと黒丸。先手は、確かに犬塚ツメであった。だが、術を確認してから発動した挟間プルシュカの方が強い…唯それだけの事だ。
写輪眼の洞察力を以て、メタ忍術で対処する……これぞ、挟間プルシュカが尤も得意とする方法だ。最小の力で最大の成果を得る。
「母ちゃん!!この野郎、赤丸!!」
「酷い、野郎じゃないよ。それに、おばちゃんが殺そうとしてきたから、やり返しただけじゃない。なんで、自分達は殺すのに相手には不殺を求めるの?おかしくない?まぁ、いいけどね」
「キバァァァ!あんたは逃げて応援を呼んできなさい」
母親は助からないと理解する犬塚キバ。だが、母親を見捨てて逃げることはできなかった。それに、犬塚キバ自身も逃げられるとも思っていない。そもそも、犬塚一家は逃げ場が無い密室を意図して戦場に選んでいたからだ。
ここにペイン六道の一人が居るため、仲間が回収に来た時に備えて密室での戦闘が得意なこの二人が選ばれている。周囲の壁の強度も高いため、貫通力がある忍術持ちである犬塚キバでも手こずる。
「私は、パパと同じで死にかけの獲物を目の前にしても手を抜かないのよ。火遁・
挟間プルシュカの肘に装着された筒から放出された全てを焼き尽くす熱線。犬塚ツメの心臓を貫通して背後にあった壁から外の景色が見えるほど綺麗に全てを焼きつくす。忍者の中には、心臓を刺しても死なない奴も存在しており確実に殺すならば頭部を破壊すべきである。
「プルシュカ、減点一です。次は頑張りましょう。さぁ、犬塚キバ君……貴方の出番ですよ」
「はーい、でも、的が大きな身体の方が当てやすいのよね。パパみたいに慣れればちゃんと当たるよね」
「安心してください。すぐに、貴方の同期達が居る場所へプルシュカが送って差し上げます。その身の『祝福』を頂いた上でになりますから、少しは長生きできますよ」
犬塚キバは、今まで、下忍なのに中忍や上忍をバリバリ倒して里の尋問部隊に引き渡していた。敵側からしたら、何故下忍如きに負けるのかと謎であったが、いざ負ける側に回ると、世の理不尽を理解した。
この日、第八班のメンバーで初めて戦死者がでた。
◇◇◇
綱手は、中々口寄せの術で出てこないカツユに苛立ちを覚えていた。里全体に暁が襲撃をしており、今こそカツユの治癒力を使い、命を助けた恩を売りまくるチャンスだと思っていた。万が一、火影の座を退いたとしてもこの恩があれば安泰になる。
「口寄せの術!!」
大きな煙が吹き出して、建物サイズのカツユが呼び出された。本当なら嫌々であったが、愛する夫の言葉を聞き呼び出しに応じていた。
『はぁ~、なんですか綱手……様』
火影直属の暗部から見ても、嫌々に口寄せに応じたという感が分かった。そもそも、素直に応じるなら一度の呼び出しでくるはずなのに、五度も呼んでようやく来た。本来、口寄せ契約を結んでいれば強制的に呼び出せるのにこの状況だ。
つまり、火影直轄暗部達には分かってしまった。カツユと火影の間で口寄せ契約が切れていることを。だが、それを口に出すバカはいない。
「これから、木ノ葉にいる
温厚なカツユであったが、呼び出しに応じたお礼すらなく、命令形での指示。本来なら聞く耳も持たないが、裏で挟間ボンドルドとリアルタイム通信をしており、その依頼を承諾する事にした。
そして、お望み通り暁を含む全ての忍者について、チャクラ補給と治療を行う事にした。当然だが、暁レベルの攻撃だと並みの忍者は即死だ。だが、並みの忍者の攻撃では暁はかすり傷…よって、どうなるかは、分かりきったことだ。
綱手のおかげで、長門は神羅天征を三回は全力で打てる状況になってしまう。一発目は、カートリッジ消費、二発目は綱手消費、三発目は自力のチャクラ消費。
『どうやら、(貴方のせいで)里のピンチみたいですね』
「いいから、さっさとしろ」
『分かりました』
カツユは分裂して指示通り里の全ての忍者と一般人に付くことにする。そして、暁メンバーがこれ見よがしにチャクラを無尽蔵に使う。ペイン六道のチャクラまで代わりに負担してくれるとは火影と暁の関係は、意図せずズブズブであった。
さて、騒ぎに紛れて貰える物は貰いましょうか!
PS:
音隠れにお住まいの卑劣様がバ体となっても卑劣な忍術を開発しております。
「自分の金でやるのは初めてだったが、互乗万馬券の術」
といった音隠れの閑話でもやろうかとおもいます。