卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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61:仙人モード

 己のチャクラや寿命を消費しない為、何も考えずに放つことが出来る最大威力の神羅天征。その威力は、里に大穴を開けるに留まらず全ての建物を消し飛ばした。里の外郭には、崩壊した建屋が瓦礫となって押し寄せる。

 

 あんな瓦礫の中に今まで死んだふりをして瓦礫に埋もれていた連中も大半は、今ので死んだ。怪我をして休んでいた連中も大半は死んだ。無事だった奴も大半は死んだ。

 

 たった一撃で大国の隠れ里を崩壊させるに至る忍術は、正に最強だ。

 

 眼下が更地になっており、その中央付近に何かが逆口寄せされる。色々と縮尺がおかしいが、遠目でもはっきりと分かるレベルの大カエルだ。その頭部には、うずまきナルトがおり既に仙人モードを発動している。

 

 完全に殺るきモードだ。

 

 だが、超常の力である仙術を身につけても火影クラスが何人も相手では辛いといえる。うずまきナルトに対峙するのは、ペイン六道、小南、角都、飛段というメンバーだ。カートリッジの補充に小南が帰りそうだったが、帰るくらいならここで援護した方が良いと言う正しい答えに行き着いた。

 

「長門さんのカートリッジ残量が0ですね。自前のチャクラだけで、目的は達成できるか見物です。さて、帰る前にもう一仕事しても良さそうです」

 

 カツユが実家に帰る宣言をした際に、ボンドルドに付いているカツユの分裂体を残して、皆本当に帰った。その為、カツユナビゲータが使用できなくなる。だが、こんな時に役立つのが白眼だ。瓦礫を透視する事で誰が埋もれているかがよく分かる。

 

 そして、瓦礫の下にいるピンクの髪を発見した。その状況をみて挟間ボンドルドは不思議に思っていた。春野サクラが持つ『祝福』は、強大だ。神羅天征の爆心地に棒立ちしていても死なないレベルだと挟間ボンドルドは思っていた。

 

「……あぁ、そういう事でしたか」

 

 更に白眼を使い挟間ボンドルドは、春野サクラが瓦礫に埋もれた原因を理解する。彼女の背後には、綱手を含む火影直轄暗部がいた。その為、背後にいる者達の壁役となる事で彼女が被害を被っていた。

 

 更に周囲を見渡すと、知った顔がチラホラと瓦礫から顔を覗かせ始めた。あれだけの衝撃波と瓦礫の雨あられを無傷や軽傷で済ます恐ろしい連中だ。そんな連中こそ、飛段の呪術で確実に始末したかったと彼は思っていたが願いは叶わなかった。

 

 挟間ボンドルドはベニクチナワに指示して、春野サクラが埋もれる瓦礫近くへと移動した。その様子を眺める忍者もいたが、暁コートを着ていない為、多少怪しかろうと味方であろうと誤認する。幸いな事に、砂隠れの忍者やOB忍者などが入り交じっている状況だ。知らない忍者が敵だとは限らない。

 

 敵の唯一の目印が暁コートであり、それを着用している連中が今里の大穴の中心にいるのだから、こんな瓦礫だけしか無い場所にいるなど誰も思わない。更に言えば、瓦礫をどけて人命救助に励んでいるとなれば、もうどこからどう見ても味方である。敵地で、自らに都合の悪い人間には会わずに、平然と好きに行動出来る……これが『祝福』の力だ。

 

 瓦礫の下から春野サクラを救い上げる挟間ボンドルド。

 

「おやおや、妊娠中だというのに瓦礫の下で隠れんぼですか。いけませんよ、貴方が思っているより胎児というのは母親の健康状態に大きく依存するものです。大蛇丸様と私の研究結果ですので、間違いありません」

 

「あの、なんで居るんですか?木の葉隠れの里ですよ、ここ!? 知っている人が見ていたら大変な事に」

 

 動揺する春野サクラ。世話になっている兄弟子の存在が里にバレた場合、どうやって逃亡を補助しようか考えていた。両親の事、うちはサスケの事などもあり、突き出すなど選択肢には存在しなかった。寧ろ、木ノ葉隠れの里に入る手伝いを頼まれたら二つ返事で了承する。

 

「ご安心下さい。既に、綱手様へのご挨拶もしてきました。その帰り道で、妹弟子が瓦礫の下敷きになっていれば助けるのは当然です。なんせ、同じく瓦礫の下敷きになって死んだ夕日紅さんも居るくらいですから…人知れず死ぬというのは悲しいものですよ」

 

「紅先生が!?なんで、避難所に行かなかったんですか?」

 

「彼女は、里への背信行為が疑われておりました。監視の目が無い今こそ里抜けしたかったのでしょうね。ご存じないのですか?彼女の口座は止められて生活苦。口座凍結解除の条件は、大名達への慰安任務です。この忍界では、女性の一人子育ては過酷すぎます。特に、この木ノ葉隠れの里ではね」

 

 他人事では無いのが春野サクラであった。お腹に抱える子供を無事に育てる為には、苦労するだろうと思っていたが、想像の遙か上をいく。春野サクラは、夕日紅とは縁が薄い。同期繋がりで多少は知っていたが、まさかそんな酷い状況になっているなど露程も知らなかった。

 

「ボンドルドさん、私の友達の話なんですが……もし、抜け忍の子を妊娠した女性が居たとして、その子供を育てるとした場合に木ノ葉隠れの里と音隠れの里だとどちらが育児に向いていると思う?」

 

「音隠れの里ですね。あそこは、小国ながら経済規模は火の国に匹敵しております。音隠れの里長は、大変良識のある方で仕事と家庭の両立を目指して様々な働き方改革を実施して、数々の成果をあげています。貴方も音隠れの里の空気を肌で感じて分かっているはずです」

 

「ボンドルドさん、私は役に立ちますよ。ボンドルドさんが不在のおかげでもありますが、医療忍術の腕は、綱手様に次ぐと言われています。今なら、私そっくりな死体を一つ用意してくれる事と時が来たら逆口寄せして貰えるだけで雇えますがどうですか?」

 

 自らの長所を売り込む春野サクラ。既に、腹は決まっていた。現在の木ノ葉隠れの惨状と夕日紅の惨状……子育てに不向きな要素しか揃っていない。このままでは、お腹の子を人質に何をさせられるか分かったものではなかった。産まれた後も、子供を人質に飼い殺しにされる可能性すらある。

 

「それは、大変喜ばしい。春野サクラさん、貴方は特別なのですよ。貴方が本気で音隠れの里に行きたいと思えば、必ず叶います。それが『祝福』というものです。つまり、貴方が望まれた時点で、答えは決まっているという事です。一週間で貴方と寸分変わらぬ死体を用意しておきます」

 

 挟間ボンドルドは、春野サクラについては死んでから招待をする予定であった。その為に、某火影達同様の専用の身体まで用意していたのに、これでは他を探すのが大変になってしまうと思っていた。

 

 だが、春野サクラが忠実な手足となり働くというのならば、それ以上の効果がある。彼女は、まだ自分の価値に気がついていない。彼女の能力を考えれば、何処の里だって手を広げて歓迎する。

 

………

……

 

 挟間ボンドルドは、春野サクラと会話をしている間に一体何が起こったと言いたくなる状況に混乱していた。仙人モードのナルトが暁4人と死闘を繰り広げていると思ったら、『根』の精鋭と志村ダンゾウが長門を除く暁を本気で抑えていた。

 

 志村ダンゾウの部下である油女トルネと山中フーの能力が初見殺しであり、角都と飛段を確実に押し始めた。小南も援護に加わるが、志村ダンゾウの忍術は殺傷能力が高く、相手に対応した忍術を的確に使用できる強者だ。なにより、隠していた眼や腕を解放して、短期決戦で殺しに来ている。誰かが致命傷をおったら、イザナギで無かった事にされては、勝てるものも勝てない。

 

 暁を一方的に攻め倒す『根』の姿に人々は、何時も陰気な連中でよく分からない奴らだったが、実はいい奴らじゃんと思い始める。

 

「まさか、志村ダンゾウさんが切り札まで持ち出してくるとは。ですが、うずまきナルト君の方は、既定路線みたいですね。少し危険はありますが、アレも今を逃すと入手が困難ですからね。カツユ、私の仙人モードはどの程度維持可能ですか?」

 

『三分です。それ以上は、暁に至る天蓋での制御ができません』

 

「やはり、プルシュカのようにはいきませんね。ですが、十分です」

 

 うずまきナルトがペイン六道に捕まり、それを助けるために日向ヒナタが単独で天道に挑む。どう考えても無理な勝負だ。命を捨てに行くようなものであり、誰もがそれを眺めていた。日向の者ですら、宗家の娘を助けに向かわないという状況なのだから、責められる者はいないだろう。

 

 あの戦場に行けば、戦いにすらならずに死ぬのは明白だ。

 

 日向ヒナタは、何度も地面にたたき付けられて、ついにはうずまきナルトの目の前で天道に串刺しにされる。その瞬間を見たうずまきナルトは、怒りの余り九尾チャクラを解放する。

 

 チャクラ解放による衝撃波の中、挟間ボンドルドがその震源地へと足を運んだ。

 

「先生か、まだ帰ってなかったのか。それに、随分と毛深くなったな」

 

「これはお恥ずかしい。私の仙人モードも自来也様と同じく完璧ではありませんので、多少不格好になります。ですが、性能は折り紙付きです。少々、物資回収をしてから帰ろうかと思いましてね」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトの目の前で日向ヒナタを担ぎ上げた。だが、それが暴走しているうずまきナルトにとって敵対行動と認識される。六本の尾となったうずまきナルトの速度は、近くで見ていたら消えたかと錯覚するレベル。

 

【ガガガァァァァァァァァ】

 

「今は、貴方の相手をしている暇はないのですがね。そうそう、うずまきナルト君。実は、私は『祝福』で強化されておりましてね。そんな暴走状態の攻撃では、なかなか当たりませんよ」

 

 うずまきナルトが、挟間ボンドルドを攻撃しようとした瞬間、片足が地面にめり込み攻撃が外れる。地面は、九尾チャクラに耐えられるほど強固には出来ていない。だからこそ、足にもチャクラを巡らせて、しっかりと足場を固めなければならない。

 

 足を取られて藻掻いている隙を見て挟間ボンドルドはフカサクを回収する。まだ両名とも息が有り医療忍術による治療で回復へと向かう。その際、手間賃として、日向ヒナタの純度の高い白眼が、ボンドルドの白眼と入れ替わるなどハプニングがあったが、忍界では眼に関わる良くある事故の一つだ。

 

【グオオオオオオオオオオ】

 

 地響きが鳴り、うずまきナルトが尾獣玉を生成し始めた。高純度のチャクラであり、まともに食らえば、挟間ボンドルドの外装すら貫通して殺せるレベルだ。

 

「おやおやおや、回避すれば春野サクラさんに直撃ですよ」

 

『ボンドルド様、今アレを殺せば止められますが……』

 

 チャクラの濃度的に、危険を感じたカツユが助言をする。今のうずまきナルトを確実に止める手立てを一つだけ挟間一家は保有している。まさに、切り札である。

 

「切り札というのは、別の切り札があって初めて使う物ですよ。6本なら仙術で相殺も出来るでしょう。長門さん、この一撃は私が防ぎますので後はよろしくお願いしますね」

 

 長門は、分かったとうなずきこれから始まる戦いに備えた。チャクラを練り上げて、致命の一撃を与える準備を始める。

 

 挟間ボンドルドが右腕を相手の方に向けて手の平を大きく広げる。

 

「後でオーバーホールが大変そうですね……仙法・火葬砲!!」

 

 全てを焼き尽くす火遁・枢機に還す光(スパラグモス)の上位互換に当たる必殺の一撃。その威力と範囲は、込めるチャクラにより何処までも上がる。

 

 仙法・火葬砲と尾獣玉の直撃で、木ノ葉隠れの里には更に大穴を開ける事になった。その破壊的な攻撃のぶつかり合いで発生した衝撃波を利用して挟間ボンドルドは戦線離脱に成功する。

 




里での激戦は、アニメ版をみてね!
そして、『根』の初見殺し達に尽力により、暁の多数に退場を願おう!
これで、ダンゾウは木ノ葉の英雄にのし上がれる。
火影の椅子は座り心地は最高でしょう。


PS:
バ体 ハルノサクラさんの肉体が無駄になってしまった。


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