卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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65:志村ダンゾウ

 挟間ボンドルドは、うちはサスケのついでとして神威空間から出される。彼にしてみれば、見てるだけであり手伝う気はなかった。現在の雇い主であるトビの意向で手助けしろというなら話は別だが、そういう事ではない。

 

 うちはサスケが復讐への手伝いを申し出ない限りトビとて動くつもりは無い。下手な手伝いは、遺恨を残す。最悪の場合は、次に持ち越せるように神威を使って逃げて再戦させる。それだけの事を可能とするのがトビの時空間忍術だ。

 

「ちっ、ボンドルドまでいるとはな。暁でないのが今も同じならば、里に戻る気は無いか?儂ならば貴様に掛かっている全ての罪を取り下げられる」

 

「お気持ちだけで十分です。今や、私はフリーの忍者。雇い主である……うちはマダラさんを裏切るような事はできません。それに、今の木ノ葉隠れの里に戻っても、旨味がありません。私は医療忍者ですので、後方でお二方の戦いを観戦させて頂きます」

 

 挟間ボンドルドの目的は、志村ダンゾウが使う高レベルの風遁の術とうちはの禁術といえるイザナギであった。都合の良い現実で世界を上書きする術など、他には存在しない。術のリスクとして、イザナギを使用した写輪眼が失われる。この失われる写輪眼というのが大事なポイントだ。

 

 本来、万華鏡写輪眼開眼者しかイザナギを使う事が出来ない。常識的に考えて、開眼した万華鏡写輪眼が失われると誤解されがちだ。だが、その盲点をついたのが、志村ダンゾウ。腕に仕込んだ写輪眼に術のリスクを肩代わりさせている。

 

 若干の原理こそ違うが、挟間ボンドルドのカートリッジと酷似していた。今は、音隠れの里では人体の一部だけを複製するクローン技術が存在している。天然物の写輪眼が掃いて捨てるほどある為、大蛇丸はこの技術を不要と判断していた。それを拾い上げたのが挟間ボンドルドとカツユの二人だ。

 

 このクローン技術は医療に革命をもたらす。臓器移植での拒否反応を気にする事なく、命が救える技術で有り、活用の幅は無限大だ。但し、使い方を間違えば危険な技術でも有り、その管理は厳重でなければならない。だからこそ、人里離れた湿骨林にある挟間ボンドルドの研究施設で管理される。

 

 後ろに下がって見学している挟間ボンドルドの元にトビもやってきた。

 

「ここなら誰も聞いていない。ボンドルド――本当の所、お前は何処まで知っている?月の眼計画を聞いても驚く様子はなかった。お前達一家は、幻術に何かを期待しているとは到底思えない」

 

「何処までという定義が曖昧ではありますが、少なくとも…トビさんの本名くらいまでは知っています。私は、診察した事がある患者の事を忘れません。無限月読については、正直素晴らしいと思っています。ですが、期待はしておりません。家族の幸せは私の力で勝ち取ります。人から与えられた幸せは、愛ではありません」

 

 挟間ボンドルドは本気で素晴らしい計画だと思っている。だが、素晴らしいと思っているが賛同しているかは別問題。

 

「隠せている自信はあった。気がついたのはお前が初めてだ」

 

「健康診断をしなければ、私とて貴方だとは気がつきませんでした。幻術も使わず別人になれるのは素晴らしい才能です。私は、幻術を使ってもプロからはダメだしされました」

 

 挟間ボンドルドとトビが世間話をしている最中も、うちはサスケは必死に頑張っていた。志村ダンゾウを幾度も殺すが、イザナギによって全て無かった事にされる。だが、大蛇丸の元で長年修行を積んだうちはサスケも伊達じゃ無い。志村ダンゾウが幾度も術を行使する事で、カラクリに気がつき始める。

 

「あれは、木遁……どうやら、木ノ葉隠れの里は犯罪組織と仲よくするのが好きらしいな」

 

「此方を見ても大蛇丸様の情報は売りませんよ。大蛇丸様とは個人的な取引をしておりますので、ご容赦下さい。信用第一の職業ですので…だからこそ、暁も私を買って頂けているのでしょう」

 

 永遠の万華鏡写輪眼を備えているうちはサスケ。娘の眼のお陰で、志村ダンゾウに対して優位に立ち始めた。志村ダンゾウの腕にある眼が6個も閉じてる。つまり、イザナギを使える回数は後4回……それまでに志村ダンゾウはうちはサスケを倒して、この場から逃げ帰る必要がある。

 

 五影会談でやらかしたとは言え、火影という地位はまだ剥奪されていない。対暁で奮戦したこともあり、上忍衆達からの票を纏めれば正式な火影となれる。忍び連合の特需を利用して、木ノ葉隠れの里を復興させる気でいた。

 

 五代目火影とは天と地ほどの差がある程に里を思っている男だ。五代目が志村ダンゾウであったなら、時代は変わっていただろう。少なくとも今の木ノ葉隠れの里のような惨状にはなっていない。

 

「そうだったな。まぁ、今となってはどちらでもいい。お前達一家は、暁の貴重な戦力である事に変わりは無い。鬼鮫が戻ってきたら改めて今後のプランを伝える。お前が表に立つ気が無いのは知っているが、無理矢理にも引きずり出すぞ。これから始まる忍界大戦は、過去とは違う。敗北が許されない連合側は、死に物狂いになるはずだ」

 

 通常の戦争であれば、落としどころというのは用意されている。そうでなければ、どちらかが全滅するまで戦争する事になってしまうからだ。その落としどころが今回の忍界大戦における最大のポイントだ。

 

 暁側としては、どのような被害を出しても最後に立っていれば勝利となる。だが、忍び連合側は、それではダメだ。戦争というからには、勝利して得る物がなければならない。暁側を倒して連合側が何を得るのか……命を賭けた戦争で得られるのは名誉と基本給。

 

「医療忍者を皆さんは何だと思っているのでしょう。私のような半端者が戦場に立っては、無駄な混乱を招きます。代わりに、私が戦場に加わるより効果的に連合側の足を引っ張りましょう」

 

「ほぉ、どうやるんだ?アイディア次第では、裏方でも構わんぞ」

 

「簡単ですよ。5大国と鉄の国……計六カ国しか参加していない連合ですよ。常日頃、大国の被害を被っている小国達が今こそ立ち上がるべきだと思います。積年の恨みを晴らす機会ではありませんか」

 

 挟間ボンドルドの考えにトビは、その手があったかと驚いていた。大国の周辺には、小国が乱立している。対暁で使える忍びは戦力として捻出される事になる。つまり、国防がおろそかになる。

 

「採用だ。ゼツに大国の防衛網が薄い場所を調べさせて、周辺諸国に無償提供しよう。で、他には?」

 

「無限月読を大衆受けするように宣伝して、潜在的な味方を増やします。そもそも、忍び連合に参加する大半の忍者が無限月読について、良く理解していません。よく分からないからこそ、危険だから排除しようなどとおもうんです」

 

 挟間ボンドルドは、トビに伝えた。幻術より酷いのが現実であると……つまり、都合の良い幻術を永遠に見られる夢のシステムとして人々に提供する。この術が発動すれば、英雄になり美女を侍らせて暮らす事だって可能だ。望めば失った家族にすら会えると。

 

 大事な事だが、人は高みを目指さず低い方に流れるのが大半だ。それも低い方が楽で美味しい思いができるならば尚更のこと。

 

「確かに、そんな使い方も出来るには出来るが……それで本当に潜在的な味方が増えるのか?」

 

「確約します。世の中、死んでから家族に会えるような希な人達も確かに居ますが……そんなものはレアケースです。現実と変わらない夢ならば、夢で過ごしたいと思っている者達は沢山居ますよ」

 

「なるほどな……あ、サスケの方は終わったようだな。いかん、あれは裏四象封印術!!サスケ、ダンゾウから離れろ」

 

………

……

 

 志村ダンゾウは、最後まで本当に木ノ葉隠れの里を思い死んでいった。彼の最後の言葉は――

 

「ヒルゼン、次は儂の番のようだ、何処まで行ってもお前には追いつけなかった」

 

 その思いに感銘を受けた挟間ボンドルド。封印術の射程ギリギリで志村ダンゾウに声を掛けた。

 

「分かりました。私、挟間ボンドルドが貴方の願いを叶えて差し上げましょう。しばしのお別れです」

 

 志村ダンゾウは直感した。うちはサスケより、挟間ボンドルドを巻き込むべきだったと。だが、もう間に合わない。

 

 こうして、志村ダンゾウのファーストライフは終わりを迎えた。

 

 

◇◇◇

 

 六代目火影がはたけカカシに決まった頃、元六代目火影最有力候補であった者が、新たな生を授かっていた。

 

 暗闇の中で目覚めた彼女は、ここが死後の世界かと一定の理解を示す。暗く冷たいその場所は、まるで前世の業のようだと。

 

 その証拠に、目の前に紫色の光る縦ラインがあった。

 

「ご気分はいかがですか?メジロアルダンゾウ(・・・・)さん。名門に相応しいバ体をご用意させて頂きました」

 

「何が目的だ」

 

 だが、それに答えたのは挟間ボンドルドでは無かった。彼の旧友である元男だ。

 

「無駄じゃよ。ボンドルドに目的なんぞないわ。全く、お前までこっち側にきよって。なんだ、そのおぞましい者を見たような顔は……分からぬか、ヒルゼン(・・・・)スキーじゃよ」

 

 こうして、音隠れの里では着々とバ体達が増えていった。彼女達が、無限月読の広告塔になり、都合の良い夢 (意味深) が見られるとの事で潜在的な暁の味方が増えつつある。

 




次は、

「やめておけカカシ、そんな術は……え!?お前は、その眼」

がいいかな。


PS:
暁では、この度の忍界大戦で傭兵を募集しております。
対価として、無限月読の特等席をご用意しておりますので、奮ってご応募ください!!

未来は君の手で掴め。
※勝ち馬に途中で乗り換えた方にも席をご用意しております。

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