卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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68:盤外戦

 忍界大戦の戦火が切られようとしていた。五大国の大名から正式に認可された忍連合ではあったが、大きな問題がある。暁の拠点が判明していない事だ。だというのに、着々と物資を集め、忍者を集め、大名達を戦火から遠ざけるなど様々な事を行っている。

 

 此度の忍界大戦は、普通とは違う。暁というテロ組織が相手で、国家に所属していない。つまり、何処を攻め落とせば勝利となるかが明確でない。相手がテロ組織の場合は、組織を壊滅させる他なかった。

 

 それに加え、忍連合は規模が大きすぎる為、情報漏洩がどうしても発生する。これは防ぎようが無い。つまり、今主力部隊が何処にいるかなど簡単に分かる。

 

「ボンドルド、俺は確かに勝つためには何でもやれと言った。だが、忍界大戦を宣言した立場としてこれは……ありなのか」

 

「一騎当千の暁とはいえ、数の暴力とは恐ろしい物です。それに、同じ土俵で闘って忍連合の参謀長奈良シカクに勝てるとは思っていません。同じ土俵で勝てぬならば、盤外戦をやるのが理想的です。少数精鋭という点を最大限に活かす戦争ですよ」

 

 忍連合に参加する者達が、全て雲隠れの里に集結している。今回の総大将が雷影なのだから、ある意味当然かもしれない。しかし、5大国の端にある国家に移動するのにどれだけの手間と労力が掛かるか分かっていない。

 

 だからこそ、暁は土の国の端の端であるド辺境に陣取った。そして、トビの神威空間を利用して、先行リリースした白ゼツを5000体ほど連れてきてそれっぽく見せている。土遁を用いて立派な拠点まで構えており、どこからどう見ても重要拠点に見えていた。

 

 その情報は、忍連合にも伝わる。忍連合側としては、判断に悩む案件であった。場所が遠すぎる。一部隊を派遣するにしても、一騎当千の暁だ。下手な戦力では、各個撃破されてしまう。

 

「白ゼツの量産拠点さえ押さえられなければ勝ち確定か……構わん。俺は、この際不要なプライドなど捨てる」

 

「えぇ、勝てば問題ありません。その為に、出来る努力は全てします。道中の諸外国も今では、通過を許容しておりますが時間の問題です。人は、食べなければ生きていけません。6万人規模の忍者が足並み揃えてここまで来るのに最短でも一週間はかかるでしょう。その間に、伸びきった補給線をじわじわ削ります。トビさんの忍界最高峰の時空間忍術……期待しております」

 

 挟間ボンドルドは、敵主力と正面からぶつかる必要はないと思っている。狙うは、補給部隊、医療部隊、司令塔の三つ。忍連合側も当然警戒しているが、長期移動の間に隙は幾らでもできる。神威を利用した、ヒットアンドアウェイ作戦だ。

 

「なかなか、酷い作戦だなボンドルド。物資不足に陥った忍連合が、民間人相手に徴収しようにも簡単にはできない。なんせ、各国の忍者が集まっている連合だからこそ、その国に所属している忍者は必ずいる」

 

「その通りです。最初は小さな事でしょうが、物資不足が加速すればそれだけ酷い事になる。満足に食べることも出来ず、命を賭けて戦えるなどあり得ません。人は、大義だけでは生きていけない生き物ですから」

 

………

……

 

 忍連合側は、暁の重要拠点が判明した事を喜ぶ。そこには、うちはマダラと挟間ボンドルド、白ゼツが数千体も確認されていた。それに加え、地中からチャクラを吸い上げる謎の儀式も確認される。

 

 だが、場所が地の果てだ。雲隠れの里からどんなに急いでも一週間はかかる。拠点を設置してから、色々準備も考えると十日から二週間が妥当な所だ。だが、忍界大戦であり大名達から許可を得ての忍連合だ。

 

 ここで、遠いから行かないなどという選択肢などない。そんなことをすれば、今すぐにでも連合が瓦解する。下手をしたら、集まった忍者同士で過去の鬱憤を晴らすために殺し合いをする可能性もある。

 

「全軍でいくしかあるまい。暁相手に戦力の小出しは、各個撃破される恐れが高い。それが罠であっても、この儂が正面から全て吹き飛ばす!!」

 

 雷影の鶴の一声で全軍が動き出す。だが、それしか出来ない。

 

 風影の演説のお陰で士気も高く、道中で大きな問題は発生しなかった。それこそ、数日が経過して諸外国を大人数で通過して大国を通り過ぎ、地の果てまで進む。その最中、多少の軍事物資が人知れず行方不明になるが戦時下では良くある事だ。

 

 

◇◇◇

 

 挟間ボンドルドは、トビが忍連合から神威を使って集めてきた軍事物資を周辺諸国へ配った。忍連合の物資を使って、周辺諸国が大国を攻める。実に良く出来た構図だ。そして、その作戦もいつまでも続かないのは分かっているので、暁側は次の作戦に移行する。

 

「後、二日もすれば忍連合の先行部隊が到着するでしょう。白ゼツさん達には、申し訳ありませんが、その能力を使って一人一殺を期待しています。安心して下さい、シュビラシステムのバックアップとカツユのリモート操作によりある程度は戦えます。自爆のタイミングはコチラで行います」

 

「効率的なのは分かるけど、ボンドルドって僕たちの事を何だと思っているの?」

 

「白ゼツさんを人として運用はしておりません。大丈夫ですよ、貴方が死んでも代わりはおりますから」

 

「ねぇ、パパ。私の出番は!?そろそろ、待ちくたびれた~」

 

 敵主力を可能な限り潰す事が挟間プルシュカの役目であった。年端もいかない子供にそんな大役を言い渡す当たり、トビもなかなか酷い男だ。

 

「まだですよ。士気と体力があるときに、挑む必要はありません。もう少し疲れた時……それも夜襲が一番です」

 

 挟間ボンドルドの白眼が忍連合の総攻撃を確認した。

 

 挟間一家はトビの神威空間へと移動し、残された白ゼツ達が一人一殺の自爆特攻を仕掛ける。そのお陰で誰が死んだか分からない状況になったタイミングで、数十名の白ゼツが入れ替わりで忍連合に参加した。

 

 

 

 遙か遠い地で白ゼツが頑張っている最中、トビ含む挟間一家は、水の国へと足を運んでいた。今度は、水の国に拠点を築き、忍連合を誘い込む作戦だ。当然、忍連合はこれで暁の意図に気がつく。

 

 だが、気がつかれたからといって止まらない。戦争とは一度動き出したら簡単には止まらない。それも、世界の存亡を賭けた戦いだ。止められるはずが無い。

 

「次は、白ゼツさんを一万体使いましょう。先の戦いの倍の数を動員する事で、連合も戦力を分断しにくくなるはずです。カツユ、連合側の被害はどの程度ですか?」

 

『はい、3000人程度です。やはり、自爆機能が割れてから露骨に近接を避けられました』

 

 カツユの報告に挟間ボンドルドは満足した。5000人を消費して3000人を倒せたのなら悪くは無い。白ゼツは現在進行形で量産中であり、忍連合に潜んだ白ゼツが医療忍者や補給部隊を巻き込んで死ぬのだから。

 

「ボンドルド、この作戦だと連合にはまず負けないだろう。だが、尾獣はどうするつもりだ?」

 

「彼等は、強い『祝福』を持っております。時期が来れば勝手に来てくれます。我々は、勝利の為、少しでも連合を削り優位な場を整えます」

 

「そういうものなのか。多少の計画変更は必要だが、連合をすり潰す事に関しては納得だ。このまま、じわじわとなぶり殺しにしてやる」

 

 1万人の白ゼツを使い拠点を建築しつつ、忍連合が大移動してくるのを待つだけの暁の戦法。これを止めるには、忍界最高峰のトビと同じレベルの時空間忍術が必要になる。数名なら飛雷神の術で飛ばせるが、大軍レベルではどうしようもなかった。

 

 忍連合は、こうしている間にも士気と物資と金を徐々にすり減らしていく。更には、母国が周辺諸国から襲撃を受けて、国土を奪われているなど聞きたくない情報も入り、連合の屋台骨が崩れるのも時間の問題であった。

 




暁の白ゼツ製造拠点って、薬師カブトが居たからバレてた気がする。つまり、いないから今はバレていない!

そして、水の国は陸続きで無い。忍びって水の上歩けるけど、船が途中で沈没したら大変だよね。


PS:
忍連合って原作だと8万人?くらいだったみたいなので、自国防衛のため2万人程度減った感じにしております。周辺諸国がきな臭いので。

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