卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

69 / 82
69:忍連合

 水の国とは実に素晴らしい立地をしている。周囲が海に囲まれており、陸路での移動が不可能である為、他国からの侵入を自然が防いでくれている。そんな場所に、暁の重要拠点が発見される。土の国同様にチャクラを吸い上げる謎の儀式も行われており、忍連合としても可能な限り、早く処理をしたかった。

 

 だが、土の国から水の国までの距離が長すぎる。

 

 暁の目的が忍連合の疲弊にあるのは明白で有り、移動してもまた逃げる可能性がある。時空間忍術である逆口寄せを活用したスムーズな行軍方法も検討される。だが、逆口寄せとは諸刃の剣だ。戦後を考えれば、他国の者と契約など出来ない。

 

 更に、相手は写輪眼を持つうちはマダラ。口寄せする者が幻術に掛かったら、火口の真上で口寄せされる危険性もある。そうなれば、立て直しが出来ない。分かっていても使えない手であった。

 

 忍連合が右往左往している間にも、水の国で暁の拠点が堅牢になっていく。地元民を雇って、24時間体勢で拠点を作っている。地元民達は、戦時下の重税で生活苦。だからこそ、懐事情が温かい暁の元で精一杯働いている。

 

 病気の者がいれば、挟間ボンドルドが治療に向かい現地民の信頼を確実に勝ち取る。医者で有り、優しい声を掛けるだけで人心を掌握できる男だからこそ出来る事だ。

 

 建築中の拠点にて、挟間ボンドルドはトビと会議を行っていた。

 

「国元に残っていた忍びが入り込んでいるが、こいつらは始末してもいいのか?ボンドルド」

 

「表向きしっかりと働いているので無視して宜しいかと。どうせ、忍連合と共に捨てる拠点ですので、幾らでも調べて貰いましょう。むしろ、一万体の白ゼツや我々を見せる事で忍連合は来ざるを得なくなります」

 

 挟間ボンドルドが一番心配しているのは、トビの時空間忍術が何かしらの方法で封じられる事だ。それをやられてしまっては、敗北する。相手もその手の研究はしてくるだろうし、何時か実現されてしまうかもしれない。

 

 よって、そのような事態にも備えて敵兵力を更に減らす必要があった。

 

 今後の計画を話していると、白ゼツが仕事を終えて戻ってきた。彼こそ、誰よりも忍者らしい忍者である。隠密行動において、類を見ない能力を持っている。

 

「ボンドルド、全て指示どおりやってきた。相変わらずやり方が、酷いね。でも、火の国だけでよかったの?他の国から来るかもよ」

 

「6万人の大所帯を道中も維持するには、大国を使うしかありません。それに、小国では大規模輸送を可能とする術がありません。必然的に候補は絞られます」

 

 挟間ボンドルドが考えるような常識的な事は、敵の参謀も当然分かっている。だが、減り続ける士気と物資と金。忍連合を承認した大名とて、いつまでも見続けているはずもない。

 

 早急に戦果が必要だ。

 

「トビさん。できれば、干柿鬼鮫さんを帰還させて欲しいのですが。海上戦において、彼を上回る忍びはまずおりません。彼が居れば、この遠征で忍び連合を2割は削れるでしょう」

 

「それは出来ない相談だ。奴は、今も潜入任務を行っている。代わりに、白ゼツを追加で5000体ほど連れて帰ってくるから好きに使え」

 

 完全に消耗品扱いされる白ゼツ。暁への貢献度は、正に彼がトップである。

 

「白ゼツさん、世の中には人間魚雷と言われる爆弾を人が抱えて敵主力に殴り込む戦術があります。幸いな事に白ゼツさんは水中で生存可能な体を持っております。ここまで、お伝えすればお分かりですよね?」

 

「この人でなし!!」

 

 既に、火の国で停泊中の船舶には白ゼツ達が潜んでいる。彼の隠密能力は、高純度の白眼でも無い限り見抜けない。それほどまでに完璧な隠密だ。

 

………

……

 

 忍連合。土の国にある辺境の地に辿り着き、世界の命運を賭けた戦いが始まって、僅か30分もせずに暁拠点が制圧された。若干の犠牲こそあったが、全体的に見れば被害も少なく完全勝利だと言える。

 

 だが、どの部隊からもうちはマダラや挟間ボンドルドを仕留めたと報告が上がらない。そして、忍連合による暁拠点の徹底検証が行われて二時間後。五影の元に緊急の知らせが届く。

 

「水の国でうちはマダラと挟間ボンドルドが確認されただと!」

 

「こりゃ、ゲリラ戦法じゃな。儂等連合に対して、これほど有効的なやり方はないの」

 

 綱手の言葉に、土影が反応した。土影は、暁が正面からやり合わない方法をとった時点でじり貧だと理解する。その上で、最初に選ばれたのが土の国で良かったと思った。老練な忍者だからこそ分かる事もある。この先、連合が行く先々でどんな事になるかを。

 

「ふざけるなーーーーー!!暁の連中は戦争をなんだと思っている。これが第四次忍界大戦など俺は断じて認めん。認めんぞーーー!!」

 

 怒り狂う雷影。彼のような気質の忍者は、真っ向勝負を好む。そして、強敵には敬意を払う武人だ。だから、このような忍者らしい戦いをする者が大嫌いだ……忍者なのに。

 

 五影達に策を献上する必要がある参謀は胃が痛くなる。奈良シカクの頭脳を持ってしても、6万の大軍を一瞬で土の国の辺境から水の国へ瞬間移動させる事など出来ない。そのような忍術も存在はしていない。

 

「作戦参謀としては、暁がチャクラを吸い上げる儀式を行っている為、追うしかありません。現地に着くまでに、逃亡を防ぐ手段を考えておきます」

 

 奈良シカクは、逆口寄せについて話題に出さなかった。最終手段としてはありだが、今の状況では危険過ぎた。瞳術に優れた写輪眼を相手にそれを逆利用されては戦争ではなくなる。

 

 忍連合は、再び6万人を連れて土の国から火の国へ入り海岸沿いまで一週間掛けて移動した。その間、忍連合に所属する忍者からは、何のために集結したか分からなくなり始める者もいた。

 

 土の国では、5000体の白ゼツしかいなかった。つまり、6万人いるのに戦いに参加したのは最前線にいる一部だけだ。後方にいた者達は、第四次忍界大戦で走ることしかやっていない。これでは、やるせない気持ちになるのも当然だ。緊張がうすれて、酒や女に手を出す者も出始める。

 

 長旅の末、疲れた体を癒やす時間もなく、忍連合は船旅をする。

 

 火の国にある船舶を総動員しての大移動だ。人生において、船に乗った経験がない者もおり、初めての船旅は船酔いという地獄を見る。大型船舶ならば多少はマシだが、6万人規模を輸送できる船など無い為、漁船なども総動員される。

 

 火影達や参謀本部、医療忍者などは大型船舶で優雅な旅。寝床も飯も用意されており、体を休めるには十分。代わりに、一般忍者達は、狭い漁船で囚人以下の扱いを受ける。飯は出ないし、揺れるし、狭い……そんな場所では体など休まらない。居るだけで体力が失われていく。

 

 なにより、水しぶきがかかり海風も当たるので、体力が奪われていく。

 

 そんな状況の中、海に二つの影が立っている。暗闇の中でもハッキリと光る紫色の縦ライン。その光を見た者は、感謝の念すら抱いた。

 

 忍界大戦で恋い焦がれていた思い人である暁にようやく会えたのだ。地の果てから地の果てに移動し、囚人扱いを受けた苦労が今報われると。

 

 静かな夜の海に響き渡る。

 

 二大仙人蝦蟇であるフカサクとシマ、カツユの三位一体の完成形仙人モードを使う唯一の子供……挟間プルシュカの名乗りが。

 

「みんな、初めまして。私は挟間プルシュカ。こう見えても暁の一員なのよ。だからね、本気を出さないとすぐに死んじゃうんだから」

 

 

◇◇◇

 

 挟間プルシュカが忍連合を襲撃する少し前。

 

 夜の海に投げ込まれたくノ一が一人居た。男所帯の忍連合の中にも女性は存在しており、通称くノ一と呼ばれている。命を賭けた忍界大戦で二週間以上も碌なストレス発散もできない。加えて、狭いすし詰めの船内で間違いが起こる事もあった。

 

 夕日紅の様に男の下半身に悪い姿をしているくノ一は、少なからず居る。当然、イライラさせられた男達が遂に限界を迎えた。一人くらい減っても戦死扱いに出来る。小隊長レベルまで囲い込んで上手に報告すれば事は簡単に済んだ。

 

 何より、死ぬのは他国のくノ一……これに尽きる。この言い訳がまかり通る。

 

 そんな夜の海に捨てられた様子を見てしまい襲撃の機会を逃したのが挟間一家であった。水中にいた白ゼツが海から拾い上げたが息絶えている。

 

「せめて、故郷の地に埋めて差し上げましょう。死ねば仏です。さぁ、プルシュカ……敵は畜生に落ちた獣以下です。手加減はいりませんよ」

 

「わかったわ、パパ!!口寄せの術。フカサクさん、シマさん」

 

「いいか、ジライアンちゃん。このコーナーは……なんじゃい、こんな夜更けに口寄せなんぞしよって」

 

「ダメだって父ちゃん。脚質的に…あらまーープルシュカじゃねーか」

 

 何やら、指揮棒を持ったフカサクが誰かと何かの作戦会議をしていたようだ。

 

 口寄せされた二大蝦蟇仙人のフカサクとシマ。契約しているのだからこのような事もあり得る。これが、旧自来也だったら二人に深夜に呼ぶなと殴り倒されていた。だが、可愛い子供ならば別だ。年寄りとは、可愛い女の子に弱い。

 

「ちょっと、悪い人達がいるから懲らしめたいの。だから、力を貸して~いいでしょう。プルシュカのデビューなんだからさ。ママも合わせて三位一体で行きたいの」

 

 フカサクは、挟間プルシュカの話を真剣に聞いていた。カツユとフカサクとシマの三位一体での融合……それで得られる恩恵が必要な程の敵とは一体なんなのだと。

 

「本当ならこんな時間には働かんのだが、ええわ。ボンドルドには父ちゃんを助けて貰った恩もあるさかい」

 

「ありがとうございます、シマ様。敵は忍連合と言われるならず者達の集まりです。周辺諸国に要らぬ戦費負担を求め、今仲間であったはずのくノ一に性的暴行を加えて海に捨てていました。見るに堪えない見下げた連中です」

 

 嘘など一つも言わない真摯な挟間ボンドルド。

 

 俗世には興味が薄い蝦蟇仙人ではあったが命の恩人であり、口寄せ契約を結んでいる挟間プルシュカのためならば、手を貸すのも吝かでは無かった。蝦蟇仙人にとっては、忍連合が敵なのか味方なのかはどうでもいい。契約者が第一である。

 

「わかった。行くぞ母ちゃん」

 

 挟間プルシュカの両肩にフカサクとシマ。頭部にメーニャ(カツユ)を併せ持つ仙人モード。これも一種の仙人モードの完成形。知能がある口寄せ動物が自然エネルギーを溜める事により、動いていても仙人モードへの移行が可能となっている。




汚い忍者の連合は、きっとこんな感じでしょう。
この程度は、当然ですわね。


PS:
※さんがチラチラとコチラを見ておりますわ。
※「認めよう。長距離において、貴様の右に出る者は…」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。