挟間一家による夜襲で忍連合は、甚大な被害を被った。死者約1800名、負傷者500名という土の国で白ゼツ5000名と闘った時より被害は少ないが、たった二人の忍者と白ゼツ爆弾が起こした事件にしては大きすぎた。
中でも死者1800名に含まれている医療忍者が大きな問題となる。忍連合に同行していた医療忍者で生き残ったのが20名にも満たない。生き残った者達も重傷であり、場合によっては長期離脱となる。その事実を、忍連合にいる忍者達も知る事になる。
戦場で怪我をしても碌な治療を受けられない現実が出来上がった。
だが、忍連合の窮地はそれだけではない。今すぐにでも影達は決断しなければならなかった。医療忍者も物資も不足したまま強行してでも水の国へ駆け抜けるのか、火の国まで引き返して再準備をするのか。
後者を選んだ場合には、水の国を見捨てる事になる。その結果、霧隠れの里の忍者達が海上で何をするか分からない。しかし、今回含めて二度の戦いで全軍の約1割近い人数が減ったとは言え、忍連合はまだ5万5千人程度もいる。それを支えるだけの物資が水の国で補充可能なのかという疑問もあった。
それを検討する会議が海上で行われようとしていた。参加者は、雷影、風影、火影、土影、鉄の国のミフネに加え、水影が大名達の護衛で雷の国にいる為、全権代理で青が参加していた。
そして、真っ先に口を開いたのが雷影だ。
「会議を進める前に確認しておく。確か、挟間ボンドルドは医療忍者であり直接戦闘力は高くない……そうだな、火影?奴と挟間プルシュカと名乗った子供は、儂に匹敵しかねない速度だった。あれが、特別上忍だとか巫山戯た事はもはやどうでもいい!隠していることがあるならこの場で全て吐け」
「それには俺も同感だ。挟間プルシュカと名乗る子供にカンクロウが殺された。少なくとも、そこら辺にいる子供に負けるような者ではない。我々は、連合として行動しているのだ」
「早いとこ情報を吐いた方がいいぞ。そもそも、なぜあれほどの奴がS級犯罪者として指名手配されておる。儂独自の調べじゃ、大名達からの評判も上々だったぞ。ある日突然、木ノ葉隠れの里で背信行為が発覚したそうだがな……それも本当かどうか」
雷影、風影、土影からいいように言われる火影。
「この際だから正直に話す。奴は、里の機密を知りすぎた。だから、口封じも兼ねて志村ダンゾウと組んで謀殺しようとして失敗して今に至る。挟間ボンドルドと挟間プルシュカについて、私が知っている全てを提供する」
全てと言いつつ、暁や大蛇丸との関係は一切語らない火影。だが、挟間ボンドルドの転生忍術や口寄せ動物の詳細、挟間プルシュカがカツユの娘であり自らが医療忍術を指導した事などが伝わる。
だが、その情報は古かった。だからこそ、雷影は火影の信頼度を下げる事にする。
「挟間プルシュカと名乗った子供、両肩にガマが付いていた。あれは、木ノ葉隠れの者からの情報で、二大蝦蟇仙人と呼ばれるフカサクとシマである事は分かっている。なぜ、その情報が貴様の口から報告されない。二大蝦蟇仙人と言えば、三忍の自来也、うずまきナルトと親しいのは分かっている」
「だからどうした雷影。口寄せ動物が誰と契約していようが私の知ったことではない。確かに、フカサク様とシマ様とは知らない仲ではないが親しいわけでもない。それにだ、今はこんな所で長々としている時ではない。早く進むか引くか決めるのが先決だろう」
それ以上は、誰も火影を責める事はできなかった。
貴重な医療忍者でありその分野の最高峰の一人。これからも続く戦いにおいて、不可欠の人材。自里の忍者を優先的に診る事も可能である彼女の機嫌をこれ以上損ねるのは、得策で無いと。
「当然進むしかあるまい。その為に、儂等は連合を組んだ」
「だが、現実的に連合を維持する為の物資が海に沈んだ。船も殆ど残ってない。行くも地獄、退くも地獄なのは間違いない。口寄せで空が飛べる者を優先的に水の国へ送ろう。あちらから船を出して貰えれば多少は楽になるはずだ」
雷影の言葉に風影も賛同した。火影としてもこの流れを期待していた。そして、決して忍連合の大事な決定には口を出さず乗っかる。失敗すれば、雷影と風影のせいにし、成功すれば賛同しただろうと上手に乗っかるつもりで居る。
この会議、誰も言わないが水の国に着くまでに更に死者が出るだろうと誰もが分かっている。チャクラが足らずに海に沈む者が出る。怪我が悪化して倒れる者も出るだろう。
こうして、忍連合の海上大進軍が始まった。水も食料も体力もチャクラもなく、死なないために気合いでの行軍。忍連合をすり潰すのに相応しいやり方だ。
水の国へと進軍を始める忍連合の行く手を阻むかのように……白ゼツ機雷が登場し、一人一殺の鬼畜兵器が登場する。夜の海を見通せる程優れた者は少なく、数万人も居れば誰かが機雷を踏み抜く。
こうして、彼等が水の国に辿り着く頃には更に死者が3000人ほど増えていた。今から、精根尽き果てた体で1万人の白ゼツとうちはマダラと挟間プルシュカ、挟間ボンドルドと闘う事になるかと思うと気が重いと感じる忍者が増えてきた。
………
……
…
水の国における物価上昇率は500%に達しようとしている。水の国に着いた者達は、飲まず食わずを経験し、忍連合は当てに出来ない。己の身を守れるのは己だけである事を再認識させられていた。
保存が利く食料を買い込み巻物に封じる者達が現れる。それも当然の結果だ。
水の国としても忍連合を維持する為、物資を集めるが本来の値段で買えなくなり想像以上の出費となる。その負担は、連合持ちであっても負担金額が各国に重くのしかかる。
そんな浅ましい光景に挟間ボンドルドは、満足していた。
「もう一押し、二押しと言ったところです。忍連合が策を講じる前に、影分身を残して次へ移動しましょう。彼等は、長く水の国に滞在する事になるでしょうから」
「二人の実力がここまで高いとなれば、影分身よりもっと良い物を使う。開戦当初は、一抹の不安もあったが忍連合相手にここまで一方的な事ができるとは思っていなかった。尾獣は、まだ手に入っていないが時間は幾らでもある。よくよく思えば、暁の尾獣集めは長期プロジェクトだったからな」
挟間一家とトビが、豪勢な昼食を味わっていた。忍連合は、一部心ない忍者のお陰で明日食べ物にありつけるか怪しい者も多い中、有り余る物資で英気を養う。
「ママ、あーーーん。ママの大好きなピーマンよ」
『ダメですよ、プルシュカちゃん。好き嫌いしたら……だ、ダメですって。そんな顔をしてもママは……。あーーーん』
涙目で訴える可愛い娘には、勝てないのが母親だった。微笑ましい家族の姿に、トビも良い家族だなとぼそっと言う。
「で、ボンドルド。あの春野サクラとかいう小娘を音隠れの里まで送ってやったが、本当に逃がして良かったのか?コチラの事情を……知らないな」
「えぇ、その通りです。それに彼女は私の個人的な部下であり、先日クビにしました。我々は少数だからこそ今の動きが可能です。無駄に人を増やす必要はありません」
「良いだろう。ボンドルドも想像以上の働きがあったからな。今後も期待している」
挟間ボンドルドと挟間プルシュカのチャクラを吸い取り白ゼツが二人に成り代わる。過去に、暁がうちはイタチと干柿鬼鮫を完コピして木ノ葉隠れの忍者を足止めした術だ。生きている忍者と相当量のチャクラが必要なのだが、生け贄となる忍者は港に腐るほど居るため、材料には困らない。
忍連合は、今度こそ逃げも隠れもしない挟間ボンドルド(成り代わり)と挟間プルシュカ(成り代わり)を相手に全力を出す事になる。1万人の白ゼツ爆弾があろうとも、前へ進み続ける未来が待っていた。
◇◇◇
水の国に到着した忍連合は、なんとか二週間維持できるだけの物資を集める事に成功した。先遣部隊が、暁の拠点で挟間ボンドルドと挟間プルシュカを確認する。これは、またとない機会であり、即座に参謀へ連絡が届く。
そして、参謀達が考えた対トビの秘策が実行される。
「結界班の配備を急げ!今回で絶対に仕留めるぞ」
敵味方問わず時空間忍術を封じる大結界忍術。結界に閉じ込める事では無く、結界内での特定忍術を押さえ込むという物であり、五大国の英知が集まって開発された対トビのメタ忍術だ。
元々、雷の国で対"綺麗な閃光"に開発が進められていた術であり、今完成に至る。万能な忍術など存在せず対時空間忍術には強いが、誰でも出入り自由の結界となっている。つまり、外に出られたらそれでお終い。
帰りの海路を安全に帰るためにも忍連合は、出し惜しみ無しの全力。火影達も最前線に立ち、包囲殲滅に挑む。初戦の拠点制圧より被害が大きくなろうとも、暁の確固たる戦力がここでそげるのならば安い買い物だと。
そんな大軍の正面には、仙人モードの挟間ボンドルドと挟間プルシュカの両名。忍連合の白眼をもっても100%本人だと判定された。
大軍を前に挟間ボンドルドが大事な事を口にする。
「切り札がこれだけだと負けますよ。プルシュカ、時空間忍術が封じられていますのでアンサラーは使えませんが、上昇負荷を解禁します」
「本当!!やったぁーー」
上昇負荷の対象にしてから、絶妙にジャンプで回避できる火遁・業火滅却を使う事で殺すというやり方。原理を知らねば、誰でもジャンプで避ける。無駄なチャクラを使わずに避けられる攻撃は避ける……それが忍者には染みついた行動だ。
「すみませんね、プルシュカ。分身とはいえ、貴方までここで使い捨てるような事になってしまいました。お付き合い頂くフカサク様とシマ様にも深い感謝をいたします。後で、本体の方にはお礼を届けさせます」
「いいのよ、パパ。付き合って貰っているのは私の方なんだから、しっかり見ててね一人前のレディになった証拠を」
白ゼツの成り代わりの術は、武装まで完全コピーする優れもの。カートリッジフル装備の仙人モードの二人が死に物狂いで忍連合と正面からぶつかる。
たかが二人、されど二人……家族愛の力を忍連合は体験する事になる。
あの特別製の成り代わりの術って、白ゼツさんも絡んで居るとおもうんですが正しかったかな。でも、違ってもそう言うことで!
本人チャクラを使うので大量生産は不可ですぜ・・・流石に、この術はマジで汚い。
PS:
時空間忍術神威のちょっとした応用で、魔剣アンサラーって可能だと思うんですよ。
懐かしい技だけど、知っている人いるかしら^-^