卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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明日からまたリアルが忙しいので…今のうちに先行して投稿です。


73:サスケェ

 忍連合が水の国を出立し、風の国を目指している頃。

 

 うちはサスケが率いる鷹が木ノ葉潰しを実行に移していた。兄の仇として、里の上層部である相談役の二人がターゲット。こんなご時世であっても、相談役達は己の権力を使い一定数の護衛をつけている。

 

 だが、戦時下であり大量の忍者が戦争に参加している事もあり練度は高くはない。そんな連中が、精鋭たる鷹メンバーに勝つことは不可能だ。様変わりした木ノ葉の里はすっきりしており、文字通り木ノ葉が潰れた後になっている。

 

「サスケ、木ノ葉隠れの里ってもう潰れてない?」

 

「関係無い。相談役の二人は生きていて、大蛇丸から二人が隠れていそうな場所も聞いているから、虱潰しに行くぞ」

 

 復讐の手伝いも大蛇丸がしており、身も心も大蛇丸の物となってしまっているうちはサスケ。だが、彼はその事を自覚していない。鬼灯水月は、そんなサスケの状況に同情すると同時にお幸せにと思っている。

 

 史上最悪のS級犯罪者集団鷹……五影会談を襲撃した事もあり、その危険度は暁に匹敵するとされている。だと言うのに、木ノ葉隠れの里をフード一つで歩く姿に誰も反応しない。日々を生きる事が精一杯な里の者達は他人に無頓着になってきていた。

 

 うちはサスケ達が道中を歩いていると、忍連合と暁の忍界大戦の話題が彼の耳にも入る。

 

「ねぇ、聞いた?まだ、戦争が終わらなくて増税されるみたいよ」

 

「そうなの?この間も、水の国への遠征費用とかで臨時徴収があったじゃない。いつになったら戦争が終わるのかしらね」

 

 里に残った主婦達が今後の生活に不安を感じている。そして、近くのテレビから流れる最新情報に鷹メンバーも注目していた。

 

『臨時ニュースです。忍連合は、水の国にあった暁の拠点を制圧し現地の平穏を取り戻したと発表。そして、新たに発見された風の国の拠点を制圧すべく、移動を開始したと情報が入りました』

 

『続いて、暁側からの声明が届いておりますのでお伝え致します。初めまして皆さん、私は挟間ボンドルド。フリーの忍者で暁に雇われた者です。この度の忍界大戦、忍連合側の非道な行いを止めて頂きたい。雲隠れ所属のくノ一が海上で忍連合の方に性的暴行を受け殺害されて遺体を海に投棄した一件、我々は大変心を痛めております。他にも、死んだ仲間を盾にするやり方など、貴方達に人の心は無いのでしょうか?』

 

『他にも、木ノ葉隠れの忍者の方が「どのみち、下手に生きて他人の足を引っ張る奴なんて邪魔なだけだ。纏めて殺るぞ!!」などと言い、味方ごと攻撃しておりました。戦争にも最低限の礼儀というものがあると私は考えております』

 

 証拠映像付きで流される非道な行い。そんな連中が国を跨いで大移動してくるのだから、何処も警戒心を最大にする。終いには、忍連合に国家を通過する許可を出さない国まで現れ始める。

 

『最後に、これを聞いている全ての皆様にお伝え致します。暁では、忍連合と闘う忍者を募集しております。手始めに、待遇といたしまして無限月読における特等席と今の倍の給金を約束します。無限月読は、幻術世界ではありますが、本人にとっては現実と変わりません。死んだ家族、恋人に会いたい貴方。英雄願望をもつ貴方。理想の女性と添い遂げたい貴方。我々は、そんな貴方の味方です。応募方法は、火の国を通過中に忍連合の忍者の首を一つ取ることです。そんな事をしたら捕まると考えているでしょうが大丈夫です。我々の仲間が時空間忍術で貴方を回収します』

 

 無駄に人心掌握するのが上手い声で人々に語りかける挟間ボンドルド。正直、だれがそんな口車に乗るかと鷹メンバーは思っている。

 

 だが、ボッチ忍者には魅力的な提案であった。成人となっても恋人がいなくて、任務をこなして毎日を過ごすだけの忍者だって数多く居る。そんな連中にとって、金の使い道など酒と女とギャンブルくらいだ。確かに、一時的には気が紛れるが……未来に漠然とした不安を抱えている。

 

 そんな連中にとって、無限月読は麻薬みたいなものだ。望む夢を現実として永遠に見ることができる。世界より自分の未来の方が大事だと思っている者達にとっては、まさに最高の報酬だ。

 

 忍連合では、命の危険がある忍界大戦での報酬など全く期待できない。だが、暁は違う。人材を大事にして、潤沢な物資と金がある。最高の医療も準備されている。耐え忍ばない忍者は、このチャンスを見逃さない。

 

「あっちはあっちで頑張っているようだな。俺達は、はやく相談役の二人をやるぞ。こんな里に居るだけでイライラしてくる」

 

「おちつけ、サスケ。俺達もS級犯罪者として指名手配されているんだ。もう少し、慎重に…」

 

 重吾の意見などを聞くようなうちはサスケだったら、犯罪者になどならない道もあっただろう。うちはサスケは、大蛇丸から貰った資料を基に相談役二人を追い詰めていく。里の機密書類の部屋や忍術資料がある部屋、戦時物資がある部屋など色々とまわる事になり、大蛇丸の指示どおり全て回収してまわるうちはサスケは良いように使われていた。

 

………

……

 

 木ノ葉隠れの里の相談役…水戸門ホムラとうたたねコハル。二人は、忍連合を支える為、色々な施策で金を集めていた。その方法の殆どが、金持ちからの徴収では無く広く浅く集める方法。公平感こそあるが、負担する側からすれば重い。里が債券を発行すれば良いのだが、決してそのような事はやらない。

 

 そんな、二人の元に魔の手が迫る。

 

「いまだに成果を上げない忍連合に、大名達は苛立ちを覚えている。あいつらは、金が無限にあると勘違いしているのか」

 

「分かっている。戦死者の預金口座から強制徴収できる法案が明日通る予定だ。それで、当面の問題は解決出来る」

 

 残された家族への金など無い。その金すら、集金して忍連合を維持する金へと変わる。死後に家族がどうなったかなど普通知るよしなど無い。無論、この法案は内密に実行される。前線に知られれば、士気が落ちるからだ。

 

 その話を扉越しに聞いていたうちはサスケは、本当に嫌気が差す。こいつ等を殺す事は復讐でもあるが、実は里への最大の貢献になってしまうのではないかとすら感じている。

 

 扉を切り裂きダイナミックな登場をするうちはサスケ。相談役の二人は、うちはサスケの姿をみて逃亡しようとするが、志村ダンゾウと違い前線を離れてから長く、彼等に機敏な動きはなかった。当然、最前線で殺し合いに勤しんでいるうちはサスケから逃れる事など不可能。

 

「お前達に最初で最後の質問だ。うちはイタチに一族を皆殺しにさせたな」

 

「素直に答えた方がいいよ。今のサスケは、こえぇぇよ。何をするか本当に分からないから」

 

 鬼灯水月のフォローはまったくフォローになっていない。どうせ、殺す事には変わらない。楽に死ねるか苦しんで死ぬか、彼等の素直さに掛かっている。

 

「……ダンゾウが喋ったのか。いいや、イタチが喋ったのか。だから、早く殺しておけと」

 

「どうせ、全部知っているのだろう。その通りだ。木ノ葉隠れを守る為、イタチに一族を殺させた。お前も忍者なら分かるだろう。里を守る為だった」

 

 水戸門ホムラとうたたねコハルの二人が素直に話す。だが、彼等が生き残る道は存在しない。

 

「分かった。イタチと同じ瞳術で死ね。そして、あの世で兄に詫びろ……天照!!」

 

 煉獄の炎に焼かれる相談役達。こんな彼等でも、今現在は忍連合を支える大切な存在。大国における指示役が欠ける事により忍連合への影響は計り知れない。

 

 なによりあの世で詫びるなど、実現不可能。いい加減、うちはサスケは子供の顔を見に里へ帰るべきだ。そして、里の現実に眼を向けて誠意に向き合うべき。兄が数百人にも及ぶ甥や姪の生活を支えるため、死ぬ気で走っており労るべきだ。

 

 

◇◇◇

 

 水の国からの帰りにおいても、行き同様に夜襲が行われた。忍連合も警戒していた事と挟間一家が参加していなかった事から大きな被害は出ていない。大型船が数隻、物資と共に沈むだけで済む。人的被害がないだけマシなのか、物資が減って人が減らないから最悪なのか、忍連合は判断に迷う。

 

 そして、火の国の玄関口について、木ノ葉隠れの里で相談役の二人が天照により殺害された事を知る。その犯人は目撃情報からうちはサスケ率いる鷹である事も判明していた。これにより、うちはサスケは、歴史史上初のSS級指名手配となる名誉を飾る。

 

 その報告を聞いた火影は。

 

「ッチ。要らん時にでしゃばって、必要な時に居ないとか老害も極まったな」

 

 誰が聞いているか分からないこの状況で、本音を口にした火影。それを聞いた上忍達は苦笑いしか出来ない。

 

 




そろそろ、サスケェさんの状況も知りたいと思いまして。


PS:
暁側で闘われる方を募集しております。
今なら、設定シート通りの無限月読をご提供致します。
席に限りがござますので、奮ってご応募下さい。

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