忍連合側は、二人を守る為の戦争といって始めた忍界大戦の宣言があったにも関わらず、二人を導入した事で現場は混乱していた。二人を守る為に、開戦当初には6万人も居た忍者も既に4万人程度にまで落ち込んでいる。
道中の度重なる白ゼツ爆弾攻撃で、物資がない。数万人規模を支える水源などは、風の国にはなく、水の補給は水遁が得意な者達が死ぬ気で頑張って維持している。お陰で何人もの忍者がチャクラ不足で潰れて、悪循環の理想系になっている。
水遁などは口から水を吐く術であり、くノ一達に男忍者達が群がる気持ち悪い映像がニュースでも流れており、忍連合のイメージ低下に繋がった。
空腹に加え、過酷な風の国の環境。そこに、成り代わりの術で潜んでいる白ゼツが殺人や暴行を行う事で忍連合内は、悪意に満ちていた。その為、合流してきたうずまきナルトでも白ゼツの存在を感知できない。忍連合に植え付けられた猜疑心は、増える一方だ。
そんなギスギス忍連合は、風の国を移動するだけで数百人にも及ぶ仲間の骸を出す。そして、念願であった暁側の拠点へと辿り着く。それからは、陣営を構築して最終決戦に挑む準備をしていた。最前線には、目立つ餌として八尾のキラービーと九尾のうずまきナルト。
4万人規模の敵陣営を眺める暁陣営。
「いつ、攻めてくると思うボンドルド」
「早ければ明日の昼。遅くとも明後日でしょう。忍連合の食料物資は、底をついておりますので一刻も早く全軍で襲い掛かりたいと言うのが本音だと推測します」
挟間ボンドルドの予想は当たっている。移動して直ぐに攻め込む事は、忍連合側はできなかった。作戦本部も作らないといけないし、最終戦に向けて旨い飯を出す必要もあった。最後の晩餐になるかもしれないのに、飲まず食わずで死闘に挑む事など人はできない。
「パパ~、こっちも準備できたよ」
「こっちも準備は終わったよ。流石に疲れたよ。僕達が人間だったら過労死してたよ。しかし、本当に使えるの?不発した起爆札だよアレ」
「問題ありません。不発の原因は、込められたチャクラ不足です。だからこそ、それを補う儀式をしていたのではありませんか。他にも利用はさせて頂いておりますが」
挟間プルシュカと白ゼツが最終決戦に向けての準備をしており、それが完了した。暁側とて、八尾と九尾に加え4影と数万の軍勢を相手にして暢気にお茶を飲んでいたわけではない。
雨隠れの里で小南が使った6000億枚の起爆札。その内の0.1%に不良品があり、爆発していなかったので回収し、再利用して地中に埋め込んでいる。進軍して来た忍連合がその上に集まった瞬間に一斉起爆する手筈となっている。その威力は、長門が全力で放つ神羅天征にも匹敵する。
全ては、このための布陣であった。
「ボンドルド、お前に一つだけ言っておくことがある。俺は、お前達一家に感謝している。これは嘘偽り無い言葉だ」
仮面を外したトビが挟間ボンドルド、挟間プルシュカに感謝の気持ちを伝えた。
暁という五影クラスが集まる組織が、今では数名にまで減ってしまい忍界大戦にも不安が残る状況であった。だが、挟間一家の尽力で拮抗どころか優位な状況。その功績は、今まで尾獣を集めた元メンバー達にも引けを取らない。
「こちらこそ、貴方を含めた暁メンバーには、とても良くして頂きました。プルシュカがここまで成長できたのも、貴方達が居てこそのものです。念のためではありますが、八尾も強いですが本当にお一人で大丈夫ですか?必要でしたら、祈手をお付けします。この特別製に引けを取らない者ですので、足を引っ張る事はありません」
「ボンドルドが連れてきたあの訳の分からない連中か。戦いの邪魔になるから不要だ。それに、俺も切り札と言える物を持っている。八尾程度には負けんよ」
キラービーをトビが担当。
うずまきナルトを挟間ボンドルドが担当。
4影と忍連合主力を挟間プルシュカと白ゼツが担当。
寝返り組と白ゼツが作戦本部強襲を担当。
その際には、挟間一家も切り札を使う気でいる。負けられない戦いである為、使える手札は多い方が良い。
………
……
…
うずまきナルトは、忍連合に合流して初めて忍界大戦の状況を聞く事になる。雷の国で修行をしている最中、数万人が殉職している。その原因が、尾獣を宿すうずまきナルトとキラービーを守る為であったのが、彼にはショックであった。
もっと早く呼んでいれば救えた人は多かったかもしれない。
「どういうことだってばよ!なんで、こんな状況になるまで俺達を……それに、サクラちゃんが殉職したって本当なのかよ」
この数万に及ぶ被害が挟間ボンドルドと挟間プルシュカと白ゼツの三名によって引き起こされた被害だと知り驚いていた。うずまきナルト自身も彼等の実力が高い事は知っていたが、ここまでの被害を出せるとは思っていなかった。
「本当だ。遺体も確認して、火の国で埋葬も行った」
「嘘だろう。だって、この間……あっ。なんでもねーってばよ」
数日前、うずまきナルトは二日に一度の電話の約束を守って、ある人に掛けていた。そこで、確かに聞いた……主治医の名前を。
そして、察してしまう。
SS級犯罪者となった親友と春野サクラが一緒に暮らすには、里に所属する忍者では不可能だ。だからこそ、この機会に死を偽装して抜けたのだと。今のうちはサスケの輝かしい犯罪履歴は、世界を三度くらい救う功績がない限り打ち消せない。
その手引きに、誰が居るかも大体理解する程うずまきナルトは成長していた。
「でだ、ナルト。お前には最前線に行って貰うのだが……挟間プルシュカを知っているな?なんでも、螺旋丸を教えたとか」
「あぁ、仙術修行を一緒にしていた。でも、幾ら強かったっていっても、そんだけの人数をたった二人でやれんのか」
うずまきナルトの疑問に、風影が答えを言う。
「戦場では精々2000人の死者が出た程度だ。だが、戦争とは闘う事だけが全てじゃない。その準備に至るまで全てが戦争だ、ナルト。奴は、ソコをついてきた。俺達の補給線、夜襲など満足に実力を発揮できない環境を整えてきている。結果的に、それが響いて数万人の死者へと繋がっている。実際、風の国での戦争も同じだ……忍連合として、ここが分岐点。これ以上は戦争継続能力がない。だからこそ、お前達を守る戦争ではあったが、こうして最前線に立たせる事になった」
「わかったってばよ。……それと、サスケはどうなったんだ?」
春野サクラが安全な場所に移ったならば、きっと一緒に暮らしていると信じているうずまきナルト。
「情報の確度は、低いが……周辺諸国側の傭兵として、支払の良い仕事を優先的に受けているらしい。5大国ではSS級犯罪者として指名手配中だが、周辺諸国では国を救う救世主扱いとなっているらしい」
「サスケェーーー!!お前、何やってんだよ」
その通り、ナニしかやってない。
だが、そんなうずまきナルトの悲痛な叫びは、親友には届かなかった。
◇◇◇
風の国から遙か離れた地にある湿骨林。そこは、挟間一家が契約している口寄せ動物達が暮らす楽園。そんな楽園は階層構造になっており、人が到達するのは困難な場所だ。
通称第四層と呼ばれる一角にある美しい花が咲く場所……不屈の花園。そこは、クオンガタリと呼ばれる挟間ボンドルドが契約している群生型の口寄せ動物がコロニーを作っている。定期的に運び込まれる忍者などを餌にして数を増やす、とても理性的で賢い子が沢山居る。
他にも同じ階層には、タマウガチなどが生活している。遊びに来た挟間プルシュカがボールを投げると走って取りにいく可愛い犬みたいな子達だ。
更に下にあるのが第五層であり、挟間ボンドルドが持つ最大の研究施設。ここで、祈手達が暮らしており、様々な研究も同時に行われている。研究の補佐には、カツユの分裂体も参加しており、祈手達と日々充実した生活をしていた。
第六層以降にいるのが、カツユ本体やリュウサザイ達。カツユは、世界最大の口寄せ動物であり、規格外の超常生命体。彼女が動けば、世界が滅びると言われる事も納得がいくレベル。彼女が、冗談で肉弾戦車をした時には、尾獣ですら逃げるしか選択肢がとれない。
だが、最強故の悩みもあった。未だかつて、誰もカツユを完全な形で呼び寄せた事が無い。チャクラ消費量が尋常で無く、不可能だとされていた。
今日までは。
『なにも口寄せの術に拘る必要はなかったわ。卑劣な彼女の術を使って飛べば良かったのよね。その為のチャクラも地脈から集め終わったわ。待っててね、ボンドルド様、プルシュカちゃん。母は強いんだから~、みんなも良いわね?』
『パパのために頑張る』
『早くお腹いっぱい食べたいな』
暁が各拠点で行っていた謎の儀式は、全てこのためであった。地脈から集めたチャクラをカツユの元に集める。そして、湿骨林に住まう者達がカツユ本体に包まれて、時空間忍術で跳躍する。
カツユ本体、タマウガチ60体、リュウサザイ10体、ベニクチナワ15体、カッショウガシラ25体というカツユ含めて111匹ワンチャン改め、原生生物達が家族を救うため大集結する。
『卑遁・飛雷神の術!!』
………
……
…
挟間ボンドルドと挟間プルシュカは、暁の拠点の外に出て待っていた。予てより、色々と準備はしていた挟間一家。カツユ本体をどうやったら外の世界に呼び出せるか。
本来ならば、風の国でなく、火の国で呼び出そうと思っていたが忍連合側の都合に合わせてここが最終決戦の地となる。
「パパ、くるよ!」
「えぇ、分かっています」
超巨大質量の超長距離跳躍による物質移動。時空間の揺らぎが誰にでも感じ取れるレベルにまで達していた。人一人が移動するのとは訳が違う。巨大な山が一つ飛んでくる……そんな感じだ。
だからこそ、その様子は忍連合側からも観測され、目の前に立ちふさがる白く巨大な生物に度肝を抜かれる。
『ふぅ、数百年ぶりの外の空気です。お待たせしました、ボンドルド様、プルシュカちゃん』
「カツユに皆さんまで遠いところ、助かります。忍連合側も全てを出し切る様ですから、私達も全てを出さねば失礼というものです。戦争が終わったら、ゆっくり過ごしましょうね」
「ママーーー、大きい!!ねね、上に昇って良いよね!?ダメって言っても昇るから」
挟間プルシュカが元気にカツユを駆け上がるが、一向に上へは到着しない。それほどでかいのだから。味方であればこれほど心強い存在は居ない。敵からしたら絶望しかないだろうが、そんなことは挟間一家の知るところではなかった。
呼べないなら飛んできて貰おう作戦です。
帰りも同じ手法で帰るか、歩いて帰るんです。