綱手は、暁側がこの地を主戦場として選んだ事を喜ぶと同時に危険視もしていた。挟間ボンドルドが何の考えも無く、闘うとは思っていなかったからだ。案の定、最悪な事態が発生してしまう。
遠目でもハッキリと分かる程の巨大なカツユを確認して、綱手は驚愕する。完全体カツユを呼び出すなど、どのような方法を用いたのか分からなかった。なにより、そのサイズが規格外だ。歩くだけで天変地異となる存在で、忍連合に所属する者達の心を砕くには十分だった。
あんなサイズの口寄せ動物に対応できる忍術など誰も持ち合わせて居ない。
『忍連合の皆さん。聞こえておりますか、私は挟間ボンドルド。我々は、無限月読に招待する人を無闇に減らしたくはありません。その証拠に、カツユを貴方達の真上に呼び寄せなかったのです。暁側では、開戦までの期間限定で一緒に闘う仲間を大募集しております。さぁ、今すぐ憎い敵国の忍者の首をもって、我々の元へ来て下さい。上からの命令ではなく、ご自身の運命はご自身で決めるべきだと思います。我々は、考える事ができる人間なのですから』
カツユを拡声器代わりにして忍連合側へ仲間募集を掛ける挟間ボンドルド。カツユの存在で心が折れた者達も多い。そのやり方に作戦本部は、後手に回る。今すぐにでも開戦して否応なく闘わせる事が理想形だが、作戦なしで開戦しては無駄な死者が増える。
真っ先に動いたのは火影である綱手。
「大至急、影達をたたき起こして対応会議をするぞ。部隊長や上忍達は、脱走者がいないか監視を怠るなと厳命。脱走者は、容赦なく殺せ。逃げた時点で敵だ」
綱手が暗部に厳命した。だが、4万人もの忍者達が全員聞いている放送だ。空腹も限界に来ており、絶望的な敵が現れた。本気で、どちらについた方が生き残れるか考える者達が増える。
今の連合の状況から故郷に帰っても碌な報酬はない。それどころか、周辺諸国からの侵略があるので、その防衛戦に回されることは明白だ。命がけの戦争の報酬が、次の忍界大戦では話にならない。
忍者の中にも判断が速い者もいる。その為、朝日が昇るまでの間に、忍連合側は200名を超える脱走者と300名を超える死者を積み上げた。逃亡者を追った者達が挟間ボンドルド達に捕まりカートリッジへと生まれ変わる。忍連合側は、長引けば脱走兵が増えると理解して、準備半ばで開戦を余儀なくされた。
………
……
…
忍連合側は、昨晩の脱走もあり崩壊寸前。一応、最後の晩餐は配られたが十分な食事はなく、カンパンが最後の食事になった者もいる。だが、不幸中の幸いだったのが、
「トビさん、私が用意した水は連合側に置いてきて頂けましたか?」
「あぁ。だが、なぜ敵に塩を送る?……いいや、そんな性格じゃなかったな。毒か?」
「毒ではありません。あれは、
カツユという特級の存在に注目がいっている隙に、トビが物資を色々と入れ替えてきた。重要物資の水に対して、このような行為をする。トビは、挟間ボンドルドが味方で良かったと本気で思う。
「相変わらず酷い手口だな。貶しているわけではない、褒め言葉だ」
「それほどでもありません。では、開戦前に最終通達を行いましょうか。水もどきを解毒する方法は、私しか知りません。なので、最後の仲間募集を掛けましょう。そろそろ、体調が悪くなってきた者も出たはずです」
挟間ボンドルドの読み通り、朝方に体調を崩す者が出始めた。下痢に嘔吐、耐えがたい腹痛と……食中毒かと疑われたが、薬では一向に回復はしなかった。医療の知識がある者が診たが原因が特定できない。
そして、綱手に報告が上がる直前で、挟間ボンドルドからの放送が忍連合側に届く。声明の内容は、以下の通りだ。
『下痢、嘔吐、腹痛などの症状がある人は、水もどきに寄生されております。この生物は、生命に取り憑いて肉体を作り替えてしまう特性があります。感染すると数日で肉体が作り替えられて、手遅れになります。ですが、その前に適切な処置をすれば問題ありません』
その声明を聞いた忍連合の者達は青ざめる。そして、同じ釜の飯を食った者達で体調不良となった者が居ないか確認し出す。だが、病は気からという言葉がある。このような事実が出回れば、例え普通の水を飲んだ者でも気分が悪くなる。
『極めて優秀な感知タイプの方や白眼を持つ日向一族の方ならば水を良く確認すれば分かると思います。私は、その処置方法を知っております。綱手様、私はこの処置方法を発見するのに三週間掛かりました……もう一度だけお伝え致します。暁側では、忍連合と闘う仲間を募集しております。これが本当に最後の機会です。戦争に勝っても死んでは意味はありません』
最後の晩餐を文字通り、最後の晩餐にしてしまう暁側の非道な行い。だが、忍界戦争であり、忍者が毒を使うのは当然のことだ。開戦を二時間後に控えたこのタイミング。確実に命惜しさに寝返る者達が出てくると、影達は確信した。
◇◇◇
雷影は、生まれて初めて理解する。怒りが限界突破したら逆に冷静になれるという事を。挟間ボンドルドの忍者らしいやり方に、冷静な対処をしている。
「火影。あの巨大生物カツユは、お前の異名でもある蛞蝓で間違いないな。今では、契約が打ち切られて、挟間ボンドルドの妻であると」
「あぁ、確かにそう言ったな。カツユの情報も昨日渡した以上の事はなにも無いぞ」
カツユの情報を知れば知るほど、対処方法が分からない作戦本部達。あんな生命体を相手にどう闘えば良いのか、逆に教えて欲しい程であった。
そんな中、渡された資料を確認している風影が火影に質問する。
「世界を七日で滅ぼしたとか、冗談みたいな情報も真実なのか。後、うちはサスケが木ノ葉隠れの里の機密情報を周辺諸国に漏洩させていると、暗部から緊急連絡があった。その中に、暁襲撃に伴い風の国にある集落を襲うという極秘計画もあった。これらは真実か?」
「前者は、カツユが酒に酔ったときに漏らしていた事だ真相は流石にわからん。後者は、言うまでも無く事実だ。金払いの良い暁に、挟間ボンドルドを派遣したのは私だからな。だが、それがどうした?どの里でも似たような事はやっているだろう」
バレてしまったからには開き直るしか無い火影。だが、木ノ葉崩しと称して戦争を仕掛けた経験もある砂隠れの里としては、これに関して強くは言えない。一応、援軍も送って貰い、命を助けられた事実もある。
つまり、±0である。
この忍界大戦が終われば、冷戦状態になることは必須であった。険悪となりつつあった4影の作戦会議に、突然割り込んでくる者がいる。
「で、伝令!巨大生物に大きなチャクラの反応を感知しました。八尾や九尾の尾獣玉にも近いとの事です」
………
……
…
開戦までの僅かな時間。まだ、裏切る事に対して、心の整理が出来ていない忍連合に対して、挟間プルシュカが動く。挟間プルシュカの師の一人である自来也が得意としていたコラボ忍術。当然、師に出来て弟子が出来ない道理はなかった。
完成形仙人モードで母親の上に昇りチャクラを練り上げる。それに呼応して、カツユも足場からチャクラを吸い上げて体内で圧縮を始めた。
「ママ、準備はできた?」
『エネルギー充填率100%!ふっふっふ、
カツユが口を開く。ソコには、高圧縮された光り輝くチャクラが周辺を照らす。忍連合の最前線に八尾と九尾が出てきたが、大人と子供くらいのサイズ差。
「連合本部へ直撃を狙って下さいね。どうせ、祝福持ちが集中している場所ですから、直撃はできないでしょうが……運が良ければ影の一人くらいは殺せるでしょう」
挟間ボンドルドは、娘と妻のコラボ忍術を特等席で眺める。そして、挟間プルシュカとカツユも挟間ボンドルドに良いところを見せようと気合いをいれる。
暁側から開戦に先立ち、挟間プルシュカの号令で先手が放たれた。
「なぎ払え!」
『親子のコラボ忍術!プロトンビーム』
カツユの口から放たれたビーム。忍連合陣営を左から右へと閃光が走る。一部は、八尾と九尾が何本もの尾を犠牲にして弾く事に成功するが、その他の着弾地点からは尾獣玉が着弾したかのような大爆発が発生する。
暁側に寝返った忍者達は、その光景を眼にして尾獣なんて化け物は可愛い物だと思った。尾獣は、封じられている人柱力を殺せば少なくとも復活までのインターバルは稼げる。野良の尾獣だって、過去に影達が捕まえた実績もあるから人間でも倒せる範疇だからだ。
この時、惑星最強の在来種カツユの実力が歴史に名を刻む。
ナルト世界って後半につれて、大怪獣戦争になるからね。
コラボ忍術の威力も特段おかしくないはず!
さて、そろそろ、正々堂々と殺し合いを始めましょう。