卑の意志を継ぐ者   作:新グロモント

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時系列はちょっともどって、プルシュカが忍連合と戦い始めた位になります!


79:わかるってばよ

 挟間プルシュカが忍連合と戦い始めたのと同じ頃、挟間ボンドルドの元にうずまきナルトがやってきて主戦場のど真ん中で対峙する。その近くでは、トビとキラービーが同様に対峙しており、双方の主戦力が戦場に出揃う。

 

 第四次忍界大戦において、絶対的な勝利を信じて疑わなかった忍連合側の悲惨な状況は、うずまきナルトとて理解出来ている。悪意と憎しみが渦巻いており、崇高な目的を持つ暁側の方が美しいと彼は理解していた。

 

 九尾チャクラモードを会得したうずまきナルトにとって、挟間ボンドルドは間違いなく格下の相手だ。それなのに、自身の正面に堂々と本体が居る事に彼は不思議に思っていた。

 

 そんな様子を見かねた挟間ボンドルドが、うずまきナルトに声を掛ける。

 

「どうしたのですか? うちはマダラさんも、プルシュカも戦いを始めましたよ。どうぞ、本気で来て下さい。仙人モードに引き続き、新たに会得した九尾チャクラモードの実力。是非見たい」

 

「止めてくれってばよ。俺は、挟間特別上忍と話し合いに来たんだ。今からでも、遅くねーー。こんな戦争、止めてくれ」

 

 うずまきナルトにとって、挟間ボンドルドは父親のような存在で恩人である。困った時にはさり気なく力を貸してくれたり、アドバイスをしてくれたり、春野サクラを助けてくれたり、うちはサスケの事も上手に取りなしてくれたし、全肯定してくれる特徴的な耳の女性を紹介してくれたりと。

 

 あげればキリがない。「尊敬する忍者は?」と聞かれたら、挟間ボンドルドと言える程、うずまきナルトにとって挟間ボンドルドは大きな存在になっていた。

 

「おやおやおや、何を仰いますか。既に話し合いで解決する時点はとうの昔に過ぎ去っています。私やプルシュカは、忍連合側にとっては第四次忍界大戦における主犯格の一人です。貴方がどのような権限を持っていたとしても、恩赦はありえません。私は、妻と娘を守る為にもこの戦争に勝利せねばなりません」

 

「わかるってばよ」

 

 うずまきナルト。今まで数多の格上の強敵を戦いの最中に成長し、撃破してきた。時には、『わかるってばよ』という謎の一言で、敵を改心させてきた。そして、今度もその方法を利用するつもりでいる。

 

 この方法にうずまきナルトは絶対的な自信があった。木ノ葉隠れの里を襲った長門を改心させて、命を対価とした外道輪廻転生まで実行させるに至ったのだ。長門は、世界平和のために何年も忍界で闘い、亡き友の思いを成就するために生きてきた男だ。それをたった数十分で改心させるに至る。だからこそ、その自信があるのも当然だ。

 

 だが、その言葉は挟間ボンドルドの心に何も響かない。むしろ、その程度の『わかるってばよ』で改心するなら暁側で忍界大戦などに参加しない。これも挟間ボンドルドが集めた「祝福」が、別天神にも比肩しうるうずまきナルトの洗脳紛いに強力な「祝福」を防いだ為に実現できた流れだった。

 

「いやはや、恐ろしいですね。これほどの「祝福」を身に宿していても一瞬、心が揺らぎそうになりました。それで、折角なのでお聞かせ頂きたい。何が、分かっているんですか?」

 

「そりゃ、挟間特別上忍が綱手のばーちゃんに裏切られて。後、色々な資産を没収されたり……木ノ葉隠れの里に尽くしていたのに酷い事をされて心を痛めた事だってばよ。後は、九尾の襲撃で家族を失ったことなんかも。だから、分かるってばよ。俺も色々と…」

 

 うずまきナルトは、事前に書類上で知った情報を並べた。そして、共感する言葉である『わかるってばよ』を言う事で解決すると信じて疑わない。九尾とすら和解を成功させたが、同じ手は挟間ボンドルドには通用しない。

 

「既に心の整理はつけております。その程度の安い言葉で改心すると本気で思っているのでしょうか。私が戦いを止めれば、恐らくカツユもプルシュカも行動を止めるでしょう。ですが、それは死を意味します。うずまきナルト君は、私に妻と娘をこの手で殺せと言うのですか?」

 

「そうじゃねーーってばよ。なにか、きっと方法はあるはずだ。挟間特別上忍なら、もっと良い方法を知っているんじゃねーかよ」

 

 うずまきナルトの経験上、身近に天才である奈良シカマルなどがいた為、大体の問題は周りが解決してくれた。アイディアが無くても、分かるってばよの一言で相手を改心させて、元敵に解決策を考えて実行させる事をし続けてきた。

 

「もう少し実りのある話が出来るかと思いましたが、残念です。ですが、どうしてもこの状況を改善したいというのでしたら、一つだけ方法があります。うずまきナルト君、大人しく九尾を渡して頂けないでしょうか?安心して下さい、死んでも新しい体で蘇らせる事を確約致します。忍界とは離れた場所で、新しい家族と暮らせるように手配もしましょう」

 

「…………そ、そんな手にはのらねーーってばよ。でも、家族ってのはまだ早いってばよ。物には順序があるってばよ」

 

 うずまきナルト、この時ばかりは本当に悩んだ。思わず、挟間ボンドルドの手を取ってしまうほど悩んだ。第四次忍界大戦の状況……万が一勝利したとしても、周辺諸国と第五次忍界大戦が控えている。どう考えても、人柱力が最前線で敵主力と当たる必要があり、無事で済む保証はない。

 

 耳が特徴的な彼女が居る里は、音隠れの里である。つまり、敵国となる。うずまきナルト自身、彼女がいる里に手を挙げられるかと言われれば未だに答えは持っていない。寧ろ、ここで挟間ボンドルドの手を取って、死んだ事で身を隠して第二の人生も選択肢の一つだとは分かっていた。

 

 憧れの火影という立場は、今となっては他国から忌み嫌われる存在となってきており、正直就きたいとは思っていない。

 

 そんな思いを抱きつつも、うずまきナルトが忍連合側で頑張っているのは、亡き父親である波風ミナトの思いを九尾の封印を解く時に知ったからだ。その精神世界で四代目火影の凜々しい姿の父親が今でもうずまきナルトの脳裏に焼き付いている。

 

「闇すらも及ばぬ忍界にその身を捧げ、挑む者に世界は全てを与えるといいます。生きて死ぬ。呪いと祝福のその全てを旅路の果てに何を選び取り終わるのか。それを決められるのは 挑むものだけです」

 

「どういう意味だってばよ?」

 

「私とうずまきナルト君。どちらかが死ぬまで闘いましょうと言う事ですよ。安心して下さい。死後のサポートは手慣れたものです。忍者は、死んでからが本当の戦いの始まりだと言う事を教えて差し上げます」

 

 うずまきナルトの強さは別格だ。だが、その別格の強さ故に闘える者は少ない。トビが九尾の担当では、確実に説得された上にうずまきナルトを更に高みへと押し上げてしまう。だからこそ、挟間ボンドルドが一番適任だった。格下相手の勝率がすこぶる悪いうずまきナルトのキラーユニットになる。

 

 何かを察してか、うずまきナルトの中にいる九尾が前面に出てきた。

 

『ナルト!嫌な予感がする。こう言う輩は、何かをさせる前に確実に、完璧に、殺しておけ』

 

 九尾の言葉に反応して、挟間ボンドルドに付いていたカツユが喧嘩を買った。

 

『肉体を持たない外来種のくせにいい気にならないでくださる。私と娘の攻撃すらマトモに防げなかったくせに何が最強の尾獣?冗談は、でかい態度だけにしてくださいね。ざこざーーこ♡ 九尾?今尻尾が6本しか無いんですけど、どうしたんですか?もう、改名して六尾って名乗った方が良いんじゃないんですか?』

 

 カツユと挟間プルシュカのコラボ忍術で八尾と九尾の尾を数本削り取った。もちろん、時間経過で回復するだろうが、それには長い月日が掛かる。その切れた尾は、トビが外道魔像に喰わせている。

 

「カツユ、ソコまでにしておきなさい。お陰で準備は整いました」

 

「準備って!?こうなったら、挟間特別上忍を止めて、この戦争を終わらせてやるってばよ」

 

 時間制限付き仙人モードを解放する挟間ボンドルド。対峙する うずまきナルトは仙人モードの更に上をいく九尾チャクラモードを使い、お得意の多重影分身を使う。

 

「全く、この白眼を以てしても見抜けぬ影分身とは厄介ですね。まぁ、どうせ最後の一体になるまで当たり判定は出ないでしょうから変わりはありませんか。うずまきナルト君、貴方へ確実に攻撃を当てる方法を一つ教えてあげましょう」

 

「俺だって昔と比べて強くなっているんだ。簡単に攻撃なんてあたらねーーよ」

 

 挟間ボンドルドは、うずまきナルトの多重影分身が千手扉間が開発した術とは似て非なる物だと思っている。仮に、開発者がうずまきナルトの術をみたら、アレは儂が開発した術とは別物だと言い切るレベルだ。

 

 だが、そんな術にも対抗手段は存在する。

 

「小南さんが残してくれた起爆札6億枚を使った術です。火遁・起爆炎陣!!」

 

「こんな紙切れで俺は止まらない」

 

 地中に埋められた6億枚の起爆札が一斉にうずまきナルトの影分身達に襲い掛かる。津波の様に押し寄せあっという間に、うずまきナルト自身と影分身達を飲み込んだ。周囲の環境ごと消し飛ばす攻撃ならば、当たらぬ道理は無い。

 

 何が起こったかうずまきナルト自身も理解が追いつかず、張り付いたのが起爆札だと理解する前に一斉起爆が始まった。第四次忍界大戦の主戦場でうずまきナルトを中心とした場所に、長門が全力で放った神羅天征を超えるクレータが生まれる。

 

 その爆風と爆音は戦場に響き渡り、忍連合側に更なる絶望感を与える事になる。

 

 

 


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