彼は落ちていた。
真っ暗な中をしばらく仰向けで落ちていた。
彼に記憶はない。
気がつけば落下していた。
所持品と言えば手に持った杖と、肩から下げた今彼の腹のあたりでバタバタ暴れている大きめのショルダーバッグと、着ているものくらいだ。
彼は不思議と混乱してはいない。
(あぁ・・・死ぬのか。)
彼は思った。そこに深い悲しみも後悔もない。
(こうやって死ぬのが本望だった気がする。わからないけど。)
彼はそう思い、目を閉じた。
*
「あーあ。今日も賽銭ないわねぇ・・・」
ここは『外で失われたもの』が集まる場所、幻想郷。その東の端にある博麗神社。その賽銭箱の前で少女が項垂れていた。黒く真っ直ぐでショートにした髪に茶色の目。肩や腋が大きく見えるように大胆に改造(?)された巫女服。トレードマークと思われる頭の大きなリボンは本人の心情を表すかのように萎れていた。彼女は博麗霊夢。格好の通り巫女さんである。
「あっはっは!それはいつものことだろ?霊夢?」
それを見て笑う少女がまた1人。金眼。ふわふわとしたロングの金髪を片方だけおさげにし、白いリボンがついた三角帽子を被っている。白のブラウスに黒いサロペットスカート。片手には箒が握られている。彼女は霧雨魔理沙。見ての通り魔法使いである。
「だってぇ・・・賽銭あるかもしれないじゃん・・・」
「まぁ・・・仕方ないのぜ。気落とすなよ。霊夢。」
ちょっと泣きそうな霊夢をなだめる魔理沙。
「それにしても暇ね。最近大きな異変がないから、やることが少ないわね。」
「起こったら起こったでめんどくさがるんだろ?」
「多分ね。」
はははと笑い合っていると
ドキャン!バキャ!バキ!ゴキ!ガリガリ!メキ!メギャン!
と彼女らの後ろから破砕音とともに土煙が立つ。
「え?」
目が点になった霊夢の脳天に細長い何かがスコーン!と当たる。
「い゛っ゛つ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
頭を抑え呻く霊夢。
「うっわ・・・なんだよ一体・・・」
驚く魔理沙。おもむろに霊夢の脳天を強襲したものを拾う。杖だった。100センチほどの白い木製。しかし、あるところに切れ込みがあり、そこから分かれて、中から白銀の刃が見えた。
「仕込み杖?おい霊・・・」
「あぁ!!石畳がぁ!!!!」
煙が晴れると何かが落ちたあたりの石畳に大穴が開いていた。
「なんなのか知らないけど・・・許さない!」
ブチ切れた霊夢が猛然と神社の周りにある森へ走る。
「お・・・おい!」
慌てて箒に乗って追う魔理沙。
霊夢は自分の直感を信じて、バウンドしていったらしい落下物を追う。
森の木々が何かにより折れ、粉砕されていた。
(何が落ちてきたのよ・・・)
しばらくして落下物を見つけた。
「・・・」
人間だった。性別はおそらく男で、十代から二十代の青年。ベリーショートの黒髪。黒のTシャツにジーンズ。肩から大きめで布製のショルダーバッグをかけている。気を失っているようで、目を閉じたまま動かない。
「・・・何よ・・・なんてダイナミック迷い込みなのよ。こんなの初めてよ・・・」
霊夢は途方にくれた。
はじめまして。戯言(ザレゴト)遣いの偽物と言います。そして『偽奏録』を読んでいただいてありがとうございます。私の作品に興味を持っていただいてありがとうございます。これは元々pixivで書いているものをこちらにも載せたものです。pixivも続けますがこちらも進めていきます。pixivの方もよろしくお願いします。あと感想もよければお願いします。そしてこれからも『偽奏録』を読んでいただければ幸いです。