ガシャドクロは未だに自分がどこにいるかわからなかった。いつだったか『鎧武者』につかまって暗いところに閉じ込められ、いきなりよくわからない場所で解放されたのだ。しかしそれでもガシャドクロはわかる。さっきから周りをぶんぶん飛び回ってチクチクしてくるコバエの中の一匹。あいつに対してだけガシャドクロの警戒信号がマックスで鳴り響いている。早く叩き潰さないとまずい。そう思えた。
その時、顎に違和感が走った。ガシャドクロが目・・・があったところで燃えている鬼火を動かすと黄色いコバエがレーザーを当ててきた。正直痛くもないし万が一砕けても以前に大量に集めた怨霊の数々を使って修復できる。だがうざったらしいのは変わらない。何か叫んでいるが小さすぎて聞こえない。仕方ない。あちらから潰すことにする。ガシャドクロはその黄色いハエを叩く。しかしぶんぶん動き回って当たらない。あぁうざい。しかもコバエが移動し始めた。潰すなら徹底的に潰さなければ。のっそりと周りの木々を踏み潰しながら追いかける。クソが。ぷんぷん飛んでんじゃねぇ。ガシャドクロは口から瘴気を吐いたり腕を振り回しながら追う。頭に血が上っている。上る血はないが。ともかくガシャドクロは今冷静さを欠いていた。長い間捕まっていて鬱憤が溜まっていたし、いきなり訳もわからない場所を放り出されてハエに纏わり付かれてイライラしていた。元からあまり頭の良い妖怪ではなかったが、イライラによりハエを殲滅させること以外考えられていない。しかし罠だろうとガシャドクロは気にしない。どのコバエがやばいかなんてもうどうでもよい。ただ昔のように暴れ回るだけだから。
*
「よっしゃついて来たぜ!次どうするんだ?」
「しばらく時間を稼いでください!白玉楼から出来るだけ離したいですし、こっちも用意に時間がかかります!」
STRENGE RIDE! DIVISION!
STRENGE RIDE! DIVISION!
STRENGE RIDE! DIVISION!
ガチョンガチョンとカード挿入と効果発動を繰り返す義縁。効果によって分身がどんどん増えていく。
「このくらいでいいか?皆さん!用意ができました!」
「わかった!」
「わかったわ。」
「魂魄妖夢さん!出番ですよ!」
「みょんみょん!」
合図とともに霊夢が封魔針をガシャドクロ足に投げ刺し釘付けにする。
TOUHO RIDE! ヨウム!
義縁が妖夢のカードで変身すると高く飛び上がる。同時に分身たちも飛んだ。しかしその数は2人3人程度ではない。数百、もしかすると千を超えているかもしれない。その分身たちと共に妖夢と義縁はガシャドクロを取り囲む。
「まぁ愚直ではあるけれども、数が足りなければ増やせばいいってね。」
と、呟きながら一枚のカードを挿入する。
SPELL RIDE! 幽鬼剣『妖童餓鬼の断食』!
「行きますよ。魂魄妖夢さん。」
「いつでも行けるみょん!」
2人(+α)は『白楼剣』と『楼観剣』を構える。
ガシャドクロはやっと己の危機に気付いたようだが、もう遅い。
「「幽鬼剣『妖童餓鬼の断食』!!!」」
2人(+α)が刀を振ると白い斬撃とそれから分裂した光弾が飛ぶ。それは大玉の花火のように光り輝く。義縁達くらいの大きさで俊敏に動けるのであれば逃れることは、万に一つの可能性だが、できるかもしれないが、ガシャドクロは高層ビル並みの大きさのある鈍重な妖怪である。来るとわかってても避けられない。
光弾と斬撃に当たってガシャドクロの中の怨霊が次々と浄化されていく。
「やぁぁぁぁぁ!!!『ウロギリ』ィ!!」
最後に義縁が頭の先から『白楼剣』で真っ二つに斬る。
オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙!!!!!
という断末魔を最後に、巨大な骨の怪物はバラバラになり、砕けて消えてしまった。
「・・・これも違う・・・のか・・・?わからないや・・・」
それを見た義縁は急に意識が遠くなり、やがて気を失ってしまった。
*
『立て。』
男の声がする。義縁には聞き覚えのない声だ。
『立てと言っている。』
いつのまにか義縁はうつ伏せに倒れていたようだ。頭を動かしてみると草鞋を履いた足が見え、義縁はさらに目線を上に向ける。和装の男だった。ただ、顔は逆光で見えない。男の右手には木刀のようなものが握られている。
「だ・・・誰ですか?」
男は答えない。今更気づいたが倒れているのは森の中ではなく真っ白な何もない空間であった。そばに落ちている木刀は自分のものだろうかと義縁は思う。
『立て。グズグズするな。』
とだけ言って男は背を向けて何処かへ行ってしまう。義縁はそれを見ながらなんとか立ち上がろうとするが、また意識が薄れていった・・・。
*
「おい!?二兎咬君!?おーい!起きろよー!朝なのぜー!?二兎咬くーん?」
「魔理沙。今は昼だしなんなら夕方になりかけてるわよ。」
「そうだったぜ。」
「気を失っているし落下したからあまり揺らさない方がいいかもだみょん。」
「う・・・うん?」
3人の少女がやいのやいの言っていると義縁が目を覚ました。
「・・・どういう状況ですか?これ?」
「気を失った二兎咬君をえっさほっさと白玉楼に運んだのよ。」
「いやそういうことではなくて。骨はどうなったんですか?」
「消えちゃったみょん。バラバラになって・・・」
「・・・そうですか・・・よかった・・・」
と、気が抜けたように言う義縁。
「でもなんであんなものがいきなり出てきたんだろう?」
「うーん。まぁよくあることだぜ。」
と明るく答えた魔理沙の言葉を聞いて
「よくあること・・・か。」
と、義縁はボソリと呟いた。
*
「ふむ。ガシャドクロはやられたであるか。順調のようであるな。しかしあのお嬢さん。やはり捉え所のない人だ。」
と、鎧武者は感慨深そうに言う。
幽々子と会ったところから少し離れた場所から望遠鏡をのぞいて見ていたのだ。
「剣を交える日が楽しみである。拙者も研鑽を積まねば・・・」
『おいおい。何してんだ?髃樕ぐそく。お前も見物か?』
どこからか声がする。鎧の隙間からひらりと一枚の紙が出てきて、空中に止まった。紙が震えて音を発している。
「・・・ヴィザであるか。何用だ。」
『何用だじゃない。一旦集まれとの御達しだ。』
「・・・『あの方』であるか。オウとDr.エグゼはどうしているのであるか?」
『オウとエグゼにはもう連絡したしもう既に来ている。きていないのはお前だけだ。
「それはすまないのである。すぐに行く。それと・・・順調であるぞ。」
『・・・そうか。ならいい。早く来い。』
とだけ言って紙は音を発しなくなりひらりひらりと落ちていく。それを髃樕は掴むとそのまま木々を伝って消えていった。その顔は面頬によって隠れていたが、いくらか嬉しそうであった。
はい、最近絵描きも始めた戯言遣いの偽物です。妖夢編が終わりました!(しばらく後書きを書かなかったのは話す内容がないから)最近書けていませんが頑張らないとなぁ、では、これからも『偽奏録』をよろしくお願いします!