東方偽奏録   作:戯言遣いの偽物

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5・飢餓〜starvation〜

 

「・・・っ!来るのぜ!」

「うぇ!?」

後ろを見ると怪物が突進してきた。

魔理沙と義縁はそれぞれ左右に飛んで逃げる。

「これ・・・どうすれば・・・」

と義縁が呟くと、『戯厭』が勝手に飛んできた。しかし全長がだんだん伸び、先が細く分かれ、義縁が手に取る時には魔理沙が持っているのと同じ箒になっていた。

「・・・てことは・・・」

と帽子の中をゴソゴソ探ると案の定ミニ八卦炉があった。

「・・・」

「ォオオオオオオオオオオ!!!」

化け物は手のひらに空いた口のようなものからレーザーを撃つ。

義縁は慌てて箒に乗って飛ぶ。ただし魔理沙のように跨って乗るのではなく、スケートボードのように箒の上に立って飛んでいる。

「えぇっと・・・どうやるんだ?霧雨魔理沙さんと同じレーザーが出せれば・・・」

とブツブツ言いながら怪物の頭の上をグルグル飛んでいる。

「何やってるのぜ!?急がないとまたレーザーが飛んでくる!」

と魔理沙が横へ飛んでくる。

「見たところあいつは霧雨魔理沙さんのレーザー・・・マスタースパーク?を吸収して打ち返してる。それなら吸収できるより多くのレーザーで焼き尽くせばいいはず。僕が霧雨魔理沙さんの姿になったということはマスタースパークを使えるかもしれない・・・」

とまで言ったところでまたホルダーがカードを吐き出した。掴んだ数枚の黒いカードは光り、色々なカードに変わった。

「・・・これか?」

義縁はそのカードの中から一枚、バックルを回転させ、入れる。

 

SPELL RIDE!

 

「・・・」

回転。

 

恋符『マスタースパーク」!

 

「いけるのか・・・?」

「いや、いけるかいけないかじゃねぇ!やるのぜ!」

魔理沙はミニ八卦炉を両手で、義縁は片手で構える。

「いくぜ!二兎咬君!!」

「・・・あぁ。」

「「恋符『マスタースパーク』」」

二つのミニ八卦炉から閃光が走る。

「シネェェェェェェェェェ!!!」

怪物は胸の口からレーザーを出そうとするが、口からは何も出てこない。

「ナ・・・キレタ・・・!」

「「はぁぁぁぁぁ!!!」」

虹色の光線が放たれた。

化け物はそれすらも喰らおうとしたが、肉や牙が焼け、溶ける。喰らうより先に体が燃やされているのだ。それでもいくらか吸収するが、過剰なエネルギーによるものなのか身体中がブクブクと腫れ上がっていく。

「アァァァァグェェアァァァァ・・・」

そのうち内から破裂するように爆散した。その肉片さえもレーザーにより消え去った。

そしてクレーターをさらに抉った。

「やったぜ!倒した!・・・怒られるかなぁ・・・これ。」

「確実にどやされそうですけどね。それよりも・・・あの怪物は・・・知ってました?霧雨魔理沙さん?」

「いや・・・知らないのぜ。」

二人は少し黙り込んだ。

ふと義縁が魔理沙をちらりと見ると、魔理沙の顔がダブって見えた。ダブったもう一人の金髪の女性は服装も違い、白一色のドレスを着た・・・

「ん?どうしたのぜ?二兎咬君?」

気づくと幻影は消えていた。

「・・・いえ、なんでもありません。」

 

 

それを森からあの指輪をしたローブの男が見ていた。

「・・・ふむ・・・まず予定通り・・・か。」

「いいの?いきなり『飢餓』を使って?」

ピィィィィィン・・・ピィィィィィン・・・

と、後ろからコインを弾く音が近づいてきた。

露出が多い服を着た女だった。茶色の髪に赤っぽい眼。腰には刃の広いナイフとリボルバーと小さな麻の袋を縛り付けていた。手で銀色のコインを弄んでいた。

「・・・オウ。お前は暇人か?」

「うるさいわよ。ヴィザ。あまり兵力を削らないでよ。」

と、オウと呼ばれた女はキッとヴィザと呼ばれた男を睨む。

「大丈夫だ。オウ。アレはただの残滓。ただの自動人形オートマタだよ。こんな序盤で『本体』を出すようなしけたマネしない。」

「そうね・・・あんたはそんな奴だったわね。ヴィザ。それはそうとあの子はうまくやってるようね。」

「あぁ、『アレ』もうまく動いているようだ。ふくく。」

と、ヴィザは手をプラプラと振る。ローブの端から見えるその指には大きな赤黒い宝石の指輪が光る。

「・・・悪趣味ね。その指輪。」

「女の子は指輪とか好きそうだがな。」

「私アタシには合わないのよ。私にはコインの輝きの方がいい。」

と、オウはうっとりとコインを見る。

「ふん。いいさ。俺たちは『我らの主』の計画を遂行するのみだ。」

「そうね。じゃ、『我が主のために』。」

「あぁ、『我が主のために』。」

二人は森の闇に溶けるように消えた。

 

 

「はぁ・・・いきなり騒動起こすなんてね。」

義縁と魔理沙はスキマでやってきた紫に博麗神社に戻され、正座させられていた。

「仕方ないのぜ・・・私たちを襲ってくる化け物がいたのぜ・・・」

「化け物?それも気になるけど・・・そのバックル。」

と、紫は義縁の前に置かれた白い箱に目を移す。

「カードを使えば容姿・スペルカードを完全完璧に模倣する代物・・・とんでもないものよ。」

「・・・」

「まぁいいわ。それは義縁君に預けるわ。変なことに使わなければ目をつぶってあげる。」

「ありがとうございます・・・」

「怪物に関しては私の方で調べるから魔理沙ちゃんはここに案内して。お願いね♪」

と、地図を魔理沙に手渡す。

「わかったのぜ。行こう!二兎咬君!」

「あっ・・・はい。」

と二人は出て行った。

「・・・」

「何か気になることでもあるの?紫。」

と、扇子を口元に当てて考え込む紫の後ろから聞く霊夢。

「・・・義援君の力・・・あんなものじゃない気がする。もっと・・・こう・・・強力な感じの・・・」

「珍しく要領を得ないわね。」

「それに魔理沙ちゃんが言ってた怪物・・・今人間は妖怪にとっても大事なものよ。無差別に喰い散らかそうなんて奴はいないはず・・・。そんなことしたら食糧が減って無くなってしまうから。なのにその怪物は・・・。」

「容赦なく食う。・・・でもたまたまかもしれない・・・」

「しかもそいつが入ってきた形跡もない・・・『目』にも反応はなかった。」

「・・・」

「義縁君、バックル、怪物・・・何が起こってるの?」

紫の眉間に皺が寄った。

 




最近のコロナ騒動のせいで学校の春学期丸々遠隔授業になりました。戯言遣いの偽物です。ここで一つの括り?が終わりました。義縁君が何者なのか、彼らは何を企んでいるのか、考えてみるのも面白いかもしれません。バレないと思いますけど当てたらすごいです。それではこれからも『偽奏録』をよろしくお願いします。(pixivの方で初めてコメントが届いて喜んでいます。感想もあればください。)
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