そんなこんなでみんなで山を登り、妖夢が住んでいるという白玉楼についた。ちなみに妖夢はいつものことらしいので慣れた様子で階段を登り、霊夢は空を飛び、魔理沙は箒に荷物をかけて飛んだが、義縁は飛べないし、極力バックルを使わないようにしたので巨大な荷物を両手になれていない上に無限に思えるほどの階段を自分の足で登らなければならなかった。
「遅いぜ・・・」
「ぜぇ・・・貴女方は・・・飛べるし・・・はぁ・・・僕は・・・飛べない。」
「まぁそう言ってやるんじゃないよ。魔理沙。」
「そうだみょん。普通の人にはきついみょん。」
「とりあえず・・・どこに置けば?」
「あぁ、こっちだみょん。」
と、奥を示す。
すごく和風で豪華な建物が目の前にあった。とりあえずめちゃくちゃでかい。その一言に尽きる。広々とした庭まである。
「でっか・・・」
「こっちみょん!」
と、妖夢がスタスタと歩いていく。
「あらぁ、妖夢ちゃん。おかえりなさい。」
と、縁側にいた誰かが声をかけた。
ピンク色のミディアムボブの髪。水色と白のフリフリっぽい着物に色は違うが紫と同じナイトキャップのような帽子。帽子には三角の白い布がくっついていた。彼女は青いリボンがついたパンプスを履いた足をプラプラさせている。
「あ、幽々子様!ただいま戻りましたみょん!義縁さん、あの人がこの白玉楼の主、西行寺幽々子様です!」
「・・・こんにちは。西行寺幽々子さん。僕は二兎咬義縁です。」
「あら・・・貴方がね・・・紫から聞いているわぁ。」
幽々子は口元に緑の扇子を当ててクスクス笑う。
「なるほどねぇ・・・。紫が貴方を掴みきれなかったのもわかるわぁ。なんだろうねぇ。」
「どうかしました?」
「いいえ。なんでもないわぁ。」
義縁は幽々子の方が飄々として掴みきれないと思うが言わない。
「二兎咬さん!早くしてくださいみょん!」
「はぁ・・・」
「霊夢と魔理沙はもう行ってるみょん!」
「はぁい。」
と、二つの大荷物を持ち直し、えっちらおっちら運ぶ。
食料庫(?)に妖夢指導の元、中身を放り込み戻ると、霊夢と魔理沙が戦っていた。
「霊符『夢想封印』!」
「儀符『オーレリーズサン』!」
色とりどりの光弾がぶつかって光る。
「へ?へ?へ?へ?何やってんですか?あの二人・・・止めなくていいのですか?」
「いいみょん。あれは弾幕ごっこだみょん!」
「弾幕・・・?」
「妖怪がこの幻想郷を壊さないように作られたゲームのようなものみょん。私も持ってるけどスペルカードを使って妖怪や人間が戦うんだみょん。」
「へぇ・・・まぁ、僕はスペルカード?を持ってませんからね・・・」
「そうかみょん・・・あぁ!そうそう!手合わせ!」
「・・・忘れてくれたらよかったのに・・・」
と、ため息をつく。
「おーい!魔理沙ぁー!霊夢ぅー!一旦やめてみょーん!」
「ん?もう?わかったわ。」
「えー、もっとやりたかったのに〜」
と、霊夢はあっさりと、魔理沙は渋々「弾幕ごっこ」をやめた。
「さぁ刀を持ってくださいみょん!やりましょうみょん!!」
「ちょっと待って。真剣でやるんですか!?ここは木刀の方が・・・」
「いいや、真剣でやるみょん!」
と妖夢は大太刀小太刀(楼観剣と白楼剣だったか)を引き抜く。
「はいはいわかりましたよ。そのかわり、怪我しない程度でお願いしますよ。」
と、義縁はその横を通り抜け縁側に立て掛けた『戯厭』を掴む。
ゆっくり『戯厭』を引き抜く。その刃にダマスカス鋼のような紋様が浮き出てきた。
義縁は『戯厭』を右手で持ち、その鞘を左手で逆手持ちし、妖夢と対峙した。
「どっちも頑張れー!」
と、魔理沙の声が聞こえる。
「てえぁぁぁぁ!!!」
先手は妖夢が取った。楼観剣と白楼剣による連撃。それをなんとか『戯厭』で受けて防ぐ。しかしじりじりと後退させられる。
「はっや・・・」
「どうしたのかみょん!打って来なさいみょん!」
と、妖夢は一旦バックステップで距離を取り、突進する。義縁はその刀を『戯厭』で止め、妖夢の右脇腹に鞘を叩き込む。
「ぐぇっぷ。」
妖夢は奇声をあげて転がる。
「・・・」
「やるみょん。でもまだまだみょん!」
と、すぐに立ち上がり向かってくる妖夢。
「・・・」
義縁は黙ったままであった。ただ彼の瞳孔がきゅっ・・・と狭まった。鞘を捨て、『戯厭』を持った右腕を大きく引く。
「む・・・?」
その行動に怪訝な顔をした。
彼はボソリと言った。
「・・・
「・・・っ!!!」
妖夢が何かを感じたのか突撃を止め、真横に飛び、転がる。
義縁は引いた右腕を後ろから前に振り抜いた。
刀身がぐにゃんと曲がったように見えた。
そのしなりがまっすぐに戻った一瞬後、地面が裂けた。それはもうメリメリと。
「うぇえ!?」
「何!?」
「え?」
と、三人が驚く中、
「あらあらぁ、すごいわねぇ」
と、幽々子が呑気に言う。
「コォォォォ・・・」
義縁は息をゆっくり吐き、剣道で言うところの脇構えを取って妖夢の方を向く。
「ちょ・・・ちょちょちょ!わかりましたみょん!やめましょう!怖い怖い!」
妖夢はビビりたおしているが義縁はじりじりと進む。
「そこまでよ。二兎咬君。」
霊夢がいつのまにか割って入っていた。手に持ったお祓い棒の先を義縁に向ける。
「妖夢を斬り殺すなら容赦しないわ。それが二兎咬君でも魔理沙でもね。魔理沙が妖夢のようになったとしても同じよ。」
目が本気だった。冗談抜きで義縁をぶちのめす気である。
義縁はその棒の先をしばらく見つめていたかと思えば、パタリと倒れた。
「おい!二兎咬君!?」
「あら?ビビらせすぎたかしら?」
「そんなこと言ってないで運べよ!」
*
その様子を木の上からやはり見ていた人間がいた。いや、人間と言っていいのかはわからない。なぜなら全身黒い甲冑で身を包んでいたからだ。面頬の奥の目さえ見えない。その鎧は太い鎖で巻かれ、所々南京錠で留めてある。
「・・・なるほど。アレか・・・拙者から見てもいい太刀筋であるな。」
低い声の独り言が甲冑から聞こえる。
「しかし、ヴィザ殿のいうとおりまだ足りぬ。強さを得るには試練が必要であるな。」
と、鎧武者は鎖についたその和風な身なりとは合わないえらく近代的な南京錠のようなものを一つ外した。
「今回はこれでよかろう。死ぬではないぞ?」
と、鎧武者はその南京錠のようなものをその場に投げ捨てると、枝へ枝へ飛んで消えた。