「ふぅ・・・なんなんだよもう・・・」
ぶっ倒れた義縁をなんとか寝かせて一息ついた魔理沙。
「わからないみょん・・・いきなり・・・」
「確かに途中から様子がおかしくなったわね。」
「ヒートアップしちゃったかもねぇ?」
幽々子だけが呑気なことを言う。
「それにしても・・・不思議なのはこの刀もだみょん。」
と、妖夢は手に持った『戯厭』を引き抜く。白銀の綺麗な刃が現れる。
「二兎咬さんが使ってた時はなんか木目のような模様が出ていたような気がするみょん。それに・・・」
と、『戯厭』を隈なく見る。
「あれだけ刀の連撃を受けて、さらにあんなに乱暴に地面に叩きつけてもヒビ、欠けすらないみょん。いくら刃に使われてる鋼が硬いと言ってもあんな使い方したら欠けくらいつくみょん。」
と、訝しげに言う妖夢。
「まぁいいんじゃない?二兎咬君についてはほとんどわかってないし。」
「まぁそうだな。まだ数日しか経ってないしな。」
と、笑う霊夢と魔理沙。
「そんな問題ですかぁ!?」
と、少し呆れた妖夢。
「ぐ・・・ぐぇ?」
義縁が目を覚ました。
「おーい。大丈夫か?」
「大丈夫ですから僕の頭の上に顔を出さないでください。危ないですよ。後髪の毛がくすぐったいです。」
「あぁごめんごめん。」
と、魔理沙が引いたのを見てから義縁は立ち上がった。そして妖夢の前まで進み、膝を折り手を地面に付け、頭を地面にこすりつけた。いわゆるジャパニーズ土下座だ。
「すみません。魂魄妖夢さんをあわや斬り殺してしまうところでした・・・」
「い・・・いやいや!私も無理言ってすみませんみょん・・・。だから土下座までしなくていいみょん!」
「いえいえ・・・」
と、謝り続ける義縁。
「それはそうと二兎咬君。あの技はどうやって出したの?」
霊夢の問いに対して義縁ふるふると首を振る。
「やっぱりね。多分二兎咬君が記憶を失う前に覚え込んで体に染み付いた技なのでしょうね。記憶を失った後も歩けるなと同じね。」
「・・・」
「まぁ、人を斬らなければ大丈夫じゃないか?」
「そうね。どうしようもないからね・・・」
と、議論していると
ガゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ゥ゙ン゙!
と、轟音が響く。
「何事!?」
「外だみょん!」
「行くよ!」
と、三人は飛び出して行く。義縁は少し呆気にとられたが、すぐに我に返り、三人を追いかけた。
とはいえそれほど走ることもなかった。みんな庭に出てすぐのところで立ち止まり上を見上げていた。
「みなさん・・・どうしました?」
「上。見てみろよ・・・」
「上?」
義縁が上を見上げると巨大な白い棒のようなものがあった。それが太い芯のような棒にくっつくように12対。さらに上の方で分岐しぶら下がっている。芯の一番下の先は森の奥で見えない。一番上の先は尻切れトンボのように途切れていた。
「これって・・・」
「・・・人骨だみょん・・・」
「いや、デカすぎないか?」
「それに怨念が強いみょん・・・」
そんなことを言っているうちに巨大な人骨の腕に当たる所が動いた。その骨の指でつかんだのは白く大きい玉。骨自身の頭蓋骨だろう。それを芯・・・いや背骨の先に乗せ、ちょうどいい位置を探るように頭蓋骨を調整する。さらに全体の調子を確かめるようにカラカラと音を立てながら体を動かし、最後に
[ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!]
と、悲鳴のような叫び声を上げた。
「うるさ!」
「うぅ・・・」
「・・・なんなのぜ?あれ?」
「・・・ガシャドクロ・・・?」
「へ?」
「僕の家が元々八雲紫さんが倉庫にしていたからかなんかの本がたくさんあって、それを暇つぶしに読んでたんだ。その中に出てきたやつと似てる・・・」
「まぁガシャドクロでもなんでもいいわ。ここが危ない。迎撃するわよ!」
「・・・わかったのぜ。」
「わかったみょん!」
「・・・」
*
ガシャドクロ。
昭和中期に創作された、埋葬されなかった死者達の骸骨や怨念が集まって生まれる、巨大な骸骨の姿をした日本の妖怪。
歌川広重の浮世絵『相馬の古内裏』に描かれた巨大な骸骨をモデルにしていると言われる。夜間にガチガチという音をさせながら彷徨い歩き、生きている人を見つけると襲いかかり、握り潰したり、食い殺すなどと言われている。
*
ガシャドクロは右腕を振りかぶると、ただ単純に振り下ろす。しかし巨大が故の威力がある。
「下がって!多分あれは怨念の塊、なら!」
と、迫り来る隕石にも似た拳に札をいくらか投げつける。紙でできたその札は矢のように飛び、拳に当たってスパークを放つ。ガシャドクロの拳は弾かれたが、大してダメージが入った様子もない。
「・・・チッ!中身の怨念の量が多すぎる!これじゃジリ貧よ!」
「どちらにしろここじゃ白玉楼が壊されるみょん!!どうするみょん!」
「壊される前に叩く!」
「言うと思ったぜ!二兎咬君は下がって!私たちがやる!」
「いいや、僕も行くよ。やれることだってあるさ。バックルもある。」
「・・・わかったわ。やるわよ!」
「おう!」
「みょん!」
「・・・!」
4人は巨大骸骨の討伐に乗り出した。