時は同じく、武は家を出て下の階の喫茶店「風街月」に入る。喫茶店の中は、セピア色の床に壁に、木製の家具で統一され、レトロな雰囲気を醸し出している。厨房には、武とジンの母親、叢雲=凪がコーヒーを飲んでいた。
「洗い物と洗濯、してくれた?」
「ああ、コーヒーメーカーはまだ動く?」
「そうね、まだ大丈夫」
「いい加減買い替えたら?もう寿命だろ」
店で使っているコーヒーメーカーは使い始めてから8年は働いてもらっている。因みにコーヒーメーカーの寿命の平均は約5年と言われている。
「そんなお金ないわよ、ただでさえ最近お客さん少なくなってきちゃってるんだから」
最近、駅前に有名なカフェチェーン店が開いて、今まで来ていたお客さんがそっちに流れてしまったのだ。これによって、収益が右肩下がりになっている状態だ。
「まぁ、どうにかしないとお店続けられないから何か案考えとかないと」
「そうだな……店は続けたいしな」
武はそう呟きながら厨房から出て、店内の照明を付け、開店準備に取り掛かった。
「あ、そういえばジンの奴、弁当忘れていったんだけど、連絡した方がいいか?」
「確かあの子始業式でしょ?午前中で終わるでしょうから大丈夫でしょ」
「ああ、それもそっか。なら、心配要らないな」
◇◇◇◇
友達が一人新しく出来たところで自分の席に戻ると、スーツ姿で金髪の男性がやってきた。すらっとしていて、爽やかな顔つきだ。始業式中眠ってて分からないけど、多分このクラスの担任なんだろう。
「今日から2年の英語と、君達2組の担任をやらせてもらうことにしました、東レオと言います。2年生の担任を持つのは初めてですが、皆と仲良くしていきたいと思います。これから1年間、よろしくお願いします」
「ねぇねぇ、あの先生かっこよくない?」
「金髪だし、ハーフなのかな?爽やか系でいいね」
「あの先生知ってる、去年武先輩のクラスの担任してたよ」
自己紹介が終わると、女子生徒達を中心に、先生を見ながらひそひそ話をしていた。
なんか見たことあるなと思ったら、兄さんが高校3年の時の担任だった。
「英語の先生だったんだ。担任だったらわかんない事とかあったら聞きやす……マシロ君!?」
隣の席だったマシロ君に話しかけようとして振り向いたら、マシロ君が両肘を立てて口元に手を持ってきて、険しい顔になりながらなにか呟いていた。今なにか気に触るような発言あったかな?
「な、なんで怒ってるの…?」
「なんで……なんで僕はグレイちゃんの隣じゃない」
予想と全く違う返答が出てきて、ずっこけそうになった。一先ず、顔が良くて嫉妬してるみたいな感じじゃなくて良かった。だけど、新しく友達はできたらいいけど、ここまで愛が深い人と合うのは初めてで、これからの学校生活どうなるんだろうと、ちょっと不安になった。