栞の花の名は   作:天武@テム

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喫茶「風街月」、ジンの母親叢雲・凪が経営している喫茶店
ジンは週に3日放課後は母の喫茶店の手伝いを良くしている。
客層は若い女性が多く、今日も武目的で来客する人も沢山……


3限目 「バイト」

 

 

先生の話が終わり、ホームルームが終わりの合図のチャイムが鳴り響くと、生徒達は立ち上がり帰り始めた。僕は、貰ったプリントや教科書を詰め込むんで帰りの準備をしていたら、うちのクラスの女子達に囲まれた。

 

「ねぇねぇ、武先輩って今日シフト?」

 

「え…ああ、うん。多分今いるんじゃないかな…?」

 

「ありがと!じゃあまたジン君明日ねー!!」

 

兄さんがいるって事を聞くと、喜んで帰っていった。まるで嵐のようだったけど、高校に入ってから良くあることだったから、気にしないことにした。鞄に全部詰め込むと、カイ君の元へ向かった。カイ君とは帰り道が途中まで一緒で、2年の頃からずっと一緒に帰っている。

 

「カイ君ー!一緒に帰ろ!」

 

「ああ、帰りにゲーセン寄るのか?」

 

「ううん、今日は手伝いがあるから寄り道しないよ」

 

「大変だな、家が自営業っていうのは」

 

「いつもの事だしもう慣れたよ。カイ君も大変なんじゃない?妹と二人暮しで、バイトしてるんでしょ?」

 

本人曰く、カイ君の所は両親が離婚して、一人暮らしをしていた所に、家出した妹ちゃんがやってきて一緒に住むことになった過去があって、バイトをしている。

帰り支度を終え、教室を出ようもすると、ドアを前で何かを囲うように生徒達が道を塞いでいた。

 

「シャーリーさん、私達カラオケに行くんですけど、一緒に行きませんか?」

 

「いいですね、私も行きたいのですが、習い事があるので……。誘ってくれたのに申し訳ありません」

 

「いえいえ!こっちこそごめんなさい!」

「ほら言っただろ、無理だって」

 

「でも、誘わないとわかんないじゃん!」

 

囲まれていたのは、シャーリーさんだった。シャーリーさんを取り巻く生徒達が言い争いをしてる最中に、シャーリーさんは困った顔をしながら教室を出ていった。残った人は残念そうな顔をしていたり、仕方ないと言わんばかりの顔をしたりしていた。

 

「……やっぱり人気者だね、シャーリーさん」

 

「だなぁ……あんだけ人気者だと、毎日大変だな」

 

そんな事を言いながら教室を出て、家に帰って行った。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「じゃあ、またねカイ君」

 

「ああ、明日は遅刻すんなよ」

 

家の前でカイ君と別れると、そのまま着替えずに店に入った。

店は平日の昼間なだけあって、客も少なくて、お母さんがカウンターの席に座ってる常連の西野婆ちゃんと喋っていた。

 

 

 

「おかえりジンちゃん、2年生になったんでしょ?友達は出来た?」

 

「ただいま西野婆ちゃん。友達と一緒だし、新しい友達も出来たよ」

 

「ほんと?よかったわねぇ」

 

西野婆ちゃんは僕に気づくと、朗らかに笑って話しかけてくれた。西野婆ちゃんは僕が小さい頃から店に通い続けていてる常連さんだ。いつもお昼頃にやって来てお母さんとよくお話してる。

「お弁当作ってあるから休憩室で食べておいで」

 

「はーい」

 

カバンを置きにそのまま休憩室へ向かうと、兄さんが机に突っ伏して仮眠を取っていた。起こさないようにそっと、荷物をロッカーに置き、作り置きしてあった弁当を冷蔵庫から取り出して、食べ始めた。

弁当を食べていると、店のドアが鳴り、女子達の喋り声が聞こえた。帰る前に兄さんのことを聞いてきた人達かな?と考えながらたべ続けていると、突然兄さんの携帯のアラームが鳴り響いて驚いた。

兄さんは唸り声を上げながら、ゆっくり起き上がった。

 

「おはよう兄さん」

 

「ああ…帰ってきたのか」

 

「ちょうどさっきね。昨日もバーに行ってたんでしょ?」

 

「ああ……欲しいもんがあるしな」

 

気だるそうに欠伸混じりで答えると、そのまま休憩室を出ていった。それと同時に、店から黄色い声が聞こえた。

兄さんは週に2、3回、友達の親が営んでいるバーでバーテンダーとして働いている。

その日は夜遅くに帰ってくるから、いつも休憩室で眠っている。

 

「あ、ジン!丁度良かった、赤居君の席に料理持って行って!」

 

弁当を完食して、ロッカーに入れてあるエプロンを着て休憩室を出ると、お母さんに料理を持っていくように言われた。店内は帰ってきた時と比べると、客が明らかに増えていた。

 

「お待たせしました、カレーライスです」

 

「お、待ってました〜」

 

窓際の席で、煙草と見せかけたココアシガレットを咥えた白髪に赤い目をした男性が、こちらに気づいて笑みを浮かべた。この人が赤居さん。いつも来る常連さんの1人。

 

「ん?プリンないじゃん、どうしてくれるのよ」

 

「赤居さん、食後でいいって言いましたよね?」

 

「あれ?そうだっけ?」

 

「そうですよ……自分で言ったこと忘れないでくださいよ」

 

「あははっ、ごめんごめん。それにしても、今日は女の子がいつにも増して多いね?」

 

「今日、始業式だったんで、午前中で学校終わったんです」

 

「それでか、モテる男は大変だねぇ」

 

「僕じゃなくて、みんな兄さん目的なんですから……」

 

大抵の女性のお客さんは兄さん目的で来ることが多い。自分としては複雑な気持ちになるけど、お客さんが多く来てくれるのは嬉しい事だ。

 

「すみませーん!注文お願いします」

 

「ほら、お客さんが呼んでるよ〜」

 

赤居さんは頑張れ〜とヘラヘラ笑いながらココアシガレットを差し出して来た。

 

「頑張って♪」

 

「要らないです」

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