そんなわけで食材を没☆収されたオレはがっくりと肩を落としながら授業へと向かった。一応断っておくがアレはちょろまかした物では無い。食戟で巻き上げた金で購入した物だ。
授業は特筆すべき事など無く終わった。無論最高の出来で提出したとも。
オレは今日教わった料理の中に使えそうな技法がないか、応用が利かないかどうか一人で考えながら寮へと帰還した。
部屋へと一直線に向かい、横たわって思索の続きを行う。吸収した物はちゃんと手帳に書き込んでいる。メモし終わると天井の染みを数え始めた。天井の染みを数えていると不意に実家の事を思い出した。
妹は上手くやっているだろうか。友達は出来ただろうか?いずれ友達と二人合わせて旨い飯を食わせてやりたい。これぞ親子丼ならぬ
うん、語呂が悪い。というかそれではオレが妹たちを食すことになってしまうではないか。据え膳喰わぬはなんとやらと言ったけど、流石に妹の世界を壊すことはしたくない。
まずい、最近【自家発電】していないせいで思考が変な方に走りがちだ。
というよりなんなんだこの寮は。壁が薄くてロクに【自家発電】もできやしない。
それに寮生の榊涼子。けしからん、あのおっぱい。
なんてことを考えていると突然天井がずれ、中から褌一丁の青年が姿を現した。
「やあ、日野君。始業式はどうしたのかな?いつまで待っても写真が撮れず困ってたんだよ?」
「いや始業式なんて面倒くさいじゃん?」
「建前はわかった、本音は?」
「寝過ごしてました」
「そんなところだろうと思ったよ」
「すみませんねぇ問題児で」
そう言って一色先輩は天井裏からぬるりと降りてきた。真っ昼間から裸になって、榊、田所の裸なら大歓迎だというのに。吉野?フッ、すまんが貧乳は問題外だ。
と思っていると一色先輩は持ってきた着替えをオレの前で着始めた。じゃあ最初っから裸になるなっつーの。
「そう言えば編入生のこと、聞いているかい?」
「始業式出なかったオレへの当てつけですか、ソレ」
「ふふ、まさか。かわいい後輩をいじめるわけないじゃない」
この人が虐めるって言うとどこからかガチホモが沸いてきそうで怖いんだよなぁ・・・虐められるなら高飛車チョロインお嬢様・・・あの理事長の娘とかどうだろう。パツキン巨乳でチョロそうなんだよなぁ・・・・・・そうだ、総帥のことを思い出したら腹立ってきた。オレのコロッケを勝手に食べやがって。
機会があったら(んなもんねぇよ)あの娘に旨い物食わせてあひんあひん言わせてみようか。
「で、その編入生がどうしたんですか?」
「それがね、その編入生『てっぺん以外興味ない』って言い放ったようだよ」
「ほーん」
「あれ、興味なさげだけど」
「え、興味持つと思ってたんですか?」
「そう言えばそうだったね。『金持ち一人に料理作るより、普通の人10人に飯作る方が10倍マシだろ常考』だろ?」
よくわかっていらっしゃる。まあそんなこんなで駄弁り、風呂に入って汗を流すと窓の外は大分暗くなっていた。
「おっと、そろそろ丸井君の部屋に行っててくれ。入寮生の歓迎会だよ」
「入寮生?」
「そ、さっき話した編入生」
「!?」
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!『先輩はオレと一緒にずっと喋っていると思ったらいつのまにか入寮生の情報を掴んでいた』な・・・何を言っているのかわからねーと思うが、おれも何をされたのかわからなかった・・・。頭がどうにかなりそうだった・・・。催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・。
「ん、どうしたのかな?」
「いや、何でもないです」
「そうかい?なら部屋に向かっててくれ。僕は入寮生を迎えに行くから」
丸井の部屋には既に殆どが揃っていた。伊武崎、佐藤、青木、丸井。4人は丸井の部屋に散らばった本を整理している最中だった。オレも近くの本を拾って、ラベル順に本棚に突っ込んでいく。すると青木が話しかけてきた。
「おう日野。始業式すっぽかすなんて相変わらずだな」
「別に良いだろ?見所なんて首席殿のおっぱいぐらいだろ」
顔を見合わせてゲラゲラと笑う。たぶん外から見たら悪魔の顔をしてるんだろう。伊武崎がどん引きしている。
「んで、今日出すメニューは考えているのか?」
「お、偵察か?」
「おう、メニューが被らないようにな・・・被ったらお前のは見向きもされなくなるだろうし」
「あ!?」
「お!?事実を言って何が悪い?」
「あん?事実と空想を取り違えてるのか?」
オレと青木がにらみ合いに突入する。すると後頭部に衝撃が走った。
「こら、また通行人さらって食戟する気?ふみ緒さんに怒られたの忘れたの?」
「「げぇ、吉野!」」
「何が『げぇ』よ。迷惑被るのあたし達なんだからさ、もっと自重してよ」
「「チッ、うっせーなー・・・反省してまーす」」
「あんたら・・・・・・」
こめかみをぴくぴくさせる吉野。そんなに怒ってばっかだと皺が増えるぞ。
吉野は疲れたようにベッドに座る。榊は既にコップにジュースを注いでいた。
ドアがノックされ、開く。一色先輩に連れられて赤髪の少年、田所が入ってきた。
「さて、幸平君。極星寮へようこそ」