eye   作:kue


オリジナル現代/ミステリー
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―――――――五十年前の記録より抜粋―――――
2012年も残すところわずか数か月となったある日のある病院で一人の少女が生まれた。
その少女は何も変わったところなどなかった……彼女が見える景色以外は。
数年後、少女はこう呼ばれることとなる。
―――――――――アイ

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eye

「ねえねえ、聞いてよ。今日、男子が“eye”でバトってたんだけどさ~。

メチャクチャカッコ良かったんだよ~」

「あ、分かるぅぅ~」

クラスの女子生徒達の気色の悪い声が俺――――神谷信二の耳をつんざく。

音楽プレーヤーの音量を上げようとするが周りの生徒達にも迷惑かと思い、

俺は泣く泣く、その気持ちの悪い声を聞き続けなければならなかった。

eye……それは今を生きる98パーセントの人類に備わった不思議な力のことだった。

それを備えた者は普段から見ている景色が全く違うという。

ある者は今日の運勢がわかり、またある者は今日に起きることが、

そしてある者は炎を手にともすことすらできるという。

それは未だに現代の最先端の科学を持ってしても全く解明することのできない事象であり、

そして常識となった力だった。

残りの2パーセントの人類にはその力が備わっていない……そのうちの一人が俺……らしいが、

本当に俺以外の奴がいるのか聊か怪しい。

――――――――何故ならば

「っ!」

机に突っ伏して寝ていた俺だったが突然、右側面から凄い衝撃を受け、

そのままコンクリートの壁に叩きつけられた。

「nye(ナイ)は学校くんじゃねえよ」

痛む右腕を抑えながらも顔を上げてみるとそこには、

右目が青色の二人の男子生徒と女子生徒が仁王立ちの状態で、倒れている俺を見下していた。

力を持たないもの――――――nyeは異端者として物心ついた瞬間から、

このように壮絶ないじめを受ける。

これにより、自殺をしたものや殺されたものがいるからだ。

……こいつのeyeは相手を吹き飛ばすものか……。

「ほら!」

「つっ!」

女子の目が赤色になると俺の制服に一斉に炎が点火された。

俺は慌てて上に来ていた学ランを脱ぎ捨てるとあっという間に学ランに炎が回り、

数秒後には完全に灰と化してしまった。

だが、あいつらが悠々と力を目の前で使ってくれたおかげで対策は分かった。

俺は目の前にいる連中の目が変色しているのを確認すると近くにあった本棚から、

三冊の本を手に握ると一気にそいつらの視界に入るように投げた。

すると本は燃えたり、どこかへと飛んでいったりしたが俺はその隙に近くの男子に近づき、

鳩尾を殴ってそいつをひるませるとそいつの首根っこを掴んで、

残っているメンバー達の視界に入るように持ってくると俺の前方にいる奴に火がついた。

その直後、何かに強く押されたように俺が持っていた奴が、

窓を突き破ってそのまま下へと落ちていった。

残っている一人の女子の首筋に常備しているカッターナイフをギリギリのところで突き立てた。

女子は目に恐怖の色を灯し、体をカタカタ震わしながら俺を見ている。

「eyeに頼るばかりにこうなる。二度と俺に手を出そうとするなよ。

その時は本当に突き刺すぞ」

女子生徒は震えながらも首を二回ほど縦に振り、

一緒に来た男子生徒を置き去りにして教室から出ていった。

俺は絶対に死ぬ気はない。だから俺が力を持っていないと分かったあの日から、

俺はあらゆる能力を研究し、弱点などはすべて頭の中に叩きこんである。

「絶対に生き残って証明してやる。何もない奴を舐めると痛い目に会うということをな」

「ね、ねえあれって」

「そ、そうだよね」

授業の準備をしている最中にクラスの連中が次々と驚きの言葉を吐いていくのが耳に入り、

俺も最初はスルーしていたが流石に気になってきたので顔を右に向けると、

そこには茶色に染髪したのか綺麗に茶色に染まった髪の毛を腰の辺りにまで伸ばし、

うちの高校の制服をきちんと着こなした女子生徒が立っていた。

その後ろには護衛人なのかスーツにサングラスと、

この場には似合わない格好をした男女数人が立っている。

「貴方が神谷信二君ですか?」

その声を聞いた女子連中は小さく叫びながらはしゃぎだし、

男子もテンションが上がっているようだった。

俺の目の前にいる女子の名は矢崎薫。生まれも両親もごく普通だがその頭脳と美貌、

そしてeyeの能力だけは異常な存在。

この学校の生徒会長選に史上はじめて支持率100パーセント、

なおかつ一年生で会長となったまさしく生ける伝説。

しかし誰もその能力の全貌は知らない……俺でも。

「まあ、そうですが」

「少しお話があるのですが……ここではなんなので生徒会室に来ませんか?」

「来ることは確定か」

彼女は俺の言葉を聞くや否や一つ、

小さなため息をつくとなんのモーションもなしに俺に突っ込んできた!

俺は慌てて向かってくる拳を腕で防ぐと彼女は小さく微笑んだ。

「確定よ」

「…………わかりました」

周りの視線もあり、俺は渋々生徒会長の言うことをそのまま聞いて、

周りを護衛の奴らに囲まれながら生徒会室へと向かった。

その道中、周りから奇妙な視線をぶつけられ続けた。

まあ、そりゃ学校でも孤立している俺が超有名な会長と一緒に歩いていたらそりゃ、

奇妙な視線をぶつけられるわな。

そんな視線をぶつけられながらも五分ほど会長についていくと、

生徒会室と書かれたプレートを真ん中につけたドアの前で立ち止まった。

すると周りを囲んでいた奴らが足早にこの場から立ち去り、それを確認した会長が、

扉を開けて中に入ったので、俺も会長室へと入った。

「どう? この部屋に入るのは初めてでしょ?」

それはそうだ。なんせこの生徒会室に入ることが許されているのは生徒会長のみ。

しかも今の生徒会長……つまり、今目の前にいるやつはほかの役員はいらないと、

全員をクビにしてしまったので実質入れるのはこいつのみ。

「まあ、座って。貴方コーヒー何派? 砂糖? ブラック?」

「……砂糖で」

「ふふ。おこちゃまね」

会長は小さく笑みを浮かべながらもカップを二つ、水屋から取り出して粉末を入れて、

そこへお湯を注ぎこんで砂糖が入ったボックスとカップ二つを近くのテーブルに置いた。

座れと言われたような気がして、俺はテーブルを挟み込むようにして置かれているソファに座り、

カップを受け取り、砂糖を入れてずずっと一口飲んだ。

ふと、顔を上げると会長も砂糖を思いっきり入れていた。

「あんたも入れてるじゃねえか」

「私は良いの。女の子は甘党で通じるから」

いや、甘党にしても砂糖を入れ過ぎだ。ボックスの砂糖が半分無くなったぞ。

「で、用件は何ですか? 用件もなしに俺をここに呼ばないでしょ」

「まあね……貴方、私のブレインにならない?」

…………マジで帰りたくなってきた。

「実は私ね、この事件を解決しようと思ってるのよ」

そう言うと会長はテーブルの上に置いてあったファイルから、

一枚の新聞の切り取りを取り出し、俺に差し出した。

そこに書かれているのは最近、ニュースでも話題となっているeyeの力を、

悪用した強盗に関してのことだった。最初はひったくりから始まったこの事件。

しかし、警察に捕まらないことで調子に乗った犯人の行動はエスカーレとしていき、

ついには銀行強盗まで発展した。

「こんなのは俺たち学生が首を突っ込むことじゃないですよ」

「警察も手をこまねいてるみたいだし報奨金だって出てるのよ」

……明らかに報奨金目当てだろ。

確かにこの報奨金は学生の俺たちからすればかなり魅力的な金額だが……。

「大丈夫よ。凶悪な人物でも私がぶっ倒してあげるわ」

つまり、俺が犯人を追いつめてそれを捕まえるのは会長だと……。

「報奨金は半分あげるから」

いや、分け前の分配の比率の問題でもないんだよ。

でも、確かにnyeの俺がその犯人を捕まえることができれば世間を驚かすことはできるが、

それで報道されて、俺の情報が世の中に出回るということも……考えすぎか。

「良いですよ」

「んじゃ、早速行きましょう」

そう言われ、俺が立ち上がろうとしたときに突然、会長に腕を掴まれたかと思えば一瞬、

視界がぶれ、あまりのブレ度に目を瞑った。

「もう良いわよ」

そう言われ、目を開けてみると生徒会室から外へと場所が変わっていた。

……座標転移? いや、でも転移系統の力を扱う存在が確認されているのは世界で、

僅かに二人だけのはずだ。

その二人の名前に会長の名前はなかったはず……何故、この人が扱えるんだ。

「んじゃ、早速探すわよ!」

「……この状態でどうやって探すんですか」

「え? パパッと」

「それは貴方の領分でしょ」

ともかく……情報を集めないと何も始まらないな……。

そんなことを思っていると会長は手のひらを俺の前に突き出すと突然、

なにもなかったそこに一冊のファイルが姿を現した。

「座標転移の次は物体転移ですか」

「まあね。はい、捜査資料。私個人のだけど」

……なんでこの人が二つを扱えるのかは置いておくとするか。

俺は会長からファイルを受け取り、パラパラと中身を見ていくと数人の男性の顔写真と、

それぞれの最終学歴や現在の状況などがこと細かく書かれていた。

これまた細かくeyeの力を使って調べたもんだな。

まあ、正直プライバシー侵害にもあたりそうなんだが……まあ、ここは必要悪という訳か。

「事件のあらましは今から一週間前。覆面の男がコンビニに強盗に押し入った。

その時は犯人は力を監視カメラの破壊にしか使わなかったんだけど、

次のコンビニでの強盗で味をしめたのか店員の腕に火傷を負わせた。

そして、銀行強盗……といっても小さな支店を襲っただけなんだけどね」

「被害は?」

「銀行員一名が腕に軽いやけどを負ったわ。警察は被害者のけがの状況を見て、

犯人は炎を扱うと決めてeyeバンクに問い合わせて、

捜査しているけど残念ながら犯人検挙ならず」

どの国にもeyeの能力の全てを保管、記録している機関が存在する。

名目上は各国との連携により、eyeの能力研究に役立てるとか言っているけど、

それは名目なだけで実際は相手の国のけん制に使われている。

俺の国にはこんな強い奴がいるんだぞってな。それに偽装されているっていう噂もある。

「本当に炎なんですかね」

「どういう意味?」

「コンビニで監視カメラを壊すのに炎を使えば火災報知機が鳴るはず。

でも、鳴ってないんでしょ? その時点でおかしいし、

別に火傷を起こすのに絶対に火が必要ってわけじゃないですしね」

俺の話を聞いている会長は『は? 何言ってんの?』と言いたげそうな顔をしている。

会長はどこか抜けているっていう風には聞いていたが……まさか、ここまでとはな。

「低温火傷だってあるでしょ」

「あ、なるほど!」

本当に気付かなかったのか……ま、良い。

俺は腕にやけどを負ったという銀行員の書類を見ていると、

けがの状態を写した大きめの写真が載せられているページについた。

「腕に火傷……なるほど」

俺はその写真に写っている被害者のけがの状態を見た瞬間、分かった。

「会長」

「何?」

「この学校に体温変化のEYE能力の奴はいますか」

体温変化―――――EYE能力のほとんどが視界に入っている者に対して、

能力の影響を与えるに対して、体温変化はEYE能力の中では非常に珍しい、

自らに能力の影響を与える希少な能力として有名だ。

この日本という国で確認されている体温変化の能力の持ち主は全国に五人、

さらにこの県では一人し確認されていない

EYE能力の情報を収集している俺でも流石に学校の全生徒の能力を把握しているわけじゃない。

「ええ、いるわよ。でも、それがどうしたの?」

「そいつの家に案内してください」

会長は戸惑いながらもEYE能力を使って、その生徒の家の前に転移した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~い」

インターホンを押すと扉が開かれ、お目当ての人物の母親と主わしき女性が俺達を出迎え、

家の中へと入れてくれ、その人物の部屋へと案内してくれた。

案内された部屋の扉には鍵がかかっていたが少々、無理やりだがかぎをこじ開けて、

中へ入ると驚いた様子のお目当ての人物がいた。

「な、なんだよお前ら!」

「先日、学校の倉庫が火事になったことは知ってるな」

「し、知ってるけどそれが何なんだよ!」

「その犯人はお前だ。家城明」

その一言に俺を除く、この部屋にいる全ての人物が驚いた。

「は、はぁ!?」

「銀行強盗の犯人でもあるお前は俺達がその事件について動いていることを、

誰かから聞いたのかいずれ自分にたどり着くことを恐れた。だから、

学校の倉庫を燃やすことでそっちへと興味を引き寄せようとした。違うか?」

「意味がわかんねえ! 第一、俺がやったっていう証拠でもあんのかよ」

「ある。最初は俺も冷気を操る奴が犯人だと思っていた。主な能力はその視界に入った物体を、

徐々に凍りつかせていくもの……だがな。低温火傷を負った銀行員の腕には、

クッキリと他人の手の跡がついていた。そんなことは冷気を操作する奴には不可能。

視界に入った物を凍らせるだけだからな。出来るのは体温変化というEYE能力を持つ者だけ。

この日本という国で確認されている体温変化の能力の持ち主は全国に五人、

さらにこの県では一人しか確認されていない。つまり犯人はお前なんだよ。家城明」

「…………」

家城は何も言わず、ただただ俯いたまま何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、自分がやったことをすべて認めてあいつは母親に連れられて警察へと自首した。

そして犯人を捕まえたことから警察から俺と会長に報奨金が送られ、分け前を半分にした。

「いや~流石ね」

「会長がいなければ解決しませんでしたよ」

「ていうことでこれからいろいろと解決していくわよ!」

そう言いながら会長は自分のカバンから何やら張り紙のようなものを取り出すと、

一枚俺に差し出してもう一枚を生徒会室の扉に張った。

その紙には『何か困った時には是非、来てください。何でも解決します』と、

太くマジックペンで書かれ、その周りはカラフルな色で綺麗に彩られていた。

「…………ウソだろ」

「嘘じゃないわよ」

すぐ隣りから声が聞こえ、そのほうを向くと満面の笑みを浮かべた会長がしゃがんでいた。




なろうで掲載されている一次創作の次に連載にしようとしている作品候補の一つです。

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