北へ……   作:藍沢 七星

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一日目

「どうしてこんな事に……」

 

 目隠しだろう。真っ暗闇の中、自分が直立していること以外、全くわからない。

 不安を取りの除くように声を出す。だが、誰も反応しない。そもそも、誰もいないのだろうか。

 

「どこで間違えたっていうんだよ……」

 

 消えそうな声は、壁に響いて

 

 消えた。

 

 

 

 バイト帰り、23時ごろだったか。俺はいつものように誰もいない道を、一人寂しく歩いていく。手には売れ残りの弁当を下げて。

 高校を卒業して、一度は正社員として働いた。が、数ヶ月で退職。その後は職を転々としていた。

 今のコンビニは割と長い方だ。と言っても、一年も働いてはいない。

 

「このままでいいのか。俺……」

 

 満月のような月を見上げながら、自問自答を繰り返す。

 このまま帰って、寝て、飯食って、仕事をする。

 23歳になったというのに、なにもないままの人生でいいのだろうか。

 

 いいわけないよな。そうだよな。

 って言ったところで、それを実行しないのが俺である。

 

「とりあえず、今日は帰って寝よ」

 

 この言葉が、俺にとっての惰性である。

 決意は金属だ。すぐ冷めて、てこでも動かなくなる。

 それが決意だし。どうしようもなく弱いオレの心だ。

 

「明日は残業したくないなぁ」

 

 それが、今の俺の願い事だった。

 

 

 

 そして、目が覚めた時は真っ暗闇の世界だった。

 何かに吊るされている感覚。座りたくても座れなくて、でも、立ってるというよりはぶら下がってる感じだ。

 

 脳裏に浮かんだものは単純で、なに、なぜ、どうして。ばかりだ。

 そんなもの、答えを知っているものがいない限り、永遠と知ることがないもののくせに……

 

 時間だけが経過する。無駄な時間だ。だが、その時間が増せば増すほどに、急ぐように答えを求めていく心境。

 誰もいない場所だと知っていながらも、ただただコンマ以下の希望を胸に叫び続けた。

 

「誰か。誰でもいい。助けてくれ……」

 

 恐怖と疲労で掠れた声、そして、当然のように返ってこない返事。

 絶望感。というより、無力感。

 最初の頃にあった「なぜ俺が」なんて感情はどこにもなかった。

 

「誰でもいいから……」

 

 悲壮感の詰まった言葉を吐き出した時

 

「誰でもいいんだ。ふーん」

 

 という声が背中から聞こえた。

 

「誰かいるのか?」

「うん。割と最初っから」

「え、なんで……」

 

 言葉が止まった。

 なんで答えてくれなかったのか。

 言う前に気付いたことがあるからだ。

 

 俺が何かを口走り、それを聞くためにいたんじゃないのだろうか。

 そして、その人間が声をかけてきた。ということは、俺は情報を知らない。ということが分かった。そして、このまま日本海にドラム缶と一緒に沈められるのだ。

 

「さて、それじゃあちょっと聞いてもいい?」

「は、はい」

 

 声の感じは女性。それも若い感じ。だが、まだ誰かいるかも知れない。

 ここは慎重に、相手の感情を逆なでしないようにかなさなければ……

 

「私の願いを聞いてくれるかしら?」

「どんな内容ですか……」

「答えてくれたら教えてあげる。さぁ、どうするの?」

 

 彼女の言葉に戸惑う。

 答えのない答え。もしかして、とんでもないことなんじゃないのだろうか?

 

 沈黙

 どれだけの時間が経ったのだろうか。

 何を言えばいいのかわからないでいる。どれが答えなのだろうか。

 

「……」

「どうしたの?」

「いや、その……」

「……あーもう!!はっきりしてよ。時間がないんだからさ」

 

 彼女は言った。時間がない。と……

 それはつまり、選択を急がなければならない。……いやいや、そうじゃなくてだな。そうじゃなくてだな!!

 単刀直入に、かつ明確に正解を言わなければならない。

 

「わかった。言うことを聞く。だから、命だけは――」

「そう、なら話が早いわ。早くここから出ましょう」

 

 目隠しを取ると、小さな光が入ってきた。

 霞む世界、揺れる世界。

 

「目が……いてぇ……――おわ!!」

 

 唐突に腕の拘束が外され、脱力した体は受け身を取ることなく思い切り倒れた。

 

「あ……ごめん」

「外すんだったら先に言えよ!!」

「悪かったわね。ほら急いで出るよ」

 

 彼女の手に引かれ、訳がわからないまま廊下を走ることになった。

 目の前を走る女の子は、サイドテールで茶髪の……

 

 いわゆるギャルだった。

 

 

 

 

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