花のように可憐で…   作:Black History

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・・とっても期間が空きましたね…前投稿から何日経ったのでしょうか。

もし楽しみにしてくださっている方がございましたら申し訳ないです、、お詫びといってはなんですが、今回の文字数はいつもよりマシマシになっています。

感想等も見れていなかったので、空き時間ができ次第、じっくりと読ませていただこうかなと思います。


前書きで色々語っても仕方ないので、本文に入ります。どうぞ…




今と昔

―キーンコーンカーンコーン―

 

 

「よっしゃ!今日は部活も休みだし、放課後に皆でアニメ観賞しようぜ!」

 

「いいなそれ!同志みんなで集まって、親睦を深めようぞ!」

 

「・・またアニメの話かい?」

 

意気揚々とカバンを持って声を高らかにあげ、そう話す二人の男友達にため息をつきながら尋ねる。

 

何でこの二人は気づかないのだろうか、、女子の目線が冷ややかなことに

 

「「もちのろんですたい!」」

 

「…なら、もう少し声のボリュームを下げたほうがよろしいかと。女子に向けられている視線はご存じだろう?」

 

「うん。でもそれがどうかした?」

 

「へ?」

 

「人の目線を気にして趣味に没頭できるかってんだい!俺は他人になんと言われようが、見られようが、まったく痛くも痒くもないわ!」

 

「よく言ったぞ同志田中よ!人の趣味も十人十色なんだから、冷ややかな視線を向けられる筋合いなんかそもそもないんだよ!違うか!?」

 

 

・・うん。確かに山口君の言うことはその通りなんだよ?

でも…R18の作品をちらほら見てるのに、その話を公衆の面前でするのはいかがなものかと思う。

恥らいというものはないのかな?

 

 

「まぁ…違わないんじゃないかな?」

 

「そうだろう?さすがは我が友だ!」

 

「そうだ、せっかくなんだから翔太も一緒に見ないか?R指定入ってないやつだから、翔太も見れると思うぞ」

 

堂々とそんな言葉を口にしないで頂きたいなぁ…友達として恥ずかしいよ。

 

田中君と山口君に対して苦笑いを浮かべていると、教室のドア付近にてこちらに手を振っている友奈と美森ちゃんが見えた

 

「お誘いはうれしいんだけど、勇者部があるから無理なんだ。ごめんよ」

 

「ありゃ、そうなのか~。残念だけど、部活なら仕方ないな」

 

「勇者部ねぇ…いつ聞いても変わった名前だな…確かうちのクラスの結城さんと東郷さんも勇者部だったっけ?」

 

「うん。というか知ってたんだね」

 

いつも「二次元こそ至高!」って言ってるような、アニメのことしかほぼ興味を示さない山口君が二人に関心を持っているなんて…珍しいな。

 

「そりゃあ、あの二人は男子人気高いからな。結城さんはすごい優しいし、、ほんと良い子だよなぁ」

 

「キモオタである俺達にも平等に優しく接してくれるのに、そんな相手のことを知らないわけないだろう?東郷さんは…ほら、結城さんの守護神で有名だから…」

 

……初耳なんだが?

 

「・・そうなの?」

 

「知らないのか?東郷さんに彼氏でもできない限り、結城さんと付き合うのは無理に等しいって」

 

「…ごめん。全然知らない」

 

「…まぁ、翔太の場合は例外なのかもしれないな。東郷さんと一緒にいるところもよく見るし、、まさか―」

 

「彼氏とかじゃないよ?仲のいい友達ってだけだよ、東郷さんとは」

 

「本当かねぇ?なら、結城さんとはどんな関係なんだよ?」

 

「ちなみにこっちは手をつないでるところも見てるんだからな?まさか仲のいい友達とは言わないよな?」

 

そう言いながら負のオーラを後ろに漂わせながらにじりよってくる二人。

…若干目が血眼になってるし、、妙に圧があって怖いんだけど?

 

 

「落ちつきなよ二人とも―「翔ちゃんー!早く行こうよー!」…」

 

「ほれ!仲のいいだけの友達にしては『~ちゃん』呼びは距離が近すぎるだろうが!とっとと白状しろ!」

 

「どんな関係なんだー?」

 

「・・ただの幼馴染です!それじゃあ僕は部活に行ってくるね~!」

 

『三十六計逃げるに如かず!』

 

早々と鞄を抱え、友奈達のところに急いで松葉杖をついて向かう

後ろから呪詛のような声が聞こえてきたけど…きっとただの空耳だろう。

 

 

 

「やぁ、、お待たせ…」

 

「…し、翔ちゃん大丈夫?片足が使えないとは思えないほどの速さで歩いてたけど…よく転ばなかったね?」

 

「何か友達と話をしていた様子だったけれど、、いったい何を?」

 

「気にしなくて…いいよ…ふぅ。そんなことより早く行こう?」

 

「そうだね!それじゃあ、急いで勇者部にレッツゴー!」

 

君たち二人の話をしてたんだよなんて、さすがに恥ずかしくて言えないよ…内容が内容だし。

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー

 

 

ーー

 

 

 

 

ガチャ

 

 

「勇者部部員、結城友奈です!ただいま参りました!」

 

「同じく倉橋翔太、参りました」

 

「同じく東郷美森です。失礼します」

 

「おっ。みんな来たわね~」

 

「みなさん、こんにちは」

 

部室に入るといつも通り、『二人』の黄金色の頭髪をした、先輩・後輩が迎えてくれた。

 

中学校に入学してからついに一年がたち、こんな僕にも一人のかわいい後輩というものが初めてできた。

 

「こんにちは、樹ちゃん。今日もお互い一緒に頑張ろうね」

 

「はい!頑張ります!」

 

ニコリと太陽のごとき明るい笑みを浮かべる樹ちゃんを見て、こちらもついつい笑みを浮かべてしまう

 

「我が妹は健気ねぇ。見てるとこっちまで元気になってくるわ~」

 

「最初は少しぎこちなかったのに、今では完全に溶け込んでますからね…かくいう私も風先輩と同意見です」

 

「樹ちゃんが翔ちゃんと打ち解けてるのを見てると、私もうれしいなー!」

 

うーん…外野が少しうるさいな?

 

もっとも、美森ちゃんの言っていることは紛れもない事実で、最初こそ樹ちゃんガッチガッチだったんだけどね。

とは言っても相手が僕のような男じゃないため、すぐに友奈・美森ちゃんと仲良くなれていた。

 

…それに、樹ちゃんもだんだん僕と普通に話すことができるようになってきたし…男子苦手克服の日も目前かもね?

 

「わわっ、みなさん揃って生暖かい視線を私に向けないでください!翔太さんからも何かおっしゃってくださいよ!」

 

「・・あはは…」

 

「・・否定して欲しかったです…」

 

ごめんね、樹ちゃん。こればっかりは肯定も否定もできないよ。

 

視線を樹ちゃんから風先輩に変え、話を進めてもらうよう促すと、苦笑いを浮かべながらも小さく頷いてくれた。

察しのいい先輩で助かります…

 

 

「はーい。そろそろいい時間だし、今日の勇者部の活動を始めるわよー?」

 

「むぅ…わかったよ、お姉ちゃん」

 

樹ちゃんから見えない角度から風先輩がグッジョブサインをする。

さすがのナイスフォローです、、

 

「風先輩!今日も園の子達に見せる人形劇の練習ですよね?」

 

「そうよ、友奈。園の子達にお粗末な劇を見せないようにするためには、練習あるのみだからね…頑張りましょう!」

 

「そうですね、千里の道も一歩からと言いますし、、子供達に少しでもいい劇を見せられるよう、私も頑張ります」

 

「私も東郷さんと同じ気持ちです!その証拠に…家でセリフをきっちりと覚えてきました!」

 

「さすが友奈ね!勇者部の部員として恥じない、見事な心構えよ!」

 

杖で体を支えながら、お三方の会話に耳を澄ませて聞き取る

 

僕はあいにく裏方中の裏方で、表舞台に立つようなことはない。理由は言わずもがなだと思うが、この体だ。

その代わりといってはなんだけど、人形の製作や舞台となるセットの作成には力を入れさせてもらった。

 

・・もっとも、先生やクラスの友達に教えてもらいながら作ったものなので、僕一人の作品ではないのだが…

 

 

そんなことをしみじみと思い出し、目を細めていると、友奈にぎゅっと優しく左腕をつかまれる。

 

「その顔…さては翔ちゃん、自分は何もできてなくて申し訳ないな~…なんて思ってたでしょ?」

 

「・・・敵わないな、友奈には」

 

ほんと、何で分かるんだか…友奈ってエスパーか何かなのでは?

 

「大切な幼馴染の翔ちゃんのことだもん、そんなのすぐわかるよ、、翔ちゃんがわかりやすいのもあるけど…」

 

「え、、そうなの?」

 

「えぇ。私も友奈ちゃんほど付き合いが長いわけじゃないけど、翔太君が何を考えてたのかすぐわかったわ」

 

「翔太にポーカーフェイスの才能がないことは確かね~。顔に悲しそうな気持ちが出ちゃってたわよ?」

 

…確かに自分のことにはあんがい自分だと気付きにくいって言うけど、、

 

「…樹ちゃんはどう思う?」

 

「…ノーコメントでお願いします」

 

「うん・・否定してほしかったな…」

 

わかってた、わかってたけどね。

流れ的に予想してたよ…。

 

 

「そんなことより!翔ちゃん!」

 

「は、はい!何でしょうか!」

 

から笑いをしている最中に友奈が突如として大きめの声をあげるので、思わず驚いてびくっと反応してしまう

 

「翔ちゃんだって人形劇に貢献してくれてるよ!だから翔ちゃんは胸を張って堂々としてくれればいいの!」

 

「そうよ翔太君。ステージも人形も、全部翔太君が作ってくれたじゃない」

 

東郷さんの言葉にひとしきり大きく頷いたのち、「ほら!」と言いながら勇者の人形をこちらに見せてくる友奈。

 

「でも、、それは他の人にも手伝ってもらって作った物だから、結局僕一人では何にも貢献できてないよ…」

 

本当は一人で作ろうと思ったのだが、あいにく僕は器用な方ではない。

腕にはめる程度の人形なら僕にもできるかと思ったんだけどなぁ…

 

 

「はぁ…なーに言ってんのよ。何にも貢献してないやつが、右手にそんな絆創膏つけるわけないでしょう?」

 

ビシッっと、僕の親指に貼ってある絆創膏を呆れ混じりに指さす風先輩。

急いで指された絆創膏を隠すと、風先輩はそれを見て、まるで仕方ない子を見る親のように苦笑いを浮かべた。

 

「・・この絆創膏は何にも良いものじゃないですよ。ただ僕が不器用だったゆえに負った物なんですから」

 

「そんな言い方するんじゃないの。現に、あたしは全然いいと思うわよ」

 

「…何でですか?」

 

「だって、けがをしたってことはそれだけ部のために何かしようと頑張ってくれた証拠でしょう?」

 

『頑張った証拠』…この絆創膏が…

 

 

「例えあんた一人でやったことじゃなくても、十分あたし達は助かってるのよ?だから友奈が言ってたとおり、胸を張って堂々としてなさい!」

 

「風先輩…いや、風部長…!」

 

これからは犬吠埼家のある方角に足を向けて寝られないな……もともと向けてなかったけど

 

「よーし、そんじゃ友奈!翔太をとりあえずそこの観客側に座らせて?翔太には観客をやってもらうから…ってそうだ、椅子が無いのよね…」

 

「私が持ってくる?お姉ちゃん?」

 

「いや、樹ちゃん、それなら椅子は私の車椅子を使ってくれていいわよ。私はパイプ椅子があるから」

 

「助かるわ~東郷。それじゃあ友奈、東郷の椅子使っていいらしいから、あとはお願いね」

 

「了解です!それじゃあ翔ちゃん、ちょっとお手を拝借するよー?」

 

…待って、僕の知らない間にいつのまにかお話が進んでる!

 

「えっ、ちょっ、風先輩?そんなこと聞いてないんですけど?」

 

「今までずっと暗い顔してたんだから、その罰ゲームみたいなもんだと思いなさい?拒否権はもちろん無し!」

 

「私頑張るから、終わったら感想とかアドバイスお願いね!翔ちゃん!」

 

「・・うん、わかったよ…」

 

 

前言撤回ってまだ間に合うかな?

 

キラキラと目が輝いている友奈に椅子まで引っ張られている間、そんな少しの後悔を胸に抱いた。

 

 

・・まぁ、心が軽くなったのは事実なのだけどね…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔ちゃん!一緒に帰ろうー!」

 

「そろそろ劇の発表も近いし、帰路につきながら劇について話しましょう」

 

帰る準備を済ませ、トイレに入って用を足し終わったところを二人にちょうど話かけられる。

 

 

タイミングの良さを見るに、僕がトイレから出るのをわざわざ待っててくれたのだろうけど…今日はある『用事』があるんだよな…。

 

心苦しいが、、かといって大切な『用事』をすっぽかすわけにはいかない

 

「あ~、、ごめん二人とも!今日はどうしても外せない用事があるんだ」

 

「・・『用事』?」

 

「……ちなみにそれってどんな用事なのか言えたりするかしら?」

 

「え?う、うん。言えるけど…実はちょっと行きたいところがあるんだ」

 

 

一瞬、二人の声のトーンが下がったような気がしたが…気のせいだろうか?

 

 

「それなら私達も付き合うのに…」

 

「いやそれが、その行きたい場所が少し遠いところにあってね。だから【親戚】に車で迎えに来てもらう予定なんだ」

 

「なるほど。それなら確かに一緒に帰れないわね…」

 

本当なら誰かに迷惑をかけるようなことはしたくないから、自分の足で行きたいんだけど…この体だとさすがにね…

 

 

「できれば翔ちゃんとも一緒に帰りたいんだけど…最近はずっと一緒に帰ってくれてたもんね!わかったよ!」

 

「私も少し寂しいけれど、、我が儘言っちゃいけないわよね。怪我とかしないように気をつけてね?」

 

「ありがとうね、二人とも」

 

待ってまでして一緒に帰ろうとしてくれていた二人を思うと、少しきゅっと心が痛くなるが、大切な用事のためだと痛みを心の奥へと押し殺す

 

 

「バイバイー!翔ちゃん!」

 

「また明日ね、翔太君」

 

「うん。また明日ー!」

 

 

笑顔で手をふってくれる二人にこちらも優しく手をふりかえす。

 

 

 

やがて二人の姿が見えなくなったのを完全に確認し、ポケットに入れていた携帯に手を伸ばして、、ある【親戚】に電話をかける。

 

 

 

ピッ

 

 

「もしもし…大赦さんですか。ただいま準備ができたので、あそこまで送迎をお願いします」

 

『はい。先ほどから近くまで向かっていましたので、まもなく到着します』

 

「すみません、助かります」

 

『いえ。では失礼いたします』

 

どうやら本当に近くまで来てくれていたらしく、電話を切って数秒後、大赦印の黒塗り高級車が目の前に停車した。

 

停車してすぐさま車から一人の大赦さんが降り、わざわざ肩を貸してくれる

 

 

「お足もとにお気をつけください」

 

「よいしょ…ありがとうございます。だけど重くないですか?」

 

「はい。お気にさわったら申し訳ないのですが、倉橋翔太様は大変お軽いので、私めでも軽々お持ちできます」

 

「…そんなに軽いですか?」

 

「えぇ。まるで、『何ヵ月もあまりご飯を食べていない方のようです』」

 

「・・・あはは…」

 

大赦さんの言葉へ苦笑いで曖昧に返したのち、車へと乗り込む。

 

 

 

数分ほど車内での長い静寂を経て、ついに目的地に着いた

 

目的地に着いたとたん先頭の大赦さんを筆頭に、待ち構えてくれていた何人もの大赦さんが頭を地につける。

 

 

―【異質】

この状況をそう呼んだとしてもどこもおかしくないだろう。

 

 

「ようこそおこしくださいました…翔太様がきてくださり、【お二方】も大変お喜びになられています」

 

先頭の大赦さんが頭を下げたまま、静かに淡々と言葉を僕に告げる

 

…まるで、神にでもなった気分だ

中学生である自分より頭が低い大赦さんを見渡し、そんな馬鹿みたいなことを思ってしまう。

 

「それなら良かったです…では、僕は失礼しますね。病室で二人が待っていると思いますので」

 

地へと平伏す大赦さんの間を通り、不気味な雰囲気を醸し出している病室のドアをゆっくりと開ける

 

 

 

 

 

 

「よっ。久しぶりだな、、翔太」

 

「いっしー、ようこそ~」

 

 

扉を開いた先には、包帯を顔…もしくは体に巻いた、すっかり変わり果てた戦友の姿があった

 

…まぁ、そんな変わってしまった二人の姿を見るのは今回が初めてじゃないので、驚いたりはしない。

 

 

・・僕も他人のこと言えないが…二人の姿はいつ見ても痛々しい。

 

そんな痛々しい姿になってもなお、昔のように明るく振る舞っているところ見ていると、どこかうれしく思う反面、少し悲しくなる

 

 

どうしても、無理やり元気を絞り出しているかのように脆くて儚げな…ただの空元気に見えてしまうよ

 

 

「久しぶり、二人とも。元気かい?」

 

 

…そんなこと、二人には言えないけど

 

 

「んー…アタシはぼちぼちだな~」

 

「私もみのさんと同じ~。体調面では特に問題ナッシングだよ~」

 

「それは良かった。人間はやっぱり健康が第一だからね」

 

「そう言う翔太はどうなんだ?…確か翔太が奪われた物って…」

 

…鋭いなぁ。

 

見事なカウンターパンチを銀ちゃんから受けたことに苦笑いを浮かべると、それだけで察したのか、とたんに銀ちゃんが悲しそうな表情を浮かべる。

 

「いちおう聞くけど、、食事は?」

 

「平日は1日一食。休日は…とらない日の方が多いかな。それでも健康なんだから、便利なもんだよ」

 

「食欲…やっぱりないんだね」

 

「あはは…まぁ、仮に食事をとったとしても無味なんだけどね」

 

三大欲求の一つが無くなったと言っても、そこまで困ることはない。

何も食べなくても生きていられて、体も普通に動かせれる…言ってしまえば何の差し支えもない。

 

とても便利な体だ

とても万能な体だ

そう羨ましがる人もいるかもしれない

 

でも…

 

 

 

―人として大事な何かを失ったような、妙な喪失感をどこか感じるのだ―

 

 

僕は二人に比べて、目に見えてわかるような失った器官は少ない。

しかしその分、他の何か大切な物を失っているため、感じる虚無感はどことなく大きくなってしまう。

 

 

「そんな悲しそうな顔しないでよ?僕は全然平気なんだから…どちらかと言うと、二人の方が僕は心配だな?」

 

「…まぁ、暇の一言に尽きるなー。でも勉強の息苦しさ比べればマシだから、アタシは問題ナッシングだぞ!」

 

「私も昔からボーッとしたりするのが好きだったから、大丈夫だよ~」

 

「…そっか」

 

 

 

―だが、二人に比べればそれも小さな、生ぬるい物だ

 

自由に出歩けない体になったあげく、一人の人間としてではなく一つの『御神体』として崇められる

 

 

 

――はたしてそれは、【大丈夫】と言えるような軽いことなのだろうか?

 

 

そう一人で苦い顔をしながら考えるも、園子ちゃんの声でそれは遮られる

 

「・・ねぇいっしー、一つ聞きたいことがあるんだけど…」

 

「いや、言わなくても大丈夫だよ。…美森ちゃんのことだよね?」

 

「!須…美森はどうなんだ?記憶が無くなっても、元気でやれてるか…?」

 

本当に心から美森ちゃんの身を想っているのだろう。

緊迫した表情でこちらに視線を向けてくる二人に対して優しく微笑みながら静かに頷くと、二人とも心から安心・うれしそうな表情を浮かべていた。

 

「ちゃんと女子中学生としての生活を送れてるよ、東郷美森さんは。…記憶が無くても立派にね」

 

「私達のこと、忘れられてるのは少し寂しいけど…わっしーが普通の生活を送れてるなら、うれしいな~」

 

「できるならもう、須…美森にはお役目なんて背負わないで、平和に過ごして生きていてほしいんだけどな…」

 

 

―僕は二人も、勇者部のみんなも、、全員平和に過ごしてほしいんだけどね

 

交際して、婚約して、家庭を築いて、やがて子に囲まれて、

 

そんな幸せに満ち溢れた人生をみんなには是非とも送ってほしいよ、僕は

 

 

「僕も同じ気持ちだけど…二人も人として平和な生活を営む権利があることを忘れないでよ?」

 

「ははっ…アタシはほら、こんな姿になっちゃったからさ、、自由に歩くことすらままならないし?」

 

「私もみのさんと同じだな~。この身体になってから、自分が自分じゃないような…不思議な感覚なんよ」

 

話ながらそれぞれ己の身体を見渡す二人の目は、どこか遠くを見ているような、悲しげな様相を浮かべていた

 

 

「事実は小説より奇なりって聞いたことあったけど…本当なんだね~。今の私みたいな姿をした人物なんて、、小説でも滅多に見られないもん」

 

そんなことを呟くように話ながら、自虐的な笑みを浮かべる園子ちゃん

 

隣のベッドに横になっている銀ちゃんも園子ちゃんの言葉にどこか思うところがあるのか、視線を下に向けたままその場に静かに佇んでいる

 

 

 

―もう……見てられないよ

 

 

 

 

…ポスン

 

 

「・・え?い、いっしー?」

 

「・・へ?ど、どうしたいきなり?」

 

松葉杖を壁にかけ、そっと二人の頭上に手を優しく置く。

いきなりの僕の奇行に二人は目を丸くして一瞬固まったが、やがてそれぞれ目に見えて分かる困惑の色を浮かべた。

 

そんな二人に笑みで返し、置いた手をゆっくりと動かす。

 

…これ以上どこか痛んだりしないよう、割れ物を扱うかのように丁寧に。

 

「あっ…懐かしいな、これ…やっぱり何だか落ちつくなぁ…」

 

「うん…何でだろうね?すごく、どこか暖かいんよ~…」

 

撫でてあげていると次第に困惑していた二人もリラックスしてくれたのか、目を細めて僕に身を委ねてくれる

 

 

「…大丈夫。きっと、大丈夫だよ」

 

そこで二人を宥めるよう、穏やかに話すことを心がけて言葉を紡ぐ。

 

「例え今が辛くっても、きっと最後には苦しんだ分のつけが回ってきて…いいようになるんじゃないかな」

 

二人みたいに良い子達がひどい未来を掴むなんて、そんなことあるわけない

 

 

正直者が馬鹿をみる?

 

 

 

―そんなこと、あっていい訳ない

 

 

 

「そう…かな?」

 

「…別に、これといった根拠も確証もないけれど、、僕はきっとそうだって信じてる」

 

都合のいい、もはや自己暗示の一種だってことは自分でもわかってる。

でも、だからといって全部が全部間違っているわけではないと思う。

 

…友奈と再開できたのが良い例かな

 

 

「・・翔太の言うこともわからなくはないぞ?…でもな…」

 

信じられなくて当然だ、だって僕の言葉には何の根拠もないんだから。

 

 

・・・なら、、

 

 

「それなら…僕が保証するよ、銀ちゃん。もちろん、園子ちゃんも」

 

「…保証?」

 

「そう。僕が保証…いや、なんならいい結果になるように、全力で手を尽くすことを約束するよ」

 

もし僕が言ったとおりにならなくても、怒りの矛先を向けれる先があるなら信じてくれるんじゃないかな?

発表の場で責任転嫁先があるとわかったとたん、少し気が楽になるように。

 

 

「んー・・わかったんよ~。そこまで言うのなら…信じるね?いっしー?」

 

「右に同じく、アタシも信じさせてもらうよ。信頼できる戦友のお墨付きなら安心して信用できるからな~」

 

「ありがとう。二人をがっかりさせないよう、この倉橋翔太頑張ります!」

 

二人を撫でていた手をさっと引き戻して、力こぶをつくるように腕でポーズをとって二人に見せつける。

力こぶがあれば少しは様になるのだが…残念ながら僕のへなちょこ腕にお山さんは見当たらない。

 

…二人の微笑みが虚しいなぁ、、

 

 

「ははっ…って、そういえばずっと片足立ちだけど、、辛くないか翔太?」

 

言い忘れていたが、二人の頭を撫でる際に松葉杖は邪魔だと思って今は壁にかけているため、僕は今片足だけで立っている状態だ。

 

先ほどまでは痛みより二人のことを優先的に考えていたため、そのせいで痛みなんて感じていなかったが…いざ銀ちゃんに言われて意識すると、そこそこ痛くなっていることに気がついた。

 

「あはは…ごめん、少し辛いかもしれない…結構疲労してたみたい…」

 

「みたいって…おいおい大丈夫か?早く松葉杖を使わないと…」

 

「…それが、壁にかけちゃってて…そこまで歩けそうにないんだよね…」

 

「面目ない…あいてて」

 

ケンケン跳ねて移動なんてできる体力がもう足に残ってないよ…見栄をはった直後にさっそくこれか…

 

「それなら、一回私のベッドで足を休めてきなよ~?楽になりやすいよう、横になってくれていいから~」

 

「え、いやそんな悪いよ…」

 

「大丈夫大丈夫。ベッドのサイズが大きめなおかげで、いっしーが横になってもそこまで問題ないから~。ずっとそのままじゃ大変でしょ?」

 

「・・問題はそれだけじゃないんだけど…仕方ないか。失礼します…」

 

「…うん。どうぞ~」

 

情けなさと申し訳なさを背に感じつつも、足の痛みには逆らえないため園子ちゃんのベッドにいそいそと入り込む

こんなこと僕がしてるなんてことがもしクラスの子に知れたら…社会的に終わるだろうな、僕。

 

そんなことを考えていても、すぐとなりにいる園子ちゃんからふんわりと漂ってくる女の子のにおいを感知してしまうのは、男の性だろうか。

…うん。我ながら気持ち悪いな…

 

「…ねぇ、いっしー?いっしーは私達が良い結果を迎えられるよう、手を尽くしてくれるんだよね?」

 

「?うん。さっきも言ったけど、僕なりに全力で手を貸すよ」

 

「なら…一つ、お願いしてもいい?」

 

「お願い?」

 

前から園子ちゃんの要望はよく聞いてあげてたけど…こう園子ちゃんが折り入って頼みこんできたことなかったな…。

 

そう珍しい行動をとる友達に答えるために身体の向きを園子ちゃんへと向けた際、あることに気付き…目を見開く

 

 

「少しだけでいいから…ぎゅって抱き締めてほしいの……」

 

 

―園子ちゃん、、震えてる…?

 

 

僅か、ほんとうに僅かだ

よく目を凝らさないと見えないぐらいに小さな震えだが、この至近距離もあいまって気付くことができた

 

いかなる状況でも場を見渡すことのできるような鋼の精神力を持つ園子ちゃんが身を震わすなど…『あの日』以来だ

 

 

「…なんてね。今のはいっしーをからかっただけだよ~」

 

その震えを己で知ってか知らずか、平静を装おっていつもの間延びした口調でおちゃらける園子ちゃん

 

 

「どうー?私の演技力は~?もし上手かったら、役者さんでも目指そう―」

 

 

ギュッ

 

 

「!…いっしー、、」

 

「何も言わなくていいよ…しばらくこのままでいてあげるから」

 

「・・・ありがとう」

 

本当は顔から火が出るんじゃないかってぐらい恥ずかしいんだけど…少しでも彼女の癒しになれるのなら我慢できる

 

しばらく経って「もういいよ。ありがとう~」と感謝を述べる園子ちゃんは、いつもの彼女に少し戻っていた。

 

「良かったな、園子」

 

「うん…みのさんは大丈夫?」

 

「アタシはいいよ。そんなことしてたら、弟達に示しがつかないからな~」

 

「おー。かっこいい~」

 

 

・・もう、大丈夫そうだね。

 

二人で仲良く談笑しているところを横から眺めて、小さくうんうんと頷く。

すると、後ろの病室の扉がゆっくりと開いていって、一人の大赦さんが姿をあらわした。

 

「翔太様、お時間の方がもうすぐでございます。帰りの車は手配してありますので、お帰りのご準備を」

 

「あっ、もうそんな時間ですか」

 

慌てて腕時計を確認すると、確かにもうそろそろいい時間になっていた

…楽しい時間は本当に一瞬で過ぎ去る

 

「・・いっしー、帰っちゃうんだね」

 

「・・寂しくなるな…」

 

「…また来るから大丈夫だよ。期間は空くだろうけど、、その時まで待っててくれるとうれしいな」

 

「…あぁ、なら楽しみにしてるぞ?」

 

「私もー。待ってるね?いっしー?」

 

「うん。…バイバイ」

 

 

今と過去、

 

時は違えど、大切で大好きな仲間だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

---------

 

 

「…帰っちゃったね、みのさん」

 

「翔太は明日も学校があるだろうからな、仕方ないさ。早寝、早起き、朝ごはんは大切だろ?」

 

「早寝だったら自信あるよ~。私~」

 

「・・変わんないなぁ、園子は」

 

?早寝は大事なんじゃないの?

 

やれやれと肩をすぼめるみのさんに首を傾げつつ、さっきまで来てくれていた友達…いっしーのことについて考える

 

 

《何も言わなくていいよ…しばらくこのままでいてあげるから》

 

 

・・暖かかったなぁ、いっしー…

 

昔から彼は、察するのが上手かった

そのおかげかな。転校してきたばっかりのはずなのに、友達もたくさんいて、さらには先生からも信頼されていた

休み時間中に同級生の子の悩み相談を受けているところを見るのも、大して珍しくはなかった。

 

しかし、そのことを本人に言っても、

 

《幼馴染にはかなわないんだけどね》

 

なんて言葉と共に笑みが返ってくる

 

運動以外は本当に何でもといっていいほどできる彼は、一人の友達として正直少し鼻が高かった。

彼には友達が何人もいたけど…その中で1番一緒にいる時間が長いのは私達三人だろう。だから尚更だ。

 

休み時間とかは私達以外の子と遊んでいるときもあったが、、基本的には一緒にいたと思う。

 

休みの日の時も、訓練の時も、

 

 

 

―そして、、『お役目』の時も

 

 

「どうした園子?苦い顔なんかして」

 

「・・あはは…【あの日】のことを思い出しちゃって…」

 

「・・忘れられないんだな……まぁ、アタシも忘れられてないんだけど…」

 

「…考えちゃうんだ。もしあの時私が気を失わなければ、いっしーも危険な目に会わなかったんじゃないかって「・・園子」…ごめんね」

 

「…それならアタシも、須美も、何回も考えたことがあるよ。だから、この事についてみんなで言いいっこなしって決めただろ?」

 

「うん…わかってはいるんだけど…」

 

どうしても、割り切れない

【あの日】のことだけは…

 

 

 

 

 

 

《二人とも!無事だったのね…!》

 

《いっしー!みのさん!無事で良かった…すごいよ、二人だけで三匹も追い払うなんて…!》

 

少し血が出てるけど、、そんな傷よりみのさんといっしーの方が大事だ…!

痛む体を無視して二人の元に駆け寄る

 

《そのっちの言うとおりよ…ほら、早くみんなで家に帰りましょう?》

 

《…みのさん?いっしー?》

 

わっしーと二人で話しかけているのにも関わらず、一向に返事が返ってこないことに疑問を抱く。

…こんな時に無視?いくら二人でも、さすがに酷いよ…?

 

 

そんな私の考えはすぐに打ち破られる

 

……最悪の方向で

 

 

《・・須美ぃ、、園子ぉ、、!》

 

《み、みのさん?どうし―》

 

《翔太が、、翔太が…!!》

 

 

―そこには小さな血だまりを作って横たわる、見慣れた彼の、見慣れない…無惨な姿があった

 

 

 

 

 

「…まぁ、引きずるのも無理ないか、、よくあんなにボロボロだったのに後遺症無く完治できたよな。翔太」

 

「お医者さんもびっくりしてたね~」

 

結果からすれば、急いで大赦さんに連絡したおかげでいっしーはギリギリではあったものの、助かった。

お医者さんが言うには、あと数分遅かったら間に合わなかったらしい…

 

「・・何とか助かったから良かったけど…もう翔太のあんな姿は、二度と見たくないぞ…絶対にな」

 

「いっしーのことだから、私すごく心配なんだ…またあの日みたいな無茶をするんじゃないかって…」

 

「次の勇者の人達にそこはなんとかフォローしてもらうしかないな…アタシ達はこんなんで、身動きできないし」

 

心配だけど…現状が現状だから、みのさんの言う通り次の代の勇者さん達にお願いするしかない。

 

「・・なんならもういっそのこと、いっしーも御神体になれば心配する必要なんて無いんだけどね…」

 

「あの大赦が戦える翔太を見逃すわけないだろ?翔太も須美のことが心配で行きたがってたし、、それは無理だな」

 

「大赦に関しては、無理やりでも圧力を掛ければできなくはないよ?私は乃木さん家の園子さんだからね~」

 

「…まぁ、それは本当に最終手段だろ。翔太のことが大好きなのはわかるけど、、やめてやれよ?」

 

大好きだよ、いっしーのことは。

その好きは親愛ではなく、男女の好きなことも自分でよくわかってる。

 

 

私が独占欲強めなのも、自分自身のことだから誰かに言われなくても自分でよ~くわかってるんよ。

 

 

…でも、みのさんには言われたくない

 

 

「…みのさんだって好きでしょ~?」

 

「・・自分の身を犠牲にしてまでアタシ達のことを支えてくれたやつを……好きにならないほうがおかしいだろ…」

 

包帯が巻かれているせいでよく見えないけど、、おそらくみのさんの顔は赤くなっていることだろう。

その証拠にみのさん、後半からだんだん声が小さくなっていってたし

 

「って!何言わすんだよ園子!」

 

「恥ずかしがらなくてもいいよ~?大丈夫~、わっしーも同じだから~!」

 

「知ってるよ…そもそも三人が同じ思いだったから、同盟組んだんだし」

 

「『他の女子にいっしーを渡したくない』って気持ちも同じだったよね~」

 

ちなみに、同盟発案者は私だ。

 

…みんなで、幸せになりたいからね

 

・・他の女の子に取られる前に…!って思いで二人に話を持ちかけたのだが、二人とも同じ考えだったようで、すぐに同盟設立に首を頷かせてくれた

 

「…独占欲が強い、めんどくさい女って自覚は自分でもあるさ。でも、、自分の気持ちに嘘はつけないんだ」

 

「大して付き合いも長くない女子が翔太とすごく仲良さげにしてるのを見ると…黒い感情が湧き出てくる」

 

「・・私も同じだなー。何にもいっしーのこと知らないくせに…なんて思っちゃうんよ」

 

女の嫉妬は醜いなんて言葉があるけど…この際、醜くてもいい。

どうせ身なりはもうこんな化け物のようになっちゃったんだから、これ以上醜くなったって…大して変わらないだろう

 

「私達をこんな風にした責任、いつかはちゃんと取りたいね~」

 

「あぁ、それはアタシもそうだ…だけど、今じゃないだろ?我慢だ、我慢」

 

「そうだね…もっとも、こんな体のままだったら、叶いそうにないけど…」

 

「・・・戻りたいな、あの頃に」

 

「・・・うん。私も戻りたいよ」

 

 

戻れるなら戻りたい。

あの四人で送る、楽しくて暖かな日々に戻れるなら。

 

 

 

 

―いっしーと違って、今日も病室は静かで冷たいな…

 

 

 

 

―病室は今日も二人の少女を閉じ込めたまま無機質で、不気味なほどの静けさを保っていた―

 

 

 




久しぶりです…いかがでしょうか?

今回は長めだったのですが、次回からはいつも通りの文量でやっていきます
誤字脱字、感想等ありましたら、お気軽にお願いいたしますm(__)m

皆さんはゆゆゆ・わすゆの生放送をご視聴なさいましたか?
私は一人で寂しく見ました…

・・友達にゆゆゆ好きな人がいれば仲良く盛り上がれたのですが、、あいにく知っている人すらいないんですよね…ゆゆゆ好きの友達が欲しくなりました…

(アニメはとても面白かったです)
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