花のように可憐で… 作:Black History
待ってくれていた人はいるのかと、もはや疑問のblack historyです。
とりあえず本編入ります…どうぞ
―むかし、むかし、あるところに勇者がいました―
―勇者は人々に嫌がらせを続ける魔王を説得するために旅を続けています―
―そしてついに、勇者は魔王の城にたどり着くことができたのです!―
「やっとここまでたどり着いたぞ魔王!もう悪いことはやめるんだ!」
「私を怖がって悪い者扱いしたのは、村人達の方ではないか!」
舞台にて人形を動かしながら劇を繰り広げる友奈と風先輩。
今までの練習の甲斐あって中々のクオリティに仕上がっているため、園児達の目もキラキラと輝いている…のだと思う。
あいにく僕は舞台の中にいるので園児の子達の反応を見ることはできないが、ざわざわ声が聞こえるところから見るに、そこそこ盛り上がってはくれているのだろう。
紙芝居の要領で背景を入れ替え、炎の演出がくくりつけられた棒を人力でそれらしく見えるように動かす。
当たり前だが、裏方だからといって仕事がないわけではない。音響は樹ちゃんと美森ちゃんの二人がやってくれているが、それ以外の人力でできる演出は僕が担当だ。
「だからって嫌がらせはよくない!話し合えばわかるよ!」
「話し会えばまた悪者にされる!」
さすがの演技力だ。やっているうちに二人も役に入りこんできているのか、演技にもだんだん熱が入ってきている。
無論、役に入りこんで熱が増すのは悪いことではない。
むしろ、そっちの方がいいのだが…熱が入りすぎると逆効果になりかねない
そして、その熱が入りやすい人物に一人だけ心当たりがある
・・嫌な予感が…
「君を悪者になんかしない!」バンッ!
そしてその予感はみごと的中し、案の定熱が入った友奈がステージを強く叩いてしまったようで、その衝撃によって舞台が今にも倒れようとしていた。
我にかえってハッとした様子の友奈だったが、残念ながら時すでに遅し
「あっ…!」
「・・・はぁ……友奈…」
・・ほんと、予想を裏切らないな…
バタン。と、情けない音をたてながら舞台が虚しくも倒れる。
幸いなことにも舞台は園児達よりも前の方で倒れてくれたため、園児の子達に当たったりしてケガを負うなどという最悪な事態にまでは陥らなかった。
…もっとも、だからといって問題ないのかと言われれば勿論NOだが
舞台の裏側がむき出しとなり、情けなく銅像のように固まって動かなくなる風先輩と
「しょうおにいちゃん、なにかたおれてきたけど……なにがおこったの?」
膝に座っている男の子が純粋無垢の目でそう困惑したように訪ねてくる
他の園児の子達も突然の演出に困惑しているようで、ざわざわとほんの少し騒ぎ始める声が聞こえてきた。
・・打開策は一応ある
このままだと劇が崩壊する…しかし、穢れを知らない良い子達に嘘を教えてもよいものか?
あーだこーだ数秒間もの間葛藤したが、結局一演技打つことにした。
これも結局は園児の子達のため。許してください。
「…ぐ、ぐわー。魔王の攻撃だー!」
うん…我ながら酷い棒読みだ
才能のさの文字すらない演技ではあるが、そんな大根役者でも自分なりに必死に苦しんでいるように演じる。
園児の子達の無垢な視線が痛いが、劇が台無しになるよりはマシだと自身に言い聞かせて、魔王から攻撃を受けてもがき苦しむ人間の演技を続行する。
「おにいちゃん!だいじょうぶ!?」
「おにいちゃん!おにいちゃん!」
僕が本当に苦しんでいると思って心配してくれたのか、さっきまで膝に乗っていた男の子や近くの女の子が焦って近よってくる。女の子にいたっては少し涙目にすらなっているため、本気で心配してくれているようだ……正直、罪悪感がえげつない。
しかし、これも結局は園児の子達のためだ。許しておくれ、みんな。
呆けた様子の二人にそっとアイコンタクトで上手く劇を繋げるよう伝える
もちろん、子供達にはバレないように細心の注意をはらって。
「!よ、よくも翔ちゃ…翔お兄さんを!魔王め、許さないぞ!」
「・・えっ、ちょっ…いや、さっきまで仲直りする流れじゃ―」
「勇者キーック!!」
「ぐえっ!?……わかった、そちらがその気ならいいだろう…勇者よ、ここが貴様の墓場だ!樹、ミュージック!」
・・散々やっといて何だけど…最初の穏便に解決しようとしていたのはいったいどこへ消えたのだろうか?
樹ちゃんが流した魔王のテーマも相まって、劇がもはや完全なるRPGの勇者VS魔王の最終決戦となってしまった。
話し合い(物理)をする勇者…嫌だな。しかもやってることキックじゃなくてパンチだし。中々ダメージ入ったらしいし。主にキャスト本体に。
「みんな!勇者を応援して!一緒にグーで勇者にパワーを送ろう!」
予定とは違う方向に進みつつある劇だが、さすがは美森ちゃん。さながらレンジャーショーのように、観客の園児達に勇者へのパワーの提供を促すアドリブを入れてくれた。
すぐに手のひらを返して武力交渉に出る、勇者とは名ばかりの畜生に園児の子達が力を送ろうとしてくれるかは危ういが、、もし僕だったら送らない。
「翔お兄さんの無念も込めて!頑張れ!頑張れ!」
「ゆうしゃさんがんばれー!」
「がんばれー!!」
…いや、生きてますよ美森さん?勝手に亡きものにしないで?
「ぐおおっ…!みんなの声援が私を弱らせる…!」
「お姉ちゃんナイスアドリブ!」
アドリブにアドリブを重ねる高等演技を成し遂げる風先輩もさすがだ。
臨機応変に劇を行う部長に内心拍手を送りつつも、魔王の弱さに苦笑いする。
園児達の声援に苦しむ魔王、ついに劇も終わりを迎えた。
悪が劣勢に傾き、それに伴って正義が優勢に傾く。そんな状況に、園児達の盛り上がりは最骨頂となっている。
そんな状況の中で劇を締めくくるのは
「よーし!今だ!ゆうしゃ……パーンチッ!!」
正義のヒーローの決め台詞
……ではなく
「痛ってぇぇ!?!?」
・・・魔王(中身)の痛切な悲鳴だった
「これで魔王もわかってくれたよね?もう友達だよ!」
勇者さん、勇者さん…脅迫ってご存知?
「翔ちゃん、早く行こうー!」
「ちょっと待ってね…よし。二人共ごめんよ、待たせちゃって」
「そんな謝るほど何分も待たされてないから、全然大丈夫よ?」
「そうそう。準備の時間なんて人それぞれだもん、仕方ないよ。それよりも、みんな準備できたんだから、風先輩達が待ってる部室にレッツゴー!」
美森ちゃんの車椅子を引っ張りながら、握りこぶしを作ってそう話す友奈。
そんな明るく健気な姿に美森ちゃんと二人揃って笑みを浮かべる。
ほんと…昔から変わらないよなぁ。
部室までの道中で二人と昨日の劇のことについて雑談していると、勇者部の部室までへなんてあっという間だ。気付けば部室のドアが目の前にある…なんてことはそうそう珍しくない。
現に今も美森ちゃんに言われなかったらドアにぶつかってたしね…友奈が。これで何度目だい?ぶつかりそうになったの。
美森ちゃんに注意されたのが恥ずかしかったのだろう。顔をほんのりと赤く染めながら、部室のドアを友奈が開く。
「こんにちはー!友奈、東郷、翔太!入りまーす!」
「こんにちはー」
「失礼しまーす」
「お疲れ様です」
部室に入ると早々に、樹ちゃんが優しい労いの言葉をかけてくれる。
そんな彼女の手には何枚かのタロットカードが握られており、同じく机の上にも数枚程が並べられている。
「タロット占いかい?」
「あっ、はい!いつでも占いができるように、やり方を復習してたんです」
「なるほど…占いかぁ」
テレビとかではたまに見るが、実際に映像ではなく日常の中で占いというものを目にする機会は少ない。
当然僕も例外ではないため、樹ちゃんが並べた机の上にあるタロットカードを奇異の目でじっと眺める。
「よかったら、翔太先輩もやってみませんか?お貸ししますよ?」
「…いや、僕はいいかな。昔からそういうのはすごく疎くてね…それに不器用すぎて、成功した試しがないんだ」
「翔ちゃん私より不器用だもんね~」
「・・友奈?お静かにね?」
「はーい」
気をつかわせてしまったことによる申し訳なさで、苦笑いがこぼれる。
気になりはするけど…見ているほうがいいかな。プラモデルとかも自分で作るより、友達が作っているのを眺める方が好きだったから。
「でも、見た目以上にタロット占いって難しくないんですよ」
「あはは…僕は自分でやるより、人のを見る方が性にあってるから大丈夫。その気持ちだけ受け取らせてもらうよ」
「そうですか、、残念です…」
申し訳ないことしちゃったかな…
少々罪悪感を感じてしまうが、変に僕が扱って樹ちゃんのカードをボロボロにするよりはマシだと自分に言い聞かせる
「おっ、来たわね~三人とも…って、何で樹はしょんぼりしてるのよ?」
「…何でもないよ、お姉ちゃん…」
「いや…全然何でもなくなさそうだけど?いったい何があったのよ?」
「ううん、本当に大丈夫…ちょっと仲間が増えるかなって勝手に期待して、勝手に落ち込んでるだけだから…」
・・・なるほど。自分の善意による提案が断られたからしょんぼりしてたんじゃなくて、占い仲間が増えると思ってたから、断られてしょんぼりしてたんだ…
…なおさら悪いことしちゃったな。
「・・よくわかんないけど…まぁ、樹が大丈夫って言ってるなら信じましょう」
頭上に疑問符を浮かべながらも渋々頷いている風先輩から視線を外す。
しかし、外した先にジト目でこちらを見てくる二人がいたため、僕はそっと視線を風先輩の方へと戻した。
…うん。完全に僕の自業自得とはいえ、やっぱり二人の視線が痛いな…
「?どうしたのよ、翔太まで苦い顔して?翔太も何かあったの?」
「…いえ、朝飲んだブラックコーヒーの味を思い出してただけですので、お気になさらないでください」
「なるほど。そりゃあ、苦い顔の一つやふたつもするか……いや、だからって今そんなこと思い出す?」
「いやぁ、、あまりにも苦くて印象に残っちゃってて…つい」
我ながら滅茶苦茶なでまかせだな…
嘘をつく才能が自分にないことはよくわかっていたが、こうして人と会話してみると嫌でも痛感する。
「…何でそんなの飲んだのよ?コーヒーはいいけど、苦味はほどほどにしときなさいよ?」
いや…信じてくれるんですか、、
どう考えても無理のある理由だったけど…さすが、お人好しの風先輩。
これにはさすがにでたらめを喋った張本人である僕も苦笑いを浮かべる。
信用してもらってるから…なのかな?
「はい、気をつけます」
「よし。…それじゃあ、今日も勇者部の活動をはじめていきましょうか」
「はーい!昨日の劇みたいに、今日の活動も大成功させましょう!」
「・・えぇ…?だいぶ無理があるところあったと思うわよ…?」
「あはは…でもでも、終わり良ければ全て良し!ですよ!」
「強引じゃない~?」
風先輩と友奈が昨日の劇について話しはじめたので、ゆっくりと身近なパイプ椅子を引き寄せて腰掛ける。
松葉杖を壁にかけ、手持ちぶさたになったところで、いつの間にか横まで移動してきていた美森ちゃんに肩をポンッっと叩かれた。
「よく誤魔化したわね、翔太君?」
「…どうかあのことは内密にお願いいたします。東郷さん」
「んー、、どうしようかしら?」
小悪魔のような笑みを浮かべ、こちらへと挑発的に顔を向ける美森ちゃん。
こうして普通の人には見せない、いたずらっ子のように意地悪な一面を見せてくれるのはうれしいんだけど…今ですか。
いつもは厳しいお母さんのような美森ちゃんのお茶目な姿は、正直かなり可愛らしいのだが……今ですか。
わりと本気で秘密にしておいて欲しいのだけど…もし風先輩にバレたら、いったい何をされるかわからないから。
…もっとも、それを美森ちゃんも知ってるからこそ、あんな小悪魔の笑みを浮かべているのだろうけど
「・・東郷さんの意地悪」
「ふふっ、冗談よ。ちゃんと風先輩には秘密にしておくから、安心して?」
「そうしてくれるならうれしいんだけど…何で少し回答を匂わせたの?」
「それは…翔太君のからかった時のリアクションが面白いから、つい…ね」
「・・・やっぱり小悪魔だ」
「?何か言った?」
「何でもないです」
小悪魔の笑みではなく、いつもの微笑みを浮かべてそう話す美森ちゃん。だが内容が内容なだけに、その微笑みすら小悪魔に見えてしまう。
リアクション芸人さんになった覚えはないんだけどなぁ…
「へーい、待たせたわね二人とも。恨むなら友奈を恨んでちょうだい」
「てへへ…昨日、園児の子達の喜びようが嬉しくて、ついつい話し込んじゃって…」
「いえいえ。翔太君と楽しくお話をしていたので、私は気にしてませんよ?」
「…右に同じくです。友奈の悪い癖は大体把握してますから、僕も全然気にしてませんよ」
同意を得るようにこちらへと車椅子ごとふりかえってくる東郷さんに苦笑いで返しながら風先輩に応答する。
楽しくお話…からかわれこそしたけど、別にそこまで間違ってはいない…かな?
「あら、そうなの?そう言ってくれるならこちらとしても助かるわ…東郷からは小言をもらうと思ってたから」
「私の悪い癖って…?」
「友奈が気になるなら、例にいくつかあげてみようか?」
「…え、遠慮します!」
…自覚はやっぱりあるんだね、友奈
「雑談してるとキリないから、また無駄に時間を使っちゃう前に今日のミーティングしちゃうわよー」
内心そう呆れていると、風部長から集合の号令がかかった。さすがにこれ以上時間を無駄に使うわけにはいかないため、当然だろう。時は金なりなんて、昔の人は上手く言ったものだ。
「「はーい!」」
「はーい…」
意気揚々と返事を返す二人を尻目に、二人とは対照的に元気の少ない返事を返していた樹ちゃんに駆け寄る
責任は取らないと…ね
「樹ちゃん、ちょっといいかな?」
「…大丈夫ですけど、、どうしました?」
「やっぱり少し気になっちゃって…迷惑にならない範囲でいいから教えて欲しいな~って、、嫌ならもちろん断ってくれていいから―「いいですよ!!」…いいの?」
「はい!私で良ければ!」
「ううん、十分だよ。よろしくお願いしますね?樹先生」
「先生……!こ、こちらこそよろしくお願いします!」
まさか食い気味に答えてくれるとは…
珍しく積極的な樹ちゃんに最初こそ驚いたけど、元気になってくれたようでうれしいよ。
「よし、それじゃあ……樹?今度は何かいいことでもあった?」
「別に何にもないよ?お姉ちゃん?」
「…にしてはいつものテンションに戻ってるし、目にいたってはいつもより輝いてるような…気のせいかしら?」
大丈夫ですよ風先輩。僕も樹ちゃんの目が輝いて見えてますから。比喩とか無しで、本当に輝いて見えます。
「・・まぁいいわ。それじゃあ、このボードに貼られてる写真の子達を見てちょうだい」
気になりこそしても渋々ではあるが話を進める風先輩に心の中で拍手を送りつつ、マグネットでボードに貼りつけられている猫達の写真へと視線を向ける。
「わぁ~!可愛い!」
「こんなにも、まだ未解決の依頼は残っているのよ」
「これはこれは…随分とたくさんきましたね。子猫の飼い主探しの依頼が」
黒オンリーな色の子もいれば、白と黒が混ざっている子、はたまた茶色の子と、これらの写真からだけでも色々な配色の猫ちゃんがいることがわかる。十人十色なんて言うぐらいなのだから、猫もやはりそれぞれ違う配色や個性があるのだろう。
「そうなのよ……なので!今日からは強化月間!学校を巻き込んだキャンペーンにして、この子達の飼い主を探すわ!」
キャンペーンとは…学校を巻き込むなんて、中々思い切った発想に出る。
子猫の飼い主を探すといった点では確かにいい案だと思う。それに中学生ぐらいの女の子なら子猫といった小動物に可愛げを感じことも多いだろうし、世話もしっかりと責任をもってやって、十分に可愛いがってくれそうだ。
「お~!」
「学校を巻きこむという政治的発想は、さすが一年先輩です!」
「あはは…ありがとう」
「政治的発想もそうですけど…素晴らしい行動力ですね。さすが部長です」
「おかしいわね…ほめられてるのは二人とも変わらないはずなのに、うれしさが全然違うわ…」
薄く苦笑いを浮かべて困惑したようにつぶやく風先輩。
美森ちゃんは一つの表現が独特な時が多々あるからね…お気持ちはお察ししますよ、風先輩。
「…まぁ、学校への対応は私がやるとして。まずはホームページの強化準備ね…東郷、任せた!」
「はい!携帯からもアクセスできるようにモバイル版も作ります」
「さすがー!詳しいね!」
「僕も手伝おうか?」
「ありがとう。でも、パソコンとかに関しては私に任せてほしいわ。他の体を動かすことでは何も貢献できてないから」
「そんなことないと思うけど…でも、東郷さんがそう言うなら任せるよ」
「ごめんなさいね。翔太君の手伝おうって気持ちだけで十分うれしいわ」
僕にそうやんわりと微笑んで、美森ちゃんがパソコンのある机へと向き合う。
パソコンに関しての知識は美森ちゃんほど詳しくは無いが、それでもある程度のことは心得ているので少しぐらいなら力になれると思ったのだが…本人がいいと言うのなら仕方ない。
僕も体を動かすことでは活躍できてないんだけどね…今も、、昔も
「お姉ちゃん、私達は?」
「え?えっと…今まで通りに、そして今まで以上に頑張れ!」
「アバウトだよお姉ちゃん…」
「…ブラック企業の社訓ですか?」
あまりにも大雑把で無茶な要求のため、こちらは困惑しかできない。
いったい、何をどう頑張ればいいというのだろうか…。
「それだったらさ、海岸の掃除に行く時にも人に当たってみようよ!」
「あ!なるほど!それいいです!」
「なるほど…いいね。さすが友奈」
「えへへ、それほどでも~」
まるで漫画やアニメのワンシーンのように、分かりやすく手でポリポリと頬を掻いて照れる友奈に笑みを溢す。
座り方が女の子として少し品を欠けてしまっていること以外はさすがだ。こういう時に頭の回転が早いところは昔から変わっていない。
「…ふぅ。ホームページの強化、ただいま完了しました」
「「「「えっ!?早っ!?」」」」
「・・しかもよくできてる…」
「・・すごっ…」
みんなで文字通り目を丸くしてパソコン内のホームページを眺め、あまりの完成度の高さに間抜けにも口を開けてしまう。
もはやプロの仕事レベルの完成度のため、美森ちゃんは中学校を卒業した瞬間にそっちの仕事に就いても問題なさそうだ
・・あれ…中学生って何だっけ…?
そう僕が敬礼をしている美森ちゃんに対して恐れに似た若干の畏敬の年を抱くのも、無理はないことだと思う…
「…今日、東郷美森という女の子の凄さを改めて痛感したよ」
『かめや』さんにて、ふと箸を置いて美森ちゃんについて話す。
お客さんで賑わっていても決してうるさくない、ほどよいガヤガヤ度でマナー等がしっかりしているため、かめやさんはかなり居心地がいい場所だ。勇者部でここに来ることが多いこともあり、もはや今ではおなじみの場所となっている。
「ホームページ強化凄かったです!」
「ほんと、まさかあんな短時間であのクオリティを仕上げるとは…」
「プロだ~!」
「ありがとうございます。先輩、天ぷらをどうぞ」
「おっ!気が利くね~!君、次期部長は遠くないよ~?」
「いえ、先輩を見ているだけでお腹がいっぱいに…」
苦い笑みを浮かべながら、嬉々として天ぷらを食べる風先輩を見てそう話す美森ちゃん。…それに関しては僕も同じ意見のため、静かに首を頷かせて同意を示す。
うどん三杯目にも関わらず、ケロリとした様子で汁まで平らげる風先輩…何も知らない人が見たら大食い選手か何かかと勘違いしてもおかしくない食べっぷりだ。
女性に対しては禁句なので、死んでも口には出さないが…カロリーは大丈夫なのだろうか?汁も含めると……うん、やめよう。知らぬが仏だ。
「あっ。そういえば先輩、話って?」
「うん?…あっ、そうそう。すっかり忘れてたわ、、文化祭の出し物の相談をしようと思ってたのよ」
「文化祭ですか?」
「えっ、まだ4月なのに?」
「夏休みに入る前に色々決めておきたくてね~。後回しにしてもいいんだけど、なるべく早い方がいいかなって」
樹ちゃんの問いに答える形でそう話す風先輩。なるほど…ごもっともだ。備えあれば憂いなしとも言うからね。
「なるほど。確かに、先手で有事に備えることは大切ですね」
「今年こそは!ですね!」
「去年は準備が間に合わなくて、何もできませんでしたからね…」
「去年の反省も踏まえての話し合いとは、さすがは我らの部長です」
美森ちゃんが言ったとおり、あれやこれやと去年は案こそ出たものの、実行に移すための準備時間が足りなくての言うとおり何もできなかった。
案自体は良かったので、もう少し早く決めれていれば…なんて後悔が積もったのだが、しっかりとその後悔から得た反省を活かすとは、あっぱれだ。
「うんうん、そうでしょう?…それにー?今年は幸いなことにも猫の手も入ったから百人力よ~!」
「わ、わたしー!?」
おちゃらけた様子で、ワシワシと妹である樹ちゃんを撫でまわす風先輩
姉妹仲の良さが表れて見える微笑ましい光景に、思わず笑みを溢す。うん、相変わらず暖かいな。
「ほれほれ~……ん?あら、うどん残しちゃうの?翔太?」
「え?…あはは、、もうお腹いっぱいになっちゃって…」
「我が部雄一の男子なのにだらしないわよー?男たるもの、もっと私に負けないぐらいがつがつ食べないと」
「お姉ちゃんと比べちゃうのはちょっと……でも、確かにあんまり食べてないですね。これって確か普通のより量少ないやつですよね…?」
自分の器と僕の器を比べて心配そうに訪ねてくる樹ちゃん。みんなの器と比べて僕のうどんが入っている器は一回り小さく、彼女の言うとおり、それに伴って量も少なくなっている。
「キッズサイズ、、では流石にないか。それでもそこそこ残してるわね…もしかして風邪でも引いた?」
「いえ、今日はたまたま食欲がなかっただけです。風邪なんて引いてませんから、安心してください」
「そう?それならいいんだけど…何かあったらちゃんと言いなさいよ?」
「我慢は良くないですからね?」
「はい。ありがとうございます…」
『風邪』…か
心配をかけてしまったことの申し訳なさで苦笑いをしつつ、ぺこりと頭を下げてありがたい注意を受け入れる
「・・・・・」
「・・・・・」
―その際、友奈と美森ちゃんの視線がどこかいつもと違う気がしたが…気のせいだろうか
「今日の勇者部も楽しかったねー!」
「えぇ、そうね。文化祭の話し合いも少しだけだったけどできたし、とても有意義だったわ」
「まだ時間はあるんだし、そこはじっくりと話し合っていけばいいんじゃないかな?急がば回れとも言うしさ」
あの後いくつか文化祭について話し合った後、かめやで犬吠埼姉妹と僕たち三人とで、それぞれ解散となった
ただいま現在帰宅中で、友奈&美森ちゃんと車内で雑談タイムだ。内容はもちろん、勇者部のこと。
「そうね…結果を急いで求めてしまっては、得られる物も得られなくなってしまう。翔太君の言うとおりだわ」
「じっくりと、深く話し合うのが一番だよ。文化祭は記憶に残るような良い思い出にしたいし!」
「おっ、いいこというね友奈~」
「えへへ~。それほどでもー」
はにかみながらもそう謙遜する友奈の姿が面白く、美森ちゃんと二人でクスクスと笑い合うと、釣られて本人の友奈も笑い出す。
笑う門に福来ると言うが、もしそれが本当ならさぞかしたくさんの福が訪れることだろう
「明日の勇者部も楽しみだなー」
「気が早すぎないかしら友奈ちゃん…今日は宿題も出てるわよ?まさかもう忘れたりしてないわよね?」
「えっと、、英語だったっけ?」
「理科と社会だよ友奈。授業終わりにプリント配られたでしょ?」
「・・友奈ちゃん…」
「…すみません」
いや、もう訪れてるのかもしれない
呆れたようにため息をついている美森ちゃんだが、その視線は仕方ない子供を見るような物で暖かみがある。…まぁ、今は割合で言うと呆れが4、暖かみが2ぐらいだろうが。
何も知らない第三者から見るとただの雑談に見えるようなことでも、確かにそこには幸せがある。
仲の良い友達と仲良く話せる…それが幸せなことだとわからないほど、僕は平和ボケしていないから
「メモ紙でもあげようか?メモしてポケットにでも入れたら忘れな―ん?」
幼馴染みが先生に怒られるところなど見たくないため、善意による提案をしようと鞄に手を入れて、気付く。
「?どうかしたの翔ちゃん?」
「いや、ちょっと携帯が震えてることに気付いただけだよ。たぶんメッセージアプリの通知かな、男友達の」
彼らからメッセージが送られてくることなどしょっちゅうだ。きっとまた何か新アニメのレビューとか感想文を送り付けてきてるのだろう…文量がエグすぎて全部読んだことないけど。
「一応確認したらどう?何か大事な用があってという可能性もあるわ」
「うん、見てみるね…」
「翔ちゃん翔ちゃん。いつも男の子達と、どんな話をしてるのですかな?」
「んー…内緒。知らぬが仏です」
ひょっこりと、僕の肩に手を置いて僕の携帯をさりげなく覗き込む友奈に苦笑しながらそう返答を濁し、携帯をそっとずらす。
僕の拒絶行為に少しぶーたれる友奈の対応を美森ちゃんに任せて、いつも通りに六桁のパスワードを入力する。
画面を一瞬闇が覆ったのち、いつもの慣れ親しんだホーム画面が広がる。壁紙は変えていない。初期の無機質な背景を背に、メッセージアプリを開く。
「…?あれ?いつもの二人からかと思ったけど、、来てない?」
目を凝らして見ても、未読メッセージがあることを知らせるフキダシは一つも表示されていない。彼らとのライングループを見ても、そこには自分が最後に打ったおやすみメールがただポツリとあるだけ。
おかしい。さっき確かに携帯が揺れた感触を感じとったはず…。
不思議に思ったため、メールアプリを下へ下へとスクロールしていく。
「・・!……これって…」
…あった。
登録だけした会話もしたことのない友達のトークアイコンの下に、疑問の正体であるメッセージは確かにあった。
「…どうしたの翔ちゃん?」
「…翔太君?」
「・・・っ!い…いや?何でもないよ?いつものしょうもないメールが送られてきてだけだった」
二人の問いかけに冷や汗が背を伝う
…あぁ、ひどい気分だ。今すぐ家に帰って、お風呂で体を流したい。できるものなら文字通り、見も心も全て。
「にしては顔色が優れないようだけど…本当に大丈夫?」
「我慢は駄目だよ?」
「…うん。大丈夫、ありがとう…そろそろ着くみたいだよ」
「あ、本当だー。できるなら、もうちょっと話していたかったな~」
「我が儘言わないの、友奈ちゃん」
車が停止したのと同時にドアを開く。いつもならしばしの別れを惜しむところだが、今は早く一人になりたかった。一分一秒が、今は惜しい。
「またね、二人とも」
「え、えぇ。またね翔太君」
「…またねー!翔ちゃんー!」
困惑しつつも挨拶を返してくれる二人を尻目に、そそくさと自分の家に入る
玄関にある四つ葉のクローバーをそっと一撫でし、鞄から携帯を取り出して無造作に放り出す。
何度見ても、何度目を擦って見ても、メールの内容は一ミリたりとも変わらずにそのままだった
―あぁ…本当に、、
[翔太。あたし達……アタリだった]
―ついてない
いかがでしたでしょうか?
更新についてですが、まことに申し訳ございませんm(__)m
諸事情等が重なり、これからも不定期になるかも知れません。コロナ間の付けが今更回ってきたのかはわかりませんが…前の話等の小さな修正ぐらいしかできていませんでした。
久しぶりに書いたので少し文に不安が残りますが、少しでも皆様のお暇つぶしになれたら幸いです。