花のように可憐で…   作:Black History

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二話目にしてタイトルが少々不穏ですが…とりあえず本編をどうぞ。




別れはいつも突然に

友奈と幼子あるあるの可愛らしい結婚約束をしたあと、言わずもがなだと思うが前より距離がさらに近くなった

 

 

当然それを見てからかってくる子もいたのだが、、その子達に友奈が一言

 

 

「私は翔ちゃんのこと大好きだよ!」

 

 

と、大声で清々しいほどの笑顔浮かべて言い放ち、その言葉を聞いた男の子達はみな顔を赤く染めて帰っていった。どうやら彼らは案外純情だったらしい。

 

…友奈、頬を赤く染めて恥ずかしがるなら言わないでくれ。こっちだって君のせいですごく恥ずかしいんだから。

 

 

そのおかげでそれ以来からかいにくるような男の子は一人もいなくなった

結果オーライ…なのかな?

 

 

「翔ちゃん!ここの問題ってどう解くの?教えて~」

 

「あぁ、いいよ。ここはね…」

 

よって僕が以前のように恥ずかしく思う要素はなくなり、学校でも友奈と仲良く過ごせるようになった

 

ちなみに僕は運動ができる方ではない

なのでせめて勉強は…と思い、その甲斐あってか成績はまぁまぁ良い方だ

 

 

・・だが女の子である友奈と腕相撲をした際、ぼろ負けしたのは悔しかった…

 

 

 

そんな風に僕と友奈はいつも笑いあって、とても楽しい生活を送っていた

 

 

 

 

 

ピンポーン

 

―あの日までは

 

 

「あら、、誰かしら?」

 

「俺が出てみるよ。お前は居間で翔太と待っててくれ」

 

「えぇ、わかったわ」

 

ある日の日曜日に家族仲良くテレビを見て談笑していると、突如として家のチャイムが鳴らされた

時間はもう午後6時を過ぎているため、友奈が遊びに来た可能性は0に近い…というかさっきまで友奈と遊んでいたところなのだから、無いと言っていいだろう。

 

なら誰だろうか?こんな時間に…

 

 

 

ピンポーン

 

「はーい!どなたで……は?」

 

「あなた?どうし……え?」

 

 

両親の呆気にとられたような声を聞き、何事かと居間から顔を出して玄関を覗くとそこには……

 

 

 

「失礼いたします」

 

 

不気味な仮面を被った大人の人達が静かに玄関前に立ち並んでいた。

……宗教の勧誘か何かだろうか?

 

 

「た、大赦の人達がこんな家に何のようでしょうか?」

 

「私達何かしましたか…?」

 

「いえ、別に何か不満があって訪れたわけではございません。別件でございます」

 

 

『大赦』…え、この人達が?

あの総理大臣をしのぐ権力を持っているとされている大赦が、、この人達?

お父さんとお母さんから聞いてはいたけれど、こんな仮面着けてるのか…

 

 

「なら何のご用で…?」

 

「報告でございます。お宅の息子様…『市村翔太様』が、神樹様に選ばれました」

 

「・・え、、それって…」

 

「はい。市村様の息子様は男で初の、【勇者】ということになります」

 

 

・・・【勇者】?

勇者って…あの勇者?

世界を救ったりするあの?

 

しかし聞き慣れない言葉に困惑して首をひねる僕とは対照的に、お父さんとお母さんは顔を青ざめさせていた

 

「そんな馬鹿な……だって勇者は―」

 

「はい。純真無垢な少女のみが成れるものとなっております。…しかし現に息子様は神樹様に選ばれていますので、勇者としてお役目を果たしていただきます」

 

「・・変更とかは…」

 

「できかねます。もう息子様が大赦の中でも小さくはありますが伝統のある、『倉橋家』に養子として出ていただくのは決定していますので」

 

「っ……せめて息子と、最後の会話ぐらいはさせてくれるんでしょうね?」

 

「3日後に私共が迎えに来ますので、その間に行ってくださればよいかと」

 

「・・・わかりました。身支度なども含めて済ませておきます」

 

「・・あなた……」

 

「では、また3日後に訪れさせていただきます。今回は失礼いたしました」

 

 

バタン

 

 

静かな空間に扉が閉まる音がただ響く

 

その音と同時に崩れ落ちる父と母

 

 

「!お父さん!お母さん!」

 

「・・翔太……」

 

「お母さん…?」

 

「・・翔太…ごめん、、ごめんな…」

 

「お、お父さん……」

 

 

 

何が何だかわかっていなかった僕に、お父さんとお母さんは丁寧に内容を話した

 

 

 

僕は神樹様に初の【男勇者】として選ばれたこと。

 

そしてそのために僕は3日後【倉橋家の養子】に出なきゃいけなくなったこと……つまり僕は3日後から『倉橋翔太』として生きることになる。

 

 

 

そして養子に出る予定の倉橋さんの家はここから離れたところにある

 

 

よって……

 

 

 

「転校……するんだ」

 

「…あぁ、、そうなるな…」

 

「・・そっか…」

 

「・・ごめんな、翔太…こんな親で」

 

「ううん。お父さんもお母さんも悪くないよ。僕は大丈夫だから・・ただ…」

 

 

 

 

《わ、私と一緒に居てください!》

 

 

 

「・・友奈に何て言おうかな…」

 

 

 

「ははっ……友奈に会わせる顔がないよ、これじゃあ…」

 

 

 

 

それから養子に出るまでの3日間、何回も友奈に言おうとしては口を閉じるを繰り返してしまっていた

 

当時友奈に冷たく当たっていたのと、お願いを無下にしてしまう罪悪感が混ざりあっていたせいだろう

 

 

 

 

そうしている内にとうとうお別れの3日目になってしまった

 

「翔ちゃん?聞いてる?」

 

「・・ん?うん、聞いてるよ。確かもぐらがどうとか…」

 

「全然違うよ……翔ちゃん、いったいどうしたの?今日変だよ?」

 

「変?僕が?」

 

「うん…」

 

 

以前も言ったが、友奈は『空気を読む』のが非常にうまい。

 

…そりゃばれるよな、、腹をくくるか

 

 

「・・友奈。学校が終わったらすぐに僕の家に来てくれないか?」

 

「え?いいけど…どうして?」

 

「話したいことがあるんだ…なるべく早く来てくれるとうれしい」

 

「う、うん。わかった」

 

 

 

『市村翔太』として最後ぐらい腹をくくらないとな……嫌われる覚悟もできた

 

 

殴られてもいい

罵詈雑言を浴びせられるのも覚悟した

 

 

 

 

 

―そしてその時は訪れる

 

 

「来たよ、翔ちゃん!」

 

「いらっしゃい…僕の部屋で話そう」

 

「うん。失礼しまーす」

 

「椅子がなかったから、代わりにベッドの上で話したいんだけど…いいかな?」

 

「大丈夫だよ。よいしょ…」

 

 

ベッドの上にお互い正座で座る

話しやすいよう向き合って座っているおかげで、目の前にいる友奈の困惑し気味の表情がよく見える。

 

 

 

・・その赤髪も、聞くだけで元気が出るような明るい声も聞けなくなるのか…

 

 

「それで、、翔ちゃん。話っていったいどんな話なの?」

 

「あぁ、それはね…」

 

 

口が思わず閉じそうになるが、堪える

 

 

ここで言わないのはただの逃げだ…

そう自分に言い聞かせ、奮い立てる

 

 

 

 

―そうしてやっとの思いで口を開き、沈黙を自ら破る

 

 

 

 

「・・転校…することになったんだ。だから……友奈とはお別れになる…」

 

 

 

「・・・え…?」

 

 

僕の言葉に目を丸くして呆然とそんな言葉を漏らす友奈

 

 

 

―胸が強く痛むのを感じる

 

 

そうして再び場を沈黙が支配する…かと思いきや、その沈黙は友奈によってすぐに破られた

 

 

「・・何で…」

 

「・・お父さんが転勤するんだ。それについていく形で僕も「言い訳はいいよ…」…友奈…?」

 

「お願いは…?聞いてくれたんじゃなかったの?いいよってあの時……」

 

「・・ごめ「謝られてもうれしくないよ!!」っ…」

 

 

 

初めて聞く友奈の怒鳴り声

 

 

友達からどんなに仕事を任せられても、無理難題を課せられても笑顔を浮かべていたあの友奈が……怒鳴った。

 

 

友奈の顔を見ると彼女の目には大粒の涙が宿っており、『怒』と『哀』が混ざったような表情を浮かべていた。

 

 

「・・それでも僕に言わせてくれ……ごめん。友奈」

 

 

初めて聞いた幼馴染の怒鳴り声に体と心を震わせつつ、謝罪と共に頭を下げる

 

…それが今の僕にできることだから

 

 

 

「・・・なら、翔ちゃん。頭上げて」

 

 

時間が経って落ち着いたのか、友奈の若干震えた声色が少し収まっていた。

 

もちろん今の僕に友奈の要求を断る理由はないため、ゆっくりと頭を上げる

 

 

 

しかしそうして頭を上げきった途端…

 

 

ドンッ

 

 

「え…?うわっ!……ゆ、友奈…?」

 

 

僕が友奈の顔を見るよりも先に体を軽く押されたような弱い衝撃が走り、ベッドに強制的に横たわる。

 

 

…いや、押された『ような』ではない

 

 

 

 

「・・・・」

 

 

 

【押された】のだ、友奈に

 

 

 

いきなり押し倒されたため困惑したが、とりあえず上体を起こさないと…

 

 

そう考えて起き上がろうとするも、上から友奈が覆い被さってきて、力を入れようとしていた腕をベッドに押さえつけられる

 

 

・・顔が俯いているせいで、友奈がどんな顔をしているのかわからない…

 

 

「ちょ、ちょっと友奈?これだと動けないんだけど…離してくれない……?」

 

「・・・・」

 

「お、お願いだから…」

 

「・・・・」

 

「友奈……」

 

「・・・ねぇ、、翔ちゃん」

 

 

友奈が俯かせていた顔を上げる

しかし上げた顔を見て、ゾッとする

 

 

 

 

いつも輝きを放っていた友奈の瞳はまるで深海のように光を失い、ルビー宝石のように綺麗な瞳は赤黒く染まっていた

 

 

「ひっ…!」

 

 

そんな彼女の姿を見て怯えを隠しきれず、口に出してしまう。

 

 

 

・・・怖い…本当に目の前にいるこの女の子はあの『結城友奈』なのか…?

 

 

そう考えてしまうほど、今の彼女は恐ろしく見えてしまっていた

 

 

体を捻って友奈の顔をなるべく見ないようにするが、横になっている僕の真上に友奈が覆い被さっているため、嫌でも視界に入ってしまう。

 

 

「私…すごいうれしかったんだよ?翔ちゃんにお願いを聞いてもらって…」

 

「・・なのに……」

 

 

 

 

 

「嘘だったんだね?あれは?」

 

「っ!?」

 

 

 

 

聞いたこともないような友奈の重低音が全身の骨の髄にまで響く

 

冷や汗が滝のように流れるのを感じる

 

 

 

―否定しないと…!

 

身の危険を感じ、急いで否定の言葉を言うため口を開くが、それは友奈本人によって遮られる

 

 

 

 

「でも、、いいよ」

 

「・・・え…?」

 

「翔ちゃんは何か事情があって、やむを得ずにそうしてるだけなんでしょ?」

 

「ゆ、友奈…」

 

 

声も元通りの高さにまで戻ってる…

 

まさか、察してくれたのか?

 

 

 

不安だが、、弁解するなら今しかない

誤解をとかなくては…!

 

 

「友奈違うんだ…あの時のOKは決して嘘じゃない。今こうして破って信用できないかもしれないけど、、本当なんだ」

 

「・・本当?」

 

「本当だよ…ごめん、友奈」

 

「ううん…こっちこそごめんね?翔ちゃんのこと誤解しちゃって」

 

 

・・良かった…友奈の目に光がある

 

 

どうやらいつもの友奈に戻ってくれたらしく、ベッド上の拘束から解放される

 

 

「ごめんね……怖かった?」

 

「だ、大丈夫だよ。約束を破った僕が全部悪いんだからさ」

 

 

少し手首が痛いが、もともと殴られるぐらいの覚悟はできていたから問題はない…怖かったのは否めないが。

 

 

 

 

「でも・・お別れ…なんだね」

 

「うん……友奈がいないのかぁ、、寂しくなるな~」

 

「あはは…私もだよ、翔ちゃん」

 

 

 

「「・・・・」」

 

 

 

―最後ぐらい、笑顔で別れたい

 

その気持ちから沈黙を自ら破る

 

 

 

「・・・きっと…また会えるよ」

 

「・・え?」

 

「何の根拠もないけどさ…別に僕達は死に別れるわけじゃない」

 

「世間は狭いって言うだろう?永遠の別れじゃないならさ……また会えるよ」

 

「そう…かな?」

 

「きっとそうだよ。だから、僕達がするのは『さようなら』じゃない」

 

 

 

 

「『またね』…だよ。友奈」

 

 

「!そうだよね!また会えるよね!」

 

「う、うん。近いよ?友奈」

 

元気になってくれたのはいいんだけど、距離が近い…今更か。

 

 

「そうだ…ちょっと待ってて!」

 

「え?あ、友奈!」

 

 

 

いきなり部屋を出ていったかと思ったら、少し経ったあと大事そうにガラスに包まれた押し花を持って来た

 

 

「?・・『四つ葉のクローバー』?」

 

「うん!少し前の日曜日、たまたま道端で見つけたんだ!」

 

 

幸運の四つ葉のクローバー…だったか

前にクラスの友達が土手で探し回ってたっけ…結局なかったらしいけど

 

 

「これ翔ちゃんにあげる!」

 

「え?いや、そんなの悪いよ!四つ葉のクローバーってレアなんでしょ?」

 

「大丈夫!もう一個部屋に飾ってあるから!お守りとして使って?」

 

「いや、でも……」

 

「いいの!翔ちゃんとお揃いになるし…むしろ貰ってほしいな」

 

「・・それなら、、貰うね?」

 

丁寧に割れ物を扱うように受けとる

 

ガラスの入れ物に入っているからか、不思議と四つ葉のクローバーが強く輝いているように見えた。

 

 

「綺麗…ありがとう、友奈」

 

「大切にしてねー?」

 

「もちろん!我が命に代えても、このクローバーは守り抜きます!」

 

「そこまでしなくていいよ!?」

 

 

 

 

 

「「・・・ふふっ」」

 

 

「またね…友奈」

 

「うん…元気でね、翔ちゃん」

 

 

 

―そうして僕と友奈の楽しい日々は唐突ながら終わりを迎えた―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「翔ちゃん……」

 

 

―彼がいなくなってから数日が経った

 

 

彼がいなくなったあと、よく仕事を頼んできていた友達の女の子達が突然謝ってきてびっくりした

 

どうしたの?と話を聞くと、どうやら翔ちゃんにこっぴどく怒られたらしい

それも翔ちゃんがいなくなる数日前に

 

 

《一番大事な友達が傷ついているのを見て楽しいわけないでしょ?》

 

 

 

胸がきゅっとなる

 

 

―まったく…翔ちゃんは本当に…

 

 

 

ふと机の上に飾ってある四つ葉のクローバーの押し花を見る

 

 

「・・ねぇ、翔ちゃん」

 

「一般的に知られている四つ葉のクローバーの花言葉は【幸運】だけど…」

 

 

 

「実は【もう一つ】あるんだよ?」

 

 

 

キランと日の光を四つ葉のクローバー入りのガラスが反射する

 

 

 

 

「えへへ……絶対だよ、翔ちゃん」

 

 

 

「嘘は嫌だからね?」

 

 

 




いかがでしょうか?

なるべく友奈ちゃんぽくヤンデレを書いたのですが…感想でどう思ったか教えてくださるとありがたいです。

『倉橋家』はオリジナルです
小さくも大赦の伝統のある家柄…という設定になっております。
とりあえず作者の小さなオリジナル要素として認識していただければ、そこまで気にしなくて大丈夫です。


四つ葉のクローバーの花言葉について調べた際、少々ゾワってしました。
知らない方は調べてみてください……

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